間質性膀胱炎の症状 「足の冷え」
間質性膀胱炎の患者さんに多くみられる症状の一つに「足の冷え」というのがあります。
右の写真は、頻尿1日50回と陰部全体の持続性の痛みで、高橋クリニックを受診した50歳代の素敵なご婦人の治療後の足です。
エブランチルの投与で頻尿は50回→20回に、陰部の痛みは面積が10円玉くらいの大きさに改善しましたが、ビールを思う存分飲みたいということで、内視鏡手術を希望された患者さんです。
手術後症状は不安定であるにもかかわらず、頻尿は15回に、陰部の痛みは消失しました。治療前にはお聞きしていなかった、両足の裏に氷をベタッと貼りつけたような足の辛い冷えが、全く消失したそうです。これがその改善した足の裏です。
「頻尿・痛み」というのはよく知られた間質性膀胱炎の症状ですが、「足の冷え」を代表とする「冷え症」を持っている方も多くいます。
「冷え症」あるいは「冷え性」は、漢方の世界でも代表的な症状のひとつです。漢方では、その原因を「虚症きょしょう」として捉え、「気」が足りない状態「気虚ききょ」を意味します。
西洋医学的考えでは、「気」は存在しません。実際には存在するのかも知れませんが、現代医学では証明できるエネルギーや物質ではありません。では、「冷え症」をどのように考えれば納得ができるのでしょうか。
生理学的に考察しましょう。
冷たい感覚は、知覚神経(感覚神経)の冷覚が刺激されているに他なりません。実際に患者さんの足の冷えを訴える足を触れると、冷たく感じる場合が多いようです。「・・・多いようです」というのは、冷たくない場合もあるからです。
足が本当に冷たい場合、足の末梢血管が十分に拡張しないで、周囲の温度と比較して低いために起こる現象です。末梢血管は血管運動神経の支配下にあり、安静時、副交感神経が興奮し、血管は拡張し血流が増え周囲の組織を温めます。
運動時はこの現象がちょっと変化します。心拍数・心拍出量が増えります。十分過ぎるほどの血液が末梢血管に送られるので、安静時と同じように拡張すると血管が破裂しますから、安静時と逆に交感神経が興奮し血管は収縮し、血圧もそれにより上昇します。また、副交感神経は興奮は低下して、交感神経の監視役やストッパー的な役目に徹し、血管運動の役目を交感神経に譲ります。
安静時に本当に「足が冷たい」のは、副交感神経が興奮せずに交感神経が興奮するので、末梢血管が収縮して十分な血流がないので、周囲の組織の温度を上げることができないことになります。安静時なのに、運動時に興奮する交感神経が優位になるのはおかしな現象です。
理由としては、膀胱刺激症状の電気的信号が脊髄レベルで自律神経の交感神経と混線、血管運動神経を興奮させ、運動時でもないのに末梢血管を収縮させるのでしょう。
足が冷たくもないのに「冷たい」と感じる場合はなぜでしょう?
足が冷たくないということは、副交感神経は正常に興奮して末梢血管が拡張し血流が保たれ、周囲の組織温度が上昇していることになります。
では、なぜ「冷たく」感じるのでしょう。それは膀胱刺激症状の電気的興奮が脊髄レベルで冷覚神経と混線し、「冷たい」と感じるからです。
「足の冷え」とは逆に、「足の火照り」についても考えてみましょう。
「足の冷え」と同じで、本当に足の温度が上がっている場合と、温度が温かくない場合があります。
足が本当に温かい場合について解説しましょう。
血液の流れは、動脈→毛細血管→静脈という流れです。組織に熱がこもるためには、熱のある血液が毛細血管で渋滞しなければなりません。そのためには、動脈の血流量が必要以上に増加するか、静脈の血流量が極端に減少するか、あるいは動脈と静脈の血流量のバランスが悪い場合が考えられます。
動脈の血流量が増えるためには、副交感神経が興奮して動脈が拡張するのです。静脈の血流量が減少するためには、交感神経が興奮して静脈が収縮するのです。本来なれば、副交感神経が興奮すれば動脈も静脈も拡張して流れはスムーズですし、交感神経が興奮すれば動脈も静脈も収縮して、やはり流れはスムーズです。この副交感神経と交感神経の興奮のアンバランスが、血流の渋滞を招き、組織に熱をこもらせ、「足の火照り」になるのです。
元の原因は何であれ、自律神経(交感神経と副交感神経)のアンバランス(自律神経失調症)は、症状として「足の冷え」にも「足の火照り」にもなります。漢方で「足の火照り」も「冷え」症状として捉える事があるのはそのためです。膀胱刺激症状の電気的刺激が脊髄レベルを混乱させて自律神経のバランスを崩せば、間質性膀胱炎の患者さんに「足の火照り」がみられても不思議ではありません。
一回読んだだけでは、今までの内容は理解できないかもしれません。でも何回か精読すると、私の見ている世界と同じ世界が見えてきます。試してみてください。
先日、慢性前立腺炎の患者さんの内視鏡手術を行いました。翌日、患者さんの奥様から「先生は牧師様みたい」と言われました。次第にそっちの世界に行ってしまいそうな今日この頃です。牧師様は、・・・今日も泌尿器科の患者さんを診るのです・・・。
【補足】
足の冷えがなくなったご婦人には、さらにうれしい付録がついていました。
私が事前に「足の裏の写真を撮影するよ」と告げてから、きれいな足を撮影してもらおうと足の裏の大きな魚の目を処置しようと覗いたら、以前は左足に500円玉以上の直径の魚の目(たこ)が、写真で示すように1円玉くらいに小さくなっていたのです。患者さんもびっくりです。膀胱の内視鏡手術を行ったら足の魚の目が改善した・・・珍現象です。
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コメント
僕は神様も仏様も信じていません。
でも高橋先生の事は信じています。
一方的なコメント、失礼いたしました。
先生もお体を お大事にして下さいm(__)m
【回答】
この病気は、眼で見て簡単にハッキリと分かる病気ではありません。
いろいろな検査を行いながら、想像をめぐらして、やっとボヤーっと見つけた病気です。あると言われればあるでしょうし、ないと言われればないのでしょう。
まるで見ることのできない神様や仏さまのようでしょう?
この病気は、その領域の病気かも知れません。
私を信じるのなら、神様も仏様も信じても良いと思います。
感想をありがとうございます。
投稿: 東京タワー | 2010/02/27 06:05
先生ご無沙汰しております。
お酒を飲むとエブランチルを飲むようになってから毎回(日頃お酒もあまり飲みませんし弱いです又当たり前ですが薬と同時にエブランチルはのんでいません。)会社の食事会などで一杯のシャンパンなどでも血の気が引き顔が白くテーブルに伏せないとだめになってしまい、20分ぐらいで又元にもどるのですが、エブランチルの血圧降下作用がはたらくためでしょうか? 一度試しにお酒を飲む日は、エブランチルをやめてみるとその日は、かなり弱い私でも4杯カクテルなど飲みましたが、倒れることがありませんでした。これは、私の体質や薬のせいでしょうか?お教えください。
よろしくお願いします。
大阪よりお世話になっておる者です。
今回私が飲んでいるエブランチル15mm/(1日1回)なんですが、もともと私(女)は、血圧が上100未満下60ぐらいなのですが、低いためか
【回答】
アルコールとエブランチルの相乗効果でしょう。
飲酒する予定の日には、エブランチルの服用を休止して下さい。
投稿: ひめ | 2010/03/12 13:34
ありがとうございました。
お伝えするのが遅れてしまいましたが、体の方はお陰様で以前のように支障なく生活が出来ております。又先生に直接診断して頂いて安心感が、増し多少のことも気に病まず過ごしております。経過報告が後になりましたが申し訳御座いませんでした。先生もお体ご自愛くださいませ...
【回答】
ありがとうございます。
投稿: ひめ | 2010/03/25 17:15
感謝のメール
高橋院長殿
こんにちは~。穏やかな小春日和が恋しい今日このごろです。
いつも大変お世話になっております。院長先生、スタッフの方々に心より感謝いたしております。
本当にありがとうございます。現在病状はとても良好です。
当時、トイレも60回通っておりましたが、6回~8回位になりました。
しかし、この経緯は本当に長い6年半でした。
先日、当時の日記(大学ノートに書き記した)を院長先生にお渡した時に
「過去との決別だね!!」と、一言おっしゃいました
。気が付かなかったのですが、普通に暮らせていたのです。
本当に院長先生のお陰です。
初めて慢性膀胱炎という病気だと認識したのは、6年半前でした。
今、考えるのも恐ろしく、とても辛い毎日でした。
私の症状は、
(1) 微熱が出る。
(2) 背中と左下腹部に激痛が走る
(3) お腹が食事もとれないくらい張る。
(4) 足の裏に氷をベタッと張り付け た様に冷える。
(5) 胸がバクバクする。
(6) カラシを陰部に塗られているような痛みがある。
(7) 体中が、わなわなする。
(8) 60回位トイレに通う。
等など
高橋院長に出会うまでは、ドクターショッピングをしておりまして、
婦人科で左側下腹部にエストロゲンを貼りました。
嘘の様に症状が軽減致しました。
そうこうしているうちに乳がんとなり、乳がんの手術を致しました。
その後、エストロゲンを貼れなくなり、乳がんよりも恐ろしい恐ろしい慢性膀胱炎に逆戻り致しました。
(乳がんには女性ホルモンは投与してはいけないそうです。)
ネットで高橋院長のブログを読み、すぐに受診に伺いました。
高橋先生は、親身になって話を聞いて下さいました。
腰が悪いから、とか気のせいとおっしゃる先生が多かったので、話を聞いて下さることが、嬉しかったです。
そして乳がん手術後、2ヵ月後に泣きながらお願いして、1回目の手術をして頂きました。
1日60回位のトイレの回数は、15回位となり楽になりました。
が、お腹が張り、胸のバクバクと特に体中のわなわな感だけは治らず、おしっこは細くなり出づらくなりました。
そこで酸素カプセル、大豆イソフラボン等で症状は、軽減致しました。
ですがどうしても、わなわなする事がとても辛くて、結果3回手術して頂きました。
とても痛い手術ですが、手術中は院長先生が気を使って下さり、安心していられました。
3回目の術後、(平成24年5月9日)徐々にわなわな感がなくなり、
最近では調子が良い時は、トイレも一日に5回位になりました。
あの恐ろしい日々を考えると自分でも信じられません。
私は、恐ろしい過去との決別を致しました。
普通に日々を暮らせることが、こんなに幸せなことなのかとつくづく思います。
感謝、感謝でございます。
神様(院長先生)お願い致します。いつまでもお元気でいらして下さいね。
〇〇sayo
追伸
誤字がございましたらお許し下さい。
投稿: | 2013/04/26 08:33
3月1日に宮崎から診察を受けた〇〇です。ユリーフとベタニスを処方していただきました。内服して1回の排尿量は特に変化は無いのですが、食後の排尿時間が伸びたような気がします。1日の排尿回数は20回から22回と2~4回若干ではありますが少なくなっているような気がします。尿意切迫感も若干弱くなってきましたが、以前が凄く大変だったので、まだまだ正常には程遠いです。排尿量が少ないのは膀胱の筋肉が伸びにくくなっていると思います。膀胱水圧拡張術を3回しましたが、するたびに膀胱に溜まる量が650~550~350に減少し、ハンナ―潰瘍?が出来ていました。最近は排尿時に激痛は少なくなってきましたが尿が溜まるとジカジカして痛くなります。こんな膀胱ですが治りますか?仕事にも影響が出てきていますので、出来れば手術をして頂きたいと思っています。
【回答】
まずは、お薬を続けて服用しましょう。
投稿: 〇〇美代子 | 2014/03/23 23:44
こんばんは。
薬を暫く飲んでみて変化がない時には手術をお願いできますか。仕事の途中でトイレに抜けるのはとても不便なのです。膀胱の収縮が強くて漏れそうになってしまいます。出来れば夏までには完治したいと願っています。あまり考えないようにしていますが精神的にもつらいのです。よろしくお願いします。
投稿: 〇〇〇〇美代子 | 2014/03/24 22:00
こんばんは。
診察番号31329の宮崎から診察を受けた〇〇〇〇です。3月4月とベタニスとユリーフを内服しています。排尿回数はほとんど変化はなく21~25回です。夜間の回数は1回くらい少なくなりました。1回の排尿量は最近調子が悪くなって少なくなった気がします。尿道が痛く、じっとしていても痛みがあります。風呂の時に膣の手前を尿道に沿って触ると、とても痛くてやっぱり尿道が炎症を起こしているのかなと感じました。尿道痛と関連してからか、腰も痛くて仙骨から尾骨に掛けてと右臀部、右下腹部が痛くなります。関係があるのでしょうか?尿道は炎症ではないかも知れませんが、じっとしていても痛く仕事にも支障があり、痛みを止める方法はないでしょうか。痛みがないとトイレの回数が少なくなるのかなと思います。どうか良い方法があればよろしくお願いします。
【回答】
薬剤をいろいろ試してみるしか方法がないでしょう。
薬剤で全く効果が得られなければ、内視鏡手術です。
投稿: 〇〇〇〇美代子 | 2014/04/30 21:13