PSA検査

PSA値と排尿障害

Psa1 PSA値が高くなり、前立腺針生検をされても前立腺ガンが発見されない患者さんが多く存在します。そして、その後、ガン細胞を発見するために、何回も前立腺針生検をされてしまうのです。

 排尿障害の無い健康な男性は、膀胱出口がイラストのように十分に開いてくれるので、腹圧の圧力がスムーズにオシッコを出します。

Psa2

 ところが、膀胱出口が十分に開かない排尿障害がある人の場合には、排尿時の腹圧が健康の人のようにスンナリと排尿にはなりません。その結果、前立腺に腹圧の圧力がかかり、前立腺内のPSAが前立腺から漏れ出て染み出して、血液に流れてしまうのです。その結果、血液検査のPSA値が高くなるのです。これは前立腺ガンではなく、医師に誤解されるのです。

Psa3

PSA値が高いから、前立腺ガンを疑い、針生検をされてしまいます。しかし、ガン細胞が発見されないと、「良かったですね。」と言いながら、『くそう〜!』と思いながら、PSA値が高かった理由を説明しないのです。その後も定期的にPSA検査を行い、前よりも高くなったから、「ガンが必ず存在します。見つけましょう!」と、何度も針生検をすすめるのです。

 針生検をされると、前立腺内に少なくても10個所以上も穴が開けられるのです。術後その穴が必ずしも閉じるとは限りません。そして排尿障害がある人は、腹圧によって前立腺が強く圧迫されるので、そこから前立腺内のPSAが漏れ出てしまいます。そして排尿の度にPSAが穴から漏れ続けるので、穴は閉じなくなります。そのため、針生検後には次第にPSA値が上昇するのです。その結果、何回も針生検をしましょうと言われるのです。4回も針生検をされた患者さんが来院したことがあります。最後の針生検で悪性度の低いガン細胞が見つかりました。針生検を行った医師は大喜びでした。

 実は針生検を何回も行ったことで、前立腺内の正常細胞が傷付き、たくさん死滅します。その結果、細胞を補充するために何回も細胞分裂が起きるのです。最終的に細胞分裂で突然変異が生まれて前立腺ガン細胞になってしまうのです。それが、4回目の針生検の前立腺ガン細胞なのです。ある意味で、針生検でガン細胞が生まれたとも考えられます。ある意味で、医師による犯罪とも言えますね?

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膀胱括約筋に注目

Ecoh1 泌尿器科の男性のエコー検査で、一般の医師は前立腺の大きさと、前立腺結石・石灰・膀胱結石・膀胱腫瘍しか評価しません。前立腺が大きくなければ、異常なしと診断します。前立腺結石は無視です。慢性前立腺炎や間質性膀胱炎や過活動膀胱の患者さんにエコー検査しても異常なしと誤診するのです。一般の医師は、エコー検査の画像を小さいままで観察するです。小さな構造異常は気にもなりません。それで異常なしと誤診してしまうのです。それを回避するためには、画像を5倍〜6倍に拡張するのです。当然ですが、画像のいろいろな陰影を見て「これは何だろう?」「どうして、こんな形になるのだろう?」と色々な疑問を感じるはずです。

 私がエコー検査で注目するのが膀胱括約筋の肥大の有無です。初めのイラストはエコー検査の側面像と正面像の表示です。側面像では膀胱括約筋は見ることが出来ませんが、正面像で観察すると前立腺の左右に膀胱括約筋が見えます。

Ecoh2_20201017120401 排尿障害が持続して存在すると、膀胱括約筋が次第に肥大します。それを表示したのが2枚目のイラストです。側面像で膀胱括約筋が確認できます。その理由は左右に合った膀胱括約筋が肥大して、中央に突き出ているからです。排尿障害が長く継続すると、膀胱括約筋が肥大して、エコー検査の側面像で確認できるのでです。

Psa37904m65pp【実例】
 この初めの写真はPSA値が高くて来院した60歳代の患者さんの前立腺の』エコー所見です。今年の6月に膀胱炎症状が出現し、地元の病院に行ったら、PSA値が5〜9と高く、前立腺針生検をされてしまいました。8ところがガン細胞は発見されませんでした。その後陰部が痛くなり、今度は慢性前立腺炎と診断されたのですが、治らないので当院を受診されました。
【?】マークで示している部分が何だと思いますか?

【?❶】は膀胱括約筋です。【?❷】は膀胱縦走筋です。【?❸】は膀胱出口粘膜の硬化像です。

【?❶】の膀胱括約筋はエコー所見の側面像では、普通の方は見えないのが正常です。排尿障害が長期間継続すると、膀胱括約筋が次第に肥大して、エコー所見の側面像で見えてしまうのです。

【?❷】の膀胱縦走筋は、膀胱出口を開くための筋肉ですから、膀胱出口に近く(5mm)に向いていなければなりません。ところが、この膀胱縦走筋は膀胱出口から10mm以上も離れています。これも排尿障害が原因です。

【?❸】の膀胱出口粘膜の硬化像は、正常の人にはありません。オシッコする時に膀胱出口は開くために粘膜が硬ければ開きにくくなってしまいますよね?ですから正常ではあり得ないのです。この所見は、膀胱出口が十分に開かない状態でオシッコをしているからです。それは膀胱出口がオシッコのたびにブルブル震えるからです。そのため粘膜が次第に硬くなるのです。結果、患者さんにオシッコの出方をお聞きすると、オシッコが2つに割れたり散ったりしていますとお答えになりました。

Psa37904m652pp 2枚目の写真は患者さんのエコー正面像です。【?❹】は左右の膀胱括約筋が肥大して合体している所見です。この合体所見が、膀胱括約筋の肥大です。

 この患者さんは前立腺の大きさは25ccと正常範囲ですが、エコー所見で排尿障害が強いことが理解できます。オシッコの際に膀胱出口に向かって圧力がかかります。膀胱出口が十分に開かなければ、その圧力の大部分が前立腺に負荷を掛けます。前立腺内には前立腺液が貯蔵されています。その前立腺液の中にPSAが大量に含まれているのです。その圧力がPSAを血中に染み出させるのです。当然として血中のPSA値が高くなります。それをバカな医師が「前立腺ガンだ!針生検しろ!」と強調するのです。

【実例の結論】
この患者さんに排尿障害があり、それが原因で膀胱炎症状になったのです。排尿障害が原因でPSA値が高くなり、針生検をされてしまいました。前立腺が10カ所以上も針で傷つけられ、それをキッカケに慢性前立腺炎症状になってしまったのです。排尿障害の治療と頻尿の治療で症状は軽快します。排尿障害の治療薬ユリーフ・シロドシンと頻尿の治療薬のべオーバ・ベタニスを服用すれば良いのです。PSA値は見事に下がります。前立腺が大きくなく、PSA値が高いと前立腺ガンと誤診されて、多くに人が針生検をされて、この患者さんのように辛い思いをしてしまうのです。

 

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ニュースで連想した事


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新型コロナウィルスの罹患数と死亡者数の推移を示したグラフが、インターネット・ニュースで見つけました。現在の罹患数が4万2千人を超え、死亡者数は千人を超えました。新型肺炎の感染者の2.4%が残念ながら亡くなられているのです。マスコミでも大騒ぎです。このグラフを見て…あれ?…と気がついたことがあります。このグラフと似たようなグラフを過去に私が作った覚えがありました。

5b403c1ea1f244958a7eaf8c51d5db4d過去に作成した前立腺ガンの罹患数と死亡数のグラフが右に示しました。前立腺ガンの場合は、現在の罹患者の13%(1万3千人➗10万人)が亡くなられているのです。今話題の新型コロナウィルスの死亡率の「5倍以上」の確率で患者さんがお亡くなりになっているのです。新型肺炎の4万2千人の13%の5,460人も亡くなったら、もっと驚くべき感染症でしょう? しかし、前立腺ガンは話題になっている新型肺炎よりも、死亡率がはるかに高いのです。

その理由を考えてみましょう。前立腺ガンの罹患者が多くなった理由は次の通りです。

【PSA検査の普及→PSA値が高い→詳しく調べもしないで針生検→前立腺ガンのラテント癌も発見→罹患数の増加→13%か死亡→死亡者数の増加】になっているのです。無病であってもガンは存在するのてす。前立腺のラテント癌は、現在では平均で43.3%です。60歳で40%以上、70歳で50%以上、80歳で70%も存在するのです。PSA値が高いと云う理由で針生検をすれば、平均で43.3%の相当な確率で癌が見つかるに決まっています。40歳以上の男性が2,500万人とすれば、全員が針生検すれば、ラテント癌は1千万人に見つかるはずです。結果、13%の130万人が前立腺ガンで亡くなるのです。

この流れから考えてると、どう考えてもPSA検査の普及が原因だと思えて仕方がありません。PSA検査は前立腺ガンの発見には必要ですが、高ければ何でもかんでも針生検を行う事が、諸悪の根源なのです。触診や諸検査で、前立腺ガンを診断したら、針生検を行わないで治療を始めればいいのです。まして触診や諸検査で前立腺ガンを確認出来なければ、ほとんどがラテント癌ですから、針生検をしないで経過観察するべきなのです。

 

 

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PSA値が上昇する前立腺ガンの3タイプ

Psacell ❶イラストて示すのが、一般的なPSAが漏出するイメージです。このパターンの場合は、PSAの漏出は微々たるものですから、通常は高くなりません。腺腔膜を越えられない、この程度のガン細胞は、悪性度は低い細胞レベルですから、そっとするべきです。

Psacell2 ❷前立腺ガンが増殖して、腺腔内に広がるイメージです。前立腺の外側に出るよりも、内腔に浸潤する方が容易です。この場合もPSAはわずかしか漏出しません。やはり腺腔膜を越えられない、この程度のガン細胞も増殖能力が、それ程高くない中間型の悪性度グリソンスコアGS6〜7程度ですから、針生検はすべきではありません。

Psacell3 ❸前立腺ガンが腺腔内に留まらないで、外に増殖したイメージです。内腔にたくさん増殖すると、これ以上の隙間がないので、外側に増殖します。この場合はPSAは高めになります。腺腔膜を破ることの出来る、前立腺ガンは悪性度が高いグリソンスコアGS8〜10でしょう。

この3タイプに前立腺肥大症や膀胱頸部硬化症などの排尿障害があると、PSAの腺腔に常に圧力がかかるので、PSAは漏出しやすくなりますから、予想以上にPSAは高くなるのです。

ですから、PSA値が高い患者さんの場合は、触診やエコー検査で前立腺ガンを確認できなければ、前立腺ガンがあったとしても❶と❷のタイプですから、先ずは前立腺肥大症や排尿障害の治療を行い様子を見るべきです。すぐに針生検を行うのは、過剰な診療になります。

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PSA値が高くなり悩まれている患者さんへ

PSA値が高いから十分に調べもしないで、前立腺針生検を迫る医師がおいでであれば、下記の文章を参考にお渡しください。

********************

 主治医の先生に申上げたいことがあります。PSA値が高いと、即、前立腺針生検を実施するのはお控えください。先ずは必ず前立腺の触診を行い、前立腺ガンの硬結が触れるか否かを確認してください。もしも硬結が触れなければ、前立腺ガンが存在したとしても、ステージ①ですから10年生存率は健常者と同じなので、ガンを発見する必要はありません。さらに、硬結が触れた場合、その硬さや形状で悪性度グリソンスコアがおおよそ予想できます。前立腺肥大症に近い硬さであれば、グリソンスコア6前後です。かなり硬ければグリソンスコア7~8です。硬さが歪であればグリソンスコア9~10と考えていいでしょう。

 Pcagraf PSA検診に関して、世界的レベルのマスコミや学会では、乳がんと同様に前立腺ガンの過剰診断・過剰治療が問題になっています。しかしながら、日本では未だにPSA検査、針生検をやめてはいません。日本の状況を振り返ってみると判明することがあります。1975年頃は、前立腺ガンの死亡者数が1,200人ほどでしたが、2019年の現在では12,000人以上になっているのです。
1975年頃は、前立腺ガンの罹患数(前立腺ガンが発見された人数)が2,000人ほどだったのが、2019年の現在では78,000人以上になったのです。

この数字から客観的に調べると分かることがあります。
1975年の罹患数➗死亡者数=2,000人➗1,200人=1.7倍
2019年の罹患数➗死亡者数=78,000➗12,000人=6.5倍

時代とともに、前立腺ガンの罹患数が1.7倍⇒6.5倍と、まるで放物線のように急激に増加しているのです。しかしながら、前立腺ガンの死亡者数は角度の低い直線状です。このグラフから分かることは、今話題の「過剰診療」なのです。

Caseamengアメリカとイギリスの前立腺ガンの罹患数と死亡者数の比較したグラフです。PSA検診を行っていないイギリスの死亡者数と、PSA検診を行っていたアメリカの死亡者数がほぼ同じなのです。にもかかわらず、罹患数はアメリカが極端に多いのです。これは明らかにPSA検診による「過剰診療」なのです。

過剰診療でも、「たくさんの人を助けることが出来るのだからいいんだ!」とお思いですか?前立腺ガンと診断された患者さんのその後の人生において、ガンのことしか考えなくなるのです。ポジティブになれないので人生のQOLが低下してしまうのです。医師は患者さんを幸せにするのが使命なのに、患者さんを不幸にしてもいいのでしょうか?

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日本の前立腺ガンの死亡者数を注目すると、この40年間に10倍も増えているのです。その原因は不明とされていますが、グラフで示すように、PSA検診の普及により前立腺ガンの罹患数も死亡者数も増えたと考えることが出来ます。

その理由は、PSA検査で前立腺ガンが疑われ、前立腺針生検をして前立腺ガンが発見され、治療されるからです。???とお思いでしょう。これはラテント癌が関与しています。ラテント癌は60歳代~70歳代で50%、80歳代で60%も存在しているのです。その寝ているラテント癌をPSA値が高いことを理由に、前立腺針生検を行い、ホルモン療法で前立腺ガンを刺激しまくっているのです。それが理由で前立腺ガンの悪性度は増して、命にかかわる前立腺ガンに変身するのです。

PSA値が高い=前立腺ガンとは考えないで、PSA値が高くなる理由を考えてください。今の日本では80歳までに80%の男性が前立腺肥大症になると言われています。前立腺肥大症の原因のベースには、排尿機能障害があるのです。排尿機能障害があると、必ずPSA値は高くなるのです。触診と超音波エコー検査で前立腺ガンが確認できなければ、前立腺ガンが存在したとしてもステージ①と考えて前立腺針生検はしないでください。PSA値が高い=排尿機能障害と考えて、積極的に前立腺肥大症や排尿機能障害の治療を行ってください。お願いします。

【備考】
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/bph/2017/11/post-e77b.html

ご質問は下記にどうぞ。
高橋クリニック 高橋知宏(無名の開業医)
東京都大田区中馬込2-22-16
03-3771-8000

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PSA検査の過剰診断でラテント癌が見つかった人

前立腺ガンと診断された60歳代の患者さんが訪れました。

PSA検査で5.0以上で前立腺ガンを疑われ、MRI検査で大きさ1.2㎝の大きさの陰影が発見されました。2015年PSA4.9  2016年PSA5.01  2017年PSA7.2 と年々高くなったので、2018年3月についに前立腺の針生検を行いました。すると、10本中1本だけにグリソンスコア6という良性に近いガンが見つかったのです。前立腺の全摘手術をススメられたのですが、患者さんは拒否して、代替医療の医師に転医して、現在治療を受けているのです。

ここで疑問があります。直径が1.2㎝もの大きさの前立腺ガンかあるのに、たつた10本中1本しか見つからない訳がありません。MRI検査結果は、おそらくは誤診だったのでしょう。

その後は現在までは、代替医療を行っているのですが、2019年10月にはPSA値が6.519と高いままだったのです。本人も代替医療の医師も現状を知りたくて、医師から私が紹介されて来院されました。

早速、エコー検査を行いました。すると私の予想通りに、排尿障害のある前立腺の形状をしていました。膀胱排尿筋が間違った方向に向いており、相対的に膀胱三角部が厚くなり、頻尿症状が推察できました。確かに患者さんは毎日10回の頻尿なのです。また前立腺結石と、膀胱三角部粘膜も硬化像が認められます。これらの所見は、すべて排尿機能障害の後遺症です。結局として、現在のPSA値が高くなるのも、排尿機能障害の後遺症だったのです。

触診所見でも前立腺ガンは触れません。一般的にMRI検査で見つかる前立腺ガンは、触診で必ず見つかります。

Pcastagesuravival グリソンスコア6程度の悪性度の前立腺ガンが、PSA値を高くできるとは思えません。この患者さんの経過は、排尿機能障害によるPSA値の高値を理由に針生検されてしまったために、見つける必要のない悪性度の低いラテント癌が発見されたのです。これで、患者さんは最悪として今後の人生においてガンの事ばかり考えてしまうネガティブな人間に変身するでしょう。

この表は前立腺ガンのステージと5年生存率と同年齢の健常者の5年生存率の比較です。触診で確認できないステージⅠのラテント癌の場合、悪性度に関係なく5年生存率は90%以上であり、これは同年齢の健常者と全く同じなのです。そんなステージⅠの患者さんに前立腺針生検をして、逆に寝ていたガン細胞を傷つけて起こしてしまえば、良い結果が出ると思えますか?また傷つけたことが、ガン細胞だけでなく、患者さんの心も傷つけてしまうのです。

Gs6 これは、医師の行為による被害者とも考えられます。この患者さんのように、前立腺ガンのことしか興味のない医師によって、他の隠れた病気を見逃された患者さんはたくさんいます。医師の使命は、病気を見つけることは勿論ですが、患者さんの命ばかりでなく、患者さん人生のクオリティを高めるのも使命です。

現在の日本人男性の50歳以上では、40%以上の人にラテント癌が隠れています。80歳台では60%にもなります。これは前立腺ガン以外で亡くなられた方の病理解剖結果です。そのようなガンを見つける必要があると思えますか?

バカみたいに「PSA・針生検!PSA・針生検!PSA・針生検!」としか言わない医師は、注意した方がいいでしょう。

 

 

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PSA値が高いため、悩まれる患者さんへ

Ilastpsaps4PSA値が高い=前立腺ガンと思われている素人の方もいれば、専門の医師もいます。その医師たちが、「針生検しなければならない!」「針生検しなければ、治療ができない!」と強引に自分たちの何も考えないワンパターンの治療をすすめるのです。

PSA値の上がる原因は、前立腺ガンだけではなく、膀胱頸部硬化症などの排尿障害や前立腺肥大症、慢性前立腺炎、前立腺結石症、神経因性膀胱、先天性PSA漏出症など 、いくつもの原因があるのです。

逆に、ステージ0〜1の隠れた前立腺ガンは、発見する価値はまったくないのですが、さまざま理由でPSA値が高くなっている場合には、針生検によって寝ている前立腺ガン(ラテント癌)を刺激し起こして、悪性度を増し、結果、寿命に影響のある前立腺ガンを作ってしまう可能性があるのです。

M3pcatransition2PSA値が高くても、前立腺ガンで高くない=ステージ0〜1の患者さんを針生検で刺激しないように、PSA値を高くしている原因を追求するべきです。単純に前立腺ガンだけを見つけることは、総合的に考えて患者さんに不利益をもたらします。

先ずは、ステージ0〜1の確認をします。エコー検査で前立腺内にガンの陰影を認めない事です。次に前立腺の触診をします。硬結を触れない、前立腺の硬さが左右均等であれば問題ありません。

さらにPSA値が高くなる他の原因をエコー検査で確認します。❶前立腺の大きさが40cc以上あれば高くなる根拠です。❷前立腺の形が悪いと排尿障害が強い可能性が高いので、PSA値が高くなります。特に前立腺が膀胱に突出した形状です。❸前立腺結石を認めたら、やはり排尿障害を意味します。❹膀胱の粘膜が厚く凸凹デコボコしていれば、長年の排尿障害のために肉柱形成されたと判断します。

PSA漏出が高くてお悩みの方は、東京都大田区ですが、どうぞ頑張って起こしください。チェックしてステージ0〜1の可能性があるとしても、半年か一年に一回当院に定期的にチェックして頂ければ幸いです。

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PSA値と前立腺ガン発見率

PsariskPSA値が高いと前立腺がんを強く疑われます。このグラフは日本泌尿器科学会が公表しているものです。見て分かるように、PSA値が4.0を超える(〜10.0)と前立腺がんの発見率は40%〜50%を超えます。

しかし、高橋クリニックでPSA値が高いと言われて来院された患者さん500人の中、私の触診とエコー検査でがんを見つけることが出来たのは、60人つまり500人の12%でした。しかし、棒グラフの発見率と比べると、28%〜38%のこの差はどうしてでしょうか?

 

Stage5y_20190707170401これは、実は私が『前立腺針生検』を行わないで診断しているからです。針生検をすれば、前立腺に隠れているガン細胞(ラテント癌)が発見されるからです。エコー検査や触診で見つけることの出来ない前立腺がんは、ステージ❶と言う事になります。ステージ❶の前立腺がんの5年生存率と10年生存率は、ガンのなかった健康な人とまったく同じ生存率なのです。触診で判定可能なステージ❷、ステージ❸も5年生存率は健常人ろほぼ同じ生存率です。それでは、針生検をしてまで前立腺ガンを発見する必要があるのでしょうか?……ガンを発見したことで、ガン死のリスクよりも、ガンの恐怖で精神的に追い詰めることの方が、患者さんの人生のQOL(人生の充実度)低下のリスクの方がはるかに高いと思います。

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PSA検査評価の誤解

前立腺ガンの腫瘍マーカーであるPSA検査によって多くの前立腺ガンの患者さんが発見されることは事実です。しかしながら、寿命に影響しないステージ1の患者さんまで発見されて、多くの患者さんがガンノイローゼになり精神的に落ち込んでいます。その後の人生が暗〜くなってしまうのです。

Psasys1前立腺は分泌組織で腺構造です。その腺構造の外側に前立腺細胞があります。前立腺細胞はPSAというタンパク分解酵素を生産して腺腔構造に貯めるのです。PSAは射精の時に精液に混じり、ドロドロの精液をサラサラにして妊娠し易くします。ところが、何らかの原因でPSAが腺腔構造から漏れ出る→血液に混じる→PSA検査で注目されることがあります。

その漏れ出る原因として、次の5項目が挙げられます。

Psasys2❶排尿機能障害:膀胱の出口が十分に開かないで排尿すると、腹圧が直接的に前立腺に負担となり、その結果、前立腺が絞られますからPSAが腺腔から漏れ出ます。病気としては、前立腺肥大症、膀胱頸部硬化症、神経因性膀胱などがあります。

Psasys6❷慢性炎症:排尿障害などで前立腺に物理的負担が排尿のたび毎にかかるので、当然として慢性的傷害性炎症が発生し、一部の前立腺細胞は死滅します。死滅細胞が欠落した跡に新たな細胞が補充されるまでの間に、そこからPSAが漏れてしまうのです。一般的に炎症だからと言って抗生剤を2週間ほど処方され、再度PSA検査行い、高いと前立腺ガンの疑いが強いと診断されます。しかし、たった2週間くらいで、欠損部に新たな細胞が補充されるでしょうか?……疑問です。

Psasys3❸先天性瘻孔:前立腺細胞の接合部が生れながら不完全で亀裂=瘻孔ができ、そこからPSAが漏れてしまうのです。全ての人類がみんな完璧でみんな同じとは限りません。PSA検査の観点からみれば、ある意味で先天性PSA値異常症です。

Psasys4❹針生検の後遺症:上記の三点が原因でPSA値が高くなり、前立腺ガンを疑われ針生検をされた患者さんがたくさんおられます。針生検後の経過観察で定期的にPSA検査が行われます。すると時間とともに次第にPSA値が高くなるのです。主治医は、また針生検をしましょうと強要するのです。ところが、針生検で前立腺の中に当然傷ができます。傷が必ずしもきれいに治るとは限りません。そこからPSAが漏れても不思議ではありません。さらに1回の針生検で10本〜16本も傷つけられるのですから、針生検の後では、必ずPSA値は次第に上昇するに決まっています。

Psasys5❺前立腺ガン:腺腔構造の壁の一部にガン細胞ができると、周囲の多数の腺細胞との接合が不完全ですから、そこからPSAが漏れてしまうのです。これだけが前立腺ガンのPSA値の上昇なのです。

以上のように、さまざまな原因でPSA値は高くなるのです。PSA値が高い場合は、前立腺の直腸触診とエコー検査で前立腺ガンを確認できなければ、寿命に影響しないステージ①あるいは上記の原因❶❷❸❹であると考えて、無闇に針生検をしてはいけないのです。そうすれば多くの犠牲者を出さなくて済みます。 逆に針生検をすることで、隠れていたラテント癌を傷つけ刺激して、最終的には悪性度の高い前立腺ガンを作るキッカケを医師が創ってしまうのです。神さまは人生のあらゆる所にトラップ・罠を仕掛けているのです。私たち医師は自分たちのために医療を行うのではなく、患者さんの人生をクオリティーの高いものにしてあげるべく、創意工夫努力しなければならないのです。

【備考】内容についてのご質問やご相談は、コメントもしくはお電話(03-3771-8000午前中のみ)でご連絡ください。

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毎日新聞の記事から PSA検査と前立腺がん

患者さんからのご連絡で、毎日新聞の記事に私の考えと合致する内容の記事が掲載されたそうです。ご紹介ありがとうございます。
下記にその記事を要約しました。
詳細は下記のサイトをご覧ください。

毎日新聞


Mainichinews
高齢男性に多い前立腺がん。早く見つければ治療後の見通しは良いが、一般に病状の進行は緩やかなため、不利益も伴う治療をすべきか悩ましいところだ。2回目は、前立腺がんの早期発見に役立つPSA検査についてまとめた。【渡辺諒】

死亡率低下、証拠不十分 病状進行遅く、効果不透明
 長野県安曇野市の無職、工藤元彦さん(77)は約10年前に受けたPSA検査と、その後の精密検査を後悔し続けている。きっかけは夏風邪。2~3週間たっても治らず、市販の風邪薬を飲むと尿が出なくなり、救急病院へ。そこで受けたPSA検査で「異常」と出た。

 この検査は、前立腺がんの可能性を調べる検診の一種で、……。国立がん研究センターによると、がんや炎症で前立腺の組織が壊れると、PSAと呼ばれる特異なたんぱく質(腫瘍マーカー)が血液中に漏れ出てくる。PSAの血中濃度が1ミリリットル当たり0~4ナノグラム(ナノは10億分の1)は正常だが、同4~10ナノグラムだと25~40%の割合でがんが見つかる。……。

 PSA検査の結果を知った工藤さんは、前立腺12カ所に針を刺し、組織を採って調べる精密検査(針生検)を受けた。すると、1カ所からがん細胞が見つかり、医師から手術か放射線治療、PSAの値を定期的に調べる監視療法のいずれかを勧められた。「手術を選んだ友人が尿漏れに苦しんでいる」「前立腺がんは成長が遅い」ことを思い出し、工藤さんは結局、監視療法を選んだ。

 その後、少しずつPSAの値が上昇し、腰痛にも悩まされるように。「前立腺がんは骨に転移しやすい」と聞いたため、病院で磁気共鳴画像化装置(MRI)を使用した画像検査を繰り返し受けたが、がんは前立腺にとどまったまま。工藤さんは「結局、尿が出なくなったのもがんと関係がなかった。高齢者は早期にがんを発見して心配するよりも、知らずに過ごした方が精神的に健康だ」と話す。

早期の発見には有用
 PSA検査は、複数ある腫瘍マーカーのうち、「前立腺がんを早期発見するのに最も有用」(同センター)という。日本泌尿器科学会はガイドライン(指針)で、50代から受けるよう勧めている。学会の代議員で、黒沢病院(群馬県高崎市)の伊藤一人院長は「検査で前立腺がんの死亡率が下がったというデータもあり、一度は受けておくべきだ」と強調する。……。

 一方、問題は、早期発見による利益と不利益のバランスだ。米国予防医学専門委員会によると、55歳以上で自覚症状のない1000人がPSA検査を受けた場合、異常値となった240人のうち精密検査で100人にがんが見つかるが、前立腺がんによる死亡を避けられるのは1~2人。60人以上は……医療行為などによって、尿失禁や勃起不全の合併症を経験する。前立腺がんは進行が比較的遅く、寿命に影響しないことも多い……不利益が利益を上回るケースもある。

 過剰医療をなくそうと70以上もの専門学会が参加している米国のキャンペーン「Choosing Wisely」(賢い選択)でも、米国泌尿器科学会が「リスクについて医師と話し合った後に検査を検討すべきで、日常的に受けるべきではない」と呼び掛けている。米国ではPSA検査について、医師と患者が対等に話し合い、結果についての責任も両者が負う「シェアード・ディシジョン・メイキング」という考え方が浸透している。大阪大の祖父江友孝教授(がん疫学)は「一般的に検診を肯定的に捉える風潮が強いが、検査を受けることで発生する不利益も考えてほしい」と話す。

 日本でも厚生労働省の研究班がまとめた指針によると、個人の判断で受診することは妨げないものの、市区町村が行うがん検診への導入は勧められないという。がん検診の最も重要な点は、検査によってそのがんによる死亡率を下げることだが、国立がん研究センター検診研究部の中山富雄部長は「PSA検査には『下げる』と『下げない』と両方のデータがあるため証拠が不十分で、現時点で結論が出せない」と指摘する。

 8割超の市区町村がPSA検査を導入している中で、熊本市や東京都八王子市のように厚労省研究班の指針を順守し、PSA検査を提供していない自治体もある。大阪府は府内の市町村に対し、指針に基づく検診だけを実施するよう通知することも検討している。

多い選択肢 十分理解を
 利益と不利益をきちんと理解してからPSA検査を受けるべきか判断すべきだが、検査して「異常」となった場合にはどんな精密検査や治療が必要になるのか。

 がんかどうか確定するには精密検査の針生検が必要だが、年齢や前立腺の大きさ、MRIの画像検査の結果次第で針生検を一度中止し、半年から1年後にPSA検査を再び行ってから決めることもできる。……。

 治療としては、がんの転移があれば、薬剤で男性ホルモンを下げてがん細胞の増殖を抑える。一方、がんが前立腺内にとどまっている場合は、▽手術▽放射線▽監視療法--の3種。ただ、手術でがんを取り除こうとすると、前立腺周辺の神経や括約筋にダメージが加わり、……。放射線治療でも、排尿困難や頻尿、血尿、便秘の症状が出る可能性もある。

 監視療法は、がんが前立腺内にとどまり、PSAの値も血中濃度が1ミリリットル当たり10ナノグラム未満といった低リスクの患者に対して行われ、3カ月ごとにPSA検査を、1年後に針生検を受け、がんの進行を見極めていく。しかし、針生検にも感染症や排尿障害が出る恐れがある。

 国立病院機構大阪医療センター泌尿器科の西村健作科長は「前立腺がんは治療の選択肢が多岐にわたるため、長所と短所を説明するのに十分な診療時間が必要だ。患者は3種の治療内容と有効性、合併症などを偏りなく理解したうえで、納得できる治療を選んでほしい」と話した。

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