アミノ酸:グリシンの不思議な振舞い
2012年11月28日ベタニス発売1周年記念講演が、丸の内の東京会館で開催され参加しました。
その講演の講師の菅谷公男先生のお話に興味を引かれました。『膀胱の機能進化とその破綻による過活動膀胱』というテーマで、動物実験を中心に膀胱機能と病態生理に関して詳細な知見を得ることが出来ました。
膀胱の排尿抑制回路には、『GABAニューロン』と『グリシンニューロン』の2つの抑制回路が存在し、中枢神経回路と膀胱神経回路の間に介在し、複雑に影響しているとのこと。特にグリシンニューロンは膀胱の興奮を抑えるのに重要な働きをしているらしい。
膀胱に関連した病気、前立腺肥大症・過活動膀胱・間質性膀胱炎の患者さんの脊髄や血液中のグリシン濃度が健常人に比較して明らかに低下しており、動物実験で脊髄中にグリシンを投与すると、傷害された膀胱の機能が回復するのです。
動物実験と同じようにグリシンを人間の脊髄に頻繁に投与することは現実的ではありませんが、食事としてグリシンを十分に摂取すれば、血中・脊髄中のグリシン濃度が高くなり、膀胱(や前立腺)の興奮は抑えることが出来るかも知れません。
人間の体内タンパク質の3分の1がコラーゲンで、コラーゲンの3分の1が話題のグリシンというアミノ酸です。アミノ酸プリメントでグリシンは通販で容易に購入できます。慢性前立腺炎・前立腺肥大症・間質性膀胱炎・過活動膀胱の患者さんに「グリシン」というアミノ酸サプリメントは効果があるかも知れません。
もしも効果があるとすれば、これらの病気はある種の栄養失調(特定のアミノ酸欠乏症)ということにもなります。慢性の炎症・正体不明の感染症・心因性・アレルギー・原因不明の病気と思われていた病気が、単なる栄養失調だったとすれば、今までの医学は何だったのでしょう。
動物実験のように脊髄中にグリシンを注入することは現実的には無理があります。しかし、仙骨神経ブロックの手技でグリシンを注入することは可能です。麻酔としての仙骨神経ブロックは、硬膜外麻酔の範疇に入ります。硬膜外麻酔は、脊髄膜の外側にある硬膜のさらに外側の硬膜外腔というスペースに麻酔薬を注入する手技です。硬膜は脊髄と直接は連絡してはいませんが、脊髄膜であるクモ膜が細かい枝状に分布していて硬膜外に注入した薬剤が少量ですが脊髄内に浸透していきます。ですから、外来処置として可能な仙骨神経ブロックの手技で脊髄内にグリシンを少量浸透させることは可能だと考えます。
【参考文献】
「脊損ラットにおけるグリシン経口投与の下部尿路機能に及ぼす影響」
著者名:宮里実, 菅谷公男, 西島さおり, 安次富勝博 (琉球大 医 泌尿器科)
資料名:日本脊髄障害医学会雑誌 Vol.17, No.1, Page146-147 (2004.04.01)
抄録:脊損ラットにおけるグリシン経口投与の下部尿路機能に及ぼす影響について検討した。ハロセン麻酔下に下部胸髄を完全切断した,Sprague-Dawley系メスラットを対象とし,膀胱の残尿,及び等容量性膀胱内圧測定を行った。その結果,0.1-1%グリシン添加食では残尿の増加はなかったが,3%では残尿が有意に増加した。このことは,0.1-1%では膀胱収縮と尿道収縮の両方を抑制し,3%では膀胱収縮をより強く抑制したことを示している。また,1%グリシン添加食では普通食と比較して,尿道基線圧が低く,グリシンの陰部神経核への関与も示唆された。以上のことより,グリシン経口投与による頻尿や排尿筋括約筋協調不全の改善効果が示された。
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コメント
以前間質膀胱炎の件で色々ご相談させて頂き有難うございました。久々投稿させて頂きます。アミノ酸グリシンの入った漢方薬はどうでしょうか?
【回答】
試してみてください。』
ベタニス1周年の成果もお聞きしたいので宜しく御願い致します。
【回答】
3割の人には効きます。
投稿: 山本 | 2012/12/10 16:02
先生明けましておめでとうございます(*´ω`*)
今年度も宜しくお願い致します
診察番号28329、〇〇〇〇です
昨年は、色々お話を聞いていただいて有り難うございます!!(>_<)
毎日、何も集中出来ず、とっても辛いけど先生がいらっしゃるので、光の方向を見失わず頑張ってゆこうと思います!!
相変わらず直腸側の筋から、お臍の右側だけが、何故か吊り膀胱三角部は、毛糸が入ったように、ずっとムズムズし集中力が散漫になり辛いです。今は3月の手術が楽しみに頑張っています!
(バルーンカテーテルというのも凄い手法で、やっぱり先生は凄いです!!思わず目が輝いてしまいました(*´ω`*)私の症状の場合、どちらがよいのでしょう?)
年明けに、先生のアドバイスまた症状などを見て頂きに伺います!
先生も、どうかお身体にご自愛ください(^-^)長々とすみません。失礼致します!
投稿: もりみ | 2013/01/04 20:52