前立腺肥大症

前立腺肥大症の生まれる理由

80歳台の男性の8割の人が、前立腺肥大症です。では何故こんなに多いのでしょうか? 

実はおシッコが漏れ出ないように、膀胱出口に存在する膀胱括約筋が、常に膀胱出口を閉めているのです。その結果、膀胱出口が十分に開放されないと、腹圧による圧力でスンナリとおシッコが出にくくなります。そしてその圧力負荷が、前立腺に物理的負荷になるのです。前立腺は圧力に負けないように繊維化の固い組織に大きく変化するのです。それが最終的に前立腺肥大症になるのです。ですから人類の8割には排尿障害があるのだと想像できるのです。

私が研修医の頃、今から40年前の頃は、前立腺肥大症の発生率は、高齢者の20%でした。何故、4倍も増えたのでしょう。その理由は、バカな医師が健康のため水分を2リットル以上飲みなさいと指導したからです。

Bph1_20210303112801 元々排尿障害のある人が、水分をたくさん飲めば飲むほど、排尿時に前立腺に負担をかけてしまい、前立腺が抵抗して、結果、前立腺肥大症になるのです。

では、どのようにすれば前立腺肥大症を防ぐことが出来ると思いますか? 実は、前立腺肥大症の患者さんはの多くが若い頃より頻尿や冷え性などの排尿障害の関連症状があったのです。患者さんは自然な体質だと思い込んでいたのですす。

ですから若いうちから排尿障害の治療をすれば前立腺肥大症にはなりません。とは言え、10代20代から治療させるのは、劣等感を思わせてしまうので、30歳代40歳代から始めれば良いでしょう。

しかし、一旦、前立腺肥大症になると肥大症は継続して更に大きくなるのです。対策として男性ホルモンの一部を下げるアボルブと、α1-ブロッカーであるユリーフ・ハルナールを飲んでもらいます。

頻尿や残尿感や尿意切迫感は、排尿障害による膀胱のセンサーである膀胱三角部が過敏になったのです。α1-ブロッカーでセンサーの興奮を抑えることも出来ますが、通常はβ3-作動薬であるベタニス・べオーバを服用すればいいのです。

 

 

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泌尿器科の医師は、排尿障害と言う基本概念に戻れ!

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①前立腺ガンの腫瘍マーカーであるPSAが高くなる原因のほとんどが、前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症による排尿障害が原因です。500人中の88%、440人が排尿障害でPSAが高い患者さんでした。

②慢性前立腺炎の患者さんも調べると、前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症などの患者さんが自覚しない「隠れ排尿障害」が認められ、排尿障害の治療を行うと症状は軽快します。

③間質性膀胱炎や過活動膀胱の女性患者さんにも、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、症状は軽快します。

④陰部がかゆくなる陰嚢掻痒症・陰部掻痒症・陰門掻痒症(肛門のかゆみ)などの患者さんにも、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、かゆみは軽快します。

⑤原因不明の坐骨神経痛の患者さんの中にも、一定の割合で、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、痛みが軽快します。

⑥神経因性膀胱は、膀胱に力が無くなったから排尿できないと、一般的に考えられます。しかし、なぜ突然に神経因性膀胱になるのかという議論はなされません。長年かけて膀胱出口が十分に開放されないために、疲労・疲弊してしまった膀胱を「神経因性膀胱」と診断しているだけです。ダメになった膀胱を検査結果で、幾つにも分類しても、患者さんを治すことができませんから、全く意味がありません。隠れ排尿障害であったために、患者さんは排尿障害を自覚していません。しかし、膀胱は次第に疲れて、ある日突然に排尿障害を自覚して、それが神経因性膀胱と診断されるのです。

病気の原因をおろそかにして、目に見える症状だけに振り回されている医師は、素人同然です。長い年月をかけて得た知識と経験を利用して、患者さんの病気し本質を見つけようではありませんか!


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排尿のメカニズム

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小さな前立腺肥大症でも、あるいは前立腺肥大症がなくてもオシッコの出が良くない、排尿障害の患者さんに遭遇することは多々ある事です。
一般的に泌尿器科医も含めて医師は、前立腺が大きくなければ排尿障害はないと思い込んでいます。前立腺のないご婦人は尚の事です。しかし、物事はそんな単純ではありません。解剖学を土台に機能を考える解剖機能学=構造機能学という観点から考えると、病気の原因が見えてきます。生命の機能を漠然と捉えて病気を考えるので、正確な診断と適確な治療が出来ないのです。そこで、排尿のメカニズムを構造機能学から考えてみましょう。

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❶膀胱内に尿が十分に溜まると、排尿の命令が脳中枢から発せられます。自分の意思で出来ることは、尿道括約筋を開いて、腹圧をかけることです。尿道括約筋は、実際には開くというより前立腺を尿道側(外側)に向かって引っ張る動きをします。その動きに連動して膀胱出口が引っ張られます。(赤い点線)その際に膀胱出口の付近に接続している膀胱括約筋が膀胱全体が収縮するのと連動して緊張・収縮します。出口の内腔は尿道括約筋に引張られ、膀胱出口は膀胱括約筋に引張られた結果、膀胱出口はロート状に開き、尿が流出するのです。

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❷ところが、何らかの原因で膀胱括約筋が十分に収縮しないと、膀胱出口はロート状に開いてくれません。つまり、膀胱出口がスボまった状態状態で排尿することになります。その状態で排尿すると、膀胱出口は小刻みに振動します。このスボまりと振動を抑えるのがαブロッカーのユリーフ・ハルナール・フリバス・エブランチルです。
❸膀胱は排尿のたび毎に圧力を掛けなければならず、膀胱はダンダン疲れ疲弊します。その状態が顕著であると肉柱形成が起き残尿が多くなり、いわゆる「神経因性膀胱」と診断されます。
❹膀胱からの物理的圧力は膀胱出口に直接かかり、出口の裏側に存在する前立腺に全てかかります。その結果、その負荷に抵抗して前立腺が大きくなり「前立腺肥大症」と診断されます。
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❺膀胱出口の振動は、膀胱出口近くの膀胱三角部も振動させます。その結果、膀胱三角部は過敏になり、「心因性頻尿」、「過活動膀胱」、「間質性膀胱炎」、「慢性前立腺炎」と診断されます。男女同じです。この過敏を抑えるのが、ベタニス・ベシケア・トビエース・ウリトスです。
❻膀胱の圧力により膀胱出口部分が、膀胱側に突出して来ます。突出部に前立腺肥大症が連携すると「前立腺肥大症の中葉肥大型」に、前立腺肥大症が伴わないと「膀胱頚部硬化症」、「神経因性膀胱」と診断されます。

以上のことが理解できれば、前立腺肥大症の内視鏡手術の応用に利用できます。
大きさを二の次にして、まずは膀胱出口をロート状に開くように切開・切除します。前立腺肥大症を全て削り取らなくても排尿はスムーズにできます。

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頻尿の芸能人

Img_0649愛のメモリで有名な歌手の松崎しげる氏67歳が、バラエティ番組で頻尿で苦しんでいることを告白していました。1日25回の頻尿です。多い時には1時間に4回トイレに行っていました。インタビューが途中で何回も中断されていました。

精密検査をすると、前立腺肥大症で大きさは45グラム(正常が20g=20cc)でした。しかし、番組は疑問を感じる方向に向かって進んでいきました。
MRI検査や脳波検査の結果、前頭葉の血流が低下していることが判明しました。その結果、松崎しげるさんは、認知症予備群と診断されたのです。認知症の人には頻尿が多いという方向で話しは進み、最後には、認知症予防体操を行なっている松崎しげるさんの姿で締めくくられました。

Img_0650私からすると、本末転倒です。長期間排尿障害で体に負担がかかると、中枢神経に負担がかかります。特に情報処理の海馬に慢性的に負担をかけるのです。正常の範囲内の生理的負担ではありませんから、海馬は疲弊・萎縮して結果、認知症になるのです。
また、MRI画像では正確な前立腺の大きさを測ることが出来ません。45グラムという値も怪しいものです。もっと大きい可能性が高いと思われます。

以上のことから、まずは、前立腺肥大症と排尿障害の治療を先行し、積極的に実施すべきです。前立腺の大きさが45ccは、泌尿器科医にとっては、それほど大きくありません。そのため、簡単な頻尿治療薬か、αブロッカーを処方するだけでしよう。しかし頻尿が治らないと、「気のせい」、「心のストレス」、遂には、「認知症」のせいにしたのでしよう。認知症の治療だけでは、松崎しげるさんは今後も苦しむでしょうね。


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前立腺肥大症とは?

このブログで、前立腺肥大症について詳細に解説していますが、内容が多くあるので、ここでまとめて目次を作りました。
詳細は、番号の付いた項目をクリックしてください。

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前立腺とは?

前立腺肥大症や前立腺癌について、私はいろいろ記述していますが、皆さんは前立腺は人体でどうのような機能や役割を果たしているかご存知ですか?

まずは、前立腺が何のために存在しているのか解説しましょう。
前立腺は子孫繁栄のために、欠かせない臓器です。
妊娠するためには、卵子と精子の対が必要です。精子は睾丸で作られ、精嚢腺で一時蓄えられ、射精時に前立腺液と同時に尿道内に放出されます。

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前立腺肥大症の予後悪化の因子

Bphmanagement2013平成25年11月17日(日)にシェラトン都ホテルで、グラクソ・スミスクラインGSK主催の「前立腺肥大症マネージメント・サミット」が開かれました。
日本全国から160名の泌尿器科専門医が集まり、熱心に講演を勉強をしました。

興味深かったのが、アメリカの医科大学教授の話された「前立腺肥大症の予後を悪化せる因子」についてです。
その因子は3つあり、
①前立腺の大きさ30cc以上
②PSA前立腺体積濃度1.5ng/10cc以上
③年齢50歳以上
です。

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健康情報誌「すこぶる8月号」からの抜粋

Sukoburu8健康情報誌からの原稿依頼がありました。

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マインド・マップ 前立腺肥大症編

Bphmap最近、マインド・マップなる思考テクニックに興味があり、実践しています。
そこで、その方法を利用して前立腺肥大症の全体像をまとめたのが、右のマップです。前立腺肥大症にまつわる問題点を列挙しました。

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TUR-P手術後の排尿障害 「年のせい?」「気のせい?」

前立腺肥大症の内視鏡手術(TUR-P)を行なっても、10%~20%の確率で、排尿障害などの症状が改善しないことがあります。
その原因を「年のせい」「気のせい」「神経因性膀胱」とされています。しかし、内視鏡手術する前に「前立腺肥大症」だからと診断され、内視鏡手術すれば治ると断言された挙句に、「年のせい」「気のせい」では、手術を受けた患者さんも怒るでしょう。しかし、それが現実です。この10%~20%の患者さんを何とか救わなければ、意味もなくただ内視鏡手術しただけにしか過ぎません。医師から見れば、排尿障害の患者さんを手術することで『前立腺肥大症ではなかったのだ?』程度の原因チェックの手段でしかなりません。患者さんにしてみれば、たまったものではありません。

さて、今回、TUR-P内視鏡手術をおこなったが、尿意切迫感と排尿障害が治らないで、精神的に落ち込み、死すら考えた患者さんを紹介しましょう。
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ある日、上記の内容のお手紙をいただきました。
お手紙の内容からは、医師は「機能的な障害だから治らない!」の一点張りです。これではお手紙の主も堪りません。まるで「自動ドアが壊れたから(機能的障害)、ドアが開きません」と言っているようなものです。一見正しいのですが、現実は、壊れた自動ドアでも直接手動で自動ドアは開くものです。「機能性=治療はお手上げ」などと考えないで、積極的に治療を行なうべきです。

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