カテゴリー「間質性膀胱炎の考え方」の記事

泌尿器科の医師は、排尿障害と言う基本概念に戻れ!

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①前立腺ガンの腫瘍マーカーであるPSAが高くなる原因のほとんどが、前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症による排尿障害が原因です。500人中の88%、440人が排尿障害でPSAが高い患者さんでした。

②慢性前立腺炎の患者さんも調べると、前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症などの患者さんが自覚しない「隠れ排尿障害」が認められ、排尿障害の治療を行うと症状は軽快します。

③間質性膀胱炎や過活動膀胱の女性患者さんにも、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、症状は軽快します。

④陰部がかゆくなる陰嚢掻痒症・陰部掻痒症・陰門掻痒症(肛門のかゆみ)などの患者さんにも、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、かゆみは軽快します。

⑤原因不明の坐骨神経痛の患者さんの中にも、一定の割合で、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、痛みが軽快します。

⑥神経因性膀胱は、膀胱に力が無くなったから排尿できないと、一般的に考えられます。しかし、なぜ突然に神経因性膀胱になるのかという議論はなされません。長年かけて膀胱出口が十分に開放されないために、疲労・疲弊してしまった膀胱を「神経因性膀胱」と診断しているだけです。ダメになった膀胱を検査結果で、幾つにも分類しても、患者さんを治すことができませんから、全く意味がありません。隠れ排尿障害であったために、患者さんは排尿障害を自覚していません。しかし、膀胱は次第に疲れて、ある日突然に排尿障害を自覚して、それが神経因性膀胱と診断されるのです。

病気の原因をおろそかにして、目に見える症状だけに振り回されている医師は、素人同然です。長い年月をかけて得た知識と経験を利用して、患者さんの病気し本質を見つけようではありませんか!


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尿失禁と骨盤底筋体操

咳やクシャミなどで、オシッコが漏れるのを腹圧性尿失禁と言います。
前立腺肥大症の男性と比べて、女性患者さんの方が、はるかに多いのです。その理由は、一般的に何回も出産したからと言われていますが、出産経験のない患者さんもおられます。それから考えると、出産の有無は無関係です。

どうして、ご婦人に腹圧性尿失禁が多いのかを考えてみましょう。
イラストは、ご婦人の排尿の仕組みを分かりやすく描きました。
膀胱出口が開くためには、膀胱括約筋と尿道括約筋の両者が協調しなければなりません。膀胱括約筋は、膀胱出口を前後左右(平面方向)に開いてくれます。尿道括約筋は、膀胱出口を下の方向(縦方向)に引っ張ります。その2つの力学的ベクトルで膀胱出口は、ロート状(円錐状)に開くのです。
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ところが、膀胱括約筋は、内臓の筋肉=平滑筋で出来ており、尿道括約筋は、骨格筋=横紋筋で出来ています。その力は、尿道括約筋>>>>>膀胱括約筋です。更年期を過ぎた頃には、弱者である膀胱括約筋は疲れ切って、膀胱出口を十分に開けなくなり、膀胱出口が尿道括約筋に強く引っ張られてしまいます。その結果、膀胱出口が尿道側に「お辞儀」するように狭くなるのです。

「息んでリキんで」オシッコをする習慣のあるご婦人は、この現象が隠れていて尿失禁が生じやすくなります。その理由は、
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①腹圧をかけてオシッコするため、強力な腹圧のために膀胱を固定している靭帯や筋膜がゆるみます。尿道括約筋は外側に引っ張る方向にあったのが、尿道括約筋の位置が下にズレたため、内側に引っ張る方向になるのです。この状態は尿道括約筋が閉まらなくなります。
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②膀胱括約筋が、力んだ尿道括約筋に負けて、膀胱出口の本来の境界線の位置が、尿道側に下降し、二次的な膀胱出口ができてしまいます❶。本来の膀胱出口と尿道括約筋は十分に距離❷がありますが、二次的膀胱出口と尿道括約筋の距離❸は極端に短くなります。この状態にあると、尿道括約筋に膀胱内圧が直接作用するので、尿道括約筋は容易に開いてしまいます。

①+②の2つの理由で、腹圧や咳などで膀胱内圧が急激に高まると、尿道括約筋が簡単にゆるみ、尿失禁になるのです。オシッコが漏れてしまう腹圧性尿失禁の患者さんは、本質的には長年の間、オシッコが出にくいヒトなのです。結局のところ、オシッコが出にくいから、オシッコが漏れるように身体が変身したと言うのが真実です。腹圧をかけて息めば息むほど、膀胱出口の境界線は、次第に尿道括約筋に近接するのです。

さて、腹圧性尿失禁の対策として、骨盤底筋体操があります。体操することで尿道括約筋の緊張が高まり、尿道括約筋の走行が、内側の方向→平行あるいは外側の方向へ向かうので、尿道括約筋が締まりやすくなり尿失禁が減少するのです。
ただし、尿道括約筋の位置が下方に位置していない時期に体操で骨盤底筋である尿道括約筋を鍛えると、膀胱括約筋と尿道括約筋の力の差がますます増えます。その結果、排尿ごとに膀胱出口が強く引っ張られるので、逆に尿失禁しやすくなるかもしれません。男性のように硬い前立腺が、尿失禁を防がないので、ご婦人の場合は尿失禁が多くなるのです。
ご婦人が尿失禁を作らないためには、この隠れた排尿障害を早期に発見して、αブロッカーを服用させるべきです。隠れた排尿障害の症状としては、頻尿、冷え性などがある筈です。

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膀胱出口閉塞症・症候群と言う考え方

アメリカには膀胱出口閉塞症と言う考え方がありますが、具体的に明確な定義がありません。日本では、膀胱に関する病気がたくさんあります。膀胱の病気には、アレルギー性膀胱炎・細菌性急性膀胱炎・慢性膀胱炎・心因性頻尿・過活動膀胱・膀胱疼痛症・間質性膀胱炎・うっ血性骨盤疼痛症候群・慢性骨盤内疼痛症候群・神経因性膀胱などです。ところが、すべての病気が原因不明です。
この中で、ハッキリした原因があるのはアレルギー性膀胱炎と細菌性急性膀胱炎の2つだけです。この2つ以外の病気の原因は、とてもいい加減です。

①慢性膀胱炎:
陰部を不潔にしている、お尻を拭く時に後ろから前に拭くので不潔になる、などの理由で膀胱炎になるとされる。患者さんが一生懸命に陰部を清潔にしても治らない。
②心因性頻尿:
ストレスなどで神経が過敏なった結果、頻尿になる。
③過活動膀胱:
原因不明で頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁の総合的病名。
④膀胱疼痛症:
原因不明の膀胱を中心とする痛みの病気。他の膀胱の病気に併発することがある。
⑤間質性膀胱炎:
極端な頻尿と痛みを伴う病気である。アレルギーと思われている。膀胱粘膜の所見で確定診断をする。
⑥うっ血性骨盤疼痛症候群:
ご婦人の原因不明の下半身疼痛を示す病名。うっ血所見(静脈血の低下・静脈瘤)があります。
⑦慢性骨盤内疼痛症候群:
慢性前立腺炎の別名。
⑧神経因性膀胱:
膀胱に力がなくなったからオシッコが出ない・・・その理由は不明。

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これらの患者さんを調べると、多かれ少なかれ、排尿障害が隠れています。ところが、極端な排尿障害ではないので、診察している医師が重要視せずに無視するので、結果、原因不明になるのです。その根源は、排尿の仕組みを正確に理解していないからです。尿道括約筋が開くから、連動して(白い破線矢印⇕)膀胱出口が自動的に開いて排尿すると思っているのです。生身の生体の扉が、そんな単純な仕組みで出来ていると思う方がおかしいでしょう。

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尿道括約筋は開くのではなく、引っ張っている(けん引)のです。特に膀胱三角部が尿道括約筋のギリギリ手前まで伸びていますから、前後方向に開きます。同時、に膀胱括約筋が収縮することで、膀胱出口がロート状に開くので尿がスムーズに出るのです。

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膀胱括約筋は内臓の筋肉=平滑筋です。尿道括約筋は体を動かすための骨格筋=横紋筋です。
力強さは、横紋筋>>>平滑筋ですから、年齢を重ねる毎に平滑筋=膀胱括約筋は疲労困憊して十分に収縮できなくなります。すると、力強い横紋筋=尿道括約筋だけが頑張るので、イラストの如く、膀胱出口が逆に狭くなり(ガチン)、オシッコが出にくくなるのです。

その状態が、繰り返し繰返し、長期間に渡って繰り返されると、膀胱出口は硬くなります。また、膀胱三角部もその振動で硬くなります。組織が硬くなると言う事は異常現象ですから、情報収集のためにセンサーが生まれ、脊髄神経回路と密接の繋がります。これがすべての病気の症状出現と結びつくのです。
膀胱三角部が過敏になれば、頻尿・残尿感・尿意切迫感・尿失禁になります。それぞれの症状の程度と組合せにより、慢性膀胱炎・過活動膀胱・間質性膀胱炎と診断されるのです。
膀胱三角部と連結している脊髄神経回路がバージョン・アップすると痛み症状が強くなり、膀胱疼痛症・間質性膀胱炎・慢性前立腺炎,慢性骨盤疼痛症候群と診断されるのです。
膀胱出口の硬さが増して、膀胱全体が疲弊すると、神経因性膀胱と診断されるのです。神経因性膀胱の専門医は、ダメになった膀胱をいろいろな検査で分類分けするのです。ダメになった理由を追求しないで、……「神経がダメになったのだから、治せませんね。」と、安易な診断をするのです。本当に無能です。
このように考えれば、極端なオシッコの出の悪さを自覚しなくても、病気が作られるのは理解できるでしよう。


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未病と病気

病気には必ず原因があります。
だからと言って、必ず症状が出るわけではありません。
しかし、ひとたび症状が出ると、なかなか治らない病気もあります。
その理由を簡単に示すと、右のイラストのようです。
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原因と脊髄神経回路が密接に繋がるから、症状が発現するのです。
ところが、原因と神経回路が十分にリンクしていない、あるいは、神経回路が未完成であると、症状は出ないのです。それが、いわゆる「未病」です。
症状が出ないから安心とは言えません。例えば、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんは、病気が発症する前から、軽度の頻尿や冷え症があります。

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それらの症状が極端に悪化して、極端な頻尿や足のシビレや痛みなどが出て、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎と初めて診断されるのです。
脊髄神経回路は、ある意味で、ブラック・ボックスです。医学がどんなに進歩しても、神経回路を認識・把握することはできません。

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未病の状態が長く続くと、神経回路が完成されて、ある日突然に症状が出現するのです。患者さんの多くが、「それまで何でもありませんでした。ある日、突然です。」とおっしゃいます。何でもなかったのが「未病」だったのです。
神経回路が完成されて、症状の強度が高まったり、複数の症状が出たりするのです。排尿障害が原因の場合は、イラストのような症状、頻尿・残尿感・尿意切迫感・痛み・かゆみ・シビレ・違和感などになるのです。
これらの症状の強さと組合せにより、現場の医師が、慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症候群、前立腺症、慢性骨盤疼痛症候群と、簡単なパズルゲームの解答のような診断をするのです。医師は、もっと想像力を働かせて診断・治療しなければならないのです。

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平滑筋のスイッチ

前立腺肥大症・慢性前立腺炎・過活動膀胱・間質性膀胱炎などの治療に使用される薬剤のほとんどが、平滑筋に影響する薬理作用を持っています。
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平滑筋は、すべての内臓を構成する筋肉です。体を動かす時に使う筋肉は骨格筋(横紋筋)です。内臓の筋肉とはいえ、筋肉ですから、収縮と弛緩を繰り返します。収縮=緊張、弛緩=リラックスの状態です。その動きの典型的なものが胃や大腸の蠕動運動です。これらの動きは、骨格筋に比べてとても複雑です。その理由は、たくさんの平滑筋細胞がお互い密接に連絡しあって情報交換をしているからです。一部の平滑筋は自律神経(交感神経・副交感神経)と連絡しており、そこから得た情報を隣接する平滑筋に次々と伝達するのです。まるで、伝言ゲームのようです。

自律神経に関わらないのが、一酸化窒素NOです。一酸化窒素が平滑筋にそばに存在すると、受容体を介さないで無条件で平滑筋内に侵入します。一酸化窒素は、平滑筋をリラックスさせる作用があるのですが、平滑筋の中で、直ぐに消滅してしまいます。
何の受容体かは不明ですが、大豆イソフラボンの受容体、正露丸の受容体、タガメットがブロックする受容体(H2レセプター)なども、長年の臨床経験上ある筈です。

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交感神経に反応するのが、膀胱・前立腺の平滑筋のα₁−受容体、β₃−受容体です。
副交感神経に反応するのが、平滑筋のM−受容体です。
交感神経が興奮すると、膀胱出口・前立腺にあるα₁−受容体を刺激し、オシッコを出にくくします。さらに、膀胱三角部にあるβ₃−受容体を刺激し、尿を我慢させます。受容体は平滑筋に変化を促す【スイッチ=受容体】です。逆に副交感神経が興奮すると、膀胱体部の平滑筋にあるM−受容体を刺激して膀胱を収縮させます。

この仕組みを考慮して病気の治療を考えると、次のようです。
排尿障害が病気の原因ですから、膀胱出口・前立腺をリラックスさせるために、α₁−受容体をブロックするクスリとして、ユリーフ・ハルナール・フリバスを使用するのです。
また、膀胱三角部をリラックスさせるために、β₃−受容体刺激剤のベタニスを使用するのです。
さらに、膀胱体部をリラックスさせるために、M−受容体をブロックするクスリとして、ベシケア・ステーブラ・ウリトス・トビエースを使用します。
ただし、平滑筋の数々の受容体の分布は、患者さんの膀胱や前立腺の位置によって異なるので、その組合せの影響で、とても効くヒトもいれば、まったく効かないヒトもいます。

平滑筋の緊張をリラックスさせることで、膀胱や前立腺の過敏な症状が軽減できるのかと言えば、平滑筋は筋肉としての動力装置でもありますが、実はセンサー・感覚器でもあるのです。

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病気と症状と治療のタイミング

慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、間質性膀胱炎、過活動膀胱、前立腺肥大症、神経因性膀胱、PSA高値などの患者さんが全国からお越しになります。
その理由は、地元の病院やクリニックでは治らないからです。
治らない原因の第一は、まずは病気の本質を治療しないからです。例えば、慢性前立腺炎や慢性膀胱炎は、「炎」という取りあえずの病名に合わせた治療しかしないからです。また、間質性膀胱炎や過活動膀胱は原因不明の病気ですから、頻尿や痛みに対する治療しかしないからです。更に、前立腺肥大症は、頻尿の出現理由を考えないで治療するからです。
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病気の本質は、「排尿障害」です。
排尿障害→膀胱三角部の過敏→脊髄神経回路の構築→症状(頻尿・尿意切迫感・残尿感・痛み・シビレ・かゆみ)の発現です。それぞれの病気の仕組みは、下記の通りです。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
★慢性前立腺炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★慢性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★間質性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★過活動膀胱=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★前立腺肥大症=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕前立腺の肥大➕脊髄神経回路の完成
★神経因性膀胱=排尿障害➕膀胱出口の硬化→→→排尿障害の強化
★PSA高値=排尿障害±炎症±前立腺肥大症±先天性±前立腺ガン
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
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ご覧の通り、すべての病気に排尿障害が絡んでいます。その排尿障害の程度はピンからキリまであります。なかには、患者さん自身が自覚しない程度、あるいは医師が評価しない程度の排尿障害のため、まったく治療しないので中々治らないのです。

病気はイラストのように4つの時期に分けて判断します。
★1期は排尿障害があるにもかかわらず症状の出ない状態です。いわゆる「未病」の状態です。
★2期は、脊髄神経回路が完成して症状がで始めた状態です。
★3期は、排尿障害が治療されないために、脊髄神経回路がバージョンアップしてしまい、症状が強く出ている状態です。
★4期は、脊髄神経回路が排尿障害から独立・独り立ちして、神経回路がますます複雑になり、完成度が極めて高くなった状態です。排尿障害を治療しても治リません。信じられないほどの強い症状になります。頻尿が毎日80回以上、突然あるいは持続性のナイフで刺されたような痛み、血が出るくらい何遍掻いてもカユミが収まらない状態です。

治療する医師は、この状態を十分に把握して治療しなければなりません。
★排尿障害に対してはアルファブロッカー(ユリーフ、ハルナール、フリバス、エブランチル)です。
★膀胱三角部の過敏さに対しては、ベタニス、ベシケア、ウリトス、ステープラ、アボルブ、タガメット、サプリメント(イソフラボン、ノコギリヤシ、カボチャの種、正露丸)です。
★脊髄神経回路に対しては、トラムセット、リリカ、カロナール、仙骨神経ブロック、サプリメント(グリシン)です。

世間では、患者さんを十分に調べもせずに、病名だけで治療する輩の何と多いことか!親身になって、患者さんの言葉を真摯に受け止めて治療しようと努力する医師が、もっと増えて欲しいと思います。


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膀胱と直腸は双子の兄弟

以前にも、膀胱の発生学的構造について解説しました。

前回、解説に使用したイラストは、発生学専門書から引用したものでした。医師や医学生であれば、容易に理解できる内容でしたが、今回は私がイラストを作り直しました。母体中の胎児の発達状況は、とてもダイナミックなものです。
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まずは、胎児の4週の時点で、膀胱の基礎が出来上がります。
それが、「総排泄腔」です。その形はとてもシンプルです。
総排泄腔の前に「へその緒」が繋がっています。
総排泄腔の前後の真ん中辺りにクビレが生じます。
これを「尿直腸中隔」と呼びます。イラストでは「中隔」と示しています。

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胎児の6週に成ると中隔というクビレがドンドン深くなっていきます。
深くなるに連れ、総排泄腔の前は膀胱に、背後は直腸になろうと変形します。
つまり、膀胱と直腸は、発生の途中では同じ臓器だったのです。
ですから、出産後に成長して成人になれば、別の臓器と思われますが、神経的には脊髄神経で繋がっている方もおられます。その証拠に、膀胱炎になると便意を催すヒトもいれば、下痢すると頻尿になるヒトも存在します。

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胎児の7週に成ると、尿直腸中隔は完成して膀胱と直腸は完全に分離独立します。
膀胱の末端は、体壁皮膚の外側まで通過して「尿道」になります。
胎児の11週には男性の場合は、この尿道から芽が出て、それが「前立腺」になります。
背後の直腸は、大腸(S字結腸)の末端と接続して、大腸は直腸まで連続します。

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総排泄腔外反症という先天性の病気があります。
この病気は、総排泄腔が胎児の成長過程で分化せずに、膀胱と直腸が分離しなかったために起きる現象です。次回のブログで詳細を掲載します。

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膀胱の基礎医学#4①(臨床医学的観点)

膀胱の発生学、解剖学、生理学を利用して詳細に解説しました。
これらの知識をフルに使って病気を観察すると、適確な治療法を見い出すことができます。
膀胱に関わる病気は次の通りです。
❶急性膀胱炎
❷慢性膀胱炎
❸過活動膀胱
❹膀胱疼痛症
❺膀胱尿管逆流症
❻神経因性膀胱
❼間質性膀胱炎
❽尿管瘤
❾膀胱結石
❿膀胱憩室
⓫膀胱子宮内膜症
⓬膀胱腫瘍


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❶急性膀胱炎
一番有名な誰でも知っている、細菌が原因の膀胱炎です。抗生剤・抗菌剤で治ります。
出産前のご婦人の性行為後が原因のほとんどです。中高年のご婦人の急性膀胱炎は稀です。
また、臨床的には一見急性膀胱炎ですが、実は本質が異なる方も……。

❷慢性膀胱炎
急性膀胱炎-様症状が繰り返し定期的に出現する膀胱炎です。原因は性行為ではありませんし、細菌が認められないこともしばしばです。後で述べる子宮内膜症が原因のことがあります。

❸過活動膀胱
細菌感染もなく、年中の頻尿や尿意切迫・尿失禁で苦しまれています。ハッキリした原因もなく対症療法のための病名です。

❹膀胱疼痛症
頻尿や尿意切迫はあっても、悩むほどではありません。ただ痛みが持続したり、発作的に出現します。
痛みの場所は、性器、膣、肛門、下腹部など様々です。婦人科や泌尿器科や外科などで精密検査をしても理由が分からずに、やはり原因不明です。

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❺膀胱尿管逆流症
腎臓→尿管→膀胱へと尿の流れは一方通行です。
ところが、尿管口の逆流防止弁作用が不完全だと、排尿時に膀胱の尿が膀胱→尿管→腎臓へと逆流してしまいます。その結果、急性腎盂腎炎を発症します。見方を換えれば、腎盂腎炎を起こした経験のある人は膀胱尿管逆流症があることになります。
この写真は、ラジオアイソトープを利用した膀胱尿管逆流症の患者さんの検査結果です。画面の右下が排尿直後の所見です。膀胱内に残尿が認められます。つまり、膀胱尿管逆流症の患者さんには、実は排尿障害が隠れているのです。

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❻神経因性膀胱
膀胱の排尿筋が弱くなったから排尿出来なくなったと言われてしまう患者さんです。
ところが、排尿の際に膀胱にかかる圧力は、膀胱内の尿の重力、腹腔内の内臓全ての重圧、腹筋による圧力、最後に膀胱の排尿筋の力で駆出するのです。排尿筋の力がなくなったくらいで尿が出ない訳がありません。オシッコが出ないのは、膀胱出口が十分に開かないからです。
この写真の患者さんは60代で、ある大学病院で神経因性膀胱と診断された方です。どう見ても前立腺肥大症です。前立腺肥大症の治療もしないで、毎日6回の自己導尿をさせられました。


❼間質性膀胱炎
極端な頻尿と痛み症状で、内視鏡検査で特有?の所見を認めて、診断されます。治療法は、膀胱水圧拡張術ですが、原因治療ではないので、対症療法に過ぎません。
しかし、間質性膀胱炎をはじめ、上記の慢性膀胱炎・過活動膀胱・膀胱疼痛症・膀胱尿管逆流症・神経因性膀胱の患者さんのほとんどに、本人が自覚しない排尿障害が隠れています。その排尿障害を治療すれば、症状は軽快します。

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❼尿管瘤
原因不明の膀胱炎や前立腺炎の患者さんを調べてみると見つかるのが尿管瘤です。
先天性の尿管末端の不良が原因です。尿管末端が風船のように膨らんで、膀胱を刺激するので症状が出るのです。この写真は、左右両方に認めた尿管瘤の患者さんの3Dエコー所見です。

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実際に内視鏡検査で確認した両側尿管瘤です。


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膀胱の基礎医学♯3(生理学的観点)

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膀胱三角部の真下には、膀胱括約筋が三角形の形で存在し、膀胱出口近くに位置しています。この筋肉は平滑筋で出来ており、骨格筋である尿道括約筋とは性格が異なります。平滑筋は自律神経の支配で、骨格筋は随意神経(運動神経)の支配下にあります。これらが、排尿機能に関わっています。
膀胱三角部は尿管由来ですから、神経支配は尿管と同じで、膀胱のほとんどの部分と神経支配が異なります。尿管の方が膀胱の知覚よりも鋭敏ですから、膀胱の尿意のほとんどが膀胱三角部なのです。

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膀胱の機能は、尿を溜め(蓄尿)、膨らんでも一定の量まで我慢し、脳中枢の許可を得て膀胱出口が開き膀胱全体が収縮して排尿するのです。
❶膀胱出口・膀胱括約筋(内尿道括約筋)
交感神経の支配下にあり、自分の意志とは無関係の平滑筋です。αレセプター(受容体)を刺激して収縮させます。排尿時には、交感神経の刺激がストップして開き易くします。ただし、尿道括約筋の協力がなければ開きません。
❷膀胱三角部・膀胱括約筋
このイラストのように教科書的には、膀胱出口と膀胱三角部の膀胱括約筋の区別はありません。しかし、膀胱頚部が排尿の際に漏斗状の円錐状に開放するためには、膀胱三角部が適度に収縮し、膀胱出口の部分が緩んで、その形状になります。膀胱出口は交感神経支配で、膀胱三角部は交感神経・副交感神経支配かも知れません。排尿時に交感神経が声掛けをストップして膀胱出口が緩み、逆に交感神経が声掛けして膀胱三角部が軽く緊張するのです。膀胱三角部は尿意センサーですから、尿を我慢する時に膀胱三角部が緊張すると、尿意が強くなってしまいます。ですから、頻尿の患者さんは、膀胱三角部の括約筋が過緊張のために尿意が強くなり、その過緊張を抑えるαブロッカーが頻尿の治療薬になるのです。坑コリン剤も頻尿治療薬ですが、αブロッカーほど効きませんから、膀胱三角部の主導権は交感神経でしょう。
❸尿道括約筋(外尿道括約筋)
膀胱出口から4センチ程の場所に存在する筋肉です。自分の意志で収縮する骨格筋です。恥骨と肛門と尾骨が一連で繋がっています。神経支配は体性神経・随意神経です。
❹膀胱全体・膀胱輪状筋・膀胱縦走筋
膀胱の弛緩・収縮に関与しています。ムスカリン受容体(コリン受容体)が、その反応に関わっています。神経支配は副交感神経・自律神経です。
❺前立腺(男性)
前立腺の間質成分は平滑筋です。ですから、自律神経の支配下の交感神経がコントロールしています。膀胱括約筋とシンクロして前立腺も同調します。しかし、前立腺肥大症があるとシンクロし難くなってしまいます。

何かの原因で、この5つの要素に障害があると、排尿障害になります。ところが、臨床医師が、この1つ1つの要素のチェックをしないで、簡単に診断してしまうのです。隠れた排尿障害を見つけてもらえず、症状だけに注目するのです。患者さんは、たまったものではありません。

【参考文献】
「解剖学」金原出版
「人体解剖学」成美堂出版

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膀胱の基礎医学♯2(解剖学的観点)

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膀胱は膀胱頚部、膀胱三角部、膀胱体部に分けることができます。ところが、膀胱三角部は、現在膀胱に位置しますが、前回解説したように本当の出身地は尿管なのです。左右両側の尿管が、胎児期に成長と共に膀胱内で左右が結合したのです。その結果、三角形になり膀胱三角部と称される部分になったのです。
四つ足動物、四足歩行だった頃、排尿時にかかる圧力は、ちょうど膀胱出口に当たるように設計されていました。ところが、人間が二足歩行に進化すると、その圧力は膀胱出口の後ろ側、つまり膀胱三角部に直接当たるようになってしまったのです。要するに、四足歩行の動物に比べて膀胱三角部への負担が大きいのです。これが、人間の排尿に関する産まれながらの欠陥なのです。
膀胱三角部は尿管由来ですから、膀胱の中で一番敏感な部分です。その敏感な部分が産まれてから1年前後で二足歩行になり、排尿の度ごとに膀胱三角部に負担をかける訳です。40〜50年も生きれば、膀胱三角部の過敏症になってもおかしくはないでしょう。それが、過活動膀胱、間質性膀胱炎、慢性膀胱炎、慢性前立腺炎、前立腺肥大症の症状になるのです。

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膀胱三角部の直下に膀胱括約筋が存在します。
しかし、このイラストで分かるように、膀胱括約筋は膀胱三角部の直下とそれ以外の周囲に存在するものとに分けることができます。
この膀胱三角部直下の膀胱括約筋が排尿時に収縮し、それ以外の周囲の膀胱括約筋が緩むと、膀胱出口が開きます。しかし、尿道括約筋と同時に活動しないと膀胱出口は開きません。
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膀胱三角部は、知覚のセンサーと駆動力の膀胱括約筋の2つの顔を持っているのです。その割には、泌尿器科学会では、重要視されていません。その理由は膀胱三角部を客観的に観察できないからです。内視鏡検査、いわゆる膀胱鏡検査で観察しても、表面を見ているだけなので、医師が異常に気付かないのです。
超音波エコー検査で、膀胱三角部は詳細に観察することが出来ます。膀胱三角部の厚さ、膀胱括約筋の形態的変化などです。この写真は間質性膀胱炎症状の47歳のご婦人の超音波エコー所見です。膀胱三角部が非常に厚くなり、さらに膀胱括約筋があさっての方向に向いています。この所見は排尿障害を示唆しています。

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