メール相談 慢性前立腺炎編#15
「 高橋先生、はじめまして。
先生のホームページ(特に慢性前立腺炎)を、目からうろこが落ちるような思いで拝見させていただきました。あきらめつつあった長年の悩みに一縷の光明を見つけた思いで勝手ながらメールさせていただきました。
私は現在51歳(男)です。20代後半ぐらいから排尿困難で、つらい思いが続き原因不明のまま二十数年になります。悩みは“尿の出始めまでが長い”ことです。特に公衆トイレなど、周りに人がいる所など早く出そうとあせるためか、なかなか尿が出ません。また飲酒後も尿が出にくいです。それから、朝方や夜間にトイレに行ったときは、尿が出始めるまでに5分から30分もかかるときがままあります。このような時は出始めだけでなく、出てからも途中で止まったりして排尿にも時間がかかります。我が家なら我慢できますが、同僚などとの出張中や、外泊時は本当に困ってしまいます。旅行や、もっと積極的な行動もしたいのですが、排尿がネックになり行動にブレーキがかかって
しまいます。
通常の排尿は、日中の調子がいいときで15秒~30秒位かかりやっと出始めます。排尿に勢いはなく、残尿感や排尿痛、その他の痛みなどは特に感じません。また、最近までは頻尿も無いと考えていました。(昼3~4時間間隔位) しかし、最近になり出始めまでの時間がさらに長くなりつつあり、今朝は30分ほどトイレにいました。夜間も一度はトイレに起きますがなかなか出ません。あせるとますます出にくくなります。この20数年の中で一番悪い状況にあります。風呂で温めながら出すときもあります。また尿意を感じる間隔が少しずつ短くなり、トイレが近くなり頻尿の傾向も出つつあるようです。今日は午前中で6回です。
これまで、三つの病院で診てもらいました。最初は30代後半頃の今から10年ほど前、M市民病院で調べてもらいました。尿流量測定検査も何回か挑戦しましたが、病院という特殊な環境で緊張感のためか、なかなか尿が出ずに、この検査は断念しました。そして尿道からバリウム造影剤を注入してX線透視検査を行いました。先生の説明では「膀胱頚部硬化症が疑われる。しかし、まだ若いから手術はしないほうがいいでしょう」とのことでした。その日、検査から帰ってから尿がまったく出なくなり病院へ数回駆けつけ、尿路カテーテルで排尿してもらいました。排尿の薬(名前は忘れました)もいただきましたが効果はありませんでした。このことがあってから、また我慢の日々が続きました。
そして、つらい悩みから抜け出したい思いで、40代半ば(今から5~6年前)に引越し先のS市民病院で再度検査を受け、前の検査結果や経過を伝えました。尿流量測定検査は一回目同様、なかなか尿が出ずに検査出来ません。そして麻酔をかけての内視鏡検査を行ってもらいましたが特に異常は見られないとのことでした。膀胱頚部硬化症についても質問してみましたが、膀胱頚部や前立腺に異常は無く膀胱もきれいとの返事でした。一回目の検査結果とも違ってしまい、結局、何も原因は判らずじまいでした。この時も薬をしばらく服用(薬の名前は覚えていません)しましたが効果はありませんでした。
その後、同病院でケンサク静脈瘤の診断を受け、臍下3箇所からカテーテルを入れて手術をしました。ケンサク静脈瘤が排尿困難の原因かもしれないとの医者の説明もありましたが、期待は裏切られ静脈瘤そのものは治りましたが、排尿困難はその後も変化はありません。そして通院も自然に止めてしまいました。
そして現在、3回目の通院検査になります。これまでの二回の病院とは違うS総合病院へ今年の8月から通院しています。尿検査では問題はありません。今までの20数年の経過と症状を説明し、「アビショット錠25」、「ハルナール」「ウブレチド錠5mg」などと順番に薬の種類を変えながら試していますが、何の変化も見られず今に至っています。この病院では尿流量測定検査も内視鏡検査もしていませんが、先生は、心因性又は、もともと膀胱の押し出す力が弱いか、加齢とともに前立腺が肥大して尿道を塞ぎ悪化しているのではないか、最終は前立腺を削る以外にないだろう。ただ、まだ若いからしばらく様子を見ようと言われています。しかし、前立腺肥大だとすると、この20年以上排尿困難が続いていることに矛盾を感じておられるようです。それに、毎年の人間ドック検査では、前立腺の検査も行っていますが異常はありません。また最近の前立腺腫瘍マーカー(PSA)検査でも異常は見られませんでしたので、私としては前立腺手術には不安を感じています。
高橋先生。長々と書いてしまいましたが、私の場合は普段や排尿時の痛みはありませんが、“出始めまで時間がかかる排尿障害”です。その原因が全くわかりません。だから治療方法がはっきりしません。高橋先生、他に症例はあるのでしょうか。そして治る病気なのでしょうか。原因は判るのでしょうか。先生のHPを拝見しながら、やはり膀胱頚部に柔軟性が無く開くまで時間がかかり、一度開くと比較的にスムーズに排尿できるのでは・・? などと素人考えをめぐらせ、前立腺手術には強い不安を感じています。かといってこのまま放置したくありません。出来れば先生に診察をお願い致したく、メールをさせていただきました。関西在住ですが、直る見込みがあれば、ぜひとも時間を作って伺いたいと願っています。 どうか、ご返事をよろしくお願いいたします。 H16.11.28 」
「 お答えいたします。
膀胱頚部硬化症による排尿障害でしょう。ハルナールなどの薬が効かないのであれば、手術以外に治す方法がありません。お大事に。 高橋クリニック 高橋 知宏 」
この患者さんは12月に来院されました。尿をためていただき尿流量測定ウロフロメトリー検査を行おうとしましたが、排尿出来ずに、この検査は中止になりました。超音波エコー検査では膀胱に尿が300ml以上たまっていたのですが...。
結局、患者さんの強い意志で平成17年3月14日手術になりました。
手術直前の膀胱頚部の所見です。膀胱頚部の内腔は脊椎麻酔がかかっているにもかかわらず直径2mmです。これでは、排尿障害があってもおかしくはありません。Bar in the sky 柵形成 の所見があります。典型的な膀胱頚部硬化症の所見です。以前にこの患者さんは、他の医療機関で膀胱鏡検査を行っていたのですが、この所見を見逃していることになります。
同じく手術直前の前立腺部尿道の所見です。手前6時の位置に精丘が見えます。この位置から膀胱に向かって観察していますが、膀胱が見えません。12時の位置の前立腺が緞帳のように塞いでるのが確認できます。膀胱頚部硬化症には2つのタイプがあり、Bar in the skyタイプと緞帳タイプです。この患者さんの場合、この両者のタイプを持っていることになります。
手術直後の前立腺部尿道の所見です。写真の手前6時の位置に見える赤い部分が、上の写真と同じ精丘です。内視鏡の電気メスを駆使して、前立腺部尿道を開放します。手術中の印象では膀胱頚部の硬さが強く感じました。肉ではなく線維組織という印象です。患者さんが内視鏡手術の合併症である逆行性射精を気にしていたので、完全な開放にはしていません。画面の右側(患者さんにとって左前立腺)は、ほとんど手付かずで手術を終えました。
【お礼のメール】
高橋先生へ
先月、3月14日に手術して早、一ヶ月余りが経過いたしました。
その節は大変お世話になりありがとうございました。経過の報告が遅れ、たいへん申し訳ありません。
術後の2週間ほどは、術前と排尿状態があまり変わらず、本当に良くなるのか不安に思っていました。しかし、その後だんだんと排尿状態は良くなり、先生が1~3ヶ月とおっしゃったとおりに、今ではスムーズに排尿できるようになりました。ただ、排尿時に痛み(尿が出終わる頃に強い尿意の混じった痛み)を感じます。
排尿後しばらくするとまたすぐに尿意を感じ、少し頻尿気味になっています。今は、時間が経過すればよくなるものと楽観的に考えていますが・・
このようなものでしょうか。まだ術後一ヶ月余りで、手術跡の傷が癒えてないような感じです。
それでも手術前に比べ気持ちもずいぶん楽になり、20年来の肩の荷を降ろして、先生には大変感謝いたしております。ほんとうにありがとうございました。
5月の連休中には上京し、病院を訪れ経過を報告させていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
平成17年4月19日 ○○○○
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コメント
田中@膀胱頸部硬化症、です。
先日7/13(水)、8年ぶりで診察していただき、ハルナールとベタニスを処方いただきました。その節は、お世話になりました。
1週間経過したところの状態ですが、尿意切迫感は、依然として継続しているものの、睡眠可能な迄に何とか回復しました。関連痛も少し回復しているようですが、ベタニスの副作用なのか、とにかく口・喉が渇きます。半端じゃありません。
【回答】
ベタニスを中止してください。
貴院の夏休み前(8/5頃)に、もう一度診察のため伺う予定でおります。その際、別の治療法等も含め今後についてご相談させていただければと思いますので、宜しくお願い致します。
投稿: 田中 | 2016/07/21 14:43
はじめまして。ブログで先生の所見(原因の多くは隠れ排尿障害)を拝見し、目からうろこが落ちる気がしましたので、お忙しいところ恐縮ですが、ご相談させていただきました。どこにコメントすれば良いのか解らず複数記載になっていますが申し訳ありません。
甲信越地方在住の63歳です。5年ほど前に行ったエコー検査で前立腺に突起ありと指摘されPSA検査をしましたが1,7の正常値でした。元々若い頃より尿の出が細く時間が掛かっていましたが、4年ほど前より一段と出づらくなった為、泌尿器科を受診しましたところ、前立腺肥大の指摘を受けました。3年前に行ったPSA検査は2.9でしたが、その後、陰茎・会陰部の痛み・違和感が出現したため受診したところ慢性前立腺炎の診断で、ザルティア、セルニルトン、タムスロシンなどが処方され内服しましたが回復せず、いくつかの泌尿器科を受診し現在に至っています。今年2月に行ったPSA検査は5.2、5月は7.1と上昇したためMRIを撮りましたが癌の所見はマイナスで、アボルブ0.5の内服を開始しました結果、9月のPSAは3.5に下降しましたが、現在は膀胱に尿が溜ると痛みを感じ、排尿時も尿道や会陰部に痛みを感じる状態です。主治医からは、内服で効果がなければ手術をと言われていますが、今ひとつ決心がつきかねています。尚、ユリーフは副作用が嫌で継続服用は行っていません。私の場合、内服治療を継続すべきか、それとも手術をした方が根本治療になるのか、また、手術の場合はどのような方法が望ましいのか、先生のお考えを聴かせていただきたく投稿させていただきました。
★回答
水分を控えてください。
頻尿治療薬のベタニスを併用してください。
投稿: 咲 | 2018/11/09 10:27
お忙しいところ、早速のご教示をありがとうございます。
現在、掛りつけの泌尿器科では、尿検査の度に水分をもう少し摂ってください、とよく言われますが、水分を控えることの効果・理由等を教えて頂ければ幸いです。 あと、今後も内服治療を優先し、手術はまだ考えない方が良いのでしょうか?
【回答】
このブログに何回も記載しているように、排尿障害が原因の病気は、水分負荷により条件反射的に症状が出現するのです。
投稿: 咲 | 2018/11/09 17:54
ご回答して頂き感謝いたします。
水分を控え、ベタニスの処方を依頼してみます。ありがとうございました。
投稿: 咲 | 2018/11/12 08:52
高橋先生、はじめまして、こんにちは。
相談宜しいでしょうか。
先生の見解や皆さまの症状からみて、私も多分膀胱頸部硬化症かと思っております。
・頻尿、排尿まで時間がかかる、勢いが弱い、量が少ない(100ml程度)、下腹部痛、睾丸痛などです。
地元の病院では、膀胱造影検査にて狭窄はないとの診断で、遮断薬やセルニルトン等を含め、こちらで紹介されている薬を処方されましたが全く効果なし。
20歳頃からこの症状を患っていまして、現在45歳なので手術も考えましたが、地元泌尿器の先生からは「逆行性射精になるが尿道ステントを入れてみてはどうか? 数年は入れたままで良いので、それで改善するのであれば最終的に手術すればいいのでは?(最悪でも可逆的なので)」と提案頂きました。
高橋先生のお考えは如何でしょうか?
★回答
ステントが刺激になって、逆に症状が強くなるかもしれません。」
尿道ステントなどをせずに、最初から手術すべきでしょうか??
★回答
今までの具体的な治療薬の内容を教えてください。
まだ、工夫出来るかもしれません。」
また、手術は日帰りとありましたが、費用はどの程度かかりますでしょうか?
★回答
50歳未満であれば、自費手術になります。
20万円です。」
盛りだくさんで申し訳ありませんが、ご回答お待ちしております。
どうぞ宜しくお願い致します。
投稿: はじめまして | 2018/11/12 13:05
高橋先生
早々のご返信、恐縮です。
<今までの具体的な治療薬の内容>
25歳頃
初めて泌尿科を受診し、セルニルトン処方。
3ヶ月ほど継続するも効果なし。
前立腺マッサージ?にて検査するも細菌はなく「慢性前立腺炎の診断」でした。
その後放置。
35歳頃
引っ越しを機に別の泌尿器科を受診。
慢性前立腺炎と診断された旨を伝えたところ「過活動膀胱」の可能性があるとのことでユリーフを処方。
効果なしのため放置。
45歳
健康診断にて血尿が認められるとのことで再度、別の泌尿器を受診。
検査の結果、わずかに認められるが心配はないとの診断。
クレアチニンの値も正常とのこと。
睾丸痛・下腹部痛(押した時のみ)・頻尿・尿の勢いがない・時間がかかる・量が少ない・射精後しばらくしてから精液が漏れてくる等を伝えたところ、狭窄の可能性を疑い造影検査をしましたが異常なし。
膀胱から前立腺の間に障害がありそうだということでαブロッカーを処方された。(種類を替えていくつか試しました)
逆行性射精となるも効果はなし。
あきらめ気味に自身で調査し、先生の病院でもお使いの「ニチモウ ライフマックス 大豆イソフラボンアグリコン+ノコギリヤシ」を半年続けるも効果なし。
再度受診したところ、尿道ステントを勧められた次第です。
薬でなんとかなるのであれば助かりますが・・・
現状の症状ならば、50歳までなら我慢出来るので保険適応後に手術する方向性がよさそうですね。
どうぞ宜しくお願い致します。
★回答
慢性前立腺炎症状は、炎症ではなく、排尿障害という機能障害によって起きる膀胱刺激症状です。
一般的には、α1ブロッカーで6割の患者さんは落ち着きます。
しかし、膀胱三角部が特化して過敏だと、頻尿治療薬であるベタニス、前立腺を軟らかくするアボルブの併用が必要です。
いろいろな症状の本質は、頻尿の裏の顔です。
水分をたくさん摂取すると、条件反射で症状は悪化します。
水分は1日1㍑以下にしてください。
投稿: | 2018/11/12 15:57
先生、何度もありがとうございます。
再度受診しまして、ブロッカー、ベタニス、アボルブの投薬をお願いしてみます。
それでも駄目なら貴クリニックでの手術を検討しますが、何故50歳以上でないと自費手術になるのでしょうか?
★回答
30代後半から、前立腺肥大症があるおですが、国(社会保険・国民健康保険)が50歳以上でないと認めないのです。
また、膀胱頸部硬化症という病名と手術を認めてくれないのです。」
20万程度ならば(逆行性射精は気になりますが)なるべく早めに受けたいのです。
また生命保険が使えるかどうかを事前に確認したいのですが、手術名は何になりますか?
★回答
生命保険は大丈夫です。前立腺肥大症という病名で、経尿道的前立腺手術です。
★備考
数日後に、慢性前立腺炎の治療について書きます。
お楽しみに。
投稿: | 2018/11/12 19:06
以前、メールで相談させていただいた、慢性前立腺炎・前立腺肥大で治療中の63歳です。 主治医の指示もあり、今まで手術ありきで考えていましたが、まずは先生の診察をお願いしたいと思っています。受診の際には、現在の主治医の紹介状などは必要ですか?
★回答
無用です。」
また、県外からなので頻回な通院は不可能ですが、診察時間内であればいきなり受診しても大丈夫でしょうか?
★回答
もちろんです。
投稿: | 2018/11/19 18:13