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自己免疫の暴走

慢性膀胱炎や間質性膀胱炎を排尿障害が原因だとして、私は治療を続けています。
内視鏡手術で症状が完全に治まったかのように思えた患者さんが、しばらく、半年~2年経過してから症状が突然としてぶり返す患者さんがいます。
以前に、他のブログで紹介したKさんもその一人です。
ここで紹介したエピソードの後、再び痛みは増強して、毎日2回ブロック注射を打ち続ける日々が続きました。内視鏡手術の際に、膀胱粘膜はびらん(糜爛:潰瘍状)状態で出血も認めました。いわゆる間質性膀胱炎の状態です。尿も混濁しています。つまりは白血球が尿中に多数認める訳です。

この患者さんの診察・治療に当って疑問点が幾つか出てきました。
1.内視鏡手術で、苦しんでいた症状が半年間は軽快していたという事実。
2.その後、突如として痛みと頻尿が出現したという事実。
3.術中の膀胱内所見は、膀胱粘膜がひどく傷んでいる慢性膀胱炎所見。
4.内視鏡手術により痛み症状は、その直後から軽快したという事実。
5.術後1週間で、再び症状が発症して、手術前と同じように患者さんが苦しんでいるという事実。

手術で軽快するということは、器質的な病気だということです。そこに悪い部分があるので、手術し取り去ることで苦しみから解放されるということです。
にもかかわらず、再び症状が発症したという不思議さです。
膀胱粘膜がただれている(糜爛状態)ということは、細菌・ウィルス感染性膀胱炎やアレルギー性膀胱炎・放射線障害性膀胱炎の場合におきる病態であって、単なる排尿障害でおきる症状とは考えられません。
再度の内視鏡手術で、膀胱粘膜はまだ改善していない筈なのに、症状が短期間で軽快したという不思議さです。
そしてケロッとしていた状態が1週間で、再び最悪の症状になったという、器質性の病気なのか機能性の病気なのか、まるでどちらもが混在しているような状態が、短期間のうちに出現したのです。

以上の事実と私が感じる不思議さをもとに、私は、一つの仮説を立てました・・・。

Booimno「長期の排尿障害が自己免疫攻撃のスイッチを入れてしまったのだろう」と仮説を立てたのです。

①機能性の膀胱頚部硬化症(膀胱頚部機能低下症)が、膀胱出口を振動させます。
②膀胱出口の振動は、膀胱三角部を硬くします。
③硬くなった膀胱三角部は、膀胱三角部過敏症になります。
④膀胱三角部からの絶え間ない情報は、脊髄内の神経ネットワークを複雑にして、いわゆる増幅回路になります。
⑤脊髄内の増幅回路は、脊髄全体に影響を与え、膀胱の症状だけにとどまらず、関連痛・自律神経症状・免疫症状に発展します。

免疫症状が外に放出するタイプの症状、例えば蕁麻疹・アトピー性皮膚炎・花粉症などの皮膚上皮型アレルギーだけなら、エネルギー放出・発散となり、膀胱症状はそれ以上悪化しません。
ところが、その免疫が内に放出するタイプの症状、例えば喘息・潰瘍性大腸炎・過敏性腸炎などの内臓上皮型アレルギーの場合は重症化します。特に情報発信源の膀胱を「悪者」と認識・誤解をして(・・・誤解されても仕方がないのですが・・・)、攻撃したらどうなるでしょう。
Eosinophil白血球やリンパ球や免疫抗体が一斉に膀胱を攻撃するのです。白血球は事実上特攻作戦ですから、最終的には膀胱粘膜・膀胱壁内で次々に自爆をします。
【イラスト:白血球と赤血球】
Ab2_01自爆は膀胱組織を傷め、マスト細胞を刺激し、さらに白血球やリンパ球の援軍を大量に呼び寄せるのです。
すると、膀胱粘膜は本当の炎症を起こし、膀胱三角部はさらに過敏になり、一層の情報を脊髄に送り続けます。「悪化の連鎖」あるいは「悪化のサイクル」が静かにゆっくりと、しかし確実に始動しはじめます。
【イラスト:マスト細胞】

恐らく、この現象がKさんに起きたのでしょう。
この「悪化の連鎖」をくい止めるには、免疫の暴走を鎮めるしか方法がありません。その治療薬が免疫抑制剤です。
Steroid免疫抑制剤の用途は、臓器移植の拒絶反応の抑制や膠原病・ガン治療にも利用されています。様々な薬剤が百花繚乱のごとく販売されていて、なおかつどれも高価です。当然、副作用もあります。
その中で、価格が安く、副作用が少ない薬剤として、ステロイドがあります。
【イラスト:ステロイドの薬理作用 今日の治療薬2007 南江堂から】

私は以前から重篤な花粉症の患者さんにはステロイド注射をシーズン中に1回だけ行い、患者さんに喜ばれてきました。このステロイド注射を免疫抑制剤として、定期的に注射するというものです。

前述した仮説を元に、Kさんに承諾を得てステロイド注射を始めました。1日目・2日目・3日目・10日目・24日目・50日目と計6回注射しました。
注射し始めてから24日目(5回目注射)頃までは、痛みが強く、『私の仮説が否定されるのか?・・・』という印象でした。

ところが!40日目の来院時は、頻尿に波はありましたがあんなに苦しんだ痛みが、何と消失しました!さらに6回目の注射の50日目には、頻尿も収まり1日11回~12回になったのです!今後は注射の間隔をあけて2ヶ月~半年に1回、年に1回へと減らして行きたいと考えています。

現在この方法で、6人の方が治療中です。2年以上経過したら泌尿器科学会で報告するつもりです。結果はいかに?

【補足】
間質性膀胱炎にステロイド治療はあまり効果がないというのが間質性膀胱炎の専門医では常識のようです。しかし、原因不明のアレルギーあるいは自己免疫疾患として考えられている間質性膀胱炎にステロイド治療が効果がないというのは、不思議ではありませんか?
理由は簡単です。排尿障害や膀胱三角部を治療しないでステロイド単独で治療するからです。

※Kさんのその後の経過をお知りになりたい方は、ここをクリックして下さい。


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コメント

半年から2年くらいで症状が復活される方がおられるとのことですがその割合はどれ位でしょうか。
【高橋クリニックからの回答】
・・・秘密。

またいわゆる慢性前立腺炎症状の方も同様なことが起こると考えられますか?
【高橋クリニックからの回答】
・・・秘密。

いままで慢性前立腺患者の方で術後このようになられた方もおられますでしょうか。
【高橋クリニックからの回答】
・・・秘密。

これはいわゆる再狭窄とは違う問題といううことでしょうか。
【高橋クリニックからの回答】
はい。

学会にも報告していないデータをそう関単にお答えできません。
また、見ず知らずの方に、そこまで報告する義務もありません。
どうしてもとおっしゃるのであれば、「秘密」の回答に関しては、スイカさんの実名と住所明記の上、直接私のメールに問い合わせて下さい。
お答えしましょう。

投稿: スイカ | 2007/10/22 22:36

秘密…ですか。了解です…。

投稿: スイカ | 2007/10/22 23:34

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