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驚きと偶然と悲しみと

本日午前10時頃、新患で慢性前立腺炎の男性患者さんの診察中に、都内の警察署からクリニックに電話がありました。
通院している患者さんが自殺したというのです。朝7時に母親が首をつっている息子を発見しました。患者さんは母子二人暮らしです。

その患者さんは40歳男性で、平成15年8月から慢性前立腺炎をわずらっており、病院を転々とするも治らず、平成16年6月15日に当院を受診しました。
患者さんの一番の訴えは、右坐骨の痛みです。泌尿器科・整形外科を転々としましたが検査に異常はなく、「気のせい」「心因性」の病名ももらっていました。

詳しく調べると案の定排尿障害を認め、排尿直後の残尿が230mlもありました。今までに排尿障害の薬で治療経験がないので、αブロッカーのハルナールという前立腺肥大症のお薬を処方したところ、坐骨の痛みが30%まで落ち着いたと大喜びでした。しかし、その薬を続けるもそれ以下には改善しないため、私が提唱している手術を強く希望しました。

平成16年7月2日に手術を行いました。排尿障害は改善し残尿はなくなり、7月28日には坐骨の痛みが完全消失し、1ヵ月に1回の通院で済むようになりました。
9月に入り風邪を引いてから、再び坐骨の痛みが出始めたので、毎週1回仙骨神経ブロックを行うこととし、9月15日・9月29日(昨日)の2回行いました。
昨日もブロック後、いつもと同じに「また来週」と分かれたばかりです。

警察と私の会話を聞いていた、診察中の新患の男性患者さんが目を丸くしながら、「私は、その方に紹介されてここに来ました」と言うではありませんか!インターネットの病気の掲示板で知り合い、当院を紹介されたというのです。最近もメールのやり取りをしていたのですが、メール内容が段々少なくなり、文面の内容がマイナス面が強くなっていて気にはしていたとのこと。

デパスなどの抗うつ剤の治療歴もあったので、多少の「うつ傾向」はあったかも知れません。うつ病は軽快の際に発作的な自殺願望があるといいます。慢性前立腺炎症状も治療できる範囲のものです。それなのに...悲しみだけが私に残ります。ただただ悲しい...治療者として情けない今日一日です。

非細菌性慢性前立腺炎でお悩みの方、必ず病気は治ります。治る病気です。決してあきらめないで下さい。お願いします。

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コメント

自殺もその人の人生、運命なのでしょうか。自分もこの病気で苦しい時ふとその願望が脳裏をよぎります。自殺はいけないことなのでしょうか?生きていくことよりも楽になれる気がします。
【回答】
命を断つことで現在の苦しみがなくなると思われますが、実は命を断つことで、その時点での苦しみが永遠に未来永劫続く存在になったらどうします?
今の苦しみを生きている間にキッチリと解決する必要がある存在が私たち人間であったとしたら・・・。
死後のことは生きている人間には分からないのです。

投稿: | 2012/09/08 11:14

悲しいですね。私も自殺を考えています。この方の気持ち、よく分かります。

投稿: しょうじ | 2012/10/26 11:07

生きたいと死にたいと元のような健康な体になりたいという想いと。頑張らないとと、悲しい、悔しいという想いと。乗り越えたいという気持ちともう無理なんじゃないかなという想いと。自業自得か、運命か、天罰なのかなという想いと。現実を受け入れなければという気持ちとなんで自分がという想いと。あの人の為に生きたいという想いと、迷惑かけ、無様な姿をさらしてまで生きるのかという想いと。後悔と希望と絶望を。毎日抱えながら生きてます。今は涙を流して辛くて辛くて病気が憎くて憎くてたまらない毎日ですが、いつか治ると信じたい。信じたいんです。信じさせてください。

投稿: 20歳患者 | 2012/11/05 20:41

先生の想う病気とはを教えて下さい・・・体が180℃変わってしまって受け入れられないんです。
【回答】
病気は自然です。
健康は幻想です。
私たち生物は、永遠に健康なまま存在し得ません。
健康と思われる期間は、生きている期間のほんの一時でしかありません。
私は10代で骨折、20代後半からは、糖尿病があり、今では高血圧・白内障・緑内障まで加わり、自分で治療しています。
私の一生のうち、大半が病気で占められています。
医師は健康という「幻想」をいかに長く見させることが出来るかということに心血を注いでいるのです。
ところが大半の医師は健康を「絶対的なもの」と錯覚しているのです。

投稿: 20歳患者 | 2012/11/05 20:50

いまも先生は慢性前立腺炎は必ず治る病気です あきらめないで下さいという言葉に間違いはありませんか?
【回答】
はい。
先生は3ヵ月くらいの治療で簡単にあきらめてくださいと宣言するのですか?
医師があきらめたら、患者さんはどうすればよいのですか?

投稿: 地方泌尿器医 | 2013/02/19 13:53

慢性前立腺炎は治る病気だと思います。 先生のブログでの治療と熱い心を拝見いたしまして確信しております
頑張って下さい
【回答】
心強いです。

投稿: 地方泌尿器医 | 2013/02/19 16:18

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