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「過ぎたるは及ばざる如し」 水は不可欠な存在だが、過剰な飲水は毒 

以前にも水分の取り過ぎに注意を促しました。
しかし、来院される患者さんの多くが、水の取り過ぎで病気に苦しんでいます。「たかが水」という認識と、「水は身体によい」という妄信と、「炎症の治療」には大量な尿排泄が必要という呪縛(無理解な泌尿器科専門医が飲水を勧めるので・・・)が存在しているからです。
飲水治療は、「細菌性」の急性膀胱炎・慢性膀胱炎と「細菌性」の急性前立腺炎・慢性前立腺炎にしか効き目がありません。それも抗生剤・抗菌剤のなかった頃の主たる治療です。(この種の尿路感染症に適応のある漢方薬も利尿作用があるので、飲水治療と同じです)
誤解を解くために、ここで再度、「水」について論じたいと思います。

Suibuninout右の図は、60kg体重の人の体の水分収支です。
体重の60%が水分といわれていますから、60kg×60%=36kg=36ℓ(1g=1mlとして)です。
数値には幅があります。必ずこの数値どおりとは限りませんから、参考の標準データと思って下さい。

【経口から入る水分IN-PUT】は次のようです。
1.食事:1.0ℓ(私たちは水分のないものは食べれないのです)
2.代謝水:食事がエネルギーとして代謝される時に、化学反応の結果排出される水0.5ℓ
3.飲水:0.8ℓ(0.5ℓ~1.0ℓ)(自分の意志で調節可能な水です)

【排出される水分OUT-PUT】は次のようです。
1.尿:1.4ℓ(体重1kgにつき1時間に1mlの尿が生産されます。したがって60kg×1ml×24時間=1440mlです。しかし、腎臓の基礎代謝(アイドリング状態)で最低でも500mlの尿が何が何でも排泄されるので、900mlは調節可能です)
2.呼気・汗:0.8ℓ(呼気で300ml、汗で500mlです。汗といってもダラダラ流れる汗ではなく、不感蒸泄といって体表から蒸発する水分です)
3・大便:0.1ℓ

例えば、・・・

例えば、次にいろいろな例をあげて解説しましょう。
Suibuninout2まず初めは、運動をおこなって500ml(0.5ℓ)の汗(塩分の混じった本当の汗)をかいたとしましょう。のどの渇きを覚えましたが、我慢して水をいつもと同じ量(0.8ℓ)しか飲まなかったとします。
すると、水の収支は右の図のようです。
発汗が500ml増えた分、尿量が500ml減ります。普段より尿の色は濃くなりますが、身体には全く影響がありません。なぜなら正常な腎臓には濃縮力があり、水分が少なくても老廃物を少量の水に溶かし込む力があるのです。
逆に、たまには腎臓の濃縮力を使ってあげないと、腎臓のあるべき機能が退化するかも知れません。
尿量が900mlあれば、まだ十分です。あえて水分を余剰に摂取する必要もありません。

Suibuninout3患者さんの中には、1日2ℓ~3ℓもの水を摂取する方もおられます。
1日3ℓの水分摂取する人の例をあげましょう。
IN-PUTで3ℓの水分を摂取したということは、2.2ℓの過剰な水分を体内に入れてしまうことに他なりません。
当然、OUT-PUTとして腎臓に水利尿の負荷がかかり多尿になります。しかし来院された患者さんの多くの方に排尿障害が潜在し、排尿器官としての下部尿路に一層の負荷がかかります。その負荷が、頻尿・関連痛などの症状の原因になるのです。
下部尿路への負荷を回避すべく、別ルートのOUT-PUTが選ばれます。
その第一番が発汗です。飲水が多い患者さんは多汗症です。緊張すると手に汗をかく、暑くもないので急に汗をかくなどの症状の方です。ご自分が多汗症の原因を作っているにもかかわらず、汗が出るから飲水をと、本末転倒の愚行に出るのです。
二番目として、呼気に水分排泄が集中する方もいます。そのような方は喘息症状が出やすいのです。

Suibuninout4もしも仮に、三食の食事以外にまったく水分を取らなかった場合について説明しましょう。
結果は、OUTの尿がその分減り、600mlになります。それでも腎臓のアイドリング状態よりも多いので、身体には問題はありません。

【補 足】
全ての尿路感染症の飲水治療を否定している訳ではありません。
「細菌性」、「非細菌性」の区別なく、盲目的な飲水治療に固執することを警告しているのです。どのような病態にも完璧に合致した健康法や治療法は存在しません。その病気に則した治療法を常に選択しなければなりません。
一度治療法を決めたら、何が何でもバカの一つ覚えのように同じ治療法で行くこと自体、頭を使わない治療と思われても仕方がないでしょう。(自分自信に対しても反省をする所です。)

生理学・免疫学・分子生物学・細菌学・ウィルス学・解剖学・組織解剖学・病理組織学・遺伝子工学・流体力学の専門書を紐解けば、何千・何百万という情報がキラ星の如く輝いています。たった一つの情報ですら、私の人生の一生を費やしても完璧に吸収・理解・応用することは出来ないでしょう。
ましてや、一つの観点からだけで病気を見ることの「危うさ」を理解できますか?私のこの「水の収支」理論でさえも「危うさ」を包含しているのです。私は慢性前立腺炎や間質性膀胱炎のブログの中で、様々なエビデンスや理論を展開していますが、私の「独りよがり」の面も否定できません。ですから、過去のブログは消さないようにしています。現在の私の考え方との違いや、過去から現在に至るまでの考え方の変遷を正直に吐露しているのです。
このような手法も真実を導き出すための試練かも知れません。

【近況報告】
話しは変わりますが、今回の泌尿器科学会(4月25日)で医療器械の展示以外に、書籍やオーディオの販売もしていました。
オーディオでひときわ音がよかったのが、ビクターのポータブル・オーディオキットでした。50×30×20cmの大きさの小さな木製筐体でしたが、スピーカーも木製で音量を上げても下げても音が割れずに自然で、広がりと奥行きがあったので気に入ってしまいました。DVDも見ることができます。今学会5台限定販売の30万円弱の価格でしたが、特に趣味もなく(一般的な趣味はなく、ブログ制作と科学的ではない魔術のような治療法の研究?が趣味)、たまには・・・と購入してしまいました。もちろん12回ローン均等払いです。オーディオ・マニアにしてみれば、中途半端な安物買いでしょうが、私にはこれで十分です。
「R35」というCDをバックで鳴らしながら、この文面をキーボードでたたいています。
Victor先ほどまで、「スターゲイト・SG1・シリーズ2」のDVDをIO-DATAの22インチ・モニター(5月6日に有楽町のビックカメラで購入)で鑑賞していました。私はSF物が大好きです。このモニターにはD5端子・S端子・ビデオ端子・PC端子がすべて接続可能です。3D超音波装置とも接続し、患者さんに検査の状況がリアルタイムで共有できます。
診察に訪れた際には、私の背後の自慢の小さなオーディオ・デッキを見て下さいね。

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