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間質性膀胱炎の治療 「仙骨神経ブロック」

間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状として辛いのが、1日10回~40回の頻尿といつ起こりか分からない強い痛みです。
排尿障害を治さないことには、これらの症状は治らないと考えていますが、補助治療として仙骨神経ブロックがあります。
Caudaltech本来仙骨神経ブロックは、整形外科領域の坐骨神経痛や椎間板ヘルニアなどの慢性の痛みを軽減する目的で利用されている治療です。

私はこの仙骨神経ブロックを内視鏡手術の麻酔として利用したり、術後の疼痛管理に利用しています。仙骨神経ブロックはペインクリニックでも治療として採用されていますから、間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状が辛い場合にはペインクリニックの麻酔科医に治療をお願いして下さい。

ここで私の仙骨神経ブロックの方法をご披露しましょう。
まず薬剤は、マーカインを使用しています。マーカインは筋弛緩作用が弱く、それでいて間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状である知覚神経の鎮静作用が強く長続きしますから、外来の神経ブロックの薬剤としては重宝します。
0.25%マーカイン5ml注射します。注射後20分ほどで私は患者さんに帰宅していただきます。
1回目で特に副作用が出なければ、2回目からはマーカインの量を徐々に増やします。例えば、
2回目:0.25%マーカイン8ml
3回目:0.25%マーカイン10mlという具合です。
限界12mlが仙骨神経ブロックを外来で行なう限度の量でしょう。これ以上量を多くすると足の筋弛緩作用が前面に出てきて、しかっりした歩行で帰宅できなくなります。事実、0.25%マーカイン20ml以上の注入で、膀胱や前立腺の日帰り内視鏡手術を私は行っています。

Caudalxp注射刺入部位は、仙骨正中裂孔を原則とします。仙骨正中裂孔はS4に位置しますが、薬液を10mlも注入すれば、薬液は腰椎4番くらいまでは余裕で上昇しますから、S2~S4がメインの間質性膀胱炎症状には最適です。
【写真】は以前に泌尿器科学会の発表で私が使用したものです。造影剤を少量加えた麻酔薬を10ml注入直後の所見です。仙骨腔は解剖学的に25ml以上の容積がありますが、写真でご覧のようにたった10mlの量でも25mlの仙骨腔を越え、注入直後でも腰椎5番の高さまで麻酔薬は到達します。30分も経過すると麻酔薬は毛細管現象でさらに胸椎の高さまで上昇する場合があるのです。

間質性膀胱炎・慢性前立腺炎は膀胱・前立腺の病気だからTh11~Th12あたりまで効かさなければならないと思いこんでいる泌尿器科医や麻酔科医が存在しますが、間質性膀胱炎症状の根本原因は膀胱三角部であり、S2が主たる神経支配ですから、仙骨神経ブロックで十分なのです。
ただし、経験上、頻尿が30回以上の患者さんの場合、膀胱三角部の神経支配がS2から上位腰椎・胸椎に移動していることがあり、患者さんに応じて判断しなければなりません。

注射注入速度は、1ml毎5秒以上の速度でゆっくり実施します。麻酔薬が10mlですから、50秒以上かけて注入することになります。注入速度を速めれば、麻酔薬が高位の脊髄まで到達できると思われがちです。しかし注入速度を速める(圧力をかける)と、内側・外側仙骨孔の神経分岐部から麻酔薬が漏出して、仙骨腔が麻酔薬で満たされなくなります。この漏出を避けるために、注入圧を入れたり止めたりのポンピング法で注入します。ポンピング間隔は2ml毎です。注入圧をかけ過ぎたり急いだりすると、漏出のために逆に麻酔薬が高位脊髄に上がらなくなるので注意が必要です。

テクニックのある麻酔科医が、左右S2の仙骨孔から選択的にブロックすることがあります。結果として間質性膀胱炎・慢性前立腺炎の症状を軽快させることができません。確かにメインの神経支配はS2ですが、実際はそんなに単純ではありません。もっと広範囲の神経に及び複雑であるため、仙骨正中裂孔から仙骨全体に麻酔薬を行き渡らせた方が、手技は容易で明らかに効果的です。

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コメント

早速のお返事ありがとうございます。役立たせて頂きます。ブロックが効いて激痛が弱まりましたらすぐ参りますので宜しくお願いいたします。おいそがしい中詳しい資料本当にありがとうございます。感謝致します。合掌

高橋クリニックからの回答
参考にしてください。
なお、ここには、実名を掲載しないで下さい。

投稿: ○川 ○紀 | 2009/02/17 15:00

先生教えて下さい。
私(北海道在住 男)は一昨年先生に2度手術をしていただいた者です。その節は大変ありがとうございました。術後半年後には症状が消失していましたが、最近再発し始めました。再々手術も考えていますが、とりあえずブロック注射と思っています。ブログに記載の方法ですが、慢性前立腺炎の症状にも同様の方法を取られているのでしようか。又手術時には麻酔に対しての副作用はなかったと思いますが、その場合はいきなり4回目の濃度をお願いしても問題ないのでしいうか。よろしくお願い致します。

【高橋クリニックからの回答】
症状の再発は残念です。
さて、一番最初から4回目の濃度でもまずOKです。
お大事に。

投稿: クリニック患者 | 2009/05/09 16:12

先生 早々のご回答ありがとうございます。これからも先生のご活躍を期待しています。

【高橋クリニックからの回答】
お大事に。

投稿: クリニック患者 | 2009/05/09 22:21

お世話になっております。高橋先生のクリニックの患者です。
高橋先生に質問があります。
地元のペインクリニックでの事です。
ここに書いてある高橋先生の仙骨神経ブロックのやり方で ブロック注射をして下さいとお願いするのですが、「このやり方だと心臓に負担がかかって、心臓が止まってしまうかもしれないから私にはできない」

と言われてしまい
いつも仙骨の硬膜外ブロックしか、してもらえません。
全部で4件のペインクリニックに お願いしたのですが、腰部硬膜外ブロックか仙骨の硬膜外ブロックしかしてもらえません。


これは 僕の地元のペインクリニックの医師が「テクニックが無いから」
と考えてよろしいでしょうか?
ペインクリニックの医師は
仙骨神経ブロックはやりたがらず、いつもいつも
硬膜外ブロックです。

ペインクリニックの医師は仙骨神経ブロックはあまりやりたがらないのでしょうか?


お忙しい中、すみません。
回答の方、よろしくお願い致します。

【回答】
病気の本質を理解していないからでしょう。

投稿: ビートたけし | 2009/11/07 07:32

書き忘れました。これはもう 整形外科の先生に 外来でお願いしたほうが、確実でしょうか?

ペインクリニックに、不信を抱いてしまう、今日このごろです……。

【回答】
同じでしょう。

投稿: ビートたけし | 2009/11/07 08:00

わかりました。
お忙しい中、回答ありがとうございました。

脊髄の増幅回路の関連痛は
しばらくは「デパス」で様子を見てみます。

もうペインクリニックにお願いするのは、疲れてしまいました。

回答、ありがとうございました。

投稿: ビートたけし | 2009/11/09 19:47

今月手術を受け、いつも仙骨神経ブロックでお世話になっております、千葉在住の患者です。
ここ二回連続、注射後、尿漏れがみられました。
排尿時はむしろ出にくい感じもするのですが、知らない間に漏れています。
注射から数時間以内にそのようなことがおこります。
術後、ブロックを行うまでは尿漏れはみられませんでした。
パッドで対応できる程度なので、できれば回復のために今後も神経ブロックを続けていきたいのですが、問題ないでしょうか?
【回答】
問題ありません。

投稿: | 2014/01/28 13:16

連続ですみません。
判断するのに時期尚早かと思いますが、とても不安なので質問させてください。
この尿漏れが手術後後遺症の膀胱頸部再硬化の症状の可能性はありますか?
【回答】
ありません。」

もしそうだった場合、改善策としては再度内視鏡手術しかないのでしょうか?
手術から一カ月もたっていないので、まだ様子見でよくなることもありますか?
【回答】
3ヵ月様子をみます。」

質問ばかりで申し訳ございません。

投稿: | 2014/01/28 14:01

高橋先生

先日も質問を投稿させていただき、先生からご回答をいただいた者です。フリバス・ハルナール・ザルティア・デパス・レキソタン服用中の地方在住の慢性疼痛患者です。

仙骨神経ブロックについての質問です。よろしくお願いします。

先生が実施されている仙骨神経ブロックで使用されている薬剤はマーカイン(ブピバカイン)ということですが、このマーカイン(S+Rのラセミ体)から光学異性体のS体を分離して作成されたポプスカイン(レボブピバカイン)という局所麻酔薬があります。

ポプスカイン(レボブピバカイン)はマーカイン(ブピバカイン)に比べて、副作用とくに心毒性が軽減されているということらしいのですが、先生が仙骨神経ブロックにおいて、その心毒性が軽減されているポプスカインを使用なさらず、なぜ、マーカインを使用され続けていらっしゃるのか、その理由や先生のご見解を知りたいです。これが1つ目の質問です。
【回答】
マーカインで特に不便を感じたことがありません。
ですから、使い慣れたマーカインを使用しています。」


次に2つ目の質問です。

フリバス・ハルナール・ザルティア・デパス・レキソタンの服用を継続して2~3年半が経過しました。おかげさまで、左精巣部・肛門部・骨盤部・左坐骨部を中心とした慢性疼痛は発症当初(疼痛はベッドの上で数か月間、本当に絶望するほど酷いものでした)に比べますと、大幅に緩和していることは事実で、現に改善を実感していますが、まだまだ排尿障害の関連痛と推察しうるそれらの部位の疼痛は日常生活上、実に厄介極まりないものが執拗に残存している情況です。

そこで、保存的治療の次の段階として、通院しているペインクリニックの担当医師に、数日前の診察の際、高橋先生がブログで紹介されて現に行われていらっしゃる仙骨神経ブロックをお願い(提案)してみました。もちろん、その際、先生のブログで仙骨神経ブロックに関連する記事や画像のカラーコピー、関連コメントとそれに対する高橋先生の回答文のコピーを治療の参考資料としてお渡ししました。

仙骨神経ブロックについて、ある患者さんからの質問コメントに対して、先生は『今までに何千と仙骨神経ブロックを行っていますが、そのような副作用はありません。なぜなら私が行う仙骨神経ブロックの正中仙骨裂孔からのアプローチでは、注射針の先に神経が存在しないからです。連続する硬膜外腔の、神経が存在しない場所、つまり仙骨腔という空間に麻酔薬を落として行くからです。しかし、通常の硬膜外神経ブロックでは、注射針の先に神経が存在するリスクが高く、注射針で神経を傷つける可能性があります』と回答されています。この先生の回答文も参考資料に含めてお渡ししました。

ところが、通院しているペインクリニックの担当医師(麻酔科学会所属の麻酔科専門医、ペインクリニック学会所属専門医)は「それでも馬尾神経?があるので、神経がないわけではない云々云々・・・・・」というようなことを言われ、仙骨神経ブロックをすることについては、あまり積極的な見解ではありませんでした。私の無知や、麻酔と神経構造についての専門知識の不足から来る説明不足があったのかもしれません。

高橋先生のおっしゃる「連続する硬膜外腔の、神経が存在しない場所、つまり仙骨腔という空間」の「神経」には馬尾神経は含まれないのでしょうか。それとも馬尾神経の存在は、この仙骨神経ブロックにおいては問題視する必要はないということでしょうか。
【回答】
馬尾神経は仙骨腔に存在していますが、一様に存在している訳ではなく、左右対称に扇状に広がり、正中仙骨裂孔から刺入した針は、完全に仙骨腔に入るわけではなく、仙骨腔の手前のトンネルにとどまるだけです。
したがって、その付近には神経はほとんど存在しません。
ですから、安全です。
実施したくないための言い訳でしょう。
下図をご覧ください。
https://yo-tsu.org/img/shinkei2.jpg
http://www.sendaiseikei.or.jp/sick/img/lumbar01_03.gif

投稿: 今回も匿名希望 | 2016/08/30 23:58

高橋先生

的確かつ判りやすい回答をくださり、誠にありがとうございます。

本当のことを申せば、先生のクリニックに定期的に通院させていただき、その都度、先生にアドバイスをいただきながら治療・療養をしたいですし、もっと理想を申せば、高橋クリニックの近所に引っ越しして、先生のところに通院したいほどですが、自分も含めて世の中なかなか理想通りにはいきません。
先生にいただいた回答を糧に、そしてそれを念頭に携えて、現在の自分の諸々の環境・制約の下でできる範囲で、治療・療養を続けていこうと思います。
また質問・相談コメントさせていただくことがあると思います。その節はよろしくお願い申し上げます。

先生、お体を大切に。最低でも百歳まで生きて現役を続けてください。

投稿: 今回も匿名希望 | 2016/09/18 05:58

高橋先生
大変お世話になっております。

6月に手術をしてから、まだ薬を飲んでおりますが、
排尿後の痛み(2時間ほど続きます)、排尿後に体勢を変えると陰部に痛みを感じる、調子が悪い日は膀胱にしびれがあります。
どうしても、この状況を変えたいのですが、手術して4か月半ではまだ様子見なのでしょうか。
もしこの注射や、他に何か試すことができるのなら挑戦したいです。
この注射と再手術、どちらが有効的なのでしょうか。
ご教示下さい。
【回答】
1年は手術はしたくありませんから、薬を変えるか、注射でしょう。

投稿: | 2016/10/31 16:20

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