前立腺肥大症の外科手術

レーザー光線手術をしたのに、頻尿・傷みが治らない患者さん

70歳代の男性患者さんがご夫婦で来院されました。
2年前から恥骨部分が痛くて仕方がないそうです。5年前に尿閉を繰り返したので、レーザーを使った前立腺肥大症の手術を行いました。
しかし、手術後も頻尿は改善せずに、毎日15回の頻尿と、夜間2回の頻尿です。さらに、恥骨の痛みが加わり、患者さんは苦しみ悩んでいるのです。
複数の病院を受診して、CT検査などの精密検査をしたにもかかわらず治らないので、精神科にも受診させられました。
娘さんが、インターネットで高橋クリニックを見つけて来院しました。
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早速、超音波エコー検査をおこなうと、写真のような所見です。
これをご覧になっただけでは、ハッキリ分からないでしょう。
そこで、説明を加えたのが、次の写真です。

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黒く見える大部分が尿の見えるところです。
レーザー光線で手術を行い、切除された部分が三角形線で示す部分です。
口を開けたヘビのように見える膀胱括約筋の上に、膀胱三角部(赤い→)がハッキリ確認できます。
これで、患者さんの痛み症状と頻尿症状が、前立腺肥大症の手術を行ったにもかかわらず治らなかった理由です。

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排尿障害→前立腺肥大症→頻尿になる理由を解説しましょう。
排尿障害によって、排尿中に膀胱出口は十分に開きませんから、膀胱出口が振動します。
その振動により、膀胱三角部が過敏になり肥厚します。
膀胱三角部は、尿意のセンサーですから、ここが過敏になると、頻尿や痛みが作られます。

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最先端のレーザー光線手術で、前立腺肥大症の主な部分(腺腫)を摘出して、それを細かくスライスして膀胱から除去します。
前立腺肥大症の手術だから、前立腺さえ除去すれば良いと、未熟な医師が考えるのです。

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ところが、前立腺は小さくなって、オシッコの出は良くなりましたが、過敏になった膀胱三角部が手付かずです。結局、過敏になったセンサーはそのままですから、症状が治る訳がありません。
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【前立腺肥大症=排尿障害→頻尿+痛み】
と考えて、短絡的に前立腺肥大症を手術さえすれば、症状がなくなる!と思い込んでいるのです。病気は、そんなに単純ではありません。
本当は、
【排尿障害→前立腺肥大症+膀胱三角部の過敏→排尿障害の悪化+頻尿+痛み】
というのが、この病気の仕組みなのです。
治療は、前立腺肥大症と膀胱三角部の処置が必要になります。
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この状態を解決するためには、膀胱三角部を落ち着かせることを目標とします。
①膀胱出口の緊張を緩めるために、ユリーフ
②膀胱三角部を直接に緩めるために、ベタニス
③残っている前立腺の硬さを柔らかくするために、アボルブ
④痛みは脊髄中枢で合成された痛みなので、脊髄中枢の興奮を抑える、トラムセット

以上の治療で改善が得られなければ、内視鏡手術で膀胱三角部を処置すればよいのです。


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手術後の排尿障害?

60代の男性患者さんが、他の病院で前立腺肥大症の手術を行ったにもかかわらず、以前よりオシッコの出が悪くなったと訴えています。
Postopbns18736m65echops超音波エコー検査で確認すると、前立腺のある筈の部分が綺麗に切除されています。主治医の医師も「前立腺は皮一枚残して削ったから、そんなはずはない。」と取りあってくれないとのことでした。
確かに、この超音波エコー検査所見では、そのような結論になります。

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そこで、超音波エコー検査の見方を変えて、3Dで立体的に観察してみると、前立腺のあった空間から尿道に移行する部分にシコリを発見しました。おそらく、このシコリが排尿障害の原因でしょう。

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患者さんは、手術を強く希望されたので、手術を予定しました。
さて、手術当日、内視鏡検査で観察すると、予想通り、前立腺尿道移行部に腺腫の削り残しが認められました。残存の腺腫が、排尿圧力で通り道を塞ぐような動きをするのです。
この残存腺腫が術後の排尿障害の原因だったのです。

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残存腺腫を改めて電気メスで削り除去しました。
写真でご覧のように、残存腺腫はきれいに取り除かれ、尿の通り道が確保されました。

手術をしても、前立腺肥大症の症状が取れないで悩まれている患者さんは、結構存在します。そのような主治医の多くは、「前立腺肥大症は残っていないから、症状が取れないのは、気のせいか歳のせい!」と診断するのです。この病気でお悩みの方は、ご相談ください。

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高周波電気メスERBE・VIO300D

Erbevio300d開業以来3代目になる電気メスを購入し、10月29日に届きました。
ドイツ製のERBE・VIO300Dタイプです。ERBE社の電気メスとしては最高峰の電気メスです。内視鏡手術に特化したバイポーラカット++というモードで切れ味はとてもよく、バイポーラソフト凝固++というモードで止血効果も高いのが特徴です。さらに、今までの電気メスでは内視鏡手術中に細かい気泡が出現して視野を妨げていたのですが、その気泡が非常に少なく、術者のストレスがないというのも特徴です。

TURis-Vという蒸散モードでは、今以上に蒸散効率が高く、今流行りのレーザー手術に引けを取らない効果が実現できます。

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前立腺肥大症内視鏡手術の進歩と前立腺癌の変遷

泌尿器科医として35年働いています。
その間に、内視鏡手術をたくさん行ってきました。一番多いのがTUR-P、つまり経尿道的前立腺切除手術(Trans Urethral Resection of Prostate)です。
私の前立腺癌に対する針生検の危険をこのブログでさんざん解説していますが、ラテント癌も含めて前立腺癌はかなりの頻度で存在している筈です。すると内視鏡手術で傷害を受けた前立腺の中に存在したかも知れない前立腺癌細胞が刺激されて、癌細胞が勢いを増す筈です。
ところが前立腺肥大症の内視鏡手術を過去に行った患者さんに前立腺癌が多いという印象は全くありません。当時、前立腺肥大症の内視鏡手術を実施していた対象は、ほとんどが70歳代です。ラテント癌のリスクから考えると34%の確率で前立腺癌が存在している筈ですが、前立腺肥大症の内視鏡手術を実施した患者さんの34%の方が前立腺癌で亡くなられたという記憶はありません。
これは不思議なことです。考えられる理由は、内視鏡手術の際に使用される電気メスの高周波の電流が、前立腺全体に流れ、前立腺の正常細胞のみならず、隠れていた前立腺癌細胞にも電撃暴露されて、前立腺癌細胞が死滅(アポトーシス)しているからではないか?と考えるのです。

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前立腺肥大症の内視鏡手術TUR-P

前立腺肥大症の手術で超有名なのが内視鏡手術、経尿道的前立腺切除術 Trans Urethral Resection of Prostate です。
尿道から手術器具を挿入し、電気メスで尿流の障害になる前立腺を削る手術です。外国生れのこの手術は、日本でも50年以上前から行われてり、前立腺肥大症の標準手術(ゴールデン・スタンダード)になっています。

麻酔
一般的に硬膜外麻酔・脊椎麻酔で行われます。

手術道具

【実例】 67歳男性です。
手術前の前立腺部尿道の所見です。13860m67bphbns26時の位置に精丘が確認できます。左右から前立腺が尿道を圧迫して、本来見える筈の膀胱が確認できません。2cmの完全閉塞です。慢性前立腺炎と異なり、炎症性ポリープはなく、粘膜は突っ張った感じです。


内視鏡を2cm先に進めると、13860m67bphbns膀胱出口が確認できます。直径3mmの狭い出口です。麻酔がかかっていてこの狭さですから、通常はもっと狭く排尿障害が強いことが示唆されます。6時の位置の粘膜がポリープ状に腫れていて容易に出血しそうです。この6時の位置の粘膜の張り具合が膀胱粘膜を引っ張り、常に尿意を作る原因になります。ですからこの部分を切除することで、膀胱出口(膀胱頚部)の緊張を解くことが出来ます。


膀胱粘膜に確認できる肉柱です。13860m67bphbns4肉柱は排尿障害が強い時に確認できる膀胱・筋・粘膜の代償性変化です。常に膀胱がム~と力んでいると肉柱が形成されます。


TUR-P直後の所見です。13860m67bphbns3術前の写真と比べると一目瞭然でしょう。精丘から膀胱が容易に観察できます。術前から比べれば排尿が楽になるでしょう。

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