PSA検査

毎日新聞の記事から PSA検査と前立腺がん

患者さんからのご連絡で、毎日新聞の記事に私の考えと合致する内容の記事が掲載されたそうです。ご紹介ありがとうございます。
下記にその記事を要約しました。
詳細は下記のサイトをご覧ください。

毎日新聞


Mainichinews
高齢男性に多い前立腺がん。早く見つければ治療後の見通しは良いが、一般に病状の進行は緩やかなため、不利益も伴う治療をすべきか悩ましいところだ。2回目は、前立腺がんの早期発見に役立つPSA検査についてまとめた。【渡辺諒】

死亡率低下、証拠不十分 病状進行遅く、効果不透明
 長野県安曇野市の無職、工藤元彦さん(77)は約10年前に受けたPSA検査と、その後の精密検査を後悔し続けている。きっかけは夏風邪。2~3週間たっても治らず、市販の風邪薬を飲むと尿が出なくなり、救急病院へ。そこで受けたPSA検査で「異常」と出た。

 この検査は、前立腺がんの可能性を調べる検診の一種で、……。国立がん研究センターによると、がんや炎症で前立腺の組織が壊れると、PSAと呼ばれる特異なたんぱく質(腫瘍マーカー)が血液中に漏れ出てくる。PSAの血中濃度が1ミリリットル当たり0~4ナノグラム(ナノは10億分の1)は正常だが、同4~10ナノグラムだと25~40%の割合でがんが見つかる。……。

 PSA検査の結果を知った工藤さんは、前立腺12カ所に針を刺し、組織を採って調べる精密検査(針生検)を受けた。すると、1カ所からがん細胞が見つかり、医師から手術か放射線治療、PSAの値を定期的に調べる監視療法のいずれかを勧められた。「手術を選んだ友人が尿漏れに苦しんでいる」「前立腺がんは成長が遅い」ことを思い出し、工藤さんは結局、監視療法を選んだ。

 その後、少しずつPSAの値が上昇し、腰痛にも悩まされるように。「前立腺がんは骨に転移しやすい」と聞いたため、病院で磁気共鳴画像化装置(MRI)を使用した画像検査を繰り返し受けたが、がんは前立腺にとどまったまま。工藤さんは「結局、尿が出なくなったのもがんと関係がなかった。高齢者は早期にがんを発見して心配するよりも、知らずに過ごした方が精神的に健康だ」と話す。

早期の発見には有用
 PSA検査は、複数ある腫瘍マーカーのうち、「前立腺がんを早期発見するのに最も有用」(同センター)という。日本泌尿器科学会はガイドライン(指針)で、50代から受けるよう勧めている。学会の代議員で、黒沢病院(群馬県高崎市)の伊藤一人院長は「検査で前立腺がんの死亡率が下がったというデータもあり、一度は受けておくべきだ」と強調する。……。

 一方、問題は、早期発見による利益と不利益のバランスだ。米国予防医学専門委員会によると、55歳以上で自覚症状のない1000人がPSA検査を受けた場合、異常値となった240人のうち精密検査で100人にがんが見つかるが、前立腺がんによる死亡を避けられるのは1~2人。60人以上は……医療行為などによって、尿失禁や勃起不全の合併症を経験する。前立腺がんは進行が比較的遅く、寿命に影響しないことも多い……不利益が利益を上回るケースもある。

 過剰医療をなくそうと70以上もの専門学会が参加している米国のキャンペーン「Choosing Wisely」(賢い選択)でも、米国泌尿器科学会が「リスクについて医師と話し合った後に検査を検討すべきで、日常的に受けるべきではない」と呼び掛けている。米国ではPSA検査について、医師と患者が対等に話し合い、結果についての責任も両者が負う「シェアード・ディシジョン・メイキング」という考え方が浸透している。大阪大の祖父江友孝教授(がん疫学)は「一般的に検診を肯定的に捉える風潮が強いが、検査を受けることで発生する不利益も考えてほしい」と話す。

 日本でも厚生労働省の研究班がまとめた指針によると、個人の判断で受診することは妨げないものの、市区町村が行うがん検診への導入は勧められないという。がん検診の最も重要な点は、検査によってそのがんによる死亡率を下げることだが、国立がん研究センター検診研究部の中山富雄部長は「PSA検査には『下げる』と『下げない』と両方のデータがあるため証拠が不十分で、現時点で結論が出せない」と指摘する。

 8割超の市区町村がPSA検査を導入している中で、熊本市や東京都八王子市のように厚労省研究班の指針を順守し、PSA検査を提供していない自治体もある。大阪府は府内の市町村に対し、指針に基づく検診だけを実施するよう通知することも検討している。

多い選択肢 十分理解を
 利益と不利益をきちんと理解してからPSA検査を受けるべきか判断すべきだが、検査して「異常」となった場合にはどんな精密検査や治療が必要になるのか。

 がんかどうか確定するには精密検査の針生検が必要だが、年齢や前立腺の大きさ、MRIの画像検査の結果次第で針生検を一度中止し、半年から1年後にPSA検査を再び行ってから決めることもできる。……。

 治療としては、がんの転移があれば、薬剤で男性ホルモンを下げてがん細胞の増殖を抑える。一方、がんが前立腺内にとどまっている場合は、▽手術▽放射線▽監視療法--の3種。ただ、手術でがんを取り除こうとすると、前立腺周辺の神経や括約筋にダメージが加わり、……。放射線治療でも、排尿困難や頻尿、血尿、便秘の症状が出る可能性もある。

 監視療法は、がんが前立腺内にとどまり、PSAの値も血中濃度が1ミリリットル当たり10ナノグラム未満といった低リスクの患者に対して行われ、3カ月ごとにPSA検査を、1年後に針生検を受け、がんの進行を見極めていく。しかし、針生検にも感染症や排尿障害が出る恐れがある。

 国立病院機構大阪医療センター泌尿器科の西村健作科長は「前立腺がんは治療の選択肢が多岐にわたるため、長所と短所を説明するのに十分な診療時間が必要だ。患者は3種の治療内容と有効性、合併症などを偏りなく理解したうえで、納得できる治療を選んでほしい」と話した。

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PSA検査の大いなる誤解と弊害

間寛平さんの出演する前立腺癌早期発見キャンペーンをテレビ・コマーシャルでよく見ることがあります。
PSA検査で前立腺癌を早期発見しようというキャンペーンです。年間43000人が前立腺癌になるという恐ろしい内容です。
依然、このブログで、PSA検査を発見した研究者の最近の思いを掲載しました。(ニューヨーク・タイムズの記事)ここにその直訳を載せましょう。

Published: March 9, 2010
Tucson
発行日: 2010年3月9日ツーソン

EACH year some 30 million American men undergo testing for prostate-specific antigen, an enzyme made by the prostate. Approved by the Food and Drug Administration in 1994, the P.S.A. test is the most commonly used tool for detecting prostate cancer.
『毎年約3000万人のアメリカ人の男性が、前立腺特異抗原PSA(前立腺によって作られる酵素)の検査を受けています。1994年に食品医薬品局によって承認されたPSA検査は、前立腺癌検査の最も一般的に使用される検査法です。』

The test’s popularity has led to a hugely expensive public health disaster. It’s an issue I am painfully familiar with — I discovered P.S.A. in 1970. As Congress searches for ways to cut costs in our health care system, a significant savings could come from changing the way the antigen is used to screen for prostate cancer.
『このPSA検査の流行は、高額な経費かけた国民の健康被害に発展しました。 この問題は、私にとって切ないほど馴染みのある問題です。なぜなら、1970年に私がPSAを発見したからです。 議会が国民のヘルス・ケア・システムでコストを削減する手立てを模索している時に、抗原が前立腺癌のスクリーニング検査として使用される方法に変えることで、かなりの節約になりました。』

Americans spend an enormous amount testing for prostate cancer. The annual bill for P.S.A. screening is at least $3 billion, with much of it paid for by Medicare and the Veterans Administration.
『アメリカ人は前立腺癌の検査に巨額の費用を負担しています。 PSAスクリーニング検査のため、毎年の請求額は少なくとも30億ドル(2400億円)です。それらの多くが老人医療健康保険制度と復員軍人援護局によって支払われています。』

Prostate cancer may get a lot of press, but consider the numbers: American men have a 16 percent lifetime chance of receiving a diagnosis of prostate cancer, but only a 3 percent chance of dying from it. That’s because the majority of prostate cancers grow slowly. In other words, men lucky enough to reach old age are much more likely to die with prostate cancer than to die of it.
『前立腺癌と聞けば多くの重圧を感じるかもしれませんが(あるいは、前立腺癌と知れば多くの記事や評判になるかも知れませんが)、次の数字を考えてみてください。 アメリカ人の男性が、生涯に前立腺癌の診断を受ける可能性は16パーセントです、しかし、前立腺癌で死亡というのは、わずか3パーセントしかありません。 それは前立腺癌の大部分の成長が遅いからです。 言い換えれば、幸運にも高齢者になった男性は、前立腺癌が原因で亡くなるよりも、前立腺癌を持って亡くなる人の方がはるかに多いのです。』

Even then, the test is hardly more effective than a coin toss. As I’ve been trying to make clear for many years now, P.S.A. testing can’t detect prostate cancer and, more important, it can’t distinguish between the two types of prostate cancer — the one that will kill you and the one that won’t.
『その時でさえ、この検査はコイン占い(コイントス)より無意味です。 私が、今まで何年間も明らかにしようとして出来なかったことは、PSA検査で前立腺癌を検出できないこと、さらに重要なことは、それが2つのタイプ、つまり死亡原因になる癌か天寿を全うできる癌かを見分けることができないということでした。』

Instead, the test simply reveals how much of the prostate antigen a man has in his blood. Infections, over-the-counter drugs like ibuprofen, and benign swelling of the prostate can all elevate a man’s P.S.A. levels, but none of these factors signals cancer. Men with low readings might still harbor dangerous cancers, while those with high readings might be completely healthy.
『代わりに、この検査は、男性の血中前立腺抗原がどのくらい持っているかが単に分かるだけです。 感染症、イブプロフェンのような市販薬、および前立腺肥大症はすべて、男性PSAレベルを上げます。しかし、これらの要素のいずれも癌ではありません。 PSA値が低いと判定された場合でも、前立腺癌を完全否定することはできませんが、一方で、高いと判定された場合でも、健常者とされる場合もあります。』

In approving the procedure, the Food and Drug Administration relied heavily on a study that showed testing could detect 3.8 percent of prostate cancers, which was a better rate than the standard method, a digital rectal exam.
『承認手続きの際に、食品医薬品局は、一般的な検査法である直腸触診に比べ前立腺癌発見率が良いとして、3.8パーセントの前立腺癌を検出できたPSA検査研究を大いに根拠としました。』

Still, 3.8 percent is a small number. Nevertheless, especially in the early days of screening, men with a reading over four nanograms per milliliter were sent for painful prostate biopsies. If the biopsy showed any signs of cancer, the patient was almost always pushed into surgery, intensive radiation or other damaging treatments.
『それでも、3.8パーセントは少ない数です。 それにもかかわらず、特に初期のスクリーニングでは、PSA値4ナノグラム/mL以上の男性を苦痛な前立腺生検へとしました。 生検で何か癌の兆候を見つけたら、ほとんどいつも外科的治療や積極的な放射または他のダメージが大きい治療に患者さんは追い込まれました。』

The medical community is slowly turning against P.S.A. screening. Last year, The New England Journal of Medicine published results from the two largest studies of the screening procedure, one in Europe and one in the United States. The results from the American study show that over a period of 7 to 10 years, screening did not reduce the death rate in men 55 and over.
『医学界はPSAスクリーニングに対してゆっくりと方向転換しています。 昨年、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンは、スクリーニング方法について2つの大規模研究を報告しました。1つはヨーロッパ、もう1つは合衆国の研究です。 アメリカの研究結果からは、7年~10年の期間にわたっての研究で、PSAスクリーニング検査は55歳以上の男性の前立腺癌死亡率を低下させることはなかったという報告です。』

The European study showed a small decline in death rates, but also found that 48 men would need to be treated to save one life. That’s 47 men who, in all likelihood, can no longer function sexually or stay out of the bathroom for long.
『もう一つのヨーロッパの研究では、死亡率のわずかな減少を示しましたが、48人もの男性のスクリーニング検査で、治療が必要な人をたった1人しか見つけるにすぎませんでした。 残りの47人の男性は、ほとんど性的機能が廃絶しているか、入浴できないような人たちでした。』

Numerous early screening proponents, including Thomas Stamey, a well-known Stanford University urologist, have come out against routine testing; last month, the American Cancer Society urged more caution in using the test. The American College of Preventive Medicine also concluded that there was insufficient evidence to recommend routine screening.
Thomas Stamey、『ご存知スタンフォード大学泌尿器科医、を含む多数の早期スクリーニング提案者たちは、定期PSA検査に反対しました。 先月、アメリカ癌協会はPSA検査を行う際に、さらに多くの注意を喚起しました。 また、American College of Preventive Medicine は、定期検査を推薦するには根拠が不十分であったと結論を下しました。』

So why is it still used? Because drug companies continue peddling the tests and advocacy groups push “prostate cancer awareness” by encouraging men to get screened. Shamefully, the American Urological Association still recommends screening, while the National Cancer Institute is vague on the issue, stating that the evidence is unclear.
『さて、PSA検査はなぜまだ続けられているのでしょうか? 製薬会社が、PSA検査を売り続けていることと、圧力団体が、男性はスクリーニング検査を受けるように「前立腺癌の啓蒙」を押しているからです。 恥ずかしくも、アメリカ泌尿器科学会は、スクリーニング検査をまだ勧めています。一方、国立ガン研究所はこの問題に関してあいまいな立場ですが、証拠が不明瞭と述べています。』

The federal panel empowered to evaluate cancer screening tests, the Preventive Services Task Force, recently recommended against P.S.A. screening for men aged 75 or older. But the group has still not made a recommendation either way for younger men.
『癌検診を評価するのに権限を与えられた連邦委員会(Preventive Services Task Force)は、最近、75歳以上の男性に対してPSAスクーリング検査を推薦しました。 しかし、委員会は、75歳未満の男性に対していずれにせよ勧告はしませんでした。』

Prostate-specific antigen testing does have a place. After treatment for prostate cancer, for instance, a rapidly rising score indicates a return of the disease. And men with a family history of prostate cancer should probably get tested regularly. If their score starts skyrocketing, it could mean cancer.
『前立腺特異抗原テスト(PSA)は今でも一定のポジジョンを占めているのも事実です。 例えば、前立腺癌治療後に、急速に上昇するPSA値は、病気の再燃を示します。また、前立腺癌の家系がある男性は定期的にPSA検査されるでしょう。 PSA値が急峻に上昇し始めるなら、それは癌を意味します。』

But these uses are limited. Testing should absolutely not be deployed to screen the entire population of men over the age of 50, the outcome pushed by those who stand to profit.
『しかし、これらの用途は限定的です。 50歳以上のすべての男性をスクリーニングするためにPSA検査を絶対に実施すべきではありません。PSA検査は利益追求側に立った人々によってごり押しされた代物です。』

I never dreamed that my discovery four decades ago would lead to such a profit-driven public health disaster. The medical community must confront reality and stop the inappropriate use of P.S.A. screening. Doing so would save billions of dollars and rescue millions of men from unnecessary, debilitating treatments.
『40年前の私の発見が、このような利益主導の国民健康災害につながるとは夢にも思いませんでした。 医学界は、現実に立ち向かって、PSAスクリーニングという誤りを止めなければなりません。 そうすることで、何十億ドルの節約と数百万の男性を不要で有害な治療から救出することがきっと出来るでしょう。』

【原文】

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イギリスから訪れたご夫婦

イギリスの健康診断でPSA値が高く、主治医から針生検を強いられて悩むご主人を見て、奥さまがインターネット検索で、私の書いているブログをお読みになりました。私の意見に共感し、日本に来る予定があったので、ご夫婦で高橋クリニックにお越しになりました。奥さまは、私のブログをお読みになっているので、積極的ですが、ご主人は連れて来られたという印象で、落ちつかない様子です。

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前立腺の大きさは32cc(正常20cc)で少し大きめです。また、膀胱出口が膀胱側に突き出ています(白い矢印↖️)。本来の前立腺と膀胱の境界線は点線のラインです。この形態から、排尿障害が強いと考えられます。
触診では、典型的な前立腺肥大症の硬さで、左右差がありません。前立腺ガンの固い硬結も触れませんから、前立腺ガンの心配はありません。

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結局、排尿障害が強く、さらに前立腺肥大症もあるために、排尿時の強い圧力(青い矢印⬇︎)がスムーズに尿道を通過しません。そのため、圧力⬇︎はすべて前立腺にかかります。前立腺は【PSA】というタンパク分解酵素を貯蔵している臓器でもありますから、その圧迫でイラストの如くPSAが漏出して、血液検査でPSA値が高いと判断されるのです。

触診と超音波エコー検査で前立腺ガンが確認できなければ、前立腺ガンが存在しないか、あるいは最悪ステージⅠと判断できます。もしも、ステージⅠだとしても、5年生存率は癌でない人と比べても同じなのです。また、ステージⅠ・Ⅱ・Ⅲの5年生存率も同じですから、触診とエコー検査で確認できてから治療しても遅くはありません。様子をみることにしました。
1年後に再検査することにしました。奥さま!ご理解いただけましたか?

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PSA値326の患者さん

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患者さんのご紹介で、60代の患者さんがお越しになりました。
PSA値がなんと326という高値なのです。
早速、前立腺の触診しました。すると、前立腺の左右に硬結が触れました。間違いなく前立腺ガンです。大きさは、左の方が大きい所見でした。
写真は、前立腺の右のエコー検査所見です。左側の画像が前立腺の正面像で、右側が前立腺ガンの縦断面です。正面像の左下(前立腺の右)に小さな陰影が確認できます。体積は、0.31㏄です。さらに、赤い矢印の下に別の陰影が見えます。左の前立腺ガンの一部でしょう。
前立腺肥大症もあり、前立腺の大きさは58㏄(正常20㏄)です。

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この写真は、前立腺の左のエコー検査所見です。左側の画像が前立腺の正面像で、右側が前立腺ガンの縦断面です。正面像の右下(前立腺の左)に先程の陰影よりも大きな陰影が確認できます。体積は、1.43㏄です。その陰影の左側にかすかな陰影が見えます。右側の前立腺ガンの連続陰影でしょう。

左右に分かれて存在している前立腺ガンから考えて、細胞の悪性エネルギーが強く悪性度は高いでしょう。
両方の前立腺ガンの体積(0.31+1.43=1.74㏄以上)から考えても、PSA値326は高すぎます。おそらく、骨転移しているでしょう。そこで、当院のような街中の開業医では、骨転移の確認ができませんから、大きな病院で検査に行っていただきました。

後日、患者さんが再度ご夫婦で訪れました。大学病院で精密検査と針生検を行いました。結果、大腿骨と骨盤に転移があり、悪性度はグリソンスコア4+4=8の高いものでした。前回の私の診察結果の予想通りでした。現在、大学病院でホルモン療法を始めたそうです。その後、当院でも定期的に診察することになりました。大学病院では、絶対に実行しない代替医療を補助的に患者さんを応援するつもりです。

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PSA高値の7人〜8人に1人が顕在ガン

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2年前にPSA値が高い患者さんを集計し、前立腺ガンの患者さんの発見率を調べてみました。
延べ人数ちょうど500人の初診患者さんで締めました。その中で前立腺癌と思われた患者さんが60名おられました。確率12%で、8人に1人(500人÷60人)の割合です。
また、先月11月の1カ月間に、PSA値が高くて来院した初診・再診患者さんの内、エコー所見と触診でハッキリと前立腺ガンと診断できた患者さんも集計してみました。
総数115人、その中で、前立腺ガンと確認できた顕在ガンの患者さは17人でした。約14.8%で、7人に1人の割合(115人÷17人)です。過去のデータから考えて、私の経験上、PSA値が高い患者さんの7人〜8人に1人が顕在ガン(ステージⅡ〜Ⅳ)です。
ところが、顕在ガンを除く、6人〜7人の患者さんに前立腺ガンが全くない訳ではありません。この患者さんに針生検を行えば、30%の確率でラテント癌(ステージⅠ)が発見できる筈です。つまり、6人〜7人の中で2人から前立腺ガンが発見されるでしょう。2年前の500人ー60人=440人のうち、30%の患者さん(440人×30%=132人)の132人のステージⅠのラテント癌が発見されるのです。

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このエコー検査の写真は、PSA値が高く針生検を受けた患者さんの所見です。前立腺ガンの影は見えません。単に前立腺肥大症の所見だけです。ところが、前立腺肥大症のために、PSA値が高くなり、針生検を受けてしまい、ラテント癌である前立腺ガンが発見されてしまったのです。患者さんが持参した最初に掲げた説明書には【グリソンスコア6】で良性に近い前立腺ガンでした。つまり、この患者さんは、見つけなくてもいい癌を無理矢理に発見されたのです。ある意味、この患者さんは、治療や手術を受けるかどうかは別として、無理矢理のガン宣告を受けてしまった精神的犠牲者です。医師は、『前立腺ガンを見つけてやったんだ!』と言う気持ちでしょうが、「治療しなくても寿命に影響ないので安心してくださいね。」と告げられても、安心できる訳もありません。

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前立腺針生検への疑問

【PSA検査→PSA値が高い→前立腺ガンの疑い→針生検→前立腺ガンを確認→ガンの組織像(悪性度)を調べる→治療方針を決定する】

Img_0672以上が、前立腺ガン検診とその後の治療の流れです。一見完璧でツッコミどころの無い理論展開です。
しかし、私から言わせると、ツッコミどころが満載です。
今まで入手した文献データを基に考えると、次のいろいろなツッコミが出来ます。
❶男性には、PSA値とは無関係に年齢に応じたラテント癌が存在する!
50歳代12%
60歳代22%
70歳代35%
80歳代50%
この%には、前立腺ガンの患者さんは含まれていない。
❷PSA値が高くなる原因は、前立腺ガン以外の方がはるかに多い!
❸F/T比は、排尿障害があると当てにならない!
❹針生検で前立腺ガンを刺激して、生き物である癌細胞が「ジッ」と黙っているとは思えない!
❺ステージが低ければ(Ⅰ〜Ⅱ)治療の対象にならない事が多い。しかし、発見された事が患者さんに精神的トラウマを残す!『俺は、がんだ!ガンだ!癌だ〜!』
❻ステージが中等度(Ⅱ〜Ⅲ)であれば、ホルモン治療・超音波治療・放射線治療・重粒子線治療・手術治療の選択を患者さんの責任で選ばなければならない。キッカケを作ったのは医師なのに!
❼ステージが高ければ(Ⅲ〜Ⅳ)、一般的にはホルモン治療だけである。
❽ステージ分類は針生検なしで、触診とエコー検査でほぼ90%予想可能である!
❾継続したホルモン治療により、去勢抵抗性前立腺ガンCRPCを育てる可能性がある。
➓その場合、針生検がCRPCを育てるキッカケを作った可能性がある。
Img_0673⓫ステージⅠ~Ⅲの前立腺癌は、文献から他の病気の生存率と変わりない。針生検で発見しなければ、もっと生存率が高かった可能性がある。
⓬悪性度の高い低分化型(グリソンスコア8・9・10)は、針生検直後から生存率が極端に低下する!
以上の事から、初めの【理論展開】が、如何に稚拙で短絡的な思考法かということが分かる。

初めの【理論展開】で利益が得られるのは、針生検を受けた患者さん40人に1人位です。
PSAが高く、様々な検査で明らかに前立腺ガンを認められ、積極的な治療、例えば放射線治療・手術治療を受けたい患者さんに限って、針生検を実施すれば良いでしょう。

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口実

Img_0656「PSA値が高いから針生検しましょう」と強要されるのは、見方を変えれば、前立腺ガンをエサに何が何でも見つけ出して、積極的な治療に持っていく「口実」に思えてなりません。1回の針生検で見つからなければ、その後も何回も針生検を行うのが通例です。泌尿器科医師にとっての営業活動の1つに見えます。ある意味、患者さんの肉体に負担をかける事で利益を上げているようにも思えます。

針生検によって前立腺は傷だらけになります。通常、6本〜12本以上刺すわけですから、生体は傷ついた場所を修復するために懸命に努力します。顆粒球、樹状細胞、マスト細胞、線維芽細胞などが総動員されます。その傷ついた組織の中に前立腺ガンが含まれる事があります。傷ついた前立腺ガン細胞は、マスト細胞で食べられ、周辺は顆粒球で攻撃されます。残っている癌細胞は、これらの攻撃に対抗できる武器を持ち合わせていません。唯一、細胞分裂を繰り返す事で、細胞の数を増やし続け対抗します。

Img_0653
ここで問題が出現するのです。
各臓器の細胞は、骨髄の幹細胞から供給されるモノサイトによって作られます。肝臓に到着したモノサイトは肝細胞になる肝母細胞に、腎臓に到着したモノサイトは腎細胞になる腎母細胞になります。
癌細胞は、骨髄からモノサイトが供給されませんから、増えるためには細胞分裂するしか方法がありません。正常で健常な細胞が分裂する時と違って、全く同じ細胞がコピーされることがありません。遺伝子情報を含んだ染色体もバラバラで数もマチマチです。染色体がバラバラだと、中には細胞をコントロールする染色体が消滅することがあります。つまり悪性度が増すのです。癌細胞の悪性度を増すキッカケを作ったのが針生検になるのです。
このグラフで分かるように、針生検をキッカケに生存率が急激に低下します。

「PSA値が高いから針生検をしましょう」という口実は、もしかすると悪魔や死神の囁きかも知れませんね。
【PSA値高い→前立腺ガンの疑い?→針生検で発見!→早期発見!→治療の選択→患者さんに有益だ!】という理論展開に一見、非の打ち所がないように思えます。
しかし、私の見えるこの理論のトラップは、次の項目です。
❶悪性度の低い癌細胞は、寿命に影響しない!
❷色々な理由でPSA値は高くなる!
❸針生検で癌細胞の悪性度が増す!
❹早期発見が重要なのは、ステージⅢ〜Ⅳだけ!
❺以前の針生検の後遺症でPSA値が高くなる!
これらの項目を全て否定する事が出来るのであれば、私は自分の考えを引込めましょう。

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PSA値が高いまま無事に6年間

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平成23年10月に来院した73歳の男性患者さんです。
PSA値が8.4と高く、虎の門病院で前立腺針生検を勧められましたが拒否して、当院に来院しました。
前立腺触診や超音波エコー検査では、前立腺癌とおぼしき所見は全くないので、定期的に検査することにしました。
平成24年、25年、26年、28年、29年の今年10月にチェックしました。現在79歳です。その間、PSA値が9.0を超える時もありましたが、前立腺癌の所見はまったく確認できませんでした。
写真は、一番最近の超音波エコー検査所見です。前立腺肥大症と排尿障害の証拠は認められますが、前立腺癌の陰影は認められません。触診も異常ありませんでした。
PSA値が高いと言われて針生検を勧められも、6年経過しています。前立腺癌の予後は、まずは5年ですから、この観点からも、この患者さんには前立腺癌が無いかラテント癌と考えて良いでしょう。
これからも毎年1回のペースで定期的検査で過ごせるでしょうね。

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PSA値が高くなる要因

Ilastpsaps
PSA検査結果が高いと言うだけで、前立腺針生検を強引に迫られ、悩まれる患者さんがとても多くおられます。今までも、PSAについてたくさん解説して来ました。そこで、イラストを使って、PSA値が高くなる要因を分かり易くまとめました。言葉で解説しても、なかなか理解できない方が多いので、イラストで表現しました。
それでは、1つ1つ解説しましょう。

続きを読む "PSA値が高くなる要因"

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PSAと前立腺ガンの関係

Psamecha
【PSA値が高い=前立腺癌】というのが、ちまたでは「常識」です。ただ、この常識が独り歩きしてしまい、前立腺癌が死亡リスクのない多くの人々に精神的、肉体的にも苦しめているのが現実です。

そこで、PSA値が高くなる理由について解説しましょう。
一般に信じられているPSA値が高くなる理由が、イラストで示したメカニズムです。さて、前立腺とは、PSAというタンパク分解酵素を合成して精液に混ぜる分泌腺です。合成するのが腺細胞で、その一部の腺細胞が癌化したのが前立腺癌です。

前立腺の腺細胞で造られた容器(腺腔)にPSAをヒタヒタに溜めています。PSAはタンパク分解酵素なので、漏れ出ると周囲のタンパク質でできた組織を破壊してしまう恐れがあるので、腺細胞と基底膜細胞でキッチリと防壁を築き上げています。
その防御壁の一部の腺細胞が癌に変貌すると、基底膜が破壊されPSAが漏れ出てしまい、それが、前立腺癌のPSA値が高くなる理由です。ここまでは、なるほどなるほどと思われるでしょう?

ところがです、基底膜を破るためには、前立腺癌細胞が腺腔内に増殖、増殖して隙間なく増殖してギュウギュウ詰めになる程密度が高くなければ、基底膜は破壊されません。癌細胞は、腺細胞の親戚ですから、基底膜を破壊できる能力は持ってはいません。単に物理的に基底膜が破壊されるから、PSAが漏れるのです。

ですから、PSA値が高くなる癌細胞は、増殖率の旺盛で触診やエコー検査で容易に判別可能なステージⅡ〜ステージⅣのグリソンスコア❽~❿に限ってです。増殖率の控えめなステージⅠやグリソンスコア❼以下の前立腺癌の場合は、この理論では説明できません。
すると、PSA値が高くて前立腺ガンのグリソンスコア❼以下の癌が発見された場合は、どのように考えれば良いのでしょうか?
これは、PSA値が高くなったのは、癌細胞が原因ではなく、前立腺肥大症、排尿障害(膀胱頚部硬化症)、前立腺炎が原因で、基底膜が破壊されたということです。PSAが高いと言う理由だけで、他の検査もしないで針生検を実施したということです。つまり、今話題になっている過剰診療になるのです。

一流大学の有名教授たちも、同じように【PSA高い=前立腺癌】の考え方に固執しているので、若いその他大勢の医師たちも、それに従うのは当然でしょう。知識人であるべき医師が本当に情けなし!

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