カテゴリー「間質性膀胱炎の手術」の記事

ボトックス

B29900de8bbc458ba6e429b07987a145  2007年にボトックス注射の資格を取りました。資格がないとボトックスを購入出来なかったからです。当時は美容整形のシワ取りのための注射でした。それを膀胱や前立腺の治療として利用しました。しかし、ボトックスが高額(10万円)だし、効果が50%だったので、その後は止めました。

 原因不明である過活動膀胱の尿失禁と神経因性膀胱の尿失禁の治療として、ボトックス治療が保険の適応になりました。でも再び行うつもりがなかったのですが、ボトックスの製薬会社のスタッフから、ボトックスの泌尿器科の資格を取って欲しいと積極的に頼まれてしまいました。(笑)

ボトックスは食中毒の原因であるボツリヌス菌の毒素です。この毒素は、神経伝達に必要なアセチルコリンをブロックしてしまいます。その結果、神経コントロールが出来なくなり、筋肉が緊張出来なくなり、麻痺して緩んでしまうのです。このボトックスを膀胱壁の排尿筋の縦走筋・輪状筋に射てば、麻痺して膀胱が収縮できなくなります。さらに、尿意センサーである部分に射てば、尿意の情報が伝達出来なくなるのです。

 そこで、資格を取得するために、現在Webの講演会で勉強しいます。講演内容は私から言えば、私の考えとは多少異なりますが、私が適格に処置できるので、問題ありません。講演内容では、ボトックス注射を膀胱全体に20箇所に射ち、あるいは神経因性膀胱には30箇所に射つとされていました。一般の医師たちは、尿失禁が膀胱の身勝手な収縮で尿失禁すると思っているのです。また尿意感覚が膀胱全体にあるのだと思い込んでいるのです。ですから、過活動膀胱の尿失禁の患者さんは、膀胱全体の粘膜の知覚過敏と、膀胱排尿筋の身勝手な収縮と誤解しているのです。

 膀胱の知覚は、実は膀胱三角部の平滑筋だけなのです。膀胱三角部は膀胱に存在しますが、実は尿管の平滑筋の一部なのです。ですから尿管の感覚なのです。その実例として、尿管結石の患者さんが、尿管の出口付近に落下すると、尿が溜まっていなくても、尿意・頻尿・残尿感になるのです。そして結石が膀胱に落下すると、尿意はなくなるのです。また、立っていたり走ると尿意が強く感じる患者さんが、横になると尿意が無くなります。その理由は、膀胱三角部の位置が膀胱の一番下にあるので、立位・走行時に尿の重さが一番かかるので膀胱全体に尿意が感じ、横になると、重さが分散するので尿意が無くなるのです。

Sphinc9_20200815164901  ですから、ボトックスは膀胱三角部を中心に注射しなければなりません。膀胱粘膜で膀胱三角部が一番厚いので、注射は注意せずに出来ます。膀胱粘膜の他の部分は薄いのです。同じようにボトックスを注射すると、膀胱壁内の膀胱輪状筋と膀胱縦走筋に必ず注射されてしまうので、膀胱が収縮が難しくなります。過活動膀胱も神経因性膀胱も膀胱出口が十分に開かないことが原因なのです。当然ですが、残尿が残るでしょう。

 膀胱全体20か所に注射をしましょうと言う考え方は、過活動膀胱で頻尿の患者さんは、膀胱壁の排尿筋(縦走筋・輪状筋)が収縮傾向にあり膀胱容量が狭くなっているから頻尿になるのだと思い込んでいるのでしょう。そのために膀胱壁の排尿筋をボトックス注射でゆるめるので膀胱容量が広がり、膀胱内圧が低くなり頻尿が改善すると誤解しているのです。ある意味で、間質性膀胱炎の治療である膀胱水圧拡張術を行っているのと同じです。

 そのため膀胱出口の緊張を緩めるために、膀胱出口付近をボスミン注射すると、出口が開きやすくなります。その結果、過活動膀胱・神経因性膀胱も本質的に改善します。膀胱出口が開かない理由を前回解説しました。膀胱括約筋と尿道括約筋とを連結している平滑筋線維がアンバランスになって、理想的に開かないからです。治療として、今まではα1ブロッカー(ユリーフ・シロドシン・ハルナール・タムスロシン)を服用すれば、膀胱括約筋と平滑筋線維の緊張がゆるみ、膀胱出口が開きやすくなるのです。
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/kobore/2020/08/post-2557fb.html


 しかしながら、薬剤でも症状が改善しない患者さんが存在します。オシッコが出にくい、頻尿や痛みが取れない等の症状が続くのです。その理由は、病気が長期間だった為に、❶膀胱括約筋が過剰に肥大、❷周囲が繊維化して硬くなった、❸周囲に知覚センサーができ上がった、❹脊髄神経回路が増強した等です。そのためには、内視鏡手術で膀胱出口付近を切除して、物理学的改善と、知覚センサーを排除すれば良いのです。

 でも手術をされたくないヒトも存在しますし、かなりのご高齢であれば、手術のリスクもあるので私も手術したくありません。そこで、ボスミン注射の誕生で治療が可能かもしれません。排尿のメカニズムを熟知すれば、注射の部位が容易に理解できるでしょう。このイラストが、注射部位を示しています。❶頻尿の知覚センサーは膀胱三角部が主体ですから、膀胱内では膀胱三角部だけに注射します。❷病気の本質は排尿障害ですから、肥大した膀胱括約筋に注射します。❸痛みセンサーは私の経験上、膀胱出口の周囲に存在しますから、膀胱括約筋の注射で軽快します。

944e3648e20e483796ba8e984896bcfc  2007年頃の私は、過活動膀胱の症状の基本は、膀胱三角部の過敏さだけだと思っていましたから、膀胱三角部だけにしかボトックスを注射していませんでした。排尿障害が基本ですから、膀胱括約筋にも注射する必要があったのです。さらに、知覚センサーが膀胱三角部だけではなく、膀胱出口周辺にもあることを体験したので、膀胱出口にも注射の必要があるのだと、今の私は思っています。

保険点数は、9,680点(96,800円、3割負担で28,040円、1割負担で9,680円)です。この金額の中に、7万円のボトックス費用が入っています。それ以外に自費の手術用のコートシートが五千円です。

 

 

 

 

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2回目の膀胱水圧拡張術を躊躇するご婦人

下記の相談コメントがありました。

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はじめまして。45歳、二児の母です。
数年前から内科で自律神経失調症(更年期障害)で漢方薬を長年服用しておりました。
3年程前から頻尿や痛み、尿漏れを経験、昨年春先に決定的人的ストレスから、時々であった筈の頻尿や痛みが継続的、昨年末には夜間も眠れぬ生活がスタートし、今年2月に泌尿器科受診、間質性膀胱炎と診断され、水圧拡張手術を致しました。
が、、、(あ~やっと安眠出来る様になった、、)というのも1ヶ月とは続かず、また元の、乳白色の混じった、そして血尿や、白血球の死骸とも云われるゴミの固まりが出て、非常に痛く、一時間に二三回、手術前より更に尿を貯められず50ccが最大。夜間は一時間~二時間おきに排尿に起きる生活スタイルに、精神的に限界を感じています。(3ヶ月経ちました)
お世話になった泌尿器科の先生から紹介状を依頼し、市民病院へとお世話になるところではありますが、同じく水圧拡張手術を6/8予定。全身麻酔でやりますと云われ、私自身体力がなく虚弱な為に局所麻酔でお願いしましたが、二度目の手術に大変不安と腑に落ちない気持ちで一杯です。
良くするための手術が、まるで逆を行ってる、というのが、私の身体からの感想です。
高橋先生のご説明を拝読させて頂き、非常に納得しており、通院も今心に浮上しております。

何か善きアドバイスを宜しくお願い致します。
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要するに間質性膀胱炎の診断で、治療として膀胱水圧拡張術を実施したが、1か月足らずで、以前よりひどい状態になった。それなのに、医師からは麻酔を部分麻酔→全身麻酔に代えただけの二度目の膀胱水圧拡張術をすすめられているということです。
Suiatutotal
水圧拡張術は、小さく萎縮して過敏になった膀胱を無理やり膨らませて、膀胱の容積を大きくするための治療法です。『膀胱が小さいから大きくするのだ!』と言うつもりで、初められた治療法でしょう。後に、膨らませることで、過敏になった神経や粘膜・線維組織をブッタ斬ると言う理由は、後出しジャンケンのような根拠でしょう。
ところが、水圧拡張術は間質性膀胱炎の病気の本質を理解していないので、この治療をしても、ご相談のご婦人のように1か月も経たないうちに症状が再発するのです。

膀胱の粘膜の中で一番頑丈なのが、膀胱三角部です。そして、膀胱で一番敏感なのが、やはり膀胱三角部なのです。したがって、水圧拡張術で膀胱をいくら膨らませても、「鈍感な」膀胱の大部分(膀胱体部)が膨らんで傷つきますが、「頑丈で敏感な」膀胱三角部は、ビクともしません。それどころか、傷ついた膀胱体部の治癒過程で、所々瘢痕化し、伸び縮みができなくなり、膀胱はさらに縮み小さくなり、逆に膀胱内圧が高くなります。その結果、過敏のままの膀胱三角部に前以上に圧力がかかり、症状が悪化するのです。

過去に間質性膀胱炎で水圧拡張術で治らずに、膀胱全摘出手術を受けた患者さんの報告がありました。膀胱を全て残らず摘出したグループと、膀胱三角部だけ残して膀胱を摘出したグループに分け、治療の効果を比較しました。膀胱三角部を残さなかったグループだけが症状の完全消失を得られました。それを聴いていた聴衆(医師)はただうなずくだけで、私以外に誰一人として疑問を感じていませんでした。……情けない。

治療の最重要ポイントは、いかに上手く膀胱三角部を鎮めるかに掛かっているのです。

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間質性膀胱炎のヘパリン治療

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過去に、間質性膀胱炎の治療法でヘパリン膀胱注入した効果例の報告がありました。

ヘパリンが間質性膀胱炎になぜ?効果があるのか、よく分かりませんが、効き目があるのなら試すべきでしょう。

ヘパリン20,000単位20ml+キシロカイン4%10ml+重そう(商品名メイロン)20ml
の混合液50mlを膀胱内に注入して、1時間後に排尿するというものです。
ヘパリンは、膀胱粘膜を修復する、キシロカインは膀胱粘膜の神経を麻痺させる、重そうはキシロカインが膀胱粘膜に浸みやすくする、と言うものです。あくまでも表向きの理論です。本当かどうか不明です。

【ヘパリン 】★【キシロカイン】★【ヘパリン】
【メイロン】→⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎←【メイロン】
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【膀胱粘膜】【膀胱粘膜】【膀胱粘膜】【膀胱粘膜】

Img_1115なぜなら、間質性膀胱炎の治療法である水圧拡張手術は、無理矢理に膀胱を膨らます方法です。そのような手段をとれば、膀胱粘膜を始め膀胱の壁は、必ず破壊されます。それなのに、同じ医療機関で実施される治療法が、今度は膀胱粘膜を修復する治療を採用するのは、矛盾に満ちていると思えませんか?

膀胱粘膜の傷害が、間質性膀胱炎の原因と思っているのであれば、膀胱水圧拡張手術は行ってはいけません。膀胱の粘膜が過敏になった原因を追求しない現代医療はナンボのものなのでしょうか?

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膀胱水圧拡張手術と膀胱三角部

間質性膀胱炎の治療として膀胱水圧拡張手術があります。
頻尿で苦しむ、敏感で小さく萎縮した膀胱を、水圧で無理矢理風船のように膨らませる治療が膀胱水圧拡張手術です。しかし、この方法は、素人でもチョッと考えれば思い付く短絡的な治療法です。この治療法を行っても効果が継続できるのは、平均で8カ月です。効果が持続しないのは、それなりの理由があるからです。

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膀胱で壁が一番厚くて、一番敏感な部分が膀胱三角部なのです。
この部分の敏感さが、間質性膀胱炎の症状を作っているのです。しかし、膀胱水圧拡張手術で膀胱を膨らませても、厚くなって頑丈な膀胱三角部はビクともしません。その代わり、膀胱水圧拡張手術で傷付いてしまった膀胱の他の部分は萎縮し瘢痕化するために膀胱はさらに小さくなります。その結果、膀胱内圧が高まり膀胱三角部を刺激して、症状は益ます強くなるのです。

間質性膀胱炎お究極の治療法が、膀胱摘出術+人工膀胱増設術です。
2010年の泌尿器科学会で、東京大学の報告で興味深いものがありました。
間質性膀胱炎の患者さんで膀胱全摘出術を実施したのが、4例ありました。その内、2例が膀胱を全て除去して人工膀胱を作った患者さんと、他の2例が、膀胱三角部を残して膀胱を切除して、人工膀胱を三角部に縫合した患者さんでした。膀胱を全て除去した患者さんは、症状が取れましたが、膀胱三角部を残した患者さんは症状が取れなかったという報告です。会場の雰囲気は、『そうか…膀胱は全て切除した方が良いんだ…』という感じでした。私ひとり、『…だったら、膀胱三角部だけ治療すれば良いでしょう…』と思っていました。何故、皆んな気が付かないんだろう?と、悶々としていました。

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膀胱水圧拡張術 3回の結果・・・

九州から来院されたご婦人です。
主訴は1日20回~30回の頻尿と夜間頻尿6回、右下腹部から陰部にかけての痛みです。
7年前に地元の泌尿器科専門病院で、「間質性膀胱炎」と診断を受けました。それまでは膀胱炎の診断でさんざん抗生剤を飲まされ続けました。そして2泊3日で膀胱水圧拡張術を受けました。膀胱容量は650ccでした。
その後、1年は状態が落ち着いていましたが、次第に強くなり半年我慢して2回目の膀胱水圧拡張術を受けました。膀胱容量は550ccでした。その後、半年は落ち着いていましたが、再び症状が強くなり、1年半我慢してついに3回目の膀胱水圧拡張術を受けました。膀胱容量は350ccまで減少し、その後の状態も1ヵ月くらいしか保てなくなりました。3回目の膀胱水圧拡張術の際には、ハンナー潰瘍まで出現し、電気メスで焼灼手術しました。
服用した薬剤は、IPD、ウリトス、ベタニス、エブランチル、柴苓湯、抗うつ剤などありとあらゆる薬を試されています。
膀胱水圧拡張術には見切りをつけ、2年前から知っていた高橋クリニックを訪問したのです。

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BOTOX治療の可能性

Cpmecha1千人以上の慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんを診察・検査・診断・治療・経過観察するうちに、これら病気の病態が少しずつ分かってきました。
イラストで示すように、これら病気の本質は恐らく「膀胱頚部機能不全あるいは機能障害Bladder Neck Dysfunction)でしょう。つまり排尿の際に膀胱出口・膀胱頚部が十分に開かないことにあるのです。
十分に開かなければ、膀胱の収縮力と腹圧で無理に排尿することになります。無理に排尿すれば、膀胱出口・膀胱頚部は必要以上にブルブル振動します。
この振動が数年~十年単位で長期間にわたり繰り返し起きれば、膀胱出口・膀胱頚部は生体反応で硬化してきます。これが超音波エコー検査で診断できる「膀胱頚部硬化症Bladder Neck SclerosisあるいはBladder Neck Contraction)」です。
「硬化」して膀胱出口・膀胱頚部の柔軟性が欠如する訳ですから、尿の出が悪くなるのは当たり前です。これが「排尿障害」として自覚するのです。
膀胱出口・膀胱頚部の硬化は、膀胱三角部にも及びます。膀胱三角部は膀胱の感覚器=センサーとしての役目も担っていますから、硬くなればなるほど振動しやすくなり過敏になります。これが「頻尿・関連痛・自律神経症状」として自覚されるようになります。
また、膀胱出口・膀胱頚部の硬化は、排尿時の振動数を増やすようになります。振動数の増加=エネルギーの増加ですから、敏感になった膀胱三角部は振動エネルギーにますます被曝され、症状は増悪の一途です。

「排尿障害」「頻尿」「関連痛」「自律神経症状」などの症状の程度・組み合わせなどから、診察する医師の判断で患者さんを「慢性前立腺炎」「間質性膀胱炎」「過活動膀胱」「心因性頻尿」「神経因性膀胱」「前立腺肥大症」などと分類・診断されているのに違いありません。(もちろん、あくまでも私の仮説です。)

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初めてのご婦人の膀胱頚部硬化症内視鏡手術

Ic22f12691私が初めてご婦人の膀胱頚部硬化症手術を着手したのは、平成15年7月8日です。患者さんは23歳の若いご婦人でした。
この患者さんは平成14年6月に初めて診察しました。当時22歳です。
3年前の19歳の頃から頻尿で、来院時は1日21回、夜間は起きませんが、就寝前に4回ほどトイレに行きたくなります。1回の排尿量は40ml~240ml、平均で120mlです。
それまでに泌尿器科開業医を2軒、大学病院婦人科を1軒、ウィメンズ・クリニックを1軒受診し、治療を受けていますが、一向に治りません。当時であれば間質性膀胱炎か神経性頻尿と診断されたのでしょう。「過活動膀胱」という病名は一般的ではありませんでした。
当時の私の診断能力も大したことがなく、超音波エコー検査で膀胱粘膜の浮腫らしき状態を確認した程度でした。

Ic22f12691800pse【補足】
過去のデータを現在の私の能力で解析すると、右の注釈のようになります。
今から見れば、明らかに膀胱頚部硬化症です。膀胱三角部が肥厚している訳ですから、頻尿があって当たり前です。その原因は膀胱出口の硬化にあります。しかし、この解析ができるようになったのは、平成19年8月の3D超音波エコー検査を導入し、さらに1年半以上経過した平成21年になってからです。3D画像から2D画像を比較検討した結果、解析できるようになったので、この時点では無理でした。

平成14年7月に仙骨神経ブロックで内視鏡検査を行い、膀胱三角部に血管増生(慢性膀胱炎の所見)と白苔変性(慢性膀胱炎の所見)を認め、さらに肉柱形成(この時点で排尿障害を疑わなければ・・・)が観察できました。
膀胱容量が少ないので、間質性膀胱炎の治療である膀胱水圧拡張術を行い(今では否定的に考えている膀胱水圧拡張術でしたが、当時は私も頻繁に実施していました・・・)、膀胱を600mlまで拡張しました。

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膀胱炎に間違われた「膀胱出口嚢胞」患者さんのその後

Boocyst23216f352d1日10回以上の頻尿(多い時には20回)と尿道の痛みで、内科、腎臓内科、婦人科を受診し、問題が解決しないので4軒目で高橋クリニックを受診した患者さんです。超音波エコー検査で膀胱出口に嚢胞を認めました。ある意味膀胱頚部硬化症による排尿障害です。

Boocyst23216f353d43D画像で膀胱出口近くに嚢胞が明瞭に確認できます。

Boocyst23216f353d23D画像の正面像で見ると、膀胱出口の大部分を占拠しています。

尿流量測定検査で、排尿障害を認めました。これが、患者さんの訴える症状の元凶なのでしょう。ご主人ご家族に相談し、内視鏡手術を決め、本日手術を実施しました。

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間質性膀胱炎の治療 「仙骨神経ブロック」

間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状として辛いのが、1日10回~40回の頻尿といつ起こりか分からない強い痛みです。
排尿障害を治さないことには、これらの症状は治らないと考えていますが、補助治療として仙骨神経ブロックがあります。
Caudaltech本来仙骨神経ブロックは、整形外科領域の坐骨神経痛や椎間板ヘルニアなどの慢性の痛みを軽減する目的で利用されている治療です。

私はこの仙骨神経ブロックを内視鏡手術の麻酔として利用したり、術後の疼痛管理に利用しています。仙骨神経ブロックはペインクリニックでも治療として採用されていますから、間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状が辛い場合にはペインクリニックの麻酔科医に治療をお願いして下さい。

ここで私の仙骨神経ブロックの方法をご披露しましょう。
まず薬剤は、マーカインを使用しています。マーカインは筋弛緩作用が弱く、それでいて間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状である知覚神経の鎮静作用が強く長続きしますから、外来の神経ブロックの薬剤としては重宝します。
0.25%マーカイン5ml注射します。注射後20分ほどで私は患者さんに帰宅していただきます。
1回目で特に副作用が出なければ、2回目からはマーカインの量を徐々に増やします。例えば、
2回目:0.25%マーカイン8ml
3回目:0.25%マーカイン10mlという具合です。
限界12mlが仙骨神経ブロックを外来で行なう限度の量でしょう。これ以上量を多くすると足の筋弛緩作用が前面に出てきて、しかっりした歩行で帰宅できなくなります。事実、0.25%マーカイン20ml以上の注入で、膀胱や前立腺の日帰り内視鏡手術を私は行っています。

Caudalxp注射刺入部位は、仙骨正中裂孔を原則とします。仙骨正中裂孔はS4に位置しますが、薬液を10mlも注入すれば、薬液は腰椎4番くらいまでは余裕で上昇しますから、S2~S4がメインの間質性膀胱炎症状には最適です。
【写真】は以前に泌尿器科学会の発表で私が使用したものです。造影剤を少量加えた麻酔薬を10ml注入直後の所見です。仙骨腔は解剖学的に25ml以上の容積がありますが、写真でご覧のようにたった10mlの量でも25mlの仙骨腔を越え、注入直後でも腰椎5番の高さまで麻酔薬は到達します。30分も経過すると麻酔薬は毛細管現象でさらに胸椎の高さまで上昇する場合があるのです。

間質性膀胱炎・慢性前立腺炎は膀胱・前立腺の病気だからTh11~Th12あたりまで効かさなければならないと思いこんでいる泌尿器科医や麻酔科医が存在しますが、間質性膀胱炎症状の根本原因は膀胱三角部であり、S2が主たる神経支配ですから、仙骨神経ブロックで十分なのです。
ただし、経験上、頻尿が30回以上の患者さんの場合、膀胱三角部の神経支配がS2から上位腰椎・胸椎に移動していることがあり、患者さんに応じて判断しなければなりません。

注射注入速度は、1ml毎5秒以上の速度でゆっくり実施します。麻酔薬が10mlですから、50秒以上かけて注入することになります。注入速度を速めれば、麻酔薬が高位の脊髄まで到達できると思われがちです。しかし注入速度を速める(圧力をかける)と、内側・外側仙骨孔の神経分岐部から麻酔薬が漏出して、仙骨腔が麻酔薬で満たされなくなります。この漏出を避けるために、注入圧を入れたり止めたりのポンピング法で注入します。ポンピング間隔は2ml毎です。注入圧をかけ過ぎたり急いだりすると、漏出のために逆に麻酔薬が高位脊髄に上がらなくなるので注意が必要です。

テクニックのある麻酔科医が、左右S2の仙骨孔から選択的にブロックすることがあります。結果として間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状を軽快させることができません。確かにメインの神経支配はS2ですが、実際はそんなに単純ではありません。もっと広範囲の神経に及び複雑であるため、仙骨正中裂孔から仙骨全体に麻酔薬を行き渡らせた方が、手技は容易で明らかに効果的です。

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賛同医師からのメールと手技の説明

今回のテーマは医師向け(医家向け)です。専門用語が出て内容が分かりにくいところがありますが、ご容赦下さい。

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はじめまして、○○県で泌尿器科をしているものです。
先生のホームページをみて、見よう見まねで施行してみました。

やったばっかりですのでまだ効果は聞いておりません。
水圧拡張3回目に追加で三角部切開してみました。
今後も先生の術式を試してみたいと考えております。
正確な術式を教えて頂けるとのことで、メールさせて頂きました。

よろしくお願いします。

○○○○病院 泌尿器科
○○○○
====================================================================
お答えいたします。

術式にご興味いただきありがとうございます。
木曜日・土曜日を除く、午後4時から7時の間にお電話を下さい。
比較的に外来が空いている時間ですから、お話ができると思います。
術中のポイントをお教えします。
====================================================================
この先生と直接お話ししました。お電話ありがとうございました。
口伝では伝えにくい個所もありますから、ここで細かなテクニックを解説します。

膀胱三角部は解剖学的に膀胱の一部ですが、発生学的には尿管の一部です。ですから膀胱刺激症状といっても、膀胱本来の症状もあれば、膀胱三角部の尿管刺激症状もある訳です。
以前より、膀胱三角部には伸展レセプターが存在し、それが膀胱知覚のセンサーということに生理学的には信じられています。間質性膀胱炎・過活動膀胱などで膀胱が過敏である=膀胱三角部センサーの異常興奮であるにもかかわらず、膀胱水圧拡張術では硬くて伸びにくい膀胱三角部には影響が及ばず、伸びやすくセンサーの少ない膀胱体部のみを膨らませることになるので、一時的に膀胱容量を増やすことができるかも知れませんが、治療効果としては無意味でしょう。膀胱三角部の手術に関しては、慢性前立腺炎のブログの中で詳細に解説しています。このコーナーと合わせて参考にご覧下さい。

しかし、膀胱水圧拡張術が間質性膀胱炎のスタンダードな治療として確立している以上、立場上、私のように自由自在に振舞えない先生にとっては、ひと手間(膀胱三角部減張切開手術)加えることが、現時点では最良の選択だと思います。

以下に、実例を上げ術式について解説します。(手術を行なう泌尿器科医に対しての解説です。したがって手術の写真でご気分が悪くなるような方は、ご覧にならない方がよいでしょう。)
患者さんは63歳のご婦人です。
平成18年12月から日中20回以上の頻尿と夜間7回の頻尿で地元の大学病院を受診、間質性膀胱炎と診断されました。
平成19年7月に尿意が強くなると下腹部の痛みが出現するようになり、地元の病院から東京の私立大学病院を紹介され、その年の11月に膀胱水圧拡張術を受けました。
しかし症状は悪化するばかりで平成20年9月に高橋クリニックを受診しました。

それまで服用していた薬は、IPD・トリプタノール・アタラックス・ロキソニン・ソレトンです。日中の頻尿は60回~70回、夜間は7回の頻尿です。
水分制限(一時期は1日5㍑飲水していたそうです。)を1日1㍑以下にしていただき、エブランチルの服用したところ、うなるような腹痛はおさまりましたが頻尿はそのままで、手術を強く希望されました。
Ic22470f63133d2膀胱出口の側面3D画像です。
上下の膀胱括約筋が正対しなければなりませんが、緑の破線矢印で示すように互いに交差しています。下の膀胱括約筋が尿道側に迷入しているようにも見えます。膀胱三角部と膀胱括約筋との乖離部分が膀胱頚部硬化症の部分になります。
膀胱出口は排尿中の観察ではないにもかかわらず、開いているように見えます。これは、膀胱出口周囲が盛上がった(平滑筋過形成:赤い矢印)ために、見かけ上、開いているように見えるだけです。

Ic22470f63術前の膀胱鏡検査所見です。
お決まりの「点状出血」は膀胱のいたるところに確認できます。

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