カテゴリー「間質性膀胱炎の症状」の記事

いわゆる慢性膀胱炎や間質性膀胱炎の症状の秘密と治療

❶中高年ご婦人が、たまには若いご婦人が、いわゆる「慢性膀胱炎」と診断されて、頻尿や残尿感などの症状以外の訴え、例えば、膀胱の痛みや膣の痛み・痒みを訴えても、主治医に理解してもらえず、「気のせい」「精神的」と診断されてしまいます。その上、尿検査で異常がないと、症状のすべてを「気のせい」と診断されてしまいます。

❷まず、初診の尿検査で異常があった時の症状は認めておいて、治療後、尿検査が正常になった時に治らない症状は認めないという愚行・愚考は、医師としてとても恥ずかしい行為です。初診の時点で、尿検査の異常を病気の原因とした診断が誤診だったということです。

❸一般の泌尿器科医師が、慢性膀胱炎や間質性膀胱炎の原因を排尿障害と認識していないところに、誤診のつまずきがあるのです。その根底には、男性のように前立腺がないので、ご婦人には排尿障害がないという誤解があるからです。その他に、過活動膀胱、心因性頻尿、膀胱疼痛症、慢性骨盤内うっ血疼痛症候群も、この範疇の病気です。

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排尿障害の症状 「膣の痒み」

ご紹介するのは、20歳代のご婦人です。
平成23年6月頃にクラミジア感染症で治療を受けました。その後、なぜか膣が痒くなり始めたのです。1日中膣が痒くて仕方がありません。地元の婦人科を受診して、検査を受けるのですが、クラミジアは治っている、カンジダ性膣炎でもありませんでした。
インターネットで検索して、性行為感染症の治療でも有名?な高橋クリニックが見つかり、私のクリニックに来院されました。
患者さんのこの経緯をお聞きして、私は排尿障害がイメージしました。早速、超音波エコー検査と尿流量測定検査(ウロフロメトリー)を実施しました。
Kayumi27264f膀胱出口が膀胱側に突出しています。
膀胱括約筋は膀胱出口の方向とは異なる方角に向いています。膀胱三角部も肥厚しており、一般的に頻尿の患者さんの所見です。しかし、この患者さんの排尿回数は1日6回で頻尿はありません。所見と症状が一致しない場合、膀胱三角部で作られる情報は、違う形で表現されることになります。恐らく、それが膣の痒みとなってこの患者さんを苦しめているのでしょう。

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性器ヘルペスと勘違いされた陰部の痛み

患者さんは30歳代のご婦人です。
以前から陰部のピリピリした痛みが続くので、地元の医師に診てもらっていました。しかし診断と治療が二転三転するので心配になり高橋クリニックを訪れました。高橋クリニックが6軒目の医療機関になります。

患者さんの経過は次の通りです。
機会があり、とある男性と性交渉を持ちました。その後数日してから「オリモノ」の状態が変化したので、地元の婦人科を受診しました。カンジダ性膣炎あるいは細菌性膣炎を疑われ検査をしましたが特に異常は認めませんでした。
しかし、「オリモノ」の状態が思わしくないので、再度婦人科を受診しました。その際に器具を使って膣内を検査をしましたが、器具を外す時に膣の右下がはさまれてしまい、痛かったそうです。
その後、このはさまれた部分の痛みが取れずに、時々ピリピリ痛むのが続くので、段々心配になってきました。
血液検査も含めて、性器ヘルペス検査を行いましたが、異常は認めません。主治医は尖圭コンジローマの疑いがあると診断し、ベセルナクリームを処方しましたが、患者さんは、なお一層心配になり、高橋クリニックを訪れたのでした。

患者さんを実際に拝見すると、痛みのある部分にヘルペスなどの病的異常所見は認めません。また、尖圭コンジローマと診断された部分は膣前庭乳頭症で病気ではありません。生理的な現象です。ですからベセルナクリームをつけてはいけません。

では、この患者さんの痛み症状は、何が原因なのでしょう。
Herpesbns25266f30性行為感染症・性病とは、全く無関係の病気で間質性膀胱炎という病気があります。
その病気は頻尿症状の他に、下腹部痛や陰部の痛みが出ることがあります。患者さんの中には頻尿症状がなく、痛み症状だけに人もいます。この患者さんも恐らくそうだろうと考えて、まずは超音波エコー検査を行いました。
やはり異常がありました。膀胱出口が膀胱内に突出し、膀胱三角部が肥厚し、膀胱括約筋の走向異常も認めます。

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間質性膀胱炎症状スコア

Icss間質性膀胱炎や過活動膀胱、慢性膀胱炎の患者さんの症状を客観的に判断したり、治療経過の症状の比較するのに、完璧に表現できる問診表はありません。
しかし、間質性膀胱炎症状で苦しんでいる患者さんの症状を客観的にカルテに記載しない訳にはいきません。
頭脳明晰な専門の医師たちが、あれやこれやと議論して作成した割には、今ひとつの感がします。

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主要下部尿路症スコア(Core LUTS Score CLSS)

第11回TEUS(東京エキスパート泌尿器科セミナー)に11月16日(月)に参加しました。東京大学泌尿器科関連の勉強会らしいのですが、グラクソ・スミスクライン株式会社が新発売したアボルブを記念に招待されて参加しました。
講演が2つあり、その中でCLSS・主要下部尿路症状スコアの話がありました。
Clss700
前立腺肥大症・慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の症状を客観的に評価することは難しいのです。
例えば、国際前立腺症状スコア(IPSS)は、排尿障害についての症状を客観的に評価することは可能ですが、痛み症状や陰嚢掻痒症などの症状をとらえることはできません。
慢性前立腺炎の痛み症状が強い患者さんには、IPSSは全く意味がありません。
そこで考案されたのが、上記の主要下部尿路症状スコア(Core LUTS Score CLSS)です。
このスコアを評価すれば下部尿路症状のある前立腺肥大症・慢性前立腺炎・間質性膀胱炎・慢性膀胱炎などあらゆる患者さんの評価が可能です。しかし、いかんせん日本発信の評価法なので、国際的に評価されるかどうかは今後の課題でしょう。

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間質性膀胱炎の症状 「足の冷え」

Ic23867f51asi間質性膀胱炎の患者さんに多くみられる症状の一つに「足の冷え」というのがあります。
右の写真は、頻尿1日50回と陰部全体の持続性の痛みで、高橋クリニックを受診した50歳代の素敵なご婦人の治療後の足です。
エブランチルの投与で頻尿は50回→20回に、陰部の痛みは面積が10円玉くらいの大きさに改善しましたが、ビールを思う存分飲みたいということで、内視鏡手術を希望された患者さんです。
手術後症状は不安定であるにもかかわらず、頻尿は15回に、陰部の痛みは消失しました。治療前にはお聞きしていなかった、両足の裏に氷をベタッと貼りつけたような足の辛い冷えが、全く消失したそうです。これがその改善した足の裏です。

「頻尿・痛み」というのはよく知られた間質性膀胱炎の症状ですが、「足の冷え」を代表とする「冷え症」を持っている方も多くいます。
「冷え症」あるいは「冷え性」は、漢方の世界でも代表的な症状のひとつです。漢方では、その原因を「虚症きょしょう」として捉え、「気」が足りない状態「気虚ききょ」を意味します。

西洋医学的考えでは、「気」は存在しません。実際には存在するのかも知れませんが、現代医学では証明できるエネルギーや物質ではありません。では、「冷え症」をどのように考えれば納得ができるのでしょうか。

生理学的に考察しましょう。
冷たい感覚は、知覚神経(感覚神経)の冷覚が刺激されているに他なりません。実際に患者さんの足の冷えを訴える足を触れると、冷たく感じる場合が多いようです。「・・・多いようです」というのは、冷たくない場合もあるからです。

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マラソンとトイレ

高橋先生

はじめまして。
初めて相談いたします。品川区在住の〇〇〇〇と申します。35歳女性です。

膀胱の違和感で悩んでおります。違和感を感じるようになったのでは、今年の6月くらいです。
マラソンを趣味でやっておりまして、月に300~400キロ走る、趣味にしてはちょっとやりすぎ感のあるランナーです。

6月くらいに、走っていて、「さっきもトイレに行ったのに、もうまた行きたくなってきた」と感じるようになったのがことの始まりです。その時は、走ってると膀胱が圧迫された感じでかなり尿がたまってる感じがしたのですが、実際にトイレへ行ってみると、そんなたいした量は出ませんでした。

その日から、日によるのですが、やはり走っているとそんなにたまってはいないのに、尿がたまって膀胱が圧迫される感じがするのです。信号待ちなどで足を止めると、「あれ?全然トイレなんか行きたくないのに何で?」という感じで、その不快感は、走っている時のみに感じるもので、通常の日常生活でもほとんど気にならないのです。
そして、6月に始まったその不快感は、7月8月と月日が経つごとに気にならないようになるどころか重くなってきました。

そして、9月に近所の泌尿器科に受信し尿検査をしてもらったら、やはりちょっと菌がでているので軽い膀胱炎だということで、症状の感じは過活動性膀胱の可能性が高いが、まずは抗生物質で治療して、菌をなくした状態にしてから、過活動性膀胱の治療を始めるということになりました。

その後、一週間抗生物質を飲み、菌が無くなた状態で、過活動性膀胱の薬であるステーブラを二週間飲んでみましたが、あまり良くならなかったので、次にベシケアを飲んでみました。ただ、ベシケアは飲んで3日ほどで、今まで以上に膀胱が張った感じがしてきたので、すぐに中止し、ステーブラをそれから1週間くらい飲んでいるのですが、やはりあまり良くなる感じがしてこないので、自らの判断で飲むのを止めています。

ここ2~3週間これらの抗コリン剤を飲んでみましたが、どうも効いてくる感じが私にはしません。
効いてくるどころか、昨日は、マラソン中に膀胱の張りが痛くて、全く走れなくなってしまい(振動が少ない歩行は可能でした)六本木の方から歩いて帰って来るはめになっていまいました。ステーブラの服用を止めた直接のきっかけはこの昨日の膀胱の痛みがあったからです。

近所の泌尿器科医は、私の症状を聞いて、過活動性膀胱が一番あてはまっていて、間質性膀胱炎の可能性は低いと言っておりますが、私自信は、症状が一番あてはまっていると感じる間質性膀胱炎なのではないかと疑っております。

一回の尿の量は、長時間我慢した時などは、200cc以上です。日中の通常の尿意の際には100~150ccのことが多いです。婦人科系の病気もあり得るということなので、明日、近所の婦人科に症状を話して、該当する検査を受けて来ようと思っています。

高橋先生にも是非、診察していただきたのですが、今週の土曜日は第一土曜ですので、9時~10時まで初診を受け付けていただけるのでしょうか?

12月6日に、この一年間ずっと照準を合わせてきた那覇マラソンがあります。なんとしてでも、今回出場し、自分の目標タイムを出したいと思っておりますので、それまでに何とか病名がはっきりすればと思っております。

お忙しいいところ長々と申し訳ありません。
可能であれば、土曜日先生のところに伺いたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

〇〇〇〇

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
患者さんは後日、当院を受診され、排尿障害が発見されて治療を始めました。

その甲斐あってか、あるいは患者さんの努力の甲斐があってか、那覇マラソンで3時間37分という好タイムを出されました。
以前であれば1時間に3回~4回トイレタイムが必要だったのですが、今回のマラソンではトイレタイムは2回で済んだそうです。トイレタイムがなければ30分を切ったと悔しがっておられました。

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舌痛症glossodyniaと間質性膀胱炎

舌が痛くなる病気で、舌痛症glossodyniaという病気があります。原因は不明です。

その病気の概要は次のようです。
・歯科心身症の代表的疾患である。
・患者の65%が口腔乾燥感(ドライマウス)を伴う。
・口渇の副作用を持つ抗うつ薬が有効であり、口腔乾燥感は改善するという逆説的な現象がみられる。
・口渇感は脱水による血漿浸透圧の上昇を視床下部の受容器が反応して起きる。自覚症状と局所所見の乖離(かいり)は、視床下部より上位中枢での情報処理プロセスの障害を示唆。
・本症の病態は、口腔固有感覚の障害が中心で、神経伝達物質や受容体の生化学的異常、思考・判断、記憶との照合などの高次脳機能(連合野機能)の障害という2つの側面がある。

サッと読んで、パッと理解できないでしょう?私もそうです。
要するに、視床下部高位の中枢神経と舌の下位末梢神経の混乱や異常でおきる錯覚症状でしょうということです。

当院では、間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の患者さんで排尿障害を目標に治療します。たまたま舌痛症を以前から持っている患者さんには、必ず症状の軽快・消失という嬉しいおまけ的な効果が認められます。
その効果から、舌痛症は間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の排尿障害による関連痛であることが想像できます。

Tanguepain関連痛でおなじみの図式です。(男女共通の説明図です。ご婦人の場合、図の中の前立腺がないだけです。)
膀胱・前立腺からの情報は、脊髄の中を上向しながら脳に到達します。その間に余分な神経の枝を出し、尿路の感覚とは全く関係ない神経と連絡することがあります。その無関係な神経が痛みの感覚神経であれば、それが関連痛になります。
延髄レベルで舌の感覚神経に連絡すると、舌痛症になるのです。

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慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の症状分析

慢性膀胱炎の症状に関して、初めの頃に説明していますが、観点を変えて、改めて説明しましょう。
慢性膀胱炎の症状は大きく分けて、4つに分類することができます。
【1】排尿の症状:
例えば、頻尿・残尿感・排尿困難・切れの悪さ・しみ出し・尿漏れなど
【2】下半身の症状:
例えば、会陰部痛・尿道痛・尿道のかゆみ・尿道のシビレ・陰部のかゆみ・膣の痛み・肛門痛・恥骨部痛・下腹部痛・太もものシビレ・足の裏痛・腰痛など(シビレ・かゆみ=軽微な痛みとして考えます)
【3】上半身の症状:
例えば、手のシビレ・首の痛み・舌の痛み・胸の痛みなど
【4】痛み以外のエッと驚くワープした症状:
腎盂腎炎・尿臭・体臭・蕁麻疹・アトピー性皮膚炎・濡れない尿漏れ・全身倦怠・下痢・便秘など

Kanrentuzu
私の自作の模式図を図中の番号を示しながら説明しましょう。(基本的には男女同じ現象なので、前立腺が描かれていますが、間違いではありません。)

【1】排尿の症状:
排尿と密接に関係しているように思われる症状は、
①排尿障害から被害を被った膀胱の直接症状と
⑥排尿障害そのものの症状の組合せです。
残尿感や頻尿症状は、膀胱三角部が受けた情報を脊髄を介して脳に伝える本来の正規ルート①(赤い太い矢印線)の感覚です。この症状だけでしたら、膀胱の病気だと容易に理解できます。
尿の切れが悪かったり、下着に尿のシミが付いたり、排尿の出が悪かったりするのは、明らかな排尿障害の症状⑥です。私が慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の原因が排尿障害だという事実を容易に理解していただける症状です。

【2】下半身の症状:
②膀胱を直接支配する脊髄レベルの関連痛と
⑤同じ脊髄レベル支配の自律神経症状です。
何らかの原因で(先天性にこのルートが弱かったりなどで)正規ルート①に充分情報が伝達されないと、脊髄の処理能力を上回った、あふれた情報エネルギーがわき道ルート②へ流れ出てしまいます。それが、一次(固有)関連痛になります。わき道ルート②が足の裏の神経であれば、足の裏の痛みとして錯覚(破線矢印)しますし、陰部の神経であれば、陰部の痛みとして錯覚するのです。
脊髄の神経配分・分布は人によって様々ですから、一次関連痛が、肛門痛・会陰部痛・太もものシビレ・陰部のかゆみ(男性の慢性前立腺炎症状を参照)など様々な症状になります。下半身の感覚でしたら何でもありの状態です。したがって一つ一つの感覚の違いに特に深い意味はありません。また、左右どちらでも構わないのです。
実際に来院された患者さんの統計では、一番多いのが下腹部痛です。次に陰部痛・尿道痛・恥骨部痛がほぼ同数です。
生理学的には、かゆみもシビレも痛みの範疇の感覚ですから、区別はしません。
あふれた情報エネルギーが漏れ出てしまうルートが、わき道ルート②のような感覚伝達路でない場合もあります。それが、自律神経自律神経わき道ルート⑤です。下半身の自律神経、交感神経・副交感神経に情報エネルギーが流出するのです。すると、自律神経は伝えられた情報を何の疑いもなく、そのまま受け取るので、環境や状況にそぐわない自律神経症状を発現するのです。周囲は暑いのに足元が寒かったり、逆に周囲は寒いのに足が火照ったりするのです。大腸なども自律神経支配ですから、下痢や便秘などの不規則な便通になります。慢性前立腺炎の患者さんに過敏性腸炎や潰瘍性大腸炎が比較的に多いのも理解できます。

【3】上半身の症状:
③頚椎・胸椎・腰椎の高位の脊髄レベルの関連痛と
④高位の脊髄レベル支配の自律神経症状です。
51_1膀胱直接支配の仙骨部脊髄の高さでニューロン(神経単位)をいったん変えて、次の脊髄上向性のニューロンにバトンタッチします。そして、そのまま1本の線維(ニューロン)で脳までひたすら走って行くのがほとんど(恐らく80%の確率で)です。しかし、中には(20%の確率で)、頚椎・胸椎・腰椎などの仙骨よりも高位の脊髄レベルで、ニューロンを再び(三度以上?)変えてバトンタッチをする場合があります。
Synapseニューロンがバトンタッチする場合には、生理学用語でシナプス結合を形成します。シナプス結合とは、直接つながっている結合ではなく、ニューロンとニューロンの間にわずかな隙間があります。情報を渡し手のニューロンの末端では、伝達された電気エネルギーで化学物質を分泌します。この化学物質がわずかな隙間を移動して受け取り手のニューロンに届くと、電気エネルギーに変換されて受け取り手のニューロンに情報が再び流れていく仕組みです。
情報エネルギーが多くなるということは、この化学物質も大量に分泌されるということです。あふれた化学物質は近隣の膀胱とは全く無縁の他のニューロンに流れます。これがわき道ルート③です。わき道ルート③が感覚伝達路であれば、二次関連痛になるのです。手の感覚路であれば、手にシビレになりますし、首の感覚路であれば、首の痛みになるのです。
今回は、シナプス結合の化学物質についてだけ言及しましたが、実は生体では必要に応じてシナプスを新しく形成することが知られています。私たち臨床医が考えてる以上に、シナプス結合はダイナミックに接合したり解除したりしているのかも知れません。慢性の繰返しの膀胱からの刺激が、化学物質の大量分泌を促し、さらに化学物質が新たなシナプス形成を促進させている(文献的根拠はありませんが)のかも知れません。そう考えなければ、慢性前立腺炎のこんなにも多彩な症状を説明できません。説明できないので、安易に「気のせい」と誤診するのでしょう。
もしも、これをお読みになっている慢性膀胱炎・間質性膀胱炎患者さんで、主治医に「症状は気のせいだ!」と断定されている状況に置かれている方がおられれば、このブログを印刷して、主治医に読んでいただいて下さい。きっと理解してくれるでしょう。
さて、近隣のニューロンが自律神経であれば、自律神経わき道ルート④の症状が発現します。胸椎・腰椎の高さの自律神経は、発生学的に下半身の自律神経よりも発達していて、全身に多大な影響を与えます。特に消化器系を完全に掌握しているので、慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の患者さんは食欲低下や消化不良顔望(私見)になります。そして自律神経症状ばかりでなく、免疫システムの臓器・腺組織にも強い影響力があるので、蕁麻疹やアトピー皮膚炎などの症状・病気と深い係わり合いが出てくるのです。

【4】痛み以外のエッと驚くワープした症状:
例えば、尿臭や体臭を訴える慢性膀胱炎の患者さんが臨床現場では比較的多くおられます。もしも嗅覚が正常で本当に尿臭や体臭が強く発散しているのであれば、このような訴えはない筈です。
なぜなら、本来嗅覚は強い臭いに対して、すぐに順応するため感覚が麻痺できるようになっています。もしも貴方がトイレで大便をしている時に、始めは「臭いな!」と感じていても、トイレから出る頃にはほとんど悪臭を感じていない筈です。これが「嗅覚の順応」という生理現象です。ところが、大便よりも臭くない尿臭が、いつまでも気になるというのは、嗅覚順応が働かない、すなわち偽りの感覚=錯覚だという証明に他なりません。
この現象は、パブロフの犬の実験で有名な条件反射の高等版と云えるでしょう。パブロフの犬の実験では、犬の食事の時にベルを鳴らし続けると、ベルを鳴らすだけで犬の唾液分泌量が顕著に増加するという実験です。「ベルの音―食事の時間」を慢性的に繰返す内に、「ベルの音=食事中=消化器機能促進」という条件反射の神経回路が形成されたのです。神経回路が形成されたということは、「ベルの音=聴覚神経中枢」と「消化機能促進=自律神経中枢」の間で神経的連絡、すなわち新たなシナプス形成がされたということです。我々日本人が梅干を見ると唾液が出るのと同じ現象を小難しく分析しただけです。
排尿時に、尿の音を聴覚で感じ、尿の臭いを嗅覚で感じながら、また排尿後に水で手を洗い皮膚の冷覚を感じ、毎日何十年も同じことを繰り返し行なっていると、「水の音=尿の音=排尿」・「尿の臭い=排尿」「水の冷たさ=排尿」という条件反射が確立します。この条件反射は健康な時点では、発現することはない、隠れた条件反射です。ところが、私が提唱する慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の考え方のように、隠れ排尿障害があると、全身の感覚が「おしっこモード」にスウィッチされてしまいます。そうなると、手を水で洗っただけで尿意を感じたり、シャワーの音で尿を漏らしたり、24時間尿臭で悩まされたりするようになるのです。
実際に濡れていないリアルな尿漏れ感覚も隠れた条件反射の発現か関連痛でしょう。患者さんにインタビューすると、突然に尿が太ももの内側をたれて足元まで流れて行く感覚を感じます。あわてて拭こうとすると、実際には濡れていないのだそうです。とてもリアルな感覚なので漏れているとしか思えないそうです。
この症状は、複数の種類の違う感覚がグループとしてまとまり、一つの意味ある感覚(尿が漏れて内ももを伝わって行く)として刺激された神経回路症状です。

【補 足】
一見、支離滅裂に思われがちな慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の多彩な症状も、一つ一つ系統立てて考えれば、決して理解できない症状ではありません。ただ、症状の根拠が理解できたから、即、治せるということではありませんから念のため。ひとたび形成されたシナプスを含めた複雑な神経回路の連鎖を消去したり、リセットするのは困難を極めることは想像できるでしょう。
私の治療は、排尿障害の治療と過敏になった膀胱三角部の治療の2本立てです。その治療として、薬の服用と内視鏡手術があります。しかし、経過が長く、あるいは患者さんの体質によって、神経回路の連鎖が容易にほどけない方もおられます。そういう患者さんをどのように効果的に治療していくかが、今後の問題です。
さて、ここに掲載した内容は、決して最新医学の高度な内容ではありません。30年以上も前の私が医学部3年の時に習得するべき生理学の教科書の知識を、臨床に即して配置しただけです。生理学の内容としても低レベルの知識です。いかに臨床現場の医師が生理学などの基礎医学を無視して臨床に当っているかが想像できるでしょう。そうでなければ、安易に「気のせい」などと口にできないはずです。
慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の多彩な症状の根拠である神経回路連鎖の発信源は、膀胱三角部の過剰反応です。これをお読みになって気が付かれた方もおられると思いますが、この神経回路連鎖の発信源は何も膀胱三角部でなくてもいい訳です。他の臓器でも発信源になりうる訳です。現在、原因不明とされている様々病気は、慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の神経回路連鎖と同じような病理システムの可能性があるのかも知れません。

【反 響】
高橋先生 メールにて失礼します。
そちらに通院させていただいております○○○○です。m(. .)m
(症状:骨盤&恥骨部痛・関連痛全身・排尿痛・排尿困難)
先生の間質のブログの今日アップされた説明の関連痛などの症状が本当に自分と同じすぎてビックリしました!

先週処方していただいたエブランチルなのですが最初2日間飲んで2日間とも、飲んで2時間後に動悸がしんどかったので今は半分にして飲んでいます。(半分だと動悸はないです)尿の出は良くなっているのかどうか まだ良くわかりません><

関連痛(全身)は毎日あって それだけでも鬱になりそうなのですが最近、蕁麻疹の症状も頻繁に出て来て精神的にもしんどくなってきました

このままでは辛すぎるので、高橋先生にやはり手術をしていただこうかと考えているのですが、一人暮らしな為、入院がない事に少々不安です;;

そこで質問させてください><
1.一人暮らしでも日帰り手術受けた方っていらっしゃるのでしょうか?
2.手術後、仕事はどれくらい休んだ方が良いのでしょうか
3.今から予約をさせて頂くと手術はだいたいいつ頃になりますか?

お手数お掛けしますがご回答何卒よろしくお願い致します><、
○○○○

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マスト細胞(肥満細胞)の存在意義

間質性膀胱炎の特徴的な組織像で、マスト細胞の存在が上げられます。
mast-cellマスト細胞は肥満細胞と呼ばれるアレルギー反応に重要な役目を担っているとされる細胞ですが、未だにその全てが解明されている訳ではありません。細胞の表面に無数のレセプターがあり、IgE抗体に強く反する構造になっています。
ic-mosikiマスト細胞がアレルギー反応に関与していることから、マスト細胞の存在が多い間質性膀胱炎は、アレルギー性疾患と推測されていると思われます。この考えは、間質性膀胱炎の専門家の間ではとても有力視されています。

MastMBP82Vマスト細胞は、皮膚や粘膜などに広く存在し、その数、実に10の12乗個、約1兆個という膨大な数です。また、自己増殖能力があり、必要に応じて骨髄から供給を受けているとされています。しかし、非日常的なアレルギー反応のためだけに1兆個もの数が必要だろうか?という疑問も専門家の間に起こっています。
今までは、【マスト細胞の働き=アレルギー反応】
と思われていましたが、実は、【マスト細胞の働き≒アレルギー反応】
だろうというのです。
【=】も【≒】も大差ないとお思いでしょう?実は大有りなのです。マスト細胞がアレルギー反応にしか関与していないと思われていたのが、実は他の生理現象にも関与していたとなると、間質性膀胱炎がアレルギー反応であるという根拠が薄らぐのです。

●マスト細胞が分泌する物質には次のようなものが上げられます。
1.ヒスタミン
アレルギー反応に関与する代表的刺激成分。血管透過性を高め、いろいろな血液中の成分を漏れ出させる作用があります。風邪薬にはヒスタミンの作用を抑える抗ヒスタミン剤が一般的に含まれています。また膀胱などの内臓の平滑筋を収縮させる作用もあります。
2.ヘパリン
血液をサラサラにする成分。赤血球・白血球やリンパ球が血小板の作用で固まらないようにしています。血液透析の際に、血液が固まらないように回路の中に注入される薬剤として有名。
3.プロスタグランディン
炎症物質としては有名な成分。血管拡張作用と赤血球柔軟作用があります。消炎鎮痛剤は、この成分を抑制する働きで、痛みを抑えます。消炎鎮痛剤で急性胃炎や胃潰瘍の副作用が有名ですが、プロスタグランディンの働きを抑えることで毛細血管の流れを悪くして胃粘膜細胞の血液栄養供給が低下するからです。
4.サイトカイン
アレルギー反応や免疫システムに関与する様々な細胞(リンパ球)の働きの強さと期間を調節し、情報交換を媒介するための成分です。物質的には、ホルモン様低分子タンパク質です。
IL(インターロイキン)-3:造血前駆細胞の促進
IL-4:B細胞の活性化
IL-5:B細胞の分化増殖、好酸球の分化増殖
IL-6:B細胞の分化増殖、発熱
IL-10:マクロファージ活性の抑制
IL-13:B細胞の分化増殖
I-309:好中球・マクロファージ・血管平滑筋細胞の遊走と活性化
GM-CSF(マクロファージコロニー刺激因子) 
TNF-α(腫瘍壊死因子):好中球遊走、細胞接着因子活性化
5.ケモカイン
白血球やリンパ球の遊走を促す作用のある成分がケモカインと呼ばれ、サイトカインに分類される場合もあります。
CXCL-8(旧名IL-8):好中球遊走・活性化

ab2_01これだけ複雑な成分を分泌するマスト細胞が、蕁麻疹などの非日常のアレルギー反応のためだけに体の中に約1兆個も待ち構えていると考えるのに無理があると思えませんか?何の疑問を持たずにバカの一つ覚えのように【マスト細胞=アレルギー反応】という思考の医師がとても滑稽に思えて仕方がありません。

mastこの複雑な成分を分泌するマスト細胞は、非日常的な蕁麻疹などのアレルギー反応ばかりでなく、体の粘膜・皮膚の感染防御や線維化などの日常的な生体反応・生活反応にも関与していることがだんだん分かってきました。マスト細胞は、アレルギー物質に限らず、細菌や物理的刺激に対しても反応するらしいのです。つまり、様々な生体反応に対応する増幅装置としての役目を担っているのでしょう。簡単に言えば、チョッとした事件でも大騒ぎする「お騒がせさん」的な存在なのかも知れません。
マスト細胞がアレルギー反応に関与しているのは、マスト細胞の一面でしかないのかも知れません。もっと多方面の様々な顔(怪人二十面相のように)を持っているのに、今の生命科学では分からないだけです。その中途半端な根拠の上に立っているが間質性膀胱炎です。
私が研修医の頃(26年前)から、間質性膀胱炎は原因不明のアレルギー疾患という認識でした。26年以上も前からアレルギー疾患と思われていて、未だに明確な病態と治療が完成しない病気が存在すること自体、不思議でしょう?恐らくは、その認識が間違っているとしか考えられません。昔から(現在もそうですが)、原因不明の病気が出現すると、その病気は、自己免疫疾患・アレルギー・未知の病原体へと専門家の意思が安易に向かう傾向にあります。思考の呪縛のようなものです。

ここまで知ると、間質性膀胱炎が原因不明のアレルギー疾患という常識に、チョッと疑問を感じませんか?
【マスト細胞の存在=アレルギー】という思い込みが、【間質性膀胱炎=アレルギー】という間違った認識を作っているのかも知れません。アレルギー疾患として捉えているから、アレルゲンを含んだ食事制限を患者さんに強いるのはナンセンスでは?と思ってしまいます。
IPDなどの抗アレルギー剤が、間質性膀胱炎の治療薬として効果があるからアレルギー疾患だというのも疑問です。マスト細胞が関与していて、抗アレルギー剤が効くのは当たり前だからです。

●マスト細胞の分泌成分で間質性膀胱炎の症状を和らげる対症療法が見えてきます。
IPD
間質性膀胱炎の患者さんに頻繁に処方される抗アレルギー剤です。IPDにはIgE抗体・IL-4・IL-5産生抑制作用があります。マスト細胞を刺激するIgE抗体とマスト細胞が分泌するサイトカインを抑制しますから、効果があるのでしょう。
消炎鎮痛剤
ロキソニンを始めとする消炎鎮痛剤が頻尿を抑える作用があるのは有名です。消炎鎮痛剤は、マスト細胞が産生するプロスタグランディンを抑制するので効くのでしょう。
抗ヒスタミン剤
感冒薬として処方されるポララミンやセレスタミンなどの抗ヒスタミン剤は、マスト細胞の産生するヒスタミンを阻止しますから効くのでしょう。
ヘパリン
赤血球・白血球などの血液中の血球成分を凝固から守り、粘膜下組織中で自由に暴れ回れるようしてくれるのが、ヘパリンの作用です。しかし、この作用は炎症反応の初期の反応ですから、慢性期の反応を抑制してくれます。膀胱内ヘパリン注入が効果があるのは、この作用のお陰でしょう。

【参考文献】
間質性膀胱炎 日本間質性膀胱炎研究会編 医学図書出版㈱
わかりやすい免疫疾患 p63-68 日本医師会雑誌特別号(1)
サイトカイン・増殖因子 用語ライブラリー 羊土社
Molecular Medicine 2005 10 マスト細胞とアレルギー 中山書店
http://www.tmin.ac.jp/medical/06/immune3.html
http://www.live-net.co.jp/livenet/listhtml/Medical/MCE1.html
http://www.nch.go.jp/imal/TOPICS/MBP.htm
http://allabout.co.jp/health/atopy/closeup/CU20050330A/
http://homepage3.nifty.com/vet/CONTENTS/saibousin/yougosyuyou.html

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