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一酸化窒素の効果は?

今年の12月頃に代替医療に関心を寄せている医師や医療関係者に講師として講演会に招待されています。
前回は前立腺癌についての常識と非常識についてお話しました。今回は、更年期とコレステロールと動脈硬化についてお話しするつもりです。原稿を書き進めているうちに、次第に動脈硬化の本質が分かり始めました。

Nitroeffect2_2右のグラフは、治療する前の患者さんの橈骨動脈の血圧脈波(左)とニトログリセリンを投与した後の血圧脈波を示すものです。
ニトログリセリンを投与すると、血管の脈波伝播速度が遅くなり、血圧脈波の形が改善されます。つまり、血管が拡張して軟らかくなったことを示します。

Whyprogressas8no血管の内側にある内皮細胞が物理的刺激を受けると、アルギニンというアミノ酸と酸素を利用して一酸化窒素(NO)が作られます。
一酸化窒素は、内皮細胞に隣接する平滑筋に作用して、平滑筋内のカルシウムイオンの排泄を促して平滑筋を積極的にゆるめます。この作用によって血管の緊張はゆるみ拡張して、血圧は下がり血流は改善し心筋梗塞・狭心症など発作が軽減します。

No2ここまでの解説からは、内皮細胞から作られる一酸化窒素NOは、血管にしか効果がないように思えます。
ここで、右の模式図のように、太い血管から毛細血管にいたる組織学的モデルを考えてみましょう。太い血管の構造は内側から内皮細胞を持った内膜、平滑筋を含んだ中膜、線維組織で覆われた外膜に分類することができます。血管が枝分かれしながら次第に細くなり末梢組織に進入すると、血管の中膜(平滑筋)は薄くなります。最終的な毛細血管に至っては、中膜(平滑筋)も外膜(線維組織)も消失して内皮細胞のみの薄い構造になります。つまり臓器・組織の中にあっては、毛細血管は内皮細胞だけで組織と接しているのです。

Naihiaこれは肉眼的に確認できる大きさの動脈の組織画像です。
内皮細胞(E)・平滑筋(S)が確認できます。
【機能組織学 南江堂から】

Naihia2さらに小さな動脈の組織画像です。
上の写真と比較して、平滑筋(S)の層が薄くなり一層構造になっています。
【機能組織学 南江堂から】

Naihia3毛細血管の組織画像です。
血管には平滑筋の細胞はありません。内皮細胞(N)が確認できます。
【機能組織学 南江堂から】

No3ここで臓器・組織が膀胱や前立腺の組織であった場合を想定してみましょう。
膀胱や前立腺の組織にある毛細血管は組織内の平滑筋にじかに接していることになります。つまり毛細血管の内皮細胞にしてみれば太い血管の平滑筋(中膜)に接しているのと同じになる訳です。そう考えれば、内皮細胞が作る一酸化窒素NOは、膀胱や前立腺の平滑筋に直接作用すると考えてもおかしくはありません。膀胱や前立腺の平滑筋を健康に近い状態で生理的にゆるめてくれるのです。膀胱や前立腺の平滑筋が緊張して症状が作られると考えらる(私の仮説ですが)慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんの治療に応用できるかも知れません。

Naihia4弛緩した平滑筋の中を走る毛細血管です。毛細血管は組織内の平滑筋に直に接しています。
【機能組織学 南江堂から】

慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんに、心筋梗塞や狭心症の治療薬であるニトログリセリンに、一酸化窒素NOの補充治療として可能性があると考えると不思議です。
一酸化窒素は、光化学スモッグや大気汚染の原因となる窒素酸化物のグループに入ります。体にとって重要な生物活性物質が大気汚染の原因物質であるというのは皮肉なものです。

【参考】
Bladderarginine2010ics2010年カナダのトロントで開催された国際禁制学会の発表内容に、一酸化窒素の前駆体であるアミノ酸のアルギニンで膀胱の緊張が改善する可能性の内容が報告されていました。
尿路上皮(膀胱の粘膜など)から放出される一酸化窒素(NO)が、辛い感覚を流すC神経線維の働きを抑えるから、一酸化窒素の材料であるアミノ酸・アルギニンを実験に使用し効果があったという報告です。
私は膀胱平滑筋が症状を作ると考えるので、平滑筋の近くにある毛細血管に内服したニトログリセリンが一酸化窒素(NO)を届けてくれるものと考えています。

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