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虫垂炎手術と慢性膀胱炎 誰も知らなかった脊椎麻酔の後遺症?

慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の患者さんを何人も何人も拝見していると、フッと気がつくことがあります。
お腹に虫垂炎の手術の傷跡を見かけることが多いのです。印象としては膀胱炎患者さん5人に1人の割合です。確率的にはかなりの頻度です。この事実は慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の真実を暗示しているのかも知れません。
虫垂炎の手術は、一般的に脊椎麻酔(通称:腰椎麻酔・下半身麻酔)で行います。では、「脊椎麻酔を行なうと慢性膀胱炎になりやすい」という大胆で無謀な仮説を立て、推理してみましょう。
虫垂炎手術の際の脊椎麻酔は、一般的に腰椎4番と腰椎5番の間から脊髄腔に針を穿刺して麻酔薬を注入します。麻酔薬は少量ですが強力で注入した部分の脊髄を一時的ではありますが薬理学的に完全に遮断します。痛覚・触覚・温覚・冷覚・深部知覚・運動神経・自律神経の中枢を完全に麻痺させるのです。
薬理作用は一時的ですから、麻酔薬が次第に吸収分解されて脊髄の麻痺はやがて取れます。ただし、一時的ではありますが、たまにオシッコがうまく出なくなる男性がいます。それでも1ヶ月もすれば出るようになります。この現象は脊椎麻酔による排尿神経の一時的麻痺(一過性の神経因性膀胱)とされています。実は、この現象がヒントになるのです。
排尿に関わっている神経は、骨盤神経・陰部神経・下腹神経の3つが知られています。
骨盤神経の中枢は仙髄2番~4番に存在し、膀胱の収縮に関与します。
陰部神経の中枢も仙髄2番~4番に存在し、外尿道括約筋を支配します。
下腹神経の中枢は胸髄11番~腰髄2番に存在し、膀胱の弛緩よ括約筋の収縮に関与します。
上記の脊髄中枢が三つ巴になって排尿をコントロールするのです。そしてどれか一つでも中枢が支障を来たすと排尿はうまくいきません。
虫垂炎手術に必要な麻酔の範囲は、胸髄7番~腰髄2番の間ですが、通常に脊椎麻酔をかけると胸髄7番から下の脊椎の全てが麻痺してしまいます。つまり、骨盤神経・陰部神経・下腹神経の全てが麻痺するのです。
麻酔薬が時間と共に吸収・分解されて麻痺は完全に戻る!と医師は都合よく思っていますが、本当は誰も正確には確認できません。先ほど説明した麻酔後の神経因性膀胱のようにハッキリとした症状が認められれば、一時的にしろ麻痺は残ったと判断できます。そしてタマタマだろうと思い込んでしまうのです。もしも麻痺が残っていて100%の機能が30%くらいまで落ち込んでいれば顕在症状として確認できるのですが、仮に70%~80%程度の低下では症状として現れません。そしてこの状態が回復せずに後遺症として残ってしまった場合、数年であればそれ程問題にはならないでしょう。しかし10年、20年と経過した時に積もり積もった膀胱にかかった負荷を身体がいつまでも黙っていられるでしょうか?それが慢性膀胱炎・間質性膀胱炎症状として顕在化するのではないでしょうか?
下記に、慢性膀胱炎・間質性膀胱炎症状、下部尿路症状を訴え、平成18年3月13日~4月12日の1ヶ月間、高橋クリニックに来院した患者さん(43人中)で虫垂炎手術した14人(33%)の方の写真を掲載します。
虫垂炎の生涯罹患率は7%(15人に1人)です。14人の虫垂炎手術既往のある患者さんを集めるためには、その15倍の210人診察をする必要がある訳です。虫垂炎手術と慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の間にただならぬ関係を疑うのは不思議ではないでしょう?

appf7258f52boo①52歳女性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
年に1回のペースで膀胱炎になる。本年1月から1時間に1回の頻尿で受診、エブランチルの内服で症状軽減する。排尿後の残尿量測定検査で43ml認めた。

appf16465f43boo②43歳女性
平成16年8月に膀胱炎になり9月、11月、12月と繰返す。その後、残尿感、尿意頻拍と下腹部緊満感取れずに来院する。エブランチルの服用で症状が劇的に改善するも、内視鏡手術を強く希望し行なった。

appf18029f47boo③47歳女性
38歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成17年の年だけで10月までに6回目の膀胱炎を繰返す。残尿感と尿意頻拍が主訴である。臨床治験に参加し、その後エブランチルの服用で改善するも、内視鏡手術を希望し手術を行った。

appf18893f37④37歳女性
23歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成18年1月に膀胱炎にたってから、30分~40分に1回の頻尿と1日中続く残尿感が悩みである。詳細にお話をお聞きすると、25歳頃から2時間以内に1回の頻尿があった。

appf15553f69⑤69歳女性
19歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
平成16年1月から夜間頻尿が3回ある。エブランチルの服用で症状軽快し、服用を続けている。

appf18618f63⑥63歳女性
16歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。40歳の時に子宮筋腫の手術を行う。
撮影の時に影が入り見えにくい写真です。

appf17956f61boo⑦61歳女性
13歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
頻尿1日60回以上、突然の陰部の痛み。都立駒込病院、東大病院、女子医大病院を点々として間質性膀胱炎の診断で、膀胱水圧拡張術を2回も受けたが改善せず、当院を受診する。内視鏡手術を強く希望、手術を行う。術後、頻尿は1日10回前後に軽快した。

appf18769f66boo⑧66歳女性
13歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
年に3回の膀胱炎症状、残尿感で悩む。

appf17136f37boo11⑨37歳女性
11歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。30歳の時に子宮内膜症手術を全身麻酔で行う。
1時間に1回の頻尿、恥骨の痛み、両足趾(ゆび)10本のしびれを訴える。エブランチルの服用でも症状軽快しないため、内視鏡手術を行なった。手術後恥骨の痛み、両足趾のしびれは消失した。

appf18930f27boo12⑩27歳女性
12歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。
18年1月、2月、3月と膀胱炎を3回繰り返し、3月の膀胱炎からは残尿感と尿意頻拍が取れない。排尿後の残尿量測定検査で112ccと大量に残る。

Appf18951f66boo23⑪66歳女性
23歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。

Appf18968f50boo15⑫50歳女性
15歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。26歳・45歳の時にそれぞれ帝王切開を脊椎麻酔で行う。

Appf18760f56boo19⑬56歳女性
19歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。28歳の時に帝王切開を脊椎麻酔で行う。

Appf18595f51boo20⑭51歳女性
20歳の時に虫垂炎手術を脊椎麻酔で行う。

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