前立腺肥大症

前立腺肥大症とは?

このブログで、前立腺肥大症について詳細に解説していますが、内容が多くあるので、ここでまとめて目次を作りました。
詳細は、番号の付いた項目をクリックしてください。

続きを読む "前立腺肥大症とは?"

| | コメント (0)

前立腺とは?

前立腺肥大症や前立腺癌について、私はいろいろ記述していますが、皆さんは前立腺は人体でどうのような機能や役割を果たしているかご存知ですか?

まずは、前立腺が何のために存在しているのか解説しましょう。
前立腺は子孫繁栄のために、欠かせない臓器です。
妊娠するためには、卵子と精子の対が必要です。精子は睾丸で作られ、精嚢腺で一時蓄えられ、射精時に前立腺液と同時に尿道内に放出されます。

続きを読む "前立腺とは?"

| | コメント (0)

前立腺肥大症の予後悪化の因子

Bphmanagement2013平成25年11月17日(日)にシェラトン都ホテルで、グラクソ・スミスクラインGSK主催の「前立腺肥大症マネージメント・サミット」が開かれました。
日本全国から160名の泌尿器科専門医が集まり、熱心に講演を勉強をしました。

興味深かったのが、アメリカの医科大学教授の話された「前立腺肥大症の予後を悪化せる因子」についてです。
その因子は3つあり、
①前立腺の大きさ30cc以上
②PSA前立腺体積濃度1.5ng/10cc以上
③年齢50歳以上
です。

続きを読む "前立腺肥大症の予後悪化の因子"

| | コメント (1)

健康情報誌「すこぶる8月号」からの抜粋

Sukoburu8健康情報誌からの原稿依頼がありました。

続きを読む "健康情報誌「すこぶる8月号」からの抜粋"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

マインド・マップ 前立腺肥大症編

Bphmap最近、マインド・マップなる思考テクニックに興味があり、実践しています。
そこで、その方法を利用して前立腺肥大症の全体像をまとめたのが、右のマップです。前立腺肥大症にまつわる問題点を列挙しました。

続きを読む "マインド・マップ 前立腺肥大症編"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

TUR-P手術後の排尿障害 「年のせい?」「気のせい?」

前立腺肥大症の内視鏡手術(TUR-P)を行なっても、10%~20%の確率で、排尿障害などの症状が改善しないことがあります。
その原因を「年のせい」「気のせい」「神経因性膀胱」とされています。しかし、内視鏡手術する前に「前立腺肥大症」だからと診断され、内視鏡手術すれば治ると断言された挙句に、「年のせい」「気のせい」では、手術を受けた患者さんも怒るでしょう。しかし、それが現実です。この10%~20%の患者さんを何とか救わなければ、意味もなくただ内視鏡手術しただけにしか過ぎません。医師から見れば、排尿障害の患者さんを手術することで『前立腺肥大症ではなかったのだ?』程度の原因チェックの手段でしかなりません。患者さんにしてみれば、たまったものではありません。

さて、今回、TUR-P内視鏡手術をおこなったが、尿意切迫感と排尿障害が治らないで、精神的に落ち込み、死すら考えた患者さんを紹介しましょう。
Bph22748m63letter2Bph22748m63letter_2
ある日、上記の内容のお手紙をいただきました。
お手紙の内容からは、医師は「機能的な障害だから治らない!」の一点張りです。これではお手紙の主も堪りません。まるで「自動ドアが壊れたから(機能的障害)、ドアが開きません」と言っているようなものです。一見正しいのですが、現実は、壊れた自動ドアでも直接手動で自動ドアは開くものです。「機能性=治療はお手上げ」などと考えないで、積極的に治療を行なうべきです。

続きを読む "TUR-P手術後の排尿障害 「年のせい?」「気のせい?」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

1日4回の自己導尿

福島県在住の74歳の男性患者さんです。
人間ドックで両側の水腎症(すいじんしょう:尿の流れに障害があり腎臓がパンパンになること)を指摘され、地元の有名な病院の泌尿器科で精密検査したところ、「神経因性膀胱」と診断されました。
要するに膀胱に力がないための排尿障害と診断されたのです。治る病気ではないと告げられ、今年の4月から毎日4回~5回の自己導尿(じこどうにょう:自分で尿道から膀胱へカテーテルを挿入して排尿すること)を指導されて行なっているそうです。
患者さんは何とかならないものかと高橋クリニックを受診しました。

Bph21272m7442D超音波エコー検査では大きな前立腺肥大症を認めます。
その大きさ、何と77cc!、正常の大きさが25cc以下ですから普通の男性の3倍以上の容積です。
誰が何と言おうと押しも押されぬ立派な前立腺肥大症です。

Bph21272m743D正面画像です。
ゲイン(感度)を調節して前立腺組織は透けていますから、大きな洞窟が見えます。

Bph21272m742メジャーで洞窟の中ごろを間口と高さで測ると、4.37cm×2.65cmです。手前の方がもっと広いですから、膀胱内に突出した前立腺肥大症ということが分かります。
Bph21272m74enhance上図を線画風に強調したのがこの写真です。
★印が膀胱平滑筋の肥厚した部分です。
前立腺内にまで膀胱平滑筋が浸入しているようにも見えます。

Bph21272m7433D背面画像では、最大径で同様に4.78cm×4.36cmというかなりの広さです。
さらに詳細に観察すると、2時と10時~8時の位置にシコリが確認できます。恐らく膀胱平滑筋の肥厚でしょう。
Bph21272m743enhance上図を線画風に強調した写真です。
★印が膀胱平滑筋の肥厚したと思われる部分です。
膀胱側から尿道側まで肥厚した膀胱平滑筋が浸入しているように見えます。前立腺内の平滑筋が肥厚したという話は聞いたことがありませんし、前立腺肥大症そのものが3D画像では透明になるので、このようには描出されません。
前立腺肥大症というと、前立腺の大きさしか議論されませんでしたが、3D画像の登場により、画像による前立腺肥大症の分析が詳細にできます。
これにより、きめ細かい治療法が確立するかも知れません。
例えば、肥厚した膀胱平滑筋にボトックス注射をするのです。むやみやたらに注射するに比べたら、効果も絶大でしょうし、副作用も出ないでしょう。

排尿障害は神経因性膀胱が原因ではなく、容積77cc(重量77g)という前立腺肥大症からくるものでしょう。
たとえ、神経因性膀胱があったとしても、結論を出すのは前立腺肥大症の治療を行なってからの判断です。
この主治医は初めから神経因性膀胱という誤診で治療した可能性があります。1日4回の自己導尿を患者さんに科すという重大な過ちを犯したことになります。

取りあえずα-ブロッカー(ユリーフ)を1ヶ月処方して様子を見ることにしました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

前立腺肥大症の3D画像

最近の私のマイブームは、3D・4D超音波エコー検査を利用して、膀胱出口の表情を観察することです。
思いついたきっかけは「慢性前立腺炎」に購入するまでの経緯に関しては「開業医こぼれ話」に掲載していますから、詳細はそちらをお読み下さい。
さてさて、膀胱出口の表情を見ることに何の意味があるのかお分かりにならないと思いますから、下に実例を上げましょう。

Bph18108m632d_2【実例】
この写真は、63歳前立腺肥大症の患者さんの超音波エコー検査の普通の側面像です。
一般的に超音波エコー検査は2D画像で2次元写真になります。見慣れている医師であれば、前立腺の大きさだけではなく膀胱出口付近の硬さを想像できますが、素人には分からない写真でしかありません。

Bph18108m633d_2右の写真は、同じ患者さんの超音波エコー検査3D画像(立体画像)です。
真ん中の洞穴のように見える中心が、膀胱内から見た膀胱出口です。
膀胱出口は単純な穴ではなく複雑です。周囲も堤防状のようになり、まるでドーナツかカルデラ火山のようです。

Mtaso【宇宙から見たカルデラ火山の代表:阿蘇山】
上記の超音波エコー検査写真よりも立体的で、膀胱出口周囲の表情が分かりやすくなっています。
しかし、初めてこの写真を見せられて、尿が出にくいと即理解はできないでしょう。そこで下の写真を見てください。

Nml3d8000【実例】
この写真は、50歳代の排尿障害のない男性の膀胱出口周囲の3D画像です。
正常な画像と考えてよいでしょう。上の前立腺肥大症の3D画像と比較して、中心に見える膀胱出口が小さくありませんか?本来、膀胱出口は排尿中以外は閉じているべきものですから、小さくて当たり前です。
しかし、前立腺肥大症の患者さんの写真で、膀胱出口が大きく観察できます。それは膀胱出口が大きくなっている訳ではなく、膀胱出口周囲が前立腺肥大症のために隆起して、相対的に膀胱出口が落ち込んでしまい、一見膀胱出口が大きく見えるだけなのです。

Bph3d11624m5037ccpsa49【実例】
50歳男性で健康診断で前立腺癌腫瘍マーカーPSAが4.9(正常値4以下)と指摘されて来院した患者さんの3D画像です。
前立腺肥大症特有のドーナッツ状あるいはカルデラ火山状の膀胱出口の所見です。
排尿障害が存在するために、PSAが上昇するのです。前立腺癌のためではありません。
ちなみに前立腺の大きさは37cc(正常25cc以下)ですから、前立腺が大きいことも理由になります。
上の正常の形態と比べても、一目瞭然でしょう。明らかに硬いという印象です。
Bph2d11624m5037ccpsa49この2D画像は、上の3D画像の側面像です。この普通の2D画像から、3D画像の立体的な画像を想像できますか?私は想像できません。
通常、超音波エコー検査の場合、その特徴を一番強く表現している画像を忙しい診察・検査中に記録として残します。すると残した画像に患者さんの病気の状態を印象付けられてしまいます。これが誤診の原因になるのです。

PSAが上昇する原因として、前立腺癌の他に、前立腺肥大症や慢性前立腺炎が上げられます。
前立腺肥大症が原因の場合は、前立腺の大きさがPSA上昇と検討されますが、私は大きさよりも3D画像のようにオシッコが出にくい形をもっと議論した方が的を得ているのでは?と思っています。

Bph2d12027m6833cc【実例】
68歳男性の2D画像の前立腺の所見です。
夜間頻尿が6回、日中15回以上の頻尿です。前立腺が膀胱内に突出しているのが分かります。
前立腺の大きさは33ccと中くらいの大きさです。前立腺の大きさからいえば、気のせいですと言われてしまいかねない大きさです。
上の写真の2D画像と側面像は似ていますから、カルデラ火山を想像できますね。

Bph3d12027m6833cc上の写真の3D画像では、予想に反してカルデラ火山ではなく、富士山を上空から眺めたイメージでしょう?膀胱出口が硬くすぼまっているのが容易に理解できます。

Mt_fuji【国際宇宙ステーションから見た富士山】
2D画像では同じように観察できても、立体的には全く異なる印象になります。
富士山とカルデラ火山では外見上は全く異なる火山です。2D画像と3D画像の表現する目的が異なるのです。
前立腺を大きさしか判断しない検査に疑問を感じませんか?

Bph3d18735m89【実例】
手術するにはタイミングがあります。
この3D写真は何か分かりますか?
実は89歳の男性です。ある国立病院で前立腺がとても大きく(100cc以上)手術を選択されずに、膀胱カテーテル留置になった患者さんです。
3週間から4週間に1回カテーテル交換を行なっています。前立腺が100cc以上とかなり大きく、年齢のこともあり、現時点では私も手術に積極的にはなれません。
Bph3d18735m892d通常の2D画像です。
膀胱・前立腺を側面で観察した所見です。
この患者さんは国立病院で前立腺肥大症用の尿道ステントを留置しましたが、結局思うように排尿できず、尿路感染が取れず、ステントを留置したまま膀胱カテーテルを設置されたのです。

Bph3d18735m89memo棒のように上から降りているのが、膀胱留置カテーテルの先端部です。
その下に白い塊は膀胱内にできた膀胱結石です。高橋クリニックに来院当初から結石は認めています。

Coagulatampon12518m723【実例】
何でしょう?

Coagulatampon12518m72何でしょう?

Coagulatampon12518m722何でしょう?
回答は、ここをご覧下さい。

Bph77m183734【実例】
77歳男性の前立腺肥大症の2D画像です。前立腺の大きさは58cc(正常25cc以下)とかなり大きな前立腺肥大症です。
Bph77m183733D正面画像です。
盛上がっていて、どこに膀胱出口があるのか分かりにくいですね。
まるでバラの花のようです。何重にも重なっているシワは、肉柱といって膀胱平滑筋の肥大した束です。排尿障害が強く病歴が長いと、このシワが形成されます。
Bph77m183732上図の3D画像からゲイン(感度)を下げると、表層粘膜の表情が透けて、深部の組織(筋肉・靭帯)が描出されます。
するとナルトのような渦状の膀胱出口が確認できます。
Bph77m1837333D背面画像では、前立腺組織は透けて、膀胱出口の厚くなった膀胱平滑筋が確認できます。
前立腺肥大症の大きさで医師は排尿障害を推測します。しかし実は、この膀胱平滑筋の厚さが排尿障害の原因かもしれません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

前立腺肥大症とは? #2

以前にも前立腺肥大症についての総論を述べましたが、内容が普通すぎて面白みに欠けるので、観点を少し変えて改めてここで述べます。

【概念】
前立腺は生殖に必要な臓器です。加齢とともに生殖が必要ではなくなるので、前立腺は退化します。退化の仕方が2通りあります。それが前立腺萎縮前立腺肥大症です。
私が研修医になった28年前頃は、前立腺萎縮:前立腺肥大症が4:1であったのが、最近では前立腺萎縮:前立腺肥大症が1:4と逆転しています。ペニスの大きい男性=高齢になっても性行為は現役=前立腺肥大症という印象でしたが、今ではその法則は成り立ちません。
なぜ萎縮から肥大へと移行したのでしょう?理由は近年の食生活の欧米化、高カロリー・高タンパク・高コレステロールにあるのだと私は考えています。
Bph20040728右の写真はMRI検査で観察された前立腺肥大症です。前立腺の周囲との位置関係は写真をクリックしていただければ分かります。
さて、前立腺肥大症=前立腺が大きいということではありません。ここが誤解されるところです。前立腺肥大症とは病理学的組織検査の結果の診断名です。顕微鏡で判別する診断名ですから、前立腺肥大症のサイズが小さくても、前立腺肥大症は前立腺肥大症なのです。臨床医が前立腺肥大症による排尿障害の患者さんを目の前にして、前立腺は大きくないから前立腺肥大症ではないと、誤診する医師が多いのに驚きます。

【症状】
Ipss前立腺肥大症の多岐に渡る症状をスコア化して、誰でもが客観的に共通に評価できるようにしたのが国際前立腺症状スコア(IPSS)です。
前立腺肥大症の症状をすべて網羅している問診表ではありませんし、現在でも賛否両論ありますが、世界共通の問診表です。
A・B・D・Gが膀胱・前立腺刺激症状の質問です。
C・E・Fが排尿障害の質問です。
最後の質問が、患者さんの主観的満足度、つまりQOL(生活充実度)を質問します。
まったくの健常者はスコア0点です。
スコア6点以下であれば、症状はあるが治療の必要はないと判断します。
スコア7点から21点の間は、検査をした方がよいでしょう。
スコア22点から35点は、必ず検査・治療を受けましょう。

【検査】
Bph200407282直腸診
以前でしたら、直腸診という触診が必ず行われるべき検査でした。触診で大きければ前立腺肥大症、大きくなければ正常と診断されていました。
右のMRI写真で、肛門から医師が指を入れて直腸診で触診できるのは、赤の部分のラインだけです。
Bph200407283直腸診だけでは、医師は前立腺を赤いラインで囲まれた大きさしかイメージしません。30cc以下の大きさです。

Bph200407284しかし,このMRI写真を前立腺だけを緑で囲めば、実際には40cc以上の大きさがありますから、本当の前立腺の大きさよりも小さく認識してしまうのです。
私でも直腸診だけの診察であれば、同様に誤診してしまいます。

●超音波エコー検査
この患者さんのように前立腺の位置が膀胱側に片寄っている人の場合は、触診では前立腺は大きく触れないという欠点があります。その誤診を避けるために必ず行なわなければならない検査として超音波エコー検査があります。超音波エコー検査には経腹式超音波エコー検査(腹部エコー)と経直腸的超音波エコー検査に分けられます。
膀胱と前立腺の位置関係を判別するためには、腹部エコー検査の方が優れています。逆に経直腸的エコー検査は前立腺ガンに診断に有用です。

●尿流量測定ウロフロメトリー検査
Uroflownl_1【正常な尿流量測定ウロフロメトリー検査曲線】
(日常診療のための泌尿器科診断学㈱インターメディカから複写)
尿の勢いを具体的に目に見えるようにデータ化したのが尿流量測定ウロフロメトリー検査です。
グラフの縦軸が排尿速度(勢い)でグラフの横軸が排尿時間です。
Uroflownormal_1Uroflowbph_1
左のグラフが前立腺肥大症患者さんの勢いで、右のグラフが健常者の勢いです。一目瞭然です。

●内視鏡検査
十分に麻酔をかけて行う検査です。患者さんが痛がるようでは、泌尿器科医として失格です。
16633m70bphbns画面の中央下に見えるのが、精丘です。精嚢腺からの精液噴出孔です。精丘の周囲にはゴマのような石灰が確認できます。排尿障害の所見です。
左右から圧迫しているのが前立腺(前立腺肥大症)です。正面に見えるはずの膀胱出口が確認できません。
16633m70bphbns6同じ患者さんの超音波エコー検査の所見です。前立腺が膀胱側に突出しているのが判別できます。
膀胱出口から尿道に沿って石灰が確認できます。精丘も石灰で白く見えます。(前立腺というマークの真下)
16633m70bphbns7内視鏡手術を行なって、カテーテルを抜いた直後の超音波エコー検査所見です。
十分に切除されたのが分かります。膀胱三角部が本来の位置に戻っています。
16633m70bphbns5同じ患者さんの内視鏡手術直後の所見です。精丘から膀胱出口を確認できるようになりました。切除した量は、10gも満たないわずかな量です。

Bph4この患者さんは前立腺肥大症の中葉肥大タイプです。正面に崖のように粘膜が行く手をふさいでいるように見えます。本来なら、精丘の後には膀胱出口が確認できなければなりません。
左右から圧迫しているのが前立腺(前立腺肥大症)です。

●尿道造影
造影剤を尿道から膀胱に向かって注入するレントゲン検査です。造影剤で作った影絵で、尿道の圧迫の幅と圧迫の長さなどから前立腺肥大症の状態を想像するのです。排尿とは逆向きの流れを作るわけですから、検査中は多少の不快感や痛みを伴います。
しかし、私はこの検査をほとんど行ないません。超音波エコー検査で、前立腺肥大症の様子が手に取るように分かるからです。昔ながらの医師が未だに行っているでしょう。

【診断】
前立腺肥大症を診断するためには、問診と直腸診、超音波エコー検査、尿流量測定ウロフロメトリー検査、残尿量測定検査、尿一般検査の少なくとも5つの検査を行うだけで十分です。
これら検査で、前立腺の大きさ、排尿障害の程度、患者さんの悩みが把握でき診断できます。
検査結果をすべて平等の価値として把握し、前立腺の大きさにのみとらわれることなく診断しなければなりません。
前立腺の大きさは、前立腺肥大症の必要条件かもしれませんが、十分条件ではありません。大きさが20cc~25cc内の正常範囲であっても、排尿障害などの症状が出てくるからです。


【内科的治療】
●生薬
パラプロスト
エビプロスタット
セルニルトン

どのお薬も前立腺肥大症の軽い症状に処方します。
前立腺肥大症の排尿障害による前立腺の炎症を軽減させ、排尿を促進させます。

●漢方
八味地黄丸
牛車腎気丸

八味地黄丸はテレビ・コマーシャルでおなじみの市販薬のハルンケアです。
前立腺肥大症の症状は、漢方でいう「腎虚」という下半身の衰えの症状の一つです。ですから、坐骨神経痛・足の冷え・足のシビレ・ED・足腰の弱りなどと一緒として治療されるので、これら漢方薬になります。

●ホルモン剤
プロスタール
正式には抗男性ホルモン剤です。前立腺肥大症は男性ホルモンで成長します。ですから男性ホルモンを抑えれば、前立腺は萎縮するのです。
しかし、最近はこの治療は下火になりました。なぜなら、前立腺が萎縮しても排尿障害が治らないことと、男性ホルモンを抑えることで男らしさが失われる、男性としてのQOLが低下するからです。

●αブロッカー
前立腺肥大症の排尿障害治療薬として、αブロッカーがあります。本来、αブロッカーは、高血圧の治療だったのですが、前立腺組織の平滑筋がαブロッカーでゆるみ、排尿障害の治療薬として有効なので開発されるようになりました。
現在、前立腺肥大症用のαブロッカーは、正式にはα1ブロッカーで、前立腺に特異的に効果があり、血圧には影響のない薬です。次のようなα1ブロッカーが処方されます。
ユリーフ(α1aブロッカー)
ハルナールD(α1a>>α1dブロッカー)
フリバス・アビショット(α1a<<α1dブロッカー)
使い分けは、排尿障害症状が強い患者さんはユリーフ、排尿障害症状と膀胱刺激症状がある人はハルナールD、排尿障害よりも膀胱刺激症状が強い人か、ユリーフ・ハルナールなどのα1a優位の薬が効かない人にはフリバス・アビショットです。

【外科的治療】
●温熱治療
Onetsu一時は、一世を風靡した温熱治療(高温度治療)は、下火になってしまいました。手術をしないで効果が絶大とまでいわれたのですが、効果はそれ程でもなかったのです。効果があっても1年~2年位で効果が薄れてしまうので、治療する側の医師からすれば「な~んだ」という思いが出てきたのでしょう。
原理的には、熱で前立腺肥大症の平滑筋αレセプターを焼くというものです。αブロッカーを服用しなくてもよい状態にするということですが、αレセプターというタンパク質が再生されてしまうので、効果が持続しないという結果になったのです。
各医療器械の会社が様々な製品を作りまいた。高温度の熱源が、マイクロ波・ラジオ波・レーザー光線・超音波などですが、結果は50歩100歩でした。医師に興味が薄れたので、現在、前立腺肥大症高温度治療を行なっている病院は、数えるほどでしょう。

●内視鏡手術・レーザー手術
100ワットクラスの高出力のレーザー光線で前立腺肥大症を蒸発・凝固させる方法です。
レーザー光線の波長により、手術法が変わります。


●内視鏡手術・電気メス手術
Bph20040728org手術前の状態

Bph20040728turp_1【合成写真】
一般的に行なわれようとする、執刀医の理想的な内視鏡手術後のイメージ
このイメージは、開腹手術の前立腺摘出手術のイメージです。前立腺はすべて取り去り、前立腺被膜のみを残す方法です。前立腺の大きさが40ccであれば、摘出量は40gになります。

Bph20040728turptrue【合成写真】
実際の内視鏡手術後のイメージ
このイメージ通りであれば、排尿障害の症状は改善されますが、膀胱・前立腺の刺激症状は改善しません。また、排尿後の、尿の切れの悪さも改善しません。
前立腺の大きさが40ccであれば、前立腺切除量は25g(25cc)程度でしょう。

Bph20040728turbn_1【合成写真】
私は、右写真のようなイメージで手術を行ないます。
膀胱出口の前立腺を切除して、膀胱出口を十分に開くこと、前立腺部尿道が圧迫されない程度に前立腺を削ること、敏感で硬く肥厚している膀胱三角部を切開し、膀胱三角部を鈍感にすることです。
一般の手術よりも削る前立腺の部分が少ないのです。前立腺の大きさが40ccであれば、前立腺切除量は10g(10cc)程度でしょう。
こんなに少なくて大丈夫かな?とお思いになるでしょう。
この方法の方が、排尿障害の症状と膀胱・前立腺刺激症状の両方が改善するのです。
手術の差がどこにあるか分かりづらいので、下に拡大写真で説明しましょう。
Bph2004072810Bph200407289_1Bph200407288
一番左合成写真が、手術前の状態です。赤く塗りつぶした部分が、膀胱三角部を示しています。
中央合成写真の一般的な内視鏡手術では、膀胱出口から前立腺の中程にかけて十分に切除しているのが分かります。しかし、膀胱三角部は手付かずです。
右合成写真では、膀胱出口は十分に切除して、膀胱三角部も一部切除して薄くしています。

Bph18762m51Bph18762m512Bph18762m513Bph18762m514
実際の患者さん(50歳代)の手術前・手術後の超音波エコー検査の所見です。
膀胱側に突出しているタイプの小さな前立腺肥大症の患者さんです。
上の1列目左が手術前の前立腺正面像、右が同じく手術前の前立腺側面像です。
2列目左が手術後の前立腺正面像、右が同じく手術後の前立腺側面像です。
手術後の超音波エコー検査でご覧のように、少ししか削っていないのが分かるでしょう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

フリバスとハルナールとユリーフ

前立腺肥大症の排尿障害治療薬であるα-ブロッカー(アルファ受容体阻害剤)は、各社様々な同系統の薬剤を製造しています。
Kisseiur一番新しく発売されたのがユリーフ(キッセイ薬品)です。
Halこの種の初めての薬として発売されたのがハルナール(アステラス製薬)です。現在ジェネリック医薬品としてたくさん発売されているのが、このハルナールのゾロ(ジェネリックの別称、後から後からマネをしてゾロゾロ出現するので)です。
Flivas同じアルファ受容体でも様々なサブタイプがあり、チョッと異なるアルファ受容体に効くのがフリバス(旭化成)です。
ユリーフとハルナールはアルファ1A阻害剤です。特にユリーフはアルファ1A選択性が高いのが売りです。
フリバスはアルファ1D阻害剤です。前立腺にはアルファ1A優位の男性とアルファ1D優位の男性に2分されます。ですからユリーフとハルナールが効かなかった患者さんが、フリバスがよく効いたということもあるのです。同じアルファ-ブロッカーでも同じではないということに注意する必要があります。

さてここで、なぜアルファ1受容体(レセプター)のサブタイプについて、細かく解説したのかというと、アルファ1D受容体の組織分布に興味がわいたからです。1Aも1Dも前立腺に同等に分布しているのですが、1D受容体は、膀胱にも多く分布していることが分かったのです。1A受容体は膀胱にわずかしか分布していません。
以前から解説しているように、前立腺肥大症の頻尿や慢性前立腺炎の会陰部痛・尿道痛は、膀胱刺激症状の別の顔と考えることができます。排尿障害で敏感になった膀胱や膀胱三角部を落着かせれば、頻尿や関連痛がおさまると考えられませんか?
実際、一番新しいユリーフは、1A受容体を特異的に阻害して、排尿障害を改善させますが、夜間頻尿などの膀胱刺激症状は回数的に減りません。
ハルナールは、1A受容体の他に1D受容体もわずかに阻害するので、膀胱刺激症状である夜間頻尿にも効果があります。ですから慢性前立腺炎の関連痛にも効果があるのです。
フリバスは夜間頻尿に優位に効果があることから、膀胱に分布の多い1D受容体に効果が期待でき、慢性前立腺炎の関連痛に期待が大です。
--------------------------------------------------------------
アルファ1受容体選択性     α1A    α1D
--------------------------------------------------------------
ユリーフ             ++++    -
ハルナール            +++    +
フリバス               -     +++
--------------------------------------------------------------
純粋に前立腺肥大症の排尿障害症状だけであれば、ユリーフが良いでしょう。ただし、逆向性射精という合併症が高頻度で出現します。薬を中止すれば元に戻る一時的な現象ですから、心配入りません。
排尿障害と夜間頻尿の両方の悩みであれば、ハルナールがよいでしょう。
排尿障害はそれ程苦でもなく、夜間頻尿などの膀胱刺激症状が主体であれば、フリバスがよいでしょう。
同じような薬でも、このように細かく使い分けることができます。

【文献的考察】
Alfa1dsubtype【1】α受容体サブタイプの無常
(資料:The Journal of Urology vol.167,1513-1521,2002)
ここに興味ある文献を入手したのでご紹介します。
ネズミを使った基礎実験タです。下部尿路閉塞(排尿障害)を手術で人工的に作ったネズミ6匹の膀胱(赤い棒グラフ)と手術はしたが排尿障害を作らない正常に近いネズミ4匹の膀胱(斜線の棒グラフ)を採取して、そのα1受容体のサブタイプの量(メッセンジャーRNA量として)を比較した実験です。
実験結果では、排尿障害を作ったネズミの膀胱では、α1Aサブタイプに関しては、正常膀胱よりも量が減り、逆にα1Dサブタイプでは正常膀胱よりも量が増えたのです。
ネズミの実験ですから、100%人間に当てはまるか分かりませんが、少なくともα1受容体サブタイプは、病気(排尿障害)に応じてかなりダイナミックな動きがあることが示唆されます。
排尿障害の初期は、α1Aブロッカーが効いても、経過が長いとα1D受容体が増加してα1Aブロッカーが効かなくなる可能性もある訳です。その場合α1Dブロッカーが効くようになるのかも知れません。
この実験の逆で、α1D受容体優位の患者さんが、治療経過中にα1A優位になる可能性もあるかも知れません。

【2】α1受容体の姿
(資料:The Journal of Urology vol.160,937-943,1998)
Alfa1abdsubtypered
排尿障害の治療薬がαブロッカーでα1受容体(レセプター)を阻害(ブロック)していると解説されても、α1受容体の姿を見たことがないので、絵空事のように思えて仕方がないのは私だけではないでしょう。
そこで、α1受容体の姿をお見せしましょう。
図の中で緑の部分が細胞膜です。細胞膜を境に上が細胞外、下が細胞内です。細胞膜を何度も貫いて蛇のようにクネクネと蛇行した構造がα1受容体のタンパク質です。タンパク質ですからアミノ酸の鎖のような構造になっています。
部分的に赤く太く示している部分が、サブタイプの部分になります。ご覧の様にサブタイプとは、α1受容体のパーツに過ぎません。パーツなのですが、生体の中では不思議なことに一定のパーツだけが機能している状況になっています。
細胞内の奥深い所にあるのが、α1Aサブタイプです。
細胞膜を何度も交差している部分が、α1Bサブタイプです。
α1受容体の真ん中に位置している部分が、α1Dサブタイプです。

| | コメント (5) | トラックバック (0)