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急性膀胱炎でわかる事

前回解説してように、急性膀胱炎には典型的な5つの症状があります。

❶血尿❷混濁尿❸排尿痛❹頻尿❺残尿感です。これらを各々具体的に説明しましょう。

❶血尿:

膀胱粘膜に炎症が起きていますから、一過性に血管が増えます。いわゆる充血です。炎症の基本は、白血球の作用によるものです。膀胱内に侵入した大量のバイ菌に対して、白血球が食べる(貪食どんしょく)のです。1個の白血球で数十個のバイ菌を食べます。無限に食べれるわけもなく、限界に達すると、白血球は破裂します。バイ菌を殺菌するための劇薬物質が周囲に飛び散るのです。中に一酸化窒素NOなどの物質が膀胱の粘膜に付着すると、たくさんの毛細血管が刺激を受けて拡張し、結果、充血するのです。ですから内視鏡で膀胱粘膜を観察すると、たくさんの血管が増えたように見えるのです。オシッコが終わる際に、膨らんで伸ばされた膀胱粘膜が縮んで、充血した血管内の血液がしぼり出されます。毛細血管は一般的の血管に比較して、血液成分が漏れやすいので、それが、急性膀胱炎の症状であるオシッコの、「終わりかけの血尿」になるのです。

C9bbe19612254216afcf97017f29c7ae❷混濁尿(白いにごった尿):

バイ菌を食べる白血球が次々に増えるので、破裂する白血球もさらに増えます。白血球の破裂物質が、膀胱の粘膜を通じて、全身に流れます。それが炎症情報として流れ、体内で警戒している全ての白血球が気づき、膀胱に集まるのです。ある意味で連鎖反応ですから、膀胱内に大量の白血球が集合します。皮膚の傷が膿んだ時の膿みは、白血球の塊スープですから、それが尿で薄まれば白濁の混濁尿になるのです。そのため、尿に大量の白血球が含まれるので、白く混濁した尿になるのです。対策として、水分を多く取って尿量を増やして何回もオシッコをするのです。何回もオシッコをすることで、バイ菌の数を減らして、破裂し散布された白血球の毒物を薄め、白血球の興奮を抑えるのです。

❸排尿痛(オシッコの最後の痛み):

炎症のために、膀胱粘膜は過敏になります。少しでも尿がたまり、粘膜が引き延ばされると「尿意」になります。そしてオシッコをすると、膀胱粘膜が縮みますから、過敏になった粘膜同士が重なりぶつかるので、刺激を受け「痛み」として感じるのです。ですから、急性膀胱炎の排尿痛は、オシッコの最後に痛くなるのです。

★この考え方は、一般的に思われている事ですが、実は、あとの残尿感で解説してるように、オシッコで膀胱が縮むと、膀胱の壁が膀胱出口に衝突するのです。膀胱炎で過敏になった膀胱出口が衝突で刺激されるので、オシッコの最後に感じる排尿痛になるのです。

❹頻尿(1日のオシッコの回数8回以上):

炎症により膀胱の粘膜が過敏になるので、オシッコが100〜200㎖程度で尿意を強く感じて何回もトイレに行くので、頻尿になるのです。ところが、急性膀胱炎の患者さんは、寝てからはオシツコで起きないのです。日中の頻尿はあるのですが、夜間の頻尿はないのです。

★ここで一つ疑問に思われませんか?夜間に寝ている時の方が、尿はタップリと溜まるはずですよね?膀胱の粘膜は引き延ばされて、夜間でも尿意を強く感じるはずです。では何故でしょう。実は尿意のセンサーは、膀胱の出口近くの膀胱三角部と膀胱括約筋にあるのです。日中は立ったり座ったりしていますから、内臓で一番下の臓器である膀胱は、すべての内臓の重さが負担としてかかるので、膀胱内圧が高くなり、膀胱三角部と膀胱括約筋に負担がかかるのです。しかし、夜間寝るとすべての内臓が平らになるので、膀胱に圧力がかかりません。したがって、400㎖溜まって膀胱粘膜の引き延ばされても尿意を感じないのです。

❺残尿感(オシッコが終わったのに尿が残っている感じ):

 オシッコの最後に残尿感を感じる理由があります。オシッコの最後に膀胱が収縮して、お互いにぶつかります。膀胱出口=膀胱括約筋+膀胱三角部に膀胱全体が当たるのです。炎症で過敏な尿意センサーである膀胱出口に他の部分の膀胱壁が当たると同時に尿意を感じる、すなわち残尿感になるのです。

★そして、排尿後に、次第に尿が溜まり始めると、膀胱壁と膀胱出口との接触が次第に離れるので、残尿感が無くなるのです。尿が溜まると残尿感が無くなるという現象は、不思議で面白いでしょう?

このように急性膀胱炎の症状を詳しく調べることで、症状の発生原理が明確に理解できたでしょう?ところが、一般的な泌尿器科医は、『膀胱が細菌感染で、血尿・混濁尿・排尿痛・頻尿・残尿感が起きるんだ!』と知っているだけで、具体的な理由は無視して『炎症が原因だから仕方がないのだ…』と漠然としたイメージだけで終わらせてしまうのです。ある意味で、適当・いい加減です。当然として、他の病気のことも正確に考えませんから、原因不明の過活動膀胱も間質性膀胱炎も膀胱疼痛も慢性前立腺炎など、症状の組み合わせの偽造病名がいくつも創作されるのです。世間的には有名で頭がいいとされる教授たちが集まって、泌尿器科学会でガイドラインを決めます。当然として、対症療法だけにとどまるのです。

 

 

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