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膀胱頚部と膀胱三角部

膀胱頚部と膀胱三角部の関係を明らかにすると、排尿障害がなぜ非細菌性慢性前立腺炎の様々な症状を形成するのかの謎が解けます。

【膀胱三角部】
膀胱三角部という名称は、左右の尿管口と膀胱出口(膀胱頚部)を結んだ線が、malebladder三角形になるのでこう呼ばれます。【ネッター解剖学アトラス図353 南江堂から参照】
さて膀胱三角部の一番の役目は膀胱内の尿の溜まった程度を感覚器として感じ、脊髄(主に仙骨脊髄神経2番~4番に相当)に情報として流すことです。膀胱三角部の感覚器はテンション・レセプター(伸展感覚受容器)と呼ばれる構造になっています。

【伸展感覚受容器】
その仕組みは簡単に表すと【模式図】で示すようになっています。模式図中の左図は、尿がたまっていない状態の膀胱粘膜です。膀胱粘膜下・膀胱筋層内の伸展感覚レセプターは、図のような電気回路になっています。尿が溜まっていない・ゆるんでいる時には、回路中の青の接点は離れていて回路には電流が流れていません。
triangleneckところが、尿が充満して粘膜や膀胱筋肉が引き伸ばされると、次第に回路の接点が近づき、遂には接点同士が付きスイッチが入り、回路に電流が流れます。この状態が脳脊髄中枢に膀胱内の尿量情報として伝達され、尿意になります。この接点間の距離にはバリエーションがあり、少し伸展してスイッチの入るものからかなり伸展しないとスイッチの入らないものまでいろいろあります。すべての伸展感覚受容器にスイッチが入ると、尿意の限界になります。
伸展感覚レセプターのこの原理が分かれば、次のことが容易に推論できます。もし尿貯留ではなく、病的な原因で膀胱三角部の伸展が余儀なくされれば、尿意や膀胱刺激症状が簡単に形成されることです。

【膀胱頚部と膀胱三角部の密接な関係】
膀胱三角部の延長に膀胱頚部が存在します。正常であれば膀胱頚部は適度に閉まっています。そして、排尿時には、目いっぱい開大して気持ちよくオシッコを出します。bnsimage.jpg
ところが膀胱頚部硬化症の場合、膀胱出口の組織が上に吊り上っていてBar in the sky 柵形成の所見を呈していると、膀胱頚部が膀胱三角部の組織を引っ張り上げる形になります。引っ張られた膀胱三角部は伸展感覚レセプターを常時接続状態にします。ですから膀胱三角部が常に過敏になり慢性前立腺炎の膀胱刺激症状で苦しむ患者さんに対しては、膀胱頚部を一部切除・切開を行い、膀胱三角部と膀胱頚部を引き離し、膀胱三角部の緊張を解除することに治療の主眼を置かなければなりません。


【実例】
24歳の男性患者さんです。1年前から会陰部のズキンズキンと感じる痛みと、両側陰嚢の痒みがありました。地元の病院と某国立大学病院、東京の某私立大学病院の泌尿器科を受診しましたが、「慢性前立腺炎」「気のせい」という診断でした。薬の処方内容は、セルニルトン・クラビット・ロキソニン・桂枝茯苓丸などでしたが、全く効き目がありませんでした。
高橋クリニックでの検査では、尿流量測定ウロフロメトリー検査・残尿量測定検査では異常を認めませんでしたが、超音波エコー検査では、膀胱粘膜の肥厚をわずかに認めました。
エブランチル(αーブロッカー)という排尿障害改善剤を処方したところ、今まで苦しかった症状が40%程に軽快しました。エブランチルを休薬すると、症状が元に戻ります。
患者さんご本人の強い希望もあり、膀胱鏡検査を行ったところ、やはり膀胱頚部硬化症の所見を認めました。

患者さんが手術を希望され実施しました。
手術直前の膀胱頚部の所見です。15729m24cp6時の手前に見えるのが、精丘で精液が噴出する場所です。左右に三角形に見えるのが前立腺です。奥の黒く見えるのが、膀胱出口=膀胱頚部です。脊椎麻酔がかかった状態で、すぼまって見えます。いわゆる膀胱頚部硬化症の所見です。この所見はBar in the sky 柵形成と呼ばれる所見です。

膀胱内の膀胱三角部の所見です。15729m24cp4血管が集まっていて、膀胱三角部炎状態です。この写真では判別しにくいのですが、膀胱頚部が盛り上がっていてつっぱている印象です。つまり膀胱三角部が常に引っ張られていて、伸展レセプター接点が常時接続状態です。

膀胱内壁の接線方向から観察した所見です。15729m24cp5段々状態が観察できます。「肉柱」と呼ばれる所見です。排尿障害が長く続くと、膀胱内壁が凸凹して肉柱が観察できます。逆に肉柱を証明できれば、排尿障害が証明できたことのなります。

手術直後の所見です。
15729m24cp2

【続く】

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コメント

アメリカ在住の者です。年に一度帰国しています。膀胱頚部硬化症と思いますが診察から術後の再診まで最低何日間の予定で帰国した方がいいでしょうか?おおよそで結構ですので教えて下さい。
【回答】
内服治療して改善がなければ手術を考えます。
今、手術に関してあれこれ考えるタイミングではありません。

投稿: | 2014/11/30 17:47

早速の御回答ありがとうございます。
再度、質問させて欲しいのですが検査の結果、膀胱頚部硬化症であり処方された薬が効いた場合、末永く服用しないと止めると元に戻りますか?
【回答】
はい。」

末永く飲まなければならないとなると経済的負担もあります。経済的理由から手術を選ぶこともできますか?
【回答】
50歳未満の方は手術費用が20万円もかかります。
一時的ですが経済的にかなりの負担です。

投稿: | 2014/12/03 12:24

排尿困難に加えてエコー検査で右側腎臓に石があると言われ、できるだけ水を一杯飲むように言われました。このような場合、水は多く飲むべきでしょうか?石が出たら水をできるだけ飲まないようにするべきですか?
【回答】
水分を多く摂取しても結石には関係ありません。

投稿: | 2014/12/15 16:57

先生、お世話になります。
NO.33435の〇〇です。
27年7月の診察以降、3ヶ月毎にハルナール
を、28年6月からベタニスを追加投薬いただいておりますが、最近調子が悪化しており、薬剤の
変更をお願いした方がいいかどうか迷っており
ます。
症状は会陰部痛と左足の痺れですが、初診時を
100%とすると、最高で改善率30%位は軽減し
ましたが、ここ1カ月、初診時に戻った様な
感じです。骨盤を寝かせて何とか椅子に座れる
状態です。
6月に追加いただいたベタニス錠は効果は感じません。ベタニス錠の変更、又はハルナール共に
変更をお願いした方が良いのでしょうか?
【回答】
変更しましょう。」

もちろん水分は1ℓ以下に抑えてます。トイレも
一日4回以下です。
初診から日が開いてしまいましたが、診察も
伺った方がよろしいでしょうか?

投稿: 隆一 | 2016/09/30 23:02

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