カテゴリー「間質性膀胱炎と周辺疾患」の記事

急性膀胱炎の2つのタイプ

Acmecha「急性膀胱炎」には大きく分けて二つのタイプがあります。

若いご婦人の急性膀胱炎と、中高年のご婦人の急性膀胱炎です。一見すると、同じ膀胱炎ですが、実は原因がまったく違うのです。若いご婦人の急性膀胱炎は、時々で年に数回しかありません。ところが中高年のご婦人の急性膀胱炎は、年に5回以上、場合によっては毎月起きることがあるのです。

若いご婦人の急性膀胱炎は、性行為・セックスが原因で、陰部に存在する雑菌が膀胱内に押し込まれてしまうので、発症します。膀胱内に入った大量の雑菌に対して、膀胱粘膜の白血球が雑菌に攻撃をかけて、結果、急性膀胱炎になるのです。

ところが、中高年のご婦人の場合は、そんなに頻繁にセックスをしませんよね?なのに、何故、頻繁に急性膀胱炎になるのだと思いませんか?例えば、80歳の高齢者の方が、急性膀胱炎を繰り返した時に、毎回セックスをしたとお思いですか?

膀胱粘膜に存在する白血球が、常在菌と偶然に出会うと、常在菌に攻撃をかけるのです。実は高齢者の方の場合には、患者さんが自覚していない排尿障害がもともと隠れているのです。その排尿障害が原因で、膀胱には常に負担がかかります。それが原因で、膀胱の粘膜の白血球が常にイライラと興奮いているのです。その興奮した白血球が常在菌と偶然に出会うと、立ち所に攻撃するのです。攻撃された常在菌は、他の雑菌と同じように対抗手段として、細胞分裂を行い、数を増やします。過敏な白血球は当然のように、数の増えた常在菌に攻撃をします。常在菌をたくさん食べた白血球は破裂します。破裂すると白血球内の毒物が放出し散らばり、周囲の膀胱粘膜に炎症を作るので、結果として急性膀胱炎になるのです。

高齢者の急性膀胱炎の患者さんに対して、「入浴の際に陰部をキレイに洗ってくださいね!」とか、「オシッコの後は、トイレットペーパーで前から後ろに拭いてくださいね!」「排便の後も、前から後ろに拭いてくださいね!」とアドバイスしますが、急性膀胱炎は繰り返します。病気の本質を考えもしないで、素人的発想をするのが情けないですね。この世界で毎日入浴するのは日本人だけです。そんな日本人が不潔にする訳がないでしょう!そんなアドバイスをする医師の無知にガッカリです。

Lutstotal_20190914100201「嘘」の急性膀胱炎があります。急性膀胱炎の典型的な症状は、①頻尿(日中だけ)と②排尿痛(オシッコの最後だけの痛み)、③血尿(オシッコの最後だけの血尿)、⓸残尿感の4つが典型的な症状です。ところが、夜間頻尿や常時膀胱が痛い、出始めの血尿、残尿感がないのに、急性膀胱炎と診断されたら、本当の急性膀胱炎ではありません。典型的な症状が無いのであれば、排尿障害が原因の過活動膀胱、間質性膀胱炎、慢性膀胱炎、心因性頻尿、膀胱疼痛なのです。そして抗生剤や抗菌剤で症状が落ち着くから、細菌性の急性膀胱炎と確信してしまう患者さんも医師も多くおられます。そこに誤解があるのです。抗菌剤や抗菌剤は殺菌するばかりでなく、人間を含めた生命の活性を低下させる作用も持っているのです。病気の症状は生命活性の表現のひとつですから、症状が軽快したからっと言って、雑菌が原因の急性膀胱炎とは限らないのです。単なる抗生剤や抗菌剤の副作用効果なのです。

【予防・対策】

若いご婦人が急性膀胱炎の場合は、セックスの直後にオシッコをしてください。膀胱内に侵入した大量の雑菌が排出できるからです。したがってセックスの前には、オシッコをからっぽにしないで下さい。

❷❸排尿障害が原因の中高年のご婦人の場合には、排尿障害の治療を行いましょう。α1ブロッカーのエブランチルと、β3作動薬であるベタニス・べオーバを処方してもらって下さい。

以上の解説は医学書には記載されていません。私だけのユニークな発想です。信じるか信じないかは、貴方次第です。

 

 

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医療サイトの投稿原稿#12 「痛みで悩むご婦人^_^」

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アメリカ在住の30代のご婦人が、2017年の9月から、夜間に突然、陰部がとても痛くて目が覚めました。陰部全体の痛みと尿道が引っ張られるような痛みです。これ以降、毎晩起こる痛みのため不眠症になってしまいました。
地元アメリカで、泌尿器科・婦人科などいろいろな医師を受診し、治療を受けましたが治りません。何回も通院すると、医師に見放されたような態度を取られてしまいました。患者さんは、そのような状況になってもくじけないで、インターネットで情報をいろいろ収集しました。その中で、私の書いているブログ記事をたまたま発見したのです。
地元のアメリカでは、私の推薦するクスリを調達できなかったので、日本にいる家族に連絡して、α-ブロッカーのエブランチルを送ってもらい服用してみました。すると、今まで自覚していなかったオシッコの出が良くなったのです。痛みには、それほど効き目がありませんでしたが、私の理論が正しいことを実感したのでした。

その後、日本に帰郷して、関東近県の地元の内科の先生に、無理にお願いして、お祖父さんにフリバスを処方して頂き、それを服用を始めました。すると、どうでしょう!あれほど苦しんでいた痛みが無くなり、夜グッスリと眠れるようになったのです。地元の内科の先生も、その話しを聞いて驚いたそうです。
日本滞在中に私の診療所へ受診しようと、2018年6月末に来院されました。
早速、エコー検査をすると、写真のように膀胱縦走筋(膀胱排尿筋)の走行が、膀胱出口に向いていません。当然、膀胱三角部が厚くなっています。厚さが約7mmです。正常は2mmです。厚さ2mmで排尿回数5回が正常だとすると、7mmだと、オシッコの回数は15回〜18回のはずです(私の自論展開)。しかし、この患者さんの排尿回数は、1日たったの4回でした。
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膀胱三角部で作られた頻尿のエネルギーがまったく表現されていません。これは、患者さんの脊髄神経回路の特性によるものです。しかし、脊髄に送られた情報(エネルギー)をそのまま貯めておくことはできません。そこで、脊髄が新たな神経回路を形成したのです。それが「痛み」症状なのです。
フリバスは、前立腺肥大症の治療薬でお馴染み、排尿障害治療薬のα1-ブロッカーです。もちろん保険適応外ですが、膀胱出口の緊張をゆるめ、男女関係なく排尿障害の治療に役立ちます。また、α-レセプターは、膀胱出口ばかりでなく膀胱三角部にもありますから、膀胱三角部の興奮もフリバスで抑えられたのでしょう。また、排尿障害のため振動して硬くなった膀胱出口も、膀胱三角部と同じくセンサーが形成されるので、膀胱出口の情報も脊髄を介して痛み症状になったのです。
このような症例に遭遇した場合、一般的には①頻尿症状がなければ、陰部疼痛症・うっ血性骨盤疼痛症候群、②頻尿症状があれば、過活動膀胱・間質性膀胱炎・膀胱疼痛症候群、③子宮筋腫があれば、子宮筋腫の関連痛、④他に症状がなければ、陰部神経症と診断されるのが「落ち」でしょう。病気の症状発現のためには、「ブラック・ボックス」である脊髄神経回路が介入していることを医師は肝に銘じるべきです。
また、この患者さんはフリバスで痛みが消失しましたが、不十分な場合、炎症による痛みではありませんから、通常の痛み止め(ロキソニンなど)は無効です。脊髄中枢の「痛み回路」抑制効果のある、リリカ・トラムセットが有効です。

フリバスは地元の内科の先生に継続して処方いただき、さらに膀胱三角部を的確に抑えるベタニスを追加で処方しました。

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医療サイトの投稿原稿 「神経因性膀胱が治らないと言う誤解」

 膀胱の収縮力低下の結果、オシッコが出なくなる病気を「神経因性膀胱」と呼びます。
一般的に泌尿器科の医師は、男性で前立腺が大きくなく残尿量が多ければ、神経因性膀胱と診断します。また、女性の場合でも残尿量が多ければ、やはり神経因性膀胱と診断します。その理由は、排尿障害の明確な原因がなく、単純に膀胱の収縮力が低下しているからだとされます。そして、脊髄神経や脳の精密検査を行い、脳梗塞の後遺症だ、椎間板ヘルニアの影響だ、二分脊椎だ、馬尾神経障害だ、過去の骨盤内手術の後遺症だなどを理由に、「治りません」と結論づけるのです。
治療手段は、「生涯に渡って膀胱カテーテル留置か、毎日何回もの自己導尿しかありませんね。」と告げるのです。ここには、病気を治そうと努力する医師の姿が一かけらも見えません。
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このイラストは、排尿の際の膀胱周囲の物理的力を表現しています。
① 自分の意志で尿道括約筋が開く
② 呼応して自動的に自律神経で膀胱括約筋が開く
③ 蓄尿の重量(重力)
④ 膀胱が収縮する
⑤ 臓器の総重量(重力)がかかる。
⑥ 腹筋・腹圧がかかる
以上の6つの要素で排尿します。
この中で、物理的力が一番強いのが腹筋・腹圧です。2番目が各臓器の総重量、3番目が膀胱収縮力です。その3番目の強さの膀胱収縮力が無くなったからと言って、オシッコが出なくなるでしょうか?どう考えても、他に原因があるとしか思えてなりません。
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ここで、簡単にできる実験をお示しします。
点滴のビニール・バック溶液に着色し、点滴を全開にします。5分後、中身は空っぽになります。当たり前の光景です。点滴バックに外から圧力は掛かっていません。点滴を全開にしたので、溶液の重量(重力)で空っぽになっただけです。これから考えれば、膀胱の収縮力が欠如しても、膀胱出口が十分に開いていれば、オシッコは完全に出るはずです。まして腹筋・腹圧、臓器の重さ、畜尿の重さの三つの力が働くのですから、オシッコが出ない訳がありません。結局、オシッコが出ない神経因性膀胱の原因は、膀胱出口が十分に開かないためです。尿道括約筋は、骨格筋・横紋筋で自分の意志で開きます。しかし、膀胱括約筋は内臓筋・平滑筋の自律神経支配で自分の意志では開くことが出来ません。あくまでも尿道括約筋と連動してオートマティックに膀胱括約筋が開くのです。神経因性膀胱の患者さんは、このオートマティックが故障していると考えられます。その原因として、膀胱出口が硬くなってしまった膀胱頚部硬化症や前立腺肥大症が考えられます。
膀胱出口を開くための自律神経支配のオートマティックを直すことは出来ませんが、膀胱出口を緩めたり開くことは可能です。
① 保存的にはαブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフなど)を利用して膀胱出口の緊張を緩める。
② 前立腺肥大症の硬さを柔らかくするために抗男性ホルモン剤(アボルブ・プロスタール)を投与する。
③ 保存的治療で改善が得られなければ、外科的治療・経尿道的内視鏡手術を行い、膀胱出口を円錐状・漏斗状に開放する。膀胱括約筋と尿道括約筋は、男性で3㎝~4㎝、女性で2㎝の距離があるので、術後の尿失禁の心配はない。
神経因性膀胱を専門とする医師は、膀胱内圧測定や筋電図などを駆使して、神経因性膀胱を次のように分類します。
1弛緩性膀胱、2無抑制膀胱、3過活動性膀胱、4排尿筋括約筋協調不全
これらの分類は、ダメになり疲弊した膀胱の現状を分類しているだけで、患者さんの悩みや苦しみに対して何の解決にもなりません。
貯水タンクから水の流出がなければ、タンクの排水口が何かで詰まったと考え、排水口を点検・清掃して修理するでしょう。貯水タンクに収縮力がないから流出しないとは思いませんね。それと同じで、自己導尿して尿の排出できるのに膀胱収縮力がないからと診断するのは見当違いです。

【医療関係読者からの感想】

また、以下には高橋先生の記事の感想をいただきましたので、一部を記載させていただきます。
記事は全体の89.8%の方が満足していると回答しており、


・眼前の患者に診断をつけたら終わりではなく、病態生理を突き詰めてどうしたらその症状を改善できるかという、医療の根本姿勢を考えさせられるお話でした。
・明日からの外来で、患者への説明と頻尿への治療に役立てたいと思います。ありがとうございました。
・以前からブログを拝見し勉強させていただいてます。
・ぜひ継続してください もっと勉強したいです
・他科の医師としてとても勉強になりました。
・専門外ですが患者さんから相談されることがありますので、大変参考になりました。
・神経因性膀胱の診断でも膀胱出口が硬くなってしまった膀胱頚部硬化症や前立腺肥大症があることに今まで気づいておらず中々薬の効果が出ない人がいると思っておりました。とても参考になりました。

などのお声をいただいております。
今後の執筆のモチベーションにしていただけますと幸いです。

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症状♯ 「線維筋痛症と間質性膀胱炎」

Img_0400レディ・ガガさんのニュースで知名度が増した「線維筋痛症」について解説したいと思います。
線維筋痛症の症状は、その名から分かるように、全身の痛み症状です。原因不明なので、治療は対症療法だけです。原因を治すのではなく、痛みに対してだけを治療の目的にするのです。

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痛みの場所(トリガーポイント)に局所麻酔を注射と、リリカという脊髄神経内のシナプスを抑える薬剤(神経障害性疼痛の治療薬)の服用です。原因不明の対症療法なので、何回注射しても治る訳がありません。
始めの表は、線維筋痛症の症状一覧です。泌尿器科症状があり、私の得意とする神経因性膀胱、間質性膀胱炎、会陰部痛、勃起不全など、すべて排尿障害の症状です。

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2番目の表は、具体的な症状の一覧です。
頻尿、残尿感、排尿痛など膀胱炎症状があります。それぞれ15%、15%、10%です。線維筋痛症の患者さんのうち、少なくても10%〜多くても40%で、平均で25%もの患者さんに膀胱炎症状があることになります。かなりの確率です。

問題の神経は、単なる信号伝達の道具でしかありません。例えば、電話が繋がらない時に、電線が原因と思いますか?普通、電話が故障したと思うでしょう?ところが、線維筋痛症の専門医は、電線のせいにするのです。治る訳がありません。

神経は情報伝達道具であって、痛みの原因ではない。痛み情報を伝達する組織です。一番考えられるのが、臓器の負荷による関連痛です。例えば、❶心筋梗塞の左小指の痛みや五十肩、歯の痛みが関連痛です。❷膵臓癌の腰痛・背部痛も関連痛です。❸虫垂炎の初期症状の胃痛も関連痛です。この表から考えられる病的臓器が、膀胱と前立腺と子宮です。これら病的臓器の病気を見つけて治療することで、線維筋痛症は治るかもしれません。

一般的な関連痛は、解剖学的・生理学的に決められた特定の臓器➖体表の限定された部分の組み合わせです。しかし、神経の連絡ユニットであるシナプスの発芽率や萌芽率の高い人が、全身の痛み神経ネットワーク、関連痛=線維筋痛症を構築しやすいのです。シナプス結合が多岐にわたり作成しやすい人ですから、頭脳明晰、才能豊かで、運動神経抜群の人が線維筋痛症になるのです。レディ・ガガさんが良い例です。
あくまでも、私の自由奔放な考え方の仮説ですから、......。


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繰り返す無菌性膀胱炎、実は膀胱過敏症

中高年のご婦人で、膀胱炎症状を繰り返す方が多く見られます。
尿検査で白血球や細菌が認められ、抗生剤・抗菌剤の投与で尿は直ぐにきれいになるのですが、残尿感や頻尿や違和感がいつまでも残り、悩まれる患者さんが多くおられ、ます。

このような患者さんの場合、その病気は膀胱炎ではなく、膀胱過敏症である場合がほとんどです。
原因不明の慢性膀胱炎、間質性肺炎、神経性膀胱炎、心因頻尿、神経因性膀胱、膀胱疼痛症、気のせい、歳のせいと誤診されてしまうのです。

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炎症性ポリープと膀胱癌

Polyp25809f25information患者さんは日本に在住の20代の中国人女性です。
たまたま中国に里帰りした時に、頻尿・残尿感などの膀胱炎症状で上海の有名な病院を受診、内視鏡検査を実施したところ、膀胱出口に小さなポリープが発見されました。(診療情報参照)
主治医は、「前癌状態のポリープ」と診断し、平成22年10月入院内視鏡手術になりました。手術後、膀胱癌の予防にと抗癌剤を3カ月間に5回膀胱注入されました。患者さんの一番の訴えである頻尿はますます悪化し、1日20回、さらに夜間に3回もトイレで目が覚めるまでに悪化しました。
高橋クリニックを受診した頃には、頻尿の他に下腹部の痛みと緊張感、仙骨部の痛みが主な症状でした。

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膀胱頚部硬化症の内服薬による治療効果

Bns23261f28d0905間質性膀胱炎や慢性膀胱炎・過活動膀胱の原因と信じている(私だけ?)膀胱頚部硬化症は、超音波エコー検査で容易に観察できます。
この写真は、20代後半のご婦人の超音波エコー検査所見です。
初診の4か月前から恥骨の上がムズムズして気分が悪くなりました。婦人科を受診しても「気のせい」と診断されます。不思議なことに生理中にはムズムズ感が消えるのです。中学生頃(15年前)から排尿した後に、尿道にムズムズ感があったのですが、誰にも言わずに過ごしてきました。しかし、4カ月間恥骨のムズムズ感が消えないので高橋クリニックの診察に来院されました。
この写真は膀胱出口を中心に側面から観察した写真です。黒く見えるのが膀胱にたまった尿です。写真の上がおなか側で下が背中側になります。特徴的なのは膀胱出口が膀胱側に山のようにせり出していることです。

Bns23261f28d0905pp上の写真では、超音波エコー検査を読まない泌尿器科医にもおそらく分からないので注釈をつけました。
膀胱出口の山全体に硬化像が確認できます。膀胱括約筋も厚くなっています。

排尿障害を認めたので、患者さんの悩まれている症状は、膀胱頚部硬化症による膀胱刺激症状と診断し、α-ブロッカーであるエブランチルを処方しました。

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瘀血(おけつ)

漢方で血液の流れの悪い状態を「瘀血おけつ」といいます。
超音波の検査で偶然に見つけられる所見です。女性ばかりではなく、男性にも認められます。血液の流れが悪いために起きているであろう病気を西洋医学的には「骨盤内静脈うっ滞症候群」と称されます。

Oketsulist漢方の瘀血は、それだけで独立した病態で、瘀血そのものが病気の根本原因だとされています。気虚すなわち気というエネルギーが不足して、気のエネルギーを原動力にしている血流が十分に働かなくなるというものです。しかし、西洋医学的な立場からすれば、それでは納得がいきません。現在の病気の中で瘀血状態を例に挙げれば、食道静脈瘤、下肢静脈瘤、精索静脈瘤などがあげられます。(表は、基礎中医学、たにぐち書店から)

食道静脈瘤は、肝硬変が原因で門脈圧が上昇したために起きます。上腸管膜静脈→門脈→右心房ルートが閉ざされたために、血流が迂回・遠回りして、脾静脈→食道静脈と流れ、最終的には右心房に戻るルートです。ところが迂回ルートは、本来の流れではないので、静脈は病的に凸凹に腫れ、時として破れて食道に大出血をきたすので吐血します。それが肝硬変の食道静脈瘤破裂です。
食道静脈瘤を治すには、漢方の考え方からすれば、単に食道静脈の流れをよくすれは良いということになります。しかし、漢方で食道静脈瘤を治した!という情報を耳にしたことがありません。

0149ph15a【写真】
血流の悪さは、通常、下流の流れの悪さがリミッターになり、血流全体の流れの悪さになります。

P1【写真】
例えば、高速道路の渋滞原因は、走行する車の台数が多い自然渋滞の場合と、料金所や交通事故による物理的原因による渋滞に分けて考えることができます。
人間の体の中で血流が急激に増えることはありませんから、生命現象で血流の悪さは、下流での流れの悪さ一つに原因がしぼられ特定されます。
漢方の考え方でいえば、高速道路が渋滞するのは、車に流れようとするエネルギーがない(ガス欠?)から渋滞するのだということになります。荒唐無稽な考え方です。

食道静脈瘤の場合は、肝硬変が物理的原因です。肝硬変を治すことができなければ、バイパス手術で上腸管膜静脈の血流を一部だけ下大静脈につなげれば、食道静脈の負荷が軽減します。全部をつなげると血流内の栄養素が肝臓で処理されなくなり、それはそれで困ります。

Varix22131f392d瘀血と思われる患者さんの実例をあげます。患者さんは30歳代後半のご婦人です。
平成20年2月に急性膀胱炎になりました。
頻尿・下腹部痛・排尿痛で抗生剤の投与を受けました。しかし、下腹部の痛みが強くなり、猪苓湯・バップフォの投与を受けましたが治りません。平成20年3月に女子医大を受診、五淋散を処方されましたが効きません。地元の泌尿器科でIPD・当帰加補中益気湯を服用しています。
高橋クリニックに平成20年5月に来院しました。
当時の症状は、膣疼痛・右恥骨と鼠径部痛です。この超音波エコー検査は平成20年5月の写真です。膀胱出口のわずかな飛び出し所見があり、ウロフロメトリー検査で、強い排尿障害を認めたので、エブランチルを処方しました。治療の成果が出て、症状は30%ほどに軽減したので、地元の医師にお薬を処方して治療を続けていました。

Varix22131f392d2peところが、最近になり再び痛みが強くなり(80%)、視鏡手術を希望されたので、初診から1年後の平成21年5月に内視鏡手術を受けに来院されました。
この超音波エコー検査は、手術当日の写真です。供覧するためにコントラストを強くしています。
1年前の超音波エコー検査と比較して容易に分かることは、膀胱出口周囲の静脈がとても拡張した(瘀血)ということです。

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腎盂腎炎と膀胱炎

私が唱える慢性膀胱炎と間質性膀胱炎の原因は、排尿障害です。(異論もあるでしょうが・・・)
慢性膀胱炎や間質性膀胱炎症状で来院される患者さんにお聞きすると、過去に腎盂腎炎の既往があります。

腎盂腎炎とは腎臓に細菌が浸入して感染を起こす病気です。
常識的に腎臓には細菌がいません、無菌状態です。すると腎盂腎炎になるためには、どこからか細菌が浸入しなければなりません。一番考えやすいのは、膀胱炎の原因菌が腎臓まで昇ってきて細菌感染を起こすというものです。
腎臓(腎盂)→尿管→膀胱までの尿の流れは正常では一方通行です。逆走はありません。
ところがある病気のときに限って、膀胱→尿管→腎臓と一方通行を逆走することがあります。それが膀胱尿管逆流症という病気です。

Vurradionuclidecystogramこの写真はラジオアイソトープを利用した検査の経過を示すものです。
排尿中の膀胱内の尿を観察しています。始め膀胱内にだけ認められた尿が、排尿中に次第次第に尿管を伝わって腎盂(腎臓)に上昇していくのが分かります。そして排尿終了後も膀胱内に尿が残っています。いわゆる残尿です。(排尿障害を認めたことになります。)
要するに、腎臓に逆流するはずのない膀胱尿が、逆流するのです。この状況を端的に示す病名が、膀胱尿管逆流症なのです。

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心因性頻尿で4年

4年前から「心因性頻尿」の診断で治療されていますが、治らない50歳代のご婦人です。1日13回と夜間1回の頻尿です。
尿がたまると、動悸がして後頚部が痛くなりますが(関連痛と関連痛に準じた自律神経症状)、排尿すると症状は落ちつきます。
地元に大学病院と泌尿器科開業医を受診しましたが、「心因性頻尿」と診断され、次のような処方がされています。
ドグマチール・パキシル・セルシン・ブラダロン・ルボックス・グランダキシン・清心連子です。

Boo21255f515尿流量測定ウロフロメトリー検査を行なうと、腹圧性のギザギザの排尿曲線で力のないグラフです。案の定の排尿障害です。
自尿は317ml、残尿は30ml(正常は0)です。
Boo21255f5142D側面画像です。
膀胱出口がチョッと盛上がっています。
排尿障害結果の膀胱出口周囲の2次的変化です。
Boo21255f5132D正面画像でも盛り上がりが確認できます。
膀胱出口周囲の膀胱壁に静脈瘤も確認できます。

この3D画像を見ると、今まで見えなかった所見が確認できました。

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