カテゴリー「間質性膀胱炎の手術」の記事

膀胱水圧拡張術 3回の結果・・・

九州から来院されたご婦人です。
主訴は1日20回~30回の頻尿と夜間頻尿6回、右下腹部から陰部にかけての痛みです。
7年前に地元の泌尿器科専門病院で、「間質性膀胱炎」と診断を受けました。それまでは膀胱炎の診断でさんざん抗生剤を飲まされ続けました。そして2泊3日で膀胱水圧拡張術を受けました。膀胱容量は650ccでした。
その後、1年は状態が落ち着いていましたが、次第に強くなり半年我慢して2回目の膀胱水圧拡張術を受けました。膀胱容量は550ccでした。その後、半年は落ち着いていましたが、再び症状が強くなり、1年半我慢してついに3回目の膀胱水圧拡張術を受けました。膀胱容量は350ccまで減少し、その後の状態も1ヵ月くらいしか保てなくなりました。3回目の膀胱水圧拡張術の際には、ハンナー潰瘍まで出現し、電気メスで焼灼手術しました。
服用した薬剤は、IPD、ウリトス、ベタニス、エブランチル、柴苓湯、抗うつ剤などありとあらゆる薬を試されています。
膀胱水圧拡張術には見切りをつけ、2年前から知っていた高橋クリニックを訪問したのです。

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BOTOX治療の可能性

Cpmecha1千人以上の慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんを診察・検査・診断・治療・経過観察するうちに、これら病気の病態が少しずつ分かってきました。
イラストで示すように、これら病気の本質は恐らく「膀胱頚部機能不全あるいは機能障害Bladder Neck Dysfunction)でしょう。つまり排尿の際に膀胱出口・膀胱頚部が十分に開かないことにあるのです。
十分に開かなければ、膀胱の収縮力と腹圧で無理に排尿することになります。無理に排尿すれば、膀胱出口・膀胱頚部は必要以上にブルブル振動します。
この振動が数年~十年単位で長期間にわたり繰り返し起きれば、膀胱出口・膀胱頚部は生体反応で硬化してきます。これが超音波エコー検査で診断できる「膀胱頚部硬化症Bladder Neck SclerosisあるいはBladder Neck Contraction)」です。
「硬化」して膀胱出口・膀胱頚部の柔軟性が欠如する訳ですから、尿の出が悪くなるのは当たり前です。これが「排尿障害」として自覚するのです。
膀胱出口・膀胱頚部の硬化は、膀胱三角部にも及びます。膀胱三角部は膀胱の感覚器=センサーとしての役目も担っていますから、硬くなればなるほど振動しやすくなり過敏になります。これが「頻尿・関連痛・自律神経症状」として自覚されるようになります。
また、膀胱出口・膀胱頚部の硬化は、排尿時の振動数を増やすようになります。振動数の増加=エネルギーの増加ですから、敏感になった膀胱三角部は振動エネルギーにますます被曝され、症状は増悪の一途です。

「排尿障害」「頻尿」「関連痛」「自律神経症状」などの症状の程度・組み合わせなどから、診察する医師の判断で患者さんを「慢性前立腺炎」「間質性膀胱炎」「過活動膀胱」「心因性頻尿」「神経因性膀胱」「前立腺肥大症」などと分類・診断されているのに違いありません。(もちろん、あくまでも私の仮説です。)

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初めてのご婦人の膀胱頚部硬化症内視鏡手術

Ic22f12691私が初めてご婦人の膀胱頚部硬化症手術を着手したのは、平成15年7月8日です。患者さんは23歳の若いご婦人でした。
この患者さんは平成14年6月に初めて診察しました。当時22歳です。
3年前の19歳の頃から頻尿で、来院時は1日21回、夜間は起きませんが、就寝前に4回ほどトイレに行きたくなります。1回の排尿量は40ml~240ml、平均で120mlです。
それまでに泌尿器科開業医を2軒、大学病院婦人科を1軒、ウィメンズ・クリニックを1軒受診し、治療を受けていますが、一向に治りません。当時であれば間質性膀胱炎か神経性頻尿と診断されたのでしょう。「過活動膀胱」という病名は一般的ではありませんでした。
当時の私の診断能力も大したことがなく、超音波エコー検査で膀胱粘膜の浮腫らしき状態を確認した程度でした。

Ic22f12691800pse【補足】
過去のデータを現在の私の能力で解析すると、右の注釈のようになります。
今から見れば、明らかに膀胱頚部硬化症です。膀胱三角部が肥厚している訳ですから、頻尿があって当たり前です。その原因は膀胱出口の硬化にあります。しかし、この解析ができるようになったのは、平成19年8月の3D超音波エコー検査を導入し、さらに1年半以上経過した平成21年になってからです。3D画像から2D画像を比較検討した結果、解析できるようになったので、この時点では無理でした。

平成14年7月に仙骨神経ブロックで内視鏡検査を行い、膀胱三角部に血管増生(慢性膀胱炎の所見)と白苔変性(慢性膀胱炎の所見)を認め、さらに肉柱形成(この時点で排尿障害を疑わなければ・・・)が観察できました。
膀胱容量が少ないので、間質性膀胱炎の治療である膀胱水圧拡張術を行い(今では否定的に考えている膀胱水圧拡張術でしたが、当時は私も頻繁に実施していました・・・)、膀胱を600mlまで拡張しました。

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膀胱炎に間違われた「膀胱出口嚢胞」患者さんのその後

Boocyst23216f352d1日10回以上の頻尿(多い時には20回)と尿道の痛みで、内科、腎臓内科、婦人科を受診し、問題が解決しないので4軒目で高橋クリニックを受診した患者さんです。超音波エコー検査で膀胱出口に嚢胞を認めました。ある意味膀胱頚部硬化症による排尿障害です。

Boocyst23216f353d43D画像で膀胱出口近くに嚢胞が明瞭に確認できます。

Boocyst23216f353d23D画像の正面像で見ると、膀胱出口の大部分を占拠しています。

尿流量測定検査で、排尿障害を認めました。これが、患者さんの訴える症状の元凶なのでしょう。ご主人ご家族に相談し、内視鏡手術を決め、本日手術を実施しました。

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間質性膀胱炎の治療 「仙骨神経ブロック」

間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状として辛いのが、1日10回~40回の頻尿といつ起こりか分からない強い痛みです。
排尿障害を治さないことには、これらの症状は治らないと考えていますが、補助治療として仙骨神経ブロックがあります。
Caudaltech本来仙骨神経ブロックは、整形外科領域の坐骨神経痛や椎間板ヘルニアなどの慢性の痛みを軽減する目的で利用されている治療です。

私はこの仙骨神経ブロックを内視鏡手術の麻酔として利用したり、術後の疼痛管理に利用しています。仙骨神経ブロックはペインクリニックでも治療として採用されていますから、間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状が辛い場合にはペインクリニックの麻酔科医に治療をお願いして下さい。

ここで私の仙骨神経ブロックの方法をご披露しましょう。
まず薬剤は、マーカインを使用しています。マーカインは筋弛緩作用が弱く、それでいて間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状である知覚神経の鎮静作用が強く長続きしますから、外来の神経ブロックの薬剤としては重宝します。
0.25%マーカイン5ml注射します。注射後20分ほどで私は患者さんに帰宅していただきます。
1回目で特に副作用が出なければ、2回目からはマーカインの量を徐々に増やします。例えば、
2回目:0.25%マーカイン8ml
3回目:0.25%マーカイン10mlという具合です。
限界12mlが仙骨神経ブロックを外来で行なう限度の量でしょう。これ以上量を多くすると足の筋弛緩作用が前面に出てきて、しかっりした歩行で帰宅できなくなります。事実、0.25%マーカイン20ml以上の注入で、膀胱や前立腺の日帰り内視鏡手術を私は行っています。

Caudalxp注射刺入部位は、仙骨正中裂孔を原則とします。仙骨正中裂孔はS4に位置しますが、薬液を10mlも注入すれば、薬液は腰椎4番くらいまでは余裕で上昇しますから、S2~S4がメインの間質性膀胱炎症状には最適です。
【写真】は以前に泌尿器科学会の発表で私が使用したものです。造影剤を少量加えた麻酔薬を10ml注入直後の所見です。仙骨腔は解剖学的に25ml以上の容積がありますが、写真でご覧のようにたった10mlの量でも25mlの仙骨腔を越え、注入直後でも腰椎5番の高さまで麻酔薬は到達します。30分も経過すると麻酔薬は毛細管現象でさらに胸椎の高さまで上昇する場合があるのです。

間質性膀胱炎・慢性前立腺炎は膀胱・前立腺の病気だからTh11~Th12あたりまで効かさなければならないと思いこんでいる泌尿器科医や麻酔科医が存在しますが、間質性膀胱炎症状の根本原因は膀胱三角部であり、S2が主たる神経支配ですから、仙骨神経ブロックで十分なのです。
ただし、経験上、頻尿が30回以上の患者さんの場合、膀胱三角部の神経支配がS2から上位腰椎・胸椎に移動していることがあり、患者さんに応じて判断しなければなりません。

注射注入速度は、1ml毎5秒以上の速度でゆっくり実施します。麻酔薬が10mlですから、50秒以上かけて注入することになります。注入速度を速めれば、麻酔薬が高位の脊髄まで到達できると思われがちです。しかし注入速度を速める(圧力をかける)と、内側・外側仙骨孔の神経分岐部から麻酔薬が漏出して、仙骨腔が麻酔薬で満たされなくなります。この漏出を避けるために、注入圧を入れたり止めたりのポンピング法で注入します。ポンピング間隔は2ml毎です。注入圧をかけ過ぎたり急いだりすると、漏出のために逆に麻酔薬が高位脊髄に上がらなくなるので注意が必要です。

テクニックのある麻酔科医が、左右S2の仙骨孔から選択的にブロックすることがあります。結果として間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状を軽快させることができません。確かにメインの神経支配はS2ですが、実際はそんなに単純ではありません。もっと広範囲の神経に及び複雑であるため、仙骨正中裂孔から仙骨全体に麻酔薬を行き渡らせた方が、手技は容易で明らかに効果的です。

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賛同医師からのメールと手技の説明

今回のテーマは医師向け(医家向け)です。専門用語が出て内容が分かりにくいところがありますが、ご容赦下さい。

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はじめまして、○○県で泌尿器科をしているものです。
先生のホームページをみて、見よう見まねで施行してみました。

やったばっかりですのでまだ効果は聞いておりません。
水圧拡張3回目に追加で三角部切開してみました。
今後も先生の術式を試してみたいと考えております。
正確な術式を教えて頂けるとのことで、メールさせて頂きました。

よろしくお願いします。

○○○○病院 泌尿器科
○○○○
====================================================================
お答えいたします。

術式にご興味いただきありがとうございます。
木曜日・土曜日を除く、午後4時から7時の間にお電話を下さい。
比較的に外来が空いている時間ですから、お話ができると思います。
術中のポイントをお教えします。
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この先生と直接お話ししました。お電話ありがとうございました。
口伝では伝えにくい個所もありますから、ここで細かなテクニックを解説します。

膀胱三角部は解剖学的に膀胱の一部ですが、発生学的には尿管の一部です。ですから膀胱刺激症状といっても、膀胱本来の症状もあれば、膀胱三角部の尿管刺激症状もある訳です。
以前より、膀胱三角部には伸展レセプターが存在し、それが膀胱知覚のセンサーということに生理学的には信じられています。間質性膀胱炎・過活動膀胱などで膀胱が過敏である=膀胱三角部センサーの異常興奮であるにもかかわらず、膀胱水圧拡張術では硬くて伸びにくい膀胱三角部には影響が及ばず、伸びやすくセンサーの少ない膀胱体部のみを膨らませることになるので、一時的に膀胱容量を増やすことができるかも知れませんが、治療効果としては無意味でしょう。膀胱三角部の手術に関しては、慢性前立腺炎のブログの中で詳細に解説しています。このコーナーと合わせて参考にご覧下さい。

しかし、膀胱水圧拡張術が間質性膀胱炎のスタンダードな治療として確立している以上、立場上、私のように自由自在に振舞えない先生にとっては、ひと手間(膀胱三角部減張切開手術)加えることが、現時点では最良の選択だと思います。

以下に、実例を上げ術式について解説します。(手術を行なう泌尿器科医に対しての解説です。したがって手術の写真でご気分が悪くなるような方は、ご覧にならない方がよいでしょう。)
患者さんは63歳のご婦人です。
平成18年12月から日中20回以上の頻尿と夜間7回の頻尿で地元の大学病院を受診、間質性膀胱炎と診断されました。
平成19年7月に尿意が強くなると下腹部の痛みが出現するようになり、地元の病院から東京の私立大学病院を紹介され、その年の11月に膀胱水圧拡張術を受けました。
しかし症状は悪化するばかりで平成20年9月に高橋クリニックを受診しました。

それまで服用していた薬は、IPD・トリプタノール・アタラックス・ロキソニン・ソレトンです。日中の頻尿は60回~70回、夜間は7回の頻尿です。
水分制限(一時期は1日5㍑飲水していたそうです。)を1日1㍑以下にしていただき、エブランチルの服用したところ、うなるような腹痛はおさまりましたが頻尿はそのままで、手術を強く希望されました。
Ic22470f63133d2膀胱出口の側面3D画像です。
上下の膀胱括約筋が正対しなければなりませんが、緑の破線矢印で示すように互いに交差しています。下の膀胱括約筋が尿道側に迷入しているようにも見えます。膀胱三角部と膀胱括約筋との乖離部分が膀胱頚部硬化症の部分になります。
膀胱出口は排尿中の観察ではないにもかかわらず、開いているように見えます。これは、膀胱出口周囲が盛上がった(平滑筋過形成:赤い矢印)ために、見かけ上、開いているように見えるだけです。

Ic22470f63術前の膀胱鏡検査所見です。
お決まりの「点状出血」は膀胱のいたるところに確認できます。

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手術法の伝授

op慢性膀胱炎・間質性膀胱炎症状で苦しまれている患者さんに対して、私が考案した内視鏡手術の方法を伝授します。
診断法・考え方・麻酔法の全てです。料金は無料です。
柔らか頭で常識にとらわれない泌尿器科医の方、遠慮なくお申し込み下さい。学閥や医局は問いません。
高橋クリニックのメール(takahashi.clinic@nifty.com)か、お電話(03-3771-8000/03-3771-8034)でお申し込み下さい。
お待ちしています。

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膀胱頚部硬化症・膀胱出口閉塞症の手術手順#2 膀胱出口6時を切除する理由

以前にご説明したように、膀胱頚部硬化症の手術の時に、膀胱出口の6時の位置を必ず切除します。切除するのには意味があります。膀胱出口を拡大させる意味も当然ありますが、膀胱出口と膀胱三角部を切り離すという意味が重要です。
言葉でいくら説明しても、理解しにくいので、「百聞は一見にしかず」の諺の通り、模式図で説明しましょう。

【正常の膀胱・側面図】
turbncc1
健常のご婦人の場合、膀胱頚部は柔らかく、尿道から膀胱方向を覗くとなだらかな丘のように見えます。膀胱内腔を直視することができます。膀胱頚部の裏に位置する膀胱三角部(赤いだ円部分)はゆるんでいて緊張はしていません。

【膀胱頚部硬化症・膀胱出口閉塞症の側面図】
turbncc2
ところがこのブログで何度も説明している膀胱頚部硬化症の場合は、膀胱頚部が固く盛り上がっていて(黒い三角の部分)、崖のようにせり上がっています。男性の膀胱頚部硬化症で観察できる、いわゆる柵形成(Bar in the sky)の所見です。尿道から膀胱内腔を大きく直視することはできません。膀胱出口の裏に位置する膀胱三角部(赤い台形部分)も固くなり吊り上った状態です。膀胱三角部のこの状態が膀胱刺激症状や関連痛の原因になるのです。

【膀胱出口6時切除の模式図】
turbncc3
膀胱出口の6時の位置を電気メスで切除します。場合によっては、膀胱三角部の一部が切除されても構いません。

【切除直後の模式図】
turbncc4
切除により膀胱出口の緊張が解放され、膀胱頚部はゆるんで平たくなります。膀胱出口全体が拡がります。また、膀胱三角部の緊張も解けゆるみます。ゆるんだ膀胱三角部のお陰で膀胱刺激症状や関連痛が軽減されるのです。膀胱頚部だけの切開では膀胱三角部の緊張がゆるまないので、この手技が必ず必要です。

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膀胱頚部硬化症・膀胱出口閉塞症の内視鏡手術手順

慢性膀胱炎や間質性膀胱炎症状を持った膀胱頚部硬化症患者さんの内視鏡手術の際の手術手順を解説いたしましょう。

【麻酔】
日帰り手術ですから、短時間に手術を行い、手術を終えてからすぐに歩行できるようにしなければ、本当の日帰り手術にはなりません。
実際は、12時(正午)に麻酔を行います。13時に手術を始め14時には手術終了です。1時間ほど休んでいただき、15時30分には帰宅していただいています。
そのためには、仙骨神経ブロックと呼ばれる麻酔j法を利用して手術を行います。麻酔薬は0.5%マーカインと0.25%マーカインの2種類を利用しています。患者さんの身長と性差で薬液量を決めます。
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麻酔薬        0.5%マーカイン  0.25%マーカイン  総量
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身  160cm       10ml         10ml       20ml
   
長  170cm       10ml         15ml       25ml

   180cm        15ml         10ml       25ml 
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脊椎麻酔の場合は、効きがよく、術中全く痛みがないのですが、その反面、手術後数時間は歩行できない、手術後1週間から2週間程度の頭痛がある、麻酔中ショックのリスクがあるなどの弊害があります。
麻酔がよく効いて、手術に全く痛みがないのは喜ばしいのですが、手術後歩けなくなっては日帰り手術ではなくなります。安全と手術後すぐに歩行できることを優先して、仙骨神経ブロックを行なっています。ですから、手術は脊椎麻酔ほどは効き目がある訳ではありません。仙骨神経ブロックでの手術中は、電気メスの感覚ありますが、チクチクという程度です。
caudal-tech手術を受ける患者さんはうつ伏せ(腹仰位になっていただきます。おしりの割れ目の少し上の部分に、仙骨裂孔という隙間があります。そこに24G の針でゆっくりと注射します。

caudal-xp麻酔薬は写真のようにゆっくりと仙骨腔内から脊椎硬膜外腔に拡がって行きます。この写真は麻酔薬10ml注入した直後の映像です。仙骨腔内全体に樹枝状に拡がった薬剤が確認できます。薬剤は腰椎5番の高さまで拡がっています。直後の写真ですが、時間が経過すればさらに上昇していきます。通常さらに4椎体ほど上昇し、腰椎1番から胸椎10番位まで上昇します。膀胱・前立腺の感覚が仙骨2番~4番の高さですから、麻酔領域としては十分な高さになります。

【手術】
tur-bn-f

【解説】
私が行なっている膀胱頚部硬化症の内視鏡手術を簡単に解説します。ただし、図で示しているのは一つの方法です。患者さんの所見により切開の位置・方向・深さ・数は異なります。また、男性の膀胱頚部硬化症も基本的には同じ手順の手術を行ないます。理解を深めるために模式図と実際の手術写真とを一緒にお示ししましょう。
【実例写真】の患者さんは46歳のご婦人です。平成16年9月に風邪を引いてから、排尿障害を感じています。平成17年2月になり残尿感と下腹部痛が出現し高橋クリニックを受診しました。検査で排尿障害と残尿65mlを認めエブランチルで治療を行ないましたが、手術での治療を強く希望しました。
16632f46cc【模式図①】膀胱頚部硬化症を内視鏡で観察した典型的所見です。大きな円は内視鏡検査で観察できる視野の領域です。円の中心の黒い丸が膀胱出口です。直径約2mmです。正常であれば、膀胱出口の黒い丸が直径6mm以上なければなりません。
【実例】直径6mmのループ型電気メスを押し当ててみると膀胱出口が確認できます。電気メスと比較すると膀胱出口が直径3mm前後であることが分かります。

16632f46cc2【模式図②】膀胱出口の6時の位置を電気メスで切除します。この目的は、一つに膀胱出口を広くすることと、二つ目に膀胱出口と膀胱三角部を切り離す二つの意味があります。膀胱出口と膀胱三角部がつながっているので膀胱三角部が硬く過敏になってしまったことが、慢性前立腺炎症状を複雑にしたからです。
【実例】この写真は6時の方向を切除した直後の写真です。切除面が白くハレーションを起こしているのは膀胱出口の平滑筋が露出しているからです。膀胱も含め内臓の筋肉である平滑筋は白いのです。

16632f46cc3【模式図③】開いた膀胱出口の6時の位置を電気メスで縦てに正中切開します。少しでも開きたいのと、通常の切除ですと切り過ぎることがあるからです。
【実例】これは針型電気メスで6時の位置を切開している場面です。膀胱出口(膀胱頚部)の輪状に走行している平滑筋が完全に消失するまで切開を進めます。

16632f46cc4また、6時の切開線は膀胱三角部まで十分に到達するようにします。出来れば交間靭帯を超えて切開します。関連痛や頻尿のある患者さんの場合、外せない重要なテクニックになります。
【実例】これは膀胱三角部を切開している場面です。

16632f46cc6【模式図④】大きく開いた膀胱出口の2時・4時・8時・10時に先ほどと同じく電気メスで斜めに切開を入れます。0時・4時・8時の組合せや2時・10時の組合せなど、患者さんの状況に応じて臨機応変に変化します。
【実例】この写真では、まず8時の方向に切開を入れます。次に、4時の方向に切開を入れます。左右それぞれ少しずつ切開を入れては、膀胱出口全体の緊張を確認します。緊張が取れるまで切開を深くいれます。切開用の電気メスは長さが3mmです。写真では先端の0.5mmの部分で少しずつ切開をしているのが分かりますか?
16632f46cc7【実例】4時と8時の切開を終了した時点で、膀胱出口の緊張が取れたのが観察できます。この時点で、膀胱出口は直径が6mm程度に拡大しています。しかし膀胱出口の上半分はまだ緊張が取れていないので、2時10時の方向を切開します。

16632f46cc5【模式図⑤】カメが逆立ちをした姿に膀胱出口が開きます。手術前の膀胱出口の面積に比べたら4倍以上に開口します。
【実例】この写真は1番目の写真と比較しても膀胱出口の面積は10倍近く拡大しています。膀胱出口の柔らかさと広さの違いが確認できます。直径6mmのループ型電気メスが余裕で挿入できます。尿流の柔らかい空間が完成しました。これで尿はスムースに流れます。膀胱の負荷も取れて難治性の慢性膀胱炎症状も軽快するでしょう。

【模式図⑥】複雑に入れた切開により、膀胱出口は両開きの扉のようになります。ちょうど西部劇の酒場のシーンに登場する扉のようです。閉まる時には細い隙間のようになります。

この一連の手術操作により、硬く閉ざされた膀胱出口は柔らかい柔軟な膀胱出口へと変身するのです。手術するのは工夫の上に工夫が必要になります。私の手術法や治療法は常に発展途上です。いつの日か完成するのでしょうか?オシッコの神様が告げてくれるでしょうか?

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内視鏡手術を受けられる慢性膀胱炎・間質性膀胱炎・神経因性膀胱の患者さんへ

慢性膀胱炎・間質性膀胱炎で内視鏡手術を受けようと決心した患者さんへの注意事項です。
【1】朝食は必ず召し上がって下さい。たくさん食べる必要はありませんが、必ず召し上がって下さい。理由は、脊椎麻酔の合併症であるショックなどの事故をなくすためです。
【2】水分は来院時まで飲まれて結構です。
【3】昼の12時までに来院して下さい。
【4】急用や風邪などの一般病気・生理の際には、お電話で気軽にキャンセルして下さい。無理をしてまで手術する必要はありません。手術のチャンスはお待ちいただければ必ず訪れます。
【5】東京近郊の患者さんの場合は、1日だけ近くのビジネスホテルか、クリニックから車で30分圏内の都内のホテルなどに宿泊の予約をあらかじめお取り下さい。手術当日が一番、術後出血の可能性があるからです。緊急時には来院していただかなければなりません。
【6】北海道・九州・関西・東北などはるかに遠方の患者さんの場合には、一週間ほど都内に連泊していだきます。その手続きをよろしくお願い致します。
【7】手術当日には、インフォームド・コンセントを印刷し、署名をしてご持参下さい。インフォームド・コンセントの署名が出来ない場合には、手術をお引き受けすることは出来ません。未成年の方や大学生の方は、親御さんの署名も必要です。
【8】手術後、採尿バッグを腹部に装着しますから、ゆったりしたズボンや服装で来院して下さい。
【9】手術後、止血と尿路の確保を目的に、膀胱カテーテル(ラテックス製の管)を尿道に留置します。留置期間は通常1日です。出血によって期間が延びることがあります。
【10】手術をしたから直ぐに症状が軽快するものではありません。その点を誤解しないで下さい。症状が経過するまで3ヶ月以上かかることもあります。
【11】手術後は、1週間後・1ヵ月後・2ヵ月後・3ヵ月後と通院していただきます。出血などの緊急時には、その限りではありません。
【12】遠方の方で、手術後出血の止血処置などを必要とする場合には、手術後お渡しする診療情報提供書を地元の泌尿器科医に見せ、適切な処置をしていただいて下さい。
【13】手術の費用は、残念ながら健康保険で認められなくなったので、手術費用20万円になります。

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