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メール相談 慢性前立腺炎編#8

「はじめまして、高橋先生。先生の慢性前立腺炎に関してのホームページを拝見して、メールを送らせていただきました○○と申します。現在、22歳の大学生をしております。

私は今年の7月頃から、これといった切っ掛けは覚えがないのですが残尿感と頻尿に悩まされるようになりました。すぐに近くの病院の泌尿器科にいってみたのですが、尿検査と下腹部のレントゲン検査、超音波エコー検査を行った結果異常なしとのことで、クラビットと漢方薬を処方されました。薬の服用を続けましたが、頻尿が悪化するだけでしたので、別の病院にいってみることにしました。
そこでも尿検査、超音波エコー検査を受けたもののやはり異常なしでした。おそらく前立腺炎だろうと診断され、セルニルトンと竜胆瀉肝湯という漢方薬を処方されました。症状が緩和されたと安心した日もありましたが、長続きはしませんでした。その後先生からは精神的なものもあるからできるだけ気にしないようにといわれ、いくつかの薬を試して現在はエブランチル、ブラダロン、セルニルトンを処方されています。良くなったと感じる日もありますが、調子が悪い日も多々あり、安定しない日々に不安を強く感じています。

現在の症状は先生のホームページの中でメール相談として紹介されている幾人の方達とほとんど同じであると言えます。特にメール相談#4、#5で紹介されている方と共通した症状が多く、驚きました。2時間弱程度の感覚で尿意を感じますが、全く我慢できないわけではありません。しかしその間は精神的にかなり辛いです。ひどいときは常に尿意を感じる状態が続いてしまいます。夜間頻尿はありません。会陰部には軽い痛みのような不快感を感じます。会陰部の不快感が長く続くと尿道の先端に強い不快感を感じるようになります。
1年以上前から夜寝る前に残尿感を感じ、便座に長時間(長いときは30分)座って出し切れない尿をなんとか出しきろうとしています。実際にわずかながら尿が出てくるので、それに満足し睡眠に入ることが出来ていました。
また昼間に尿をしたあとにも、その後歩いたりしていると尿が残っていたのか少し垂れてきて下着を濡らします。あとこれは関係あるのか分かりませんが、尿を出すときに尿が一直線に出て行かず、二手に割れて出て行くことが多い気もします。これは尿の勢いが弱いからなのでしょうか。
また、射精後は痛みや血液が混ざるということはありませんが、尿意が強まります。感覚的には精液が出し切れず、少し残っている感じがします。その後尿を出すことで不快感は和らぎます。やはりこれも排尿障害が原因なのでしょうか。

ぜひ高橋先生に診察をして頂き、必要なら手術もしたいと考えているのですが、遠方に住んでいるため気軽に通院することができません。しかし、このまま何十年も苦しい症状が続くのならば、ある程度の出費は覚悟してでも手術を行いたいという思いは持っています。失礼かと思いますが、国民健康保険を利用した際の手術までかかる費用(初診での諸検査の費用や手術自体の費用など)を、おおよそどの程度かかるか教えていただくと大変参考になります。また遠方であり交通費も多くかかってしまうため、できることなら来院回数を少なくできればと考えています。初診から手術までは、最低何回の来院が必要になるのかも教えていただくと助かります。
先生のホームページには本当に勇気付けられ、深く感謝しております。お忙しいなかこれまで長文を読んで頂き、本当にありがとうございました。」

お便りありがとうございます。ここで解説をいたします。

【解説】

尿検査と下腹部のレントゲン検査、超音波エコー検査を行った
炎症性疾患か尿路結石を疑い検査したのでしょう。排尿障害の検査は行っていません。

精神的なものもあるからできるだけ気にしないように
読者の中には、このフレーズには聞き飽きたでしょう。いかに医師がワンパターンに返答指示しているかお分かりでしょう?

エブランチル
排尿障害の検査もせずに、排尿障害治療薬であるα-ブロッカー薬であるエブランチルをなぜ処方したのでしょう?おそらく、α-ブロッカー薬には膀胱刺激症状や前立腺刺激症状を緩和してくれる働きがあるのをご存知の医師なのかも知れません。

紹介されている方と共通した症状が多く、驚きました
実は私も驚いています。今回の企画でメール相談内容を原文のままで掲載してみたら、年齢の違いや職業の違いはあるものの、患者さんの経過や症状、医師の対応が酷似していることに、あらためて私も驚いています。高橋クリニックでは毎日のように慢性前立腺炎や慢性膀胱炎と他の病院で診断された新患の患者さんが5人~6人くらい来院されます。毎日の業務ですから当たり前と思っていましたが、このように記録としてブログに掲載すると、非細菌性慢性前立腺炎という病気の本質が自然と見えてくるのに驚きます。貴方は泌尿器科医師でもないのに、この不明瞭な非細菌性慢性前立腺炎の本当の姿を垣間見たのです。奇跡の瞬間です!(少し大げさになってしまいました)

夜間頻尿はありません。
尿路感染症(急性膀胱炎や急性前立腺炎)であると、夜間頻尿を認めることが少ないので細菌感染症を疑われます。

尿道の先端に強い不快感を感じる
手術後の患者さんに膀胱留置カテーテルが挿入されますが、その時にカテーテルを介して膀胱を刺激すると、尿道先端部分の不快感が出現します。ですから貴方のこの感覚は、膀胱の感覚です。

1年以上前から夜寝る前に残尿感を感じ
やはりそうでしたか。慢性前立腺炎症状が出現する前に、前兆ともいえる症状が出現していることが多いのです。

尿が一直線に出て行かず、二手に割れて出て行く
膀胱から尿道までの道のりの中で、狭い部分が存在すると、排尿時に必ず尿流の渦(うず)が生じます。この渦が奥のほうであればあるほど(膀胱に近ければ近いほど)、渦の位相時間差が強調されて、尿道口から開放された時には、貴方の症状のように分裂した尿線や噴水状に散らばるのです。

国民健康保険を利用した際の手術までかかる費用(初診での諸検査の費用や手術自体の費用など)
初診時の診察・検査費用:3千円程度です。
手術時の費用:5万円程度です。

初診から手術までは、最低何回の来院が必要
初診日と手術日の2回です。手術後は翌日・翌々日・1週間後・3週間後の予定になります。ただし手術は水物ですから、術後出血などで来院回数が増えることはありますので、念のため。

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