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膀胱に本当のことを言わせるテクニック

慢性膀胱炎の患者さんを問診すると、何箇所かの病院やクリニックの診察・検査・治療を行った経験のある方がほとんどです。その中には、私がより所にしている排尿障害の検査(尿流量測定ウロフロメトリー検査・残尿量測定検査など)の経験をお持ちの方がおられます。10人にお一人の割合ですが...。しかし、数少ないその検査で「異常なし」と判断された方や排尿障害の結果が出ているのに、「たまたまでしょう」と無視された方がいるのです!

他の病院で同じ検査を行って異常が出ないものが、なぜ私が行うと異常が出るのでしょう?私は詐欺師?手品師?魔法使い?いいえ、私は一介の開業医です。では、なぜ?理由はいたって簡単です。患者さんの体(膀胱)にだまされないようにしているからなのです。物言わない膀胱に、私のテクニックで言わせているだけなのです。

慢性膀胱炎で苦しんでいるのは患者さんだけではありません。実は膀胱そのものが、とてもとても苦しんでいるのです。ですから、初診で来院した時の膀胱は、ある程度楽な状態で来院されています。そのまま間髪入れずに排尿障害検査(尿流量測定ウロフロメトリー検査・残尿量測定検査)を行っても、異常が出る訳がありません。なぜなら、排尿障害という異常な状態にならないように、頻尿・残尿感・尿意頻拍・膀胱痛が出現しているのです。私とお話中の患者さんは、その辛い症状の合間の状態です。この状態で検査を行っても、膀胱は本当のことをしゃべってはくれません。

それでは、膀胱に本当のことを言わせるテクニックをご披露しましょう。私の秘密のテクニックですが、慢性膀胱炎で苦しんでいる大勢のご婦人のために公開します。
膀胱が楽な状態では本当のことを言ってくれないので、膀胱にとって辛い状態にすれば本当のことを話してくれます。検査の前に十分に尿をためていただくのです。それも患者さんが辛いと言うまでです。
具体的には、診察時に「十分尿をためて来ました」という患者さん以外は、近くのコンビにで清涼飲料水(お茶・水・コーヒー・ジュースなど)を500ml~1000ml購入していただき、待合室で飲みながら待っていただきます。尿がたまり、辛くなったら受け付けに声をかけて、検査開始です。「な~んだ」でしょう?たったこれだけの注意で、本当のことを話してくれなかった膀胱が真実を語ってくれるのです。

慢性膀胱炎でご近所の泌尿器科を受診して、排尿障害の検査で異常なしと診断されても、くじけることなく前述のことを実践して再度検査していただいて下さい。きっと異常が出る筈です。

「たまたまでしょう」と判断する泌尿器科医には、ほとほと頭を抱え込んでしまいたい気持ちで一杯です。運良く異常所見が出ているのに、言い換えれば膀胱が真実を語っているのに、それを「たまたま」とは言語道断です。
このような医師は、胃レントゲン検査で胃潰瘍・胃癌の所見が見えても「たまたまでしょう」と言えるのでしょうか?CTスキャンで腎臓に腫瘍性病変が見えても、やはり「たまたま」と言うのでしょうか?このような医師に遭遇したら、病院を変えて下さい。今後の治療もいいかげんですから。

【実例】カルテ番号16086
患者さんは45歳のつくば市在住のご婦人です。中学生時代から頻尿でしたが気にもしていませんでした。だいたい日中は2時間に1回の頻尿です。時折、10分置きの尿意切迫感に襲われることがありました。最近、そのことがたびたび出現するようになったので来院しました。十分に尿をためていただいて、検査を行いました。

尿流量測定ウロフロメトリー検査では、グラフの山の形がギザギザで左右対称ではなく、高さも十分ではありません。尿量253mlありました。右のグラフは正常の女性の排尿曲線です。尿量は211mlでこの患者さんよりも少ないのですが、山はきれいで高く左右対称です。
cc16086urf.jpg f49normal-urflw202ml.jpg

排尿前の膀胱です。子宮の圧迫が認められます。
cc16086echo.jpg

1回目の排尿直後の残尿です。残尿70ml認めます。
cc16086echo2.jpg

2回目の排尿直後の残尿です。残尿24ml認めます。
cc16086echo3.jpg

チョッと工夫で、膀胱が上記の実例のように本当のことを話してくれます。排尿障害の検査を行う時には、貴方の判断で十分に(十二分に)尿をためて検査を行ってください。このチョッとした工夫が、貴方の主治医を名医にするコツです。

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コメント

七~8年前からBPHといわれ、神戸市内の有名公、私立病院を渡り歩いています。いずれの泌尿科もまず検尿,3~4時間待ち、あげくに”菌は出てません前立腺も余りはれていません、血液検査をしましょう。異常ありませんOKです”、で、おはり。時間は5~6分。ウロフトメトリや残尿量検査など初めて聞く、一度もうけたこともない。勿論いくら症状の悪化や苦痛を訴えても”気のせいです”、でおわり。抗菌剤、アルフア-ブロッカ-、それにせいぜい下剤かH2ブロッカ-ぐらい。一度市立の大病院で膀胱鏡検査を受けたがその時モニタ-で膀胱壁に点状出血をみたので”間質性膀胱炎では?”としつもんすると”それなら膀胱に水を入れてフットボ-ル位に膨らしたら!じき入院しなさい。””いままで3~4人にしてやったがそれっきり来院がないから全快したのだろう・・”。とのこと。その後尿管からの大出血で苦痛を訴えると、”細くなっていたのが内視鏡で削れたのでしょう自然に削れてよかったね~”。恐ろしくなって現在は内科で鎮痛剤ポルタレンサポ、抗ヒスタミン剤シングレア、アルフア-ブロッカ-のフリバス、その他ザンタック、セルベックス、マグミットなどの胃薬を処方していただいていますが調子のよい日と悪い日、胃がはっていたい時など此のまま続けてよいのか不安です。明快な高橋先生の解説で眼が覚めるようで何とかお世話になりたいのですが東京では今の体調ではすこしむりなようです、なんとか行く努力をしています。76歳男性、新聞記者OBです、いまでも嘱託で海外出張の機会も多く、早く治して活躍したいたいとあせっています。先生のお力をお貸しください。

投稿: 村瀬 貫也 | 2005/04/04 13:24

前立腺が大きくなければ、膀胱頚部硬化症か前立腺中葉肥大でしょう。手術によって治る可能性が高いと思います。
お大事に。

投稿: 高橋クリニックからの回答 | 2005/04/04 19:02

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