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膀胱出口「魔の三角関係」

多くの慢性膀胱炎・間質性膀胱炎患者さんを拝見していく内に、思いついたことを思いつくままにこのブログで掲載していますが、最近の内容をまとめると下図の模式図のような関係が成り立つのではないかと考えるようになりました。題して「膀胱出口:魔の三角関係」です。

【1】慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の患者さんに脊椎麻酔の既往が多い(健常者の5倍)こともあり、膀胱出口神経中枢の脊髄仙骨部2番~4番の機能不全が生じる。
【2】膀胱出口の開放が不十分で、患者さんが気がつかない程度の排尿障害が起こる。
【3】排尿中に膀胱出口は十分に開放されていないので、声帯のようにブルブルと振動する。
【4】生体は振動に負けないように硬くなって耐えようとする。そのため膀胱出口が硬化する。
【5】膀胱出口が硬化すると、膀胱出口は益々開放しにくくなるので、膀胱出口は振動する。この悪循環が繰返される。

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【6】膀胱出口の振動は、隣接する膀胱三角部を刺激し、膀胱三角部の肥厚・硬化を促進する。
【7】膀胱三角部の肥厚・硬化は膀胱三角部を過敏にし、脊髄を常に刺激し続ける。
【8】膀胱三角部からの情報であふれた脊髄は、隣接する感覚ニューロンを誤って刺激するので、関連痛という生理学的反応を作る。
【9】一見無関係とも思える関連痛症状は、急性膀胱炎症状に酷似するので、細菌が検出されなければ、非細菌性慢性膀胱炎と診断される。
【10】関連痛の痛み症状が強ければ、間質性膀胱炎と診断される。
【11】膀胱三角部の過敏さが正規のルートで脳中枢に到達すると、頻尿・尿意切迫になり最終的には過活動膀胱になる。
【12】膀胱出口の硬化は、排尿時の膀胱内圧を上げさせる。要するに気張る状態になる。この状態は膀胱周囲の静脈を圧迫してうっ血・充血させる。
【13】結果として、骨盤内静脈うっ滞症候群・瘀血(おけつ)と診断され、効きもしない桂枝茯苓丸などの漢方薬を処方される。
【14】膀胱内圧の上昇は腎臓からの尿の出口である尿管口に圧力をかけ、膀胱内の尿が腎臓に逆流する。時に膀胱内の尿に雑菌が混入していれば、腎臓内に細菌が浸入して急性腎盂腎炎を発症する。したがって、急性腎盂腎炎の既往がある場合には、排尿障害を疑う。

【膀胱出口理論から考えられる治療戦略】
まずこの三角関係の悪循環を断たなければならないことは、容易に思いつくでしょう。
脊髄仙骨部の中枢不全を治すことは、現代医療では到底不可能ですから、脊髄中枢神経は触りません。
【1】保存的治療
膀胱出口が十分に開放しないのであれば、エブランチルなどのα-ブロッカーを試みます。α-ブロッカーは平滑筋の緊張をゆるめる作用がありますから、膀胱出口の振動も抑えてくれます。膀胱出口の振動が少なければ、膀胱出口の硬化も抑えられる訳です。
【2】外科的治療(内視鏡手術)
初期の状態で来院された患者さんの場合は、上記の保存的治療で日常生活が支障ないまで症状の軽快をみます。
しかし潜伏期も含めて経過が長いと、本人が気がついているいないは関係なく、膀胱出口の硬化は進み膀胱出口は狭くなり、隣接する膀胱三角部もすでに肥厚・硬化してしまった場合には、保存的治療は残念ながら手遅れです。ここでみなさん恐怖の内視鏡手術の出番となる訳です。
硬く狭くなった膀胱出口を内視鏡手術で切開・切除します。泌尿器科医の常識では膀胱出口を手術できないと思い込まれています。なぜなら、膀胱出口の括約筋と尿道括約筋が一緒になっていて、膀胱出口を切開したら二つの括約筋は閉まらなくなり真性尿失禁(常時尿失禁)になると思われているからです。
日本やアメリカの解剖学書には確かに区別がないように描かれています。しかし深く調べてみると、フランスの臨床解剖学書には膀胱出口括約筋(内尿道括約筋)と外尿道括約筋は区別して描かれているのを発見したのです。考えてみれば当然のことで、膀胱出口括約筋は平滑筋(内臓筋・不随意筋)で外尿道括約筋は横紋筋(運動筋・随意筋)と筋肉の質が異なるのに解剖学的に一緒になっている訳がなかったのです。泌尿器科臨床医がそれら筋肉をあまり重要視していなかったので、慣習でただ単に区別をしていなかったに過ぎません。内視鏡検査を行なうと膀胱出口括約筋の圧迫と外尿道括約筋の圧迫を別々に観察することが出来ます。
内視鏡手術に当たって、注意しなければならないのは、膀胱出口をただ広げるだけでは不十分です。手術後、膀胱出口が振動を起こさないような配慮が必要になります。従来の経尿道的膀胱頚部手術(TUR-BN)では、膀胱出口を円状・筒状に切除するので、円状・筒状構造では振動してしまうからです。ポイントは切除だけではなく、膀胱出口の輪状の平滑筋までを充分に切開することです。
また、排尿障害を内視鏡手術で改善させても、膀胱三角部の肥厚・硬化はなかなか元に戻りません。そのため膀胱三角部減張切開手術が必要になります。この治療によって脊髄を経由した関連痛症状はかなり軽快します。

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