カテゴリー「間質性膀胱炎と周辺疾患」の記事

繰り返す無菌性膀胱炎、実は膀胱過敏症

中高年のご婦人で、膀胱炎症状を繰り返す方が多く見られます。
尿検査で白血球や細菌が認められ、抗生剤・抗菌剤の投与で尿は直ぐにきれいになるのですが、残尿感や頻尿や違和感がいつまでも残り、悩まれる患者さんが多くおられ、ます。

このような患者さんの場合、その病気は膀胱炎ではなく、膀胱過敏症である場合がほとんどです。
原因不明の慢性膀胱炎、間質性肺炎、神経性膀胱炎、心因頻尿、神経因性膀胱、膀胱疼痛症、気のせい、歳のせいと誤診されてしまうのです。

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炎症性ポリープと膀胱癌

Polyp25809f25information患者さんは日本に在住の20代の中国人女性です。
たまたま中国に里帰りした時に、頻尿・残尿感などの膀胱炎症状で上海の有名な病院を受診、内視鏡検査を実施したところ、膀胱出口に小さなポリープが発見されました。(診療情報参照)
主治医は、「前癌状態のポリープ」と診断し、平成22年10月入院内視鏡手術になりました。手術後、膀胱癌の予防にと抗癌剤を3カ月間に5回膀胱注入されました。患者さんの一番の訴えである頻尿はますます悪化し、1日20回、さらに夜間に3回もトイレで目が覚めるまでに悪化しました。
高橋クリニックを受診した頃には、頻尿の他に下腹部の痛みと緊張感、仙骨部の痛みが主な症状でした。

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膀胱頚部硬化症の内服薬による治療効果

Bns23261f28d0905間質性膀胱炎や慢性膀胱炎・過活動膀胱の原因と信じている(私だけ?)膀胱頚部硬化症は、超音波エコー検査で容易に観察できます。
この写真は、20代後半のご婦人の超音波エコー検査所見です。
初診の4か月前から恥骨の上がムズムズして気分が悪くなりました。婦人科を受診しても「気のせい」と診断されます。不思議なことに生理中にはムズムズ感が消えるのです。中学生頃(15年前)から排尿した後に、尿道にムズムズ感があったのですが、誰にも言わずに過ごしてきました。しかし、4カ月間恥骨のムズムズ感が消えないので高橋クリニックの診察に来院されました。
この写真は膀胱出口を中心に側面から観察した写真です。黒く見えるのが膀胱にたまった尿です。写真の上がおなか側で下が背中側になります。特徴的なのは膀胱出口が膀胱側に山のようにせり出していることです。

Bns23261f28d0905pp上の写真では、超音波エコー検査を読まない泌尿器科医にもおそらく分からないので注釈をつけました。
膀胱出口の山全体に硬化像が確認できます。膀胱括約筋も厚くなっています。

排尿障害を認めたので、患者さんの悩まれている症状は、膀胱頚部硬化症による膀胱刺激症状と診断し、α-ブロッカーであるエブランチルを処方しました。

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瘀血(おけつ)

漢方で血液の流れの悪い状態を「瘀血おけつ」といいます。
超音波の検査で偶然に見つけられる所見です。女性ばかりではなく、男性にも認められます。血液の流れが悪いために起きているであろう病気を西洋医学的には「骨盤内静脈うっ滞症候群」と称されます。

Oketsulist漢方の瘀血は、それだけで独立した病態で、瘀血そのものが病気の根本原因だとされています。気虚すなわち気というエネルギーが不足して、気のエネルギーを原動力にしている血流が十分に働かなくなるというものです。しかし、西洋医学的な立場からすれば、それでは納得がいきません。現在の病気の中で瘀血状態を例に挙げれば、食道静脈瘤、下肢静脈瘤、精索静脈瘤などがあげられます。(表は、基礎中医学、たにぐち書店から)

食道静脈瘤は、肝硬変が原因で門脈圧が上昇したために起きます。上腸管膜静脈→門脈→右心房ルートが閉ざされたために、血流が迂回・遠回りして、脾静脈→食道静脈と流れ、最終的には右心房に戻るルートです。ところが迂回ルートは、本来の流れではないので、静脈は病的に凸凹に腫れ、時として破れて食道に大出血をきたすので吐血します。それが肝硬変の食道静脈瘤破裂です。
食道静脈瘤を治すには、漢方の考え方からすれば、単に食道静脈の流れをよくすれは良いということになります。しかし、漢方で食道静脈瘤を治した!という情報を耳にしたことがありません。

0149ph15a【写真】
血流の悪さは、通常、下流の流れの悪さがリミッターになり、血流全体の流れの悪さになります。

P1【写真】
例えば、高速道路の渋滞原因は、走行する車の台数が多い自然渋滞の場合と、料金所や交通事故による物理的原因による渋滞に分けて考えることができます。
人間の体の中で血流が急激に増えることはありませんから、生命現象で血流の悪さは、下流での流れの悪さ一つに原因がしぼられ特定されます。
漢方の考え方でいえば、高速道路が渋滞するのは、車に流れようとするエネルギーがない(ガス欠?)から渋滞するのだということになります。荒唐無稽な考え方です。

食道静脈瘤の場合は、肝硬変が物理的原因です。肝硬変を治すことができなければ、バイパス手術で上腸管膜静脈の血流を一部だけ下大静脈につなげれば、食道静脈の負荷が軽減します。全部をつなげると血流内の栄養素が肝臓で処理されなくなり、それはそれで困ります。

Varix22131f392d瘀血と思われる患者さんの実例をあげます。患者さんは30歳代後半のご婦人です。
平成20年2月に急性膀胱炎になりました。
頻尿・下腹部痛・排尿痛で抗生剤の投与を受けました。しかし、下腹部の痛みが強くなり、猪苓湯・バップフォの投与を受けましたが治りません。平成20年3月に女子医大を受診、五淋散を処方されましたが効きません。地元の泌尿器科でIPD・当帰加補中益気湯を服用しています。
高橋クリニックに平成20年5月に来院しました。
当時の症状は、膣疼痛・右恥骨と鼠径部痛です。この超音波エコー検査は平成20年5月の写真です。膀胱出口のわずかな飛び出し所見があり、ウロフロメトリー検査で、強い排尿障害を認めたので、エブランチルを処方しました。治療の成果が出て、症状は30%ほどに軽減したので、地元の医師にお薬を処方して治療を続けていました。

Varix22131f392d2peところが、最近になり再び痛みが強くなり(80%)、視鏡手術を希望されたので、初診から1年後の平成21年5月に内視鏡手術を受けに来院されました。
この超音波エコー検査は、手術当日の写真です。供覧するためにコントラストを強くしています。
1年前の超音波エコー検査と比較して容易に分かることは、膀胱出口周囲の静脈がとても拡張した(瘀血)ということです。

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腎盂腎炎と膀胱炎

私が唱える慢性膀胱炎と間質性膀胱炎の原因は、排尿障害です。(異論もあるでしょうが・・・)
慢性膀胱炎や間質性膀胱炎症状で来院される患者さんにお聞きすると、過去に腎盂腎炎の既往があります。

腎盂腎炎とは腎臓に細菌が浸入して感染を起こす病気です。
常識的に腎臓には細菌がいません、無菌状態です。すると腎盂腎炎になるためには、どこからか細菌が浸入しなければなりません。一番考えやすいのは、膀胱炎の原因菌が腎臓まで昇ってきて細菌感染を起こすというものです。
腎臓(腎盂)→尿管→膀胱までの尿の流れは正常では一方通行です。逆走はありません。
ところがある病気のときに限って、膀胱→尿管→腎臓と一方通行を逆走することがあります。それが膀胱尿管逆流症という病気です。

Vurradionuclidecystogramこの写真はラジオアイソトープを利用した検査の経過を示すものです。
排尿中の膀胱内の尿を観察しています。始め膀胱内にだけ認められた尿が、排尿中に次第次第に尿管を伝わって腎盂(腎臓)に上昇していくのが分かります。そして排尿終了後も膀胱内に尿が残っています。いわゆる残尿です。(排尿障害を認めたことになります。)
要するに、腎臓に逆流するはずのない膀胱尿が、逆流するのです。この状況を端的に示す病名が、膀胱尿管逆流症なのです。

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心因性頻尿で4年

4年前から「心因性頻尿」の診断で治療されていますが、治らない50歳代のご婦人です。1日13回と夜間1回の頻尿です。
尿がたまると、動悸がして後頚部が痛くなりますが(関連痛と関連痛に準じた自律神経症状)、排尿すると症状は落ちつきます。
地元に大学病院と泌尿器科開業医を受診しましたが、「心因性頻尿」と診断され、次のような処方がされています。
ドグマチール・パキシル・セルシン・ブラダロン・ルボックス・グランダキシン・清心連子です。

Boo21255f515尿流量測定ウロフロメトリー検査を行なうと、腹圧性のギザギザの排尿曲線で力のないグラフです。案の定の排尿障害です。
自尿は317ml、残尿は30ml(正常は0)です。
Boo21255f5142D側面画像です。
膀胱出口がチョッと盛上がっています。
排尿障害結果の膀胱出口周囲の2次的変化です。
Boo21255f5132D正面画像でも盛り上がりが確認できます。
膀胱出口周囲の膀胱壁に静脈瘤も確認できます。

この3D画像を見ると、今まで見えなかった所見が確認できました。

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間質性膀胱炎と周辺疾患

以前にも「間質性膀胱炎と類似疾患」というテーマで解説しようとしましたが、途中になってしまいました。その後の臨床経験の蓄積で新しい知見も増えましたので、ここで改めて解説します。
下部尿路症状を含む様々な下半身の病気(まとめて下部尿路症と呼びます)は、いろいろあります。
ここでテーマにしている慢性膀胱炎・間質性膀胱炎、特に間質性膀胱炎もその一つです。
他に、慢性前立腺炎、過活動膀胱、慢性骨盤疼痛症候群、神経因性膀胱、心因性頻尿、神経症、前立腺肥大症などが上げられます。
私の頭の中では、下記のようなイメージで、それら病気を理解しています。

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上図のイメージを一つ一つ解説しましょう。
排尿障害
病気、下部尿路症というファミリーのご主人は、排尿障害です。(聞き飽きたでしょう?)この排尿障害の原因は、機能性膀胱頚部硬化症、あるいは機能性膀胱出口閉塞症です。わざわざ「機能性」と冠したのは、始めの内は膀胱出口が硬くなく、完全閉塞していないからです。
患者さんご本人も自覚していない排尿障害が何年もあるいは何十年もかけて進行すると、機能性から器質性(本当に硬くなること)に変化していきます。器質性まで進むと、超音波エコー検査で膀胱出口の硬化像膀胱頚部周囲の静脈瘤が確認できます。また、尿道結石と呼ばれる尿道内の石灰を確認できるようになります。
排尿の機能検査である尿流量測定ウロフロメトリー検査で、尿の勢いが悪くなり、残尿も出現します。

膀胱三角部過敏
下部尿路症ファミリーの奥様は膀胱三角部過敏です。
膀胱頚部あるい膀胱出口の硬化は、膀胱三角部まで影響が及びます。膀胱三角部硬化性肥厚です。膀胱三角部は膀胱の尿充満を察知するセンサーの役割を担っていますから、これが壊れると「尿がいっぱいだ!いっぱいだ!」と常に警報を鳴らすようになります。

関連痛
この壊れた警報器は、脊髄を常に刺激します。刺激された脊髄は、この異常事態を何とかするべく、脊髄神経内のたくさんのニューロン(神経単位)を連結させ(シナプス結合)、増幅回路ともいうべき神経回路を形成します。この増幅回路に無理やり結合された下半身の知覚神経・自律神経・運動神経は、異常感覚や異常反応として、脳中枢や末梢の血管・皮膚を刺激します。これが関連痛現象です。
下部尿路症ファミリーの放蕩息子です。とらえ所がありません。

3点セット
Discpic以上の3点(排尿障害・膀胱三角部過敏・関連痛)がセットになり、男性の場合は慢性前立腺炎、女性の場合は間質性膀胱炎という症状群になるのだと私は考えています。下部尿路症ファミリーが結束するのですから、恐ろしいですね。
病態生理学的3点セットが存在しても、これらに基づく病的症状がすべて整っているとは限りません。会陰部痛などの関連痛だけの患者さんもいますし、1日30回の頻尿などの膀胱三角部刺激症状だけの患者さんもいます。【排尿障害症状がない人・ある人・強くある人】、【膀胱三角部過敏症状がない人・ある人・強くある人】、【関連痛症状がない人・ある人・強くある人】と分けると、全部で3×3×3=27通りの症状の組合せが考えられますから、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんには、大雑把に分けて27通りの症状を訴える筈です。掲示板を読むと、痛み派と頻尿派に分けて討論していますが、現実にはもっと多いのです。

脊髄の感受性=ネットワークの発達程度
Kanjuでは、なぜ原因があるにもかかわらず、症状のある人・ない人・強くある人の3パターンに分かれるのでしょう。
それは、脊髄内でのニューロン・ネットワークの多さに起因するのです。膀胱三角部からの情報が大量に脊髄内に入り、膀胱三角部担当の脊髄内ネットワークが発達している場合、情報量に応じた膀胱症状が出現します。
また、情報量がまかない切れないほど多い場合、あるいは膀胱三角部担当のネットワークが程ほどの場合には、体表感覚の脊髄内ネットワークに情報が伝達されますから、関連痛症状も出現します。
膀胱三角部担当のネットワークが未発達の場合、体表感覚のネットワークだけに情報が流れますから、膀胱症状はなく、関連痛症状のみになります。
膀胱三角部担当ネットワークも体表感覚ネットワークも未発達の場合には、膀胱症状も関連痛症状も出現しません。

慢性前立腺炎
原因の3点セットがそろい、それによる症状が比較的そろっているのが、男性の場合、非細菌性慢性前立腺炎と診断されるのだと考えています。
しかし、患者さんの中には膀胱三角部過敏症状が比較的強い頻尿グループと会陰部痛などの関連痛症状が比較的強い痛みグループに分けて考える人もいます。それぞれのグループの患者さんは、互いに異なる症状の慢性前立腺炎に対して、違う病気?と思っている方もおられるでしょう。
傾向的には、座ることが出来ないほどの痛みを訴えるグループが多いようです。1日50回以上の頻尿を訴える人は、ほとんどいません。
運良くわずかに前立腺が大きいと、前立腺肥大症と誤診され?排尿障害の治療が受けられるので、慢性前立腺炎症状が改善します。

間質性膀胱炎
原因の3点セットがそろい、それによる症状が比較的そろっているのが、女性の場合、間質性膀胱炎と診断されるのだと考えています。
慢性前立腺炎とは異なり、患者さんを頻尿グループと痛みグループに明確に分けられません。頻尿と痛みの両者を持ち合わせています。
傾向的には、極端な頻尿が多く、1日70回以上のご婦人を診察・治療した経験があります。30回~50回では私も驚かなくなりました。慢性前立腺炎の患者さんのように座ることが出来ないほどの痛みを訴えるご婦人にはお会いしたことがありませんが、陰部痛や恥骨部痛などの痛みが1日に何回か突然襲ってくる患者さんが多いようです。突然襲って来る恐怖が、患者さんの精神を蝕み、病気を悪化させるのです。

前立腺肥大症
排尿障害が次第に強くなり、泌尿器科医で調べてみたら前立腺肥大症と診断されます。前立腺が大きく前立腺肥大症があるから排尿障害になったと診断された訳です。一般的には、その通りなのですが、実はここに盲点があるのです。
前立腺は正常の大きさが20cc~25ccとされています。この大きさを目安にして医師は前立腺肥大症を診断するのですが、例えば大きさが25cc前後の場合、正常の大きさなので、排尿障害があっても「気のせい」あるいは「慢性前立腺炎」と診断されてしまいます。ところが30ccを超える大きさの場合は、正常よりも大きいので「前立腺肥大症」と診断され、排尿障害を晴れて正当に評価されるのです。前立腺の大きさが、高々5cc前後の違いだけで、「気のせい」か「前立腺肥大症」の大きな違いになるのです。
では、もしも前立腺の大きさが50cc以上もあって排尿障害がない場合には、その人は「気のせい」なのでしょうか?このように考えると面白いでしょう?
実は、前立腺肥大症の患者さんはもともと機能性膀胱頚部硬化症が存在しないと、大きな前立腺肥大症になっていても排尿障害にならないのです。逆に、機能性膀胱頚部硬化症があれば、どんなに小さな前立腺であっても強い排尿障害が出てくるのです。(この考え方は私のオリジナルです。)
要するに、排尿障害の要件においては、前立腺肥大症は必要条件かも知れませんが、十分条件ではないのです。

神経因性膀胱
前立腺肥大症が進んでしまった場合や排尿障害が進んだ場合には、膀胱の機能が極端に低下する神経因性膀胱という診断になります。
つらい排尿障害の症状があっても放置する人はいませんから、排尿障害症状のほとんど感じない人、つまりは排尿障害症状も含めた膀胱三角部担当の脊髄内ネットワークが未発達の患者さんが、神経因性膀胱になるのでしょう。
ダメになってしまった膀胱を様々な検査を行い、神経因性膀胱の○○タイプだと診断します。ダメになった膀胱をタイプ分けしても、医師の自己満足に終始し、実際は原因は見えてこないのです。脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患による排尿中枢障害か、糖尿病などの末梢神経障害などが原因とされ、その時点で治療は対症療法になります。「神経だから治しようがない」とさじを投げられ、ウブレチド・ベサコリンなどの内服薬と自己導尿を指導されます。本当の原因治療には直接結び付かないので、結果として治せなくなります。
私は神経因性膀胱と過去に診断されていた患者さんを2人内視鏡手術で改善させています。

過活動膀胱
臨床的には、突然起きる尿意切迫感と切迫性尿失禁が認められる場合に、過活動膀胱と診断されます。
現在、本当の意味での過活動膀胱は、原因不明です。前立腺肥大症や慢性膀胱炎が元々あっての過活動膀胱は、続発性あるいは二次的過活動膀胱という診断になります。
3点セットの内、膀胱三角部過敏症状だけが顕著の患者さんが、過活動膀胱と診断されるのです。つまりは、膀胱三角部担当の脊髄ネットワークのみが発達している人です。

心因性頻尿
過活動膀胱という病名が確立される以前には、検査を行っても異常が出ない場合には、心因性頻尿あるいは神経性頻尿と診断されていました。膀胱三角部過敏症状だけが顕著な患者さんです。
医師の決まり文句が「気にしないようにしなさい」です。「気にしないように」出来ないから、また下(しも)の病気で恥ずかしいと思いながら受診したのにも関わらず、医師のこのようなセリフは患者さんのこころを傷つけます。

神経症
別名、陰部神経症ともいいます。陰部を中心とした違和感、痛みがあります。痛みは右だったり左だったり移動しますから、精神的?と誤解されます。感覚は脊髄内のニューロン・ネットワークでスイッチが入ったり入らなかったりですから、移動性症状が生じても不思議ではありません。移動性関連痛症状と理解すれば納得がいくでしょう。

慢性骨盤疼痛症候群
アメリカで診断される病名です。Chronic Pelvic Pain Syndrome(CPPS)というのが正式名称です。
関連痛症状だけが前面に出ている症候群だと考えてよいでしょう。医師は痛み症状に振り回され、軽微な排尿障害には気がつかないか無視するか検査しないので、結局は対症療法のみに終始します。

非淋菌性非クラミジア性慢性尿道炎
尿道の違和感が常にある、尿道から分泌物が出る、白血球が検出されるなどで、治らない慢性尿道炎として付けられる病名が非淋菌性非クラミジア性慢性尿道炎です。始めの図には記載していませんが、この病気も排尿障害が原因です。
そのような患者さんを排尿障害の一連の検査を行うと、案の定、排尿障害が証明されます。関連痛症状の尿道限局型というべき病態です。自律神経も刺激されますから、尿道分泌液が過剰に分泌され、炎症反応と錯覚して白血球も混入します。

線維筋痛症(仮説)
全身が痛くなる原因不明の病気です。自己免疫疾患・膠原病として捉えられています。
関連痛は、その病態の根拠から下半身が主体です。しかし、来院される慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんの中には、首の痛み・肩の痛み・背中の痛み・舌の痛み・手のシビレなど上半身の症状を訴える患者さんが、結構おられます。線維筋痛症だと過去に診断されているご婦人も来院されました。
排尿障害によって起きた膀胱三角部過敏の情報が、脳中枢に向かって脊髄を上向する間に、所々でニューロンを変えて行きます。その時に、脊髄の各レベル近くの体表・筋肉の痛覚神経を刺激するので、線維筋痛症という原因不明の病気になるのだろうと考えています。
民放テレビの女性アナウンサーの自殺で有名になった病気です。線維筋痛症の患者さんで、頻尿やオシッコの出の悪さを自覚しておられたら、その可能性が高いと考えます。

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シェーグレン症候群と間質性膀胱炎

シェーグレン症候群は耳慣れない病名でしょう?症状は特徴的で、涙が出ない(眼乾燥)と唾液が出ない(口腔内乾燥)です。関節リウマチと同じ自己免疫疾患と考えられています。
日本の届出では4万2千人、潜在的には10万人いるとされています。
涙が出ないので目の灼熱感・掻痒感があります。唾液が出ないので発話困難・嚥下困難になることがあります。治療として人工涙の点眼や人工唾液のスプレーの対処療法です。日常生活に支障が出る病気です。

さて、なぜシェーグレン症候群のお話をしたかというと、間質性膀胱炎で悩まれていた秋田県在住の60歳代のご婦人(#19188)が、たまたまシェーグレン症候群も20年間わずらっていたのです。1日10回以上の点眼と口腔内スプレーを日課としていました。ちなみに、間質性膀胱炎は10年間悩まれています。

10年前に初め急性膀胱炎と診断され、膀胱鏡検査を行ないましたが、ただ炎症所見があると言われただけでした。
その後、地元の労災病院で組織検査を行いましたが、悪性所見はないということで、病名がないまま対症療法を2年間受けていました。
その後、慢性尿道炎の診断で、漢方薬治療を5年間ズ~と受けていましたが、苦しんでいる症状は変わらずに、娘さんがこのブログを発見して当院を受診しました。

この患者さんの頻尿はすごくて、1日30回~50回!、夜間は5回~20回!です。グレープフルーツジュースやオレンジジュースなどの柑橘系果物を食すると、症状は悪化します。また、排尿痛があり、尿道・会陰部や下腹部がとても痛くなるのです。
今までの病歴と現在の症状から、一般的な泌尿器科医であれば間質性膀胱炎と診断するでしょう。
検査では案の定、排尿障害を認め、エブランチルを処方しました。2ヶ月の服用で、頻尿が1日15回、夜間は5回に減少しましたが、手術を強く希望されたのです。

昨年の11月に内視鏡手術を行ないました。膀胱容量はとても小さく120mlです。膀胱の壁は、以前の組織検査のため3箇所以上に痛々しい引きつれ瘢痕がありました。
しかし、術後の経過が思わしくなく、カテーテルを抜いても思うように自分で排尿できなかったので、手術後18日間カテーテル留置することになりました。(通常は1日間です。)

先日、手術後2ヶ月経過した時点で来院されました。
頻尿は・・・残念ながら・・・未だ改善せず、1日25回で夜間6回~15回です。しかし尿道・会陰部痛などの痛みが全くなくなりました。しかもオレンジなどの柑橘系を食しても症状が悪化しないのです。食事に気を使わなくなったそうです。
さらに喜ばしいことがありました。20年間悩んでいたシェーグレン症候群が軽快したのです!丸1日、目薬も人工唾液もし忘れてしまう日が出てきたのです。現在、目薬が1日0回~2回、人工唾液スプレーが1日0回~1回です。以前は10回以上の点眼・スプレーしていたのですから、症状が10分の1になったともいえるのです。
手術前に、「もしかすると、シェーグレン症候群が良くなるかも知れないよ。期待してね。」と告げていたので、患者さんは理由が分からず驚くばかりです。

シェーグレン症候群が改善するだろうと私が予言した理由に関しては、後日解説しましょう。

Sjogren【補足】
調べてみると、シェーグレン症候群と間質性膀胱炎の報告が幾つかありました。

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アトピー性皮膚炎と膀胱炎

膀胱炎を繰返す19歳のご婦人が来院されました。30分~2時間に1回の頻尿と尿意切迫・残尿感が強く、他の医療機関で抗生剤(クラビット)やエブランチル、バップフォを処方されたのですが、全く治らないそうです。細菌検査ではマイナスです。
来院時の尿流量測定ウロフロメトリー検査は正常範囲内ですが、残尿量測定検査で残尿を34ml認めました。排尿障害が原因の膀胱炎症状と判断して、内服治療を行ないました。しかし改善しないので、患者さんの強い希望もあり内視鏡手術を行ないました。
手術前からアトピー性皮膚炎のことを伺っていましたが、白い肌に唐突に皮膚炎所見に違和感を感じました。以前にも排尿障害の手術後、頑固な首の痛みがなくなった男性患者さんを経験したことがあるので、承諾を得て術後から来院するたびに写真撮影を行ないました。
下記の写真は、経時的な左腰部と左前腕の皮膚所見です。
【手術後1日目】
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痒くて掻いてしまうので、所々に掻き壊しの赤い点々が散見できます。

【手術後7日目】
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術後1週間ですが、書き壊しの所見がなくなりました。皮膚表面のツブツブ感が軽快しているように見えます。

【手術後2ヶ月】
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手術後2ヶ月(60日)経過しています。頻尿は2時間に1回程度に落ち着き、尿意切迫や残尿感も30%程度に落ち着きました。そして皮膚の所見には驚くばかりです。皮膚炎の所見が改善しツブツブ感がなくなり色も薄くなっています。痒みは全くないそうです。

【考察】
排尿障害の治療を行なうと、一見全く無関係と思われた病気や症状が軽快することがあります。皮膚や臓器を含めた体の全ての器官が血液・リンパ・ホルモン・神経などで深く密接にリンクしているのです。ですから、高々膀胱だけの障害であっても、全身に影響が出て、それぞれの器官での何らかの障害になるのです。
この患者さんのように、膀胱炎とは一見無関係なアトピー性皮膚炎が改善したのは、嬉しい的中でした。slow diseaseの典型例です。

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間質性膀胱炎の類似疾患

膀胱には原因不明と思われる病気がいくつか存在します。
慢性膀胱炎
間質性膀胱炎
過活動性膀胱
膀胱出口閉塞
神経因性膀胱
心因性頻尿

慢性膀胱炎chronic cystitis
ここでは細菌が原因の慢性膀胱炎を除外します。いわゆる非細菌性慢性膀胱炎です。尿検査は正常で膀胱鏡検査で膀胱三角部炎を認めます。頻尿・残尿感を強く訴えます。

間質性膀胱炎interstitial cystitis IC
原因不明の有痛性膀胱疾患です。頻尿・尿意切迫感を主症状とし、膀胱充満時に恥骨を始め下半身の痛みを訴えます。痛みがあることから、疼痛性膀胱症候群painful bladder syndrome PBSとも云われます。膀胱鏡検査で、還流液充満時に点状出血や膀胱粘膜の亀裂を観察できます。

過活動性膀胱overactive bladder OAB
尿意切迫感を主訴とし、頻尿・夜間頻尿・切迫性尿失禁を伴う病気です。過活動性膀胱の尿意切迫感は、突然起こり抑えることが出来ないほどの強い尿意で、失禁することもあるとうい状態です。

膀胱出口閉塞bladder outlet obustruction BOO
膀胱出口が排尿時に十分開いてくれない状態を云います。男性の場合、前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症が有名です。女性の場合は、膀胱排尿筋内尿道括約筋協調不全という状態です。

神経因性膀胱neurogenic bladdder
膀胱の蓄尿・排尿を司る神経・筋肉の機能傷害による、蓄尿異常・排尿異常を来たす病気を云います。一般的に脳血管障害・糖尿病の神経障害によるものが有名です。

心因性頻尿
頻尿の明らかな原因がない場合に「心因性」と病名に冠されます。ですが、正確に的確な検査や診察を行わずに安易にこの病名をつける医師が多いのも事実です。

これらの病気を一つ一つ別々の病気として考えると、病気の解決策が見えてきませんが、どの病気も【膀胱三角部・膀胱出口】が何らかの異常をきたしていると考えると、その真の姿が次第に見えてきます。
私は膀胱三角部・膀胱出口(膀胱頚部)を一つのユニットとして考え、病気のスタート時点でのユニット異常は程度の差こそあれ同じだが方向性が異なったので、最終ゴールが異なる症状の病気として患者さんや医師の前に発現したんだと考えると、論理に無理がないように思えます。
現時点で泌尿器科医の間で一般的な常識を表にまとめました。もちろん、典型的な所見のみです。

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        排尿障害 膀胱刺激 膀胱容量  関連痛 尿路
         の自覚   症状                感染症
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慢性膀胱炎    -   残尿感    縮小     +   - 
間質性膀胱炎   -    頻尿     縮小     +   -
過活動性膀胱   -  尿意切迫感   縮小         -
膀胱出口閉塞   +            色々          +
神経因性膀胱   +            拡大     -   +
心因性頻尿    -    頻尿     正常      -   -
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高橋クリニックに来院された患者さんの多くは、すでにドクターショッピングをされ、診断名がついています。例えば、上の表で排尿障害を自覚していない慢性膀胱炎・間質性膀胱炎・過活動性膀胱・心因性頻尿の患者さんを丁寧に拝見すると、必ずと言っていいほど明らかな排尿障害を認めます。尿流量測定ウロフロメトリー検査でオシッコの勢いが悪く、残尿量測定検査で明らかな残尿を認めるのです。すると、上の表に掲げた病気のすべてに排尿障害が存在することになります。一見脈絡のないように思えた病気のキーワードが排尿障害なのです。
ところが、前医では尿検査・超音波エコー検査・レントゲン検査・膀胱鏡検査は行いますが、尿流量測定ウロフロメトリー検査・残尿量測定検査を行っていないのが実情です。行ったとしても「タマタマでしょう。」などと歯牙にもかけないのです。これでは病気の本当の姿を見つけることは出来ません。

【実例】
34歳ご婦人です。
平成12年頃より膀胱炎症状と尿道痛があり、近くの診療所と基幹病院の泌尿器科を受診しましたが、尿道の異常ということで治療や処置を受けたが改善しません。
平成15年にある有名病院で、間質性膀胱炎と診断され、膀胱水圧拡張を受け、一週間入院しました。頻尿は治まりましたが、尿道の痛みは変わりませんでした。
平成17年になり、痛みが増強し、オシッコも出にくいので高橋クリニックを受診しました。
検査所見をご覧にいれます。

17052f34ic排尿前の超音波エコー検査拡大像で観察した膀胱の所見です。膀胱壁が肥厚し凸凹しています。排尿障害で膀胱が毎回力んでいる結果と考えることが出来ます。

17052f34ic2排尿前の膀胱全体像です。

17052f34ic3排尿直後の残尿です。残尿量111mlです。前立腺肥大症の場合、残尿量50ml以上が手術適応になりますから、かなりの量です。排尿量が288mlですから、全体量約400mlの4分の1は残してしまったことになります。

17052f34ic4尿流量測定ウロフロメトリー検査のグラフです。34歳のご婦人の排尿とは思えないチョロチョロのオシッコです。尿量288mlを81秒かけて排尿しています。

過去の間質性膀胱炎と診断された時点では、良心的に考えれば排尿障害はなかったのかも知れません。でも、患者さんにお聞きすると、私が初診時に行ったこれらの検査は行っていないそうですから、排尿障害を否定もせずに間質性膀胱炎と診断し治療を行ったことになります。
本来、間質性膀胱炎の診断基準では、排尿障害を除外しなければなりません。ところが、現実には患者さんの訴える症状を聞いただけで、原因不明の間質性膀胱炎と即断してこの患者さんの例のように治療を行うのが常です。この現実を私は憂うのです。「もっと正確な的確な検査・診断をしろ!」と...。

実際に現時点で間質性膀胱炎の治療としては、麻酔下に行われる膀胱鏡検査で、点状出血=間質性膀胱炎を観察・証明し、膀胱水圧拡張術を行うのがお決まりのコースです。
この治療法の目的は、現時点での膀胱容量を限界以上に拡張させることです。その結果、膀胱壁の平滑筋を部分断裂させ、膀胱壁内の伸展感覚レセプターも破壊されます。早い話、敏感で縮こまった膀胱を大きく引き伸ばし鈍感にさせる治療法です。現代医療からすると、とても原始的で野蛮な治療法です。繊細な外科手術を行う泌尿器科医が考え出した治療とも思えません。
今回の実例の患者さんが、この膀胱水圧拡張術を受けた時点で、もしも排尿障害を抱えていたとしたら、頑張っていた膀胱を無理やり鈍感にしてしまった訳ですから、ある意味、逆効果の治療を行ったことになります。
私も膀胱水圧拡張術を行うことがありますから、この治療法を全面的に否定する訳ではありません。ただし、私の場合、排尿障害の治療を行った後で、症状が改善しない時にのみこの治療を行います。何でもかんでも膀胱水圧拡張術を行う訳ではありません。

さて、間質性膀胱炎といわれる患者さんが膀胱水圧拡張術を受けても、その効果がなぜ一時的なものになったり、効果がそれ程でもない場合があるのか考えたことがありますか?
理由は、膀胱刺激症状の主要部分が膀胱三角部にあるからです。膀胱三角部は膀胱の中の一部分に過ぎませんが、伸展感覚レセプターが一番集中している場所です。そして膀胱の他の部分と比較して伸び縮みの少ない固めの組織で形成されています。そのため、膀胱水圧拡張術でいくら膀胱を膨らませても、膀胱三角部以外の他の部分は十分過ぎるほど膨らむのですが、膀胱三角部はビクとも動きません。膀胱水圧拡張術で確かに膀胱容量は大きくなり膨らみやすくなります。そして尿がたまっても膀胱容量が大きくなたので、膀胱内圧は上がりにくくなり、膀胱三角部への刺激が少ないのである程度症状が軽くなるのです。ところが、膀胱三角部はほとんど治療してはいません。次第に膀胱三角部がガマンできなくなり、再び暴れるのです。

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