前立腺癌

代替医療に希望を託す前立腺ガン患者さん

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関東近郊から来院した患者さんのエピソードです。

平成26年1月に前立腺ガンを宣告されました。針生検を勧められましたが、患者さんは拒否して、治療だけを受けることにしました。前立腺ガンの治療であるリュープリン注射とカソデックス内服です。
PSA値は、0.5まで降下しましたが、思うところがあって平成27年11月に今までの治療を中止したのです。

現在、代替医療で有名なゲルソン療法と自然食に徹しているのです。ゲルソン療法は、コーヒー浣腸を毎日行い、身体の中から悪い物質を排泄することを目的とします。しかし、これら代替医療を懸命に行なっていましたが、PSA値が次第に上昇して、PSA値0.5→47.1まで上昇しました。現在通院しているクリニックから、当院が紹介されて来院しました。

エコー検査で観ると、前立腺の右に前立腺ガンと思われる陰影が認められるます。体積は1.83ccです。
触診所見では、やはり前立腺の右葉に硬結が触れます。ただ硬さは前立腺肥大症に近いものです。ですから、前立腺ガンのグリソンスコア7以下でしょう。

878ed203b1bc4e2392b6de751fbbfb54依頼された医師からは、リュープリン注射とカソデックス内服を初めて欲しいとのことでした。しかし、2年余りの治療にもかかわらず、1年でPSA値が急上昇した訳ですから、今の治療は不十分で、逆にホルモン抵抗性前立腺ガンに変身したのかもしれません。そこで、今まで使用されていない治療を始めてみました。女性ホルモンと抗がん剤を合体させたエストラサイト、ホルモン抵抗性前立腺ガンの癌細胞中で作られた男性ホルモンをブロック阻止するイクスタンジの併用治療を開始しました。
Dcd503fd9c99408886ecc056a87935b9さて、話はまだ続きます。今後、遠赤外線などを利用した温熱療法(ハイパーサーミア)を希望されています。地元に温熱療法を実施している病院があるので、紹介状を書いて欲しいと依頼されました。そこで書きました。この患者さんはどのような経過を見せるでしょうか。

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前立腺の触診所見

前立腺の触診所見を皆さんに具体的にご紹介しましょう。
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❶正常
少し柔らかめです。硬さは、手の親指の根元(拇指球)の柔らかさです。
❷前立腺炎
極端に柔らかくプヨプヨです。しかも、指で圧迫すると、患者は痛がります。
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❸前立腺肥大症
少し芯のある硬さです。手をギューとグー✊にした時の親指の根元の硬さです。
Fd06e64787df437eb8a3dc81e278af4b❹前立腺ガン
⑴悪性度が低い(グリソンスコア6以下)
まるで前立腺肥大症の硬さです。しかし、前立腺肥大症と区別しなければなりません。そのコツは、左右どちらかにしかありません。前立腺肥大症は左右均等です。また、発育速度が遅くユックリと増殖するので、経過が長いと比較的大き目です。
⑵悪性度が中等度(グリソンスコア7)
これは難しいのです。悪性度の低いガンと悪性度の高いガンの中間の曖昧な硬さです。
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⑶悪性度が高い(グリソンスコア8・9・10)
まるで石の様な硬さです。あれ?これ石?という感じです。そして表面が凸凹です。悪性度が高い場合は、増殖速度が速くて密度も高いので、小さい硬結でも硬いのです。

触診を面倒くさがらず、マメにコツコツと診察すれば、次第に触診する指先がセンサーになるのです。人間は五感を研ぎ澄ませば、検査器械にも負けない超能力を得ることができます。若い泌尿器科医は、これをおろそかにしているのです。
さらに詳細に鑑別するためには、エコー検査が必要になります。

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前立腺触診の重要性

B3f9b424355348ffbec147f1a51c549a前立腺ガンの昔から存在する診断法が、直腸を介しての前立腺の触診です。
でも、最近の若い泌尿器科医師は、PSA値が高い患者さんに対して触診を省いて、MRI検査を実施したり、中には即、針生検を行う輩までいます。

理由は、触れて分からなければ、針生検すれば分かるのだからと考えて、無駄な検査はしないと言うのです。何でもかんでも『効率!効率!』と言う若者の意識が成せる現象です。医師の都合による、その効率のために、ステージⅠの前立腺ガンが発見され、『ど〜だ、それ見た事か!』と言わんばかりの態度で患者さんに説明するのです。発見された患者さんは堪ったものでありません。まして悪性度が少なければ、「様子を見ましょう」と無責任な言葉を発するのです。患者さんにしてみれば、散々心配させておいて『何だ!その言い草は!』という気持ちになります。

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医師サイドは、『悪性度を確認する必要があるから仕方がないだろう!』という気持ちです。しかし、それは医師の勉強不足です。5年生存率は、悪性度に関係なくステージに依存しているのです。
Img_0663逆に針生検することで、悪性度の高い前立腺ガンは一気に悪性度が増して、5年生存率が30%まで落ちるのです。ラテント癌の静かにしている悪性度の高い癌細胞と、顕在ガンのそれとでは、病理検査で区別ができないのです。

つまり、触診やエコー検査で分からない前立腺ガンは、針生検してはいけないのです。ですから、
医師は手を抜かず丁寧に診ろ❗️
触診は必ず行なえ❗️
患者さんを苦しめるな❗️

Img_0735さて、ここで前立腺触診・エコー検査のテクニックを伝授しましょう。
❶患者さんを横向きか、上向きか、うつ伏せでお尻を突き出してもらいます。私は上向きで診察します。
❷ゴム手袋にワセリンを塗って、肛門に痛がらないようにそ〜と人差し指を挿入します。
❸人差し指で前立腺をソフトに触診します。
❹石のように硬い硬結が触れたら、悪性度の高い前立腺ガンです。表面が凸凹していれば、ステージⅢ〜Ⅳの癌と考えます。
❺硬結が前立腺肥大症の様な硬さの場合は、本当の前立腺肥大症と区別するために、前立腺の左右を触れます。左右が同じであれば前立腺肥大症です。左右が異なれば前立腺ガンです。前立腺肥大症は内腺から成長しますから、外腺は圧迫潰れ萎縮し無くなるのです。その結果、左右対称の前立腺肥大症になります。
❻硬結がなく、シワの様だったり、わずかな出っ張りだった場合には、エコー検査を利用して透過度を観察します。もしも白ければ傷か炎症の瘢痕です。黒ければ癌です。
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❼前立腺ガンのほとんどが、直腸に面した外腺にできます。エコー検査ででは、直腸側の前立腺外腺に注目します。
❽エコー所見では、前立腺ガンの境界線が明瞭であれば、発育速度が遅く周囲の癌細胞が揃って増えていると見なし、悪性度が低い(グリソンスコア7以下)考えられます。

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針生検を受けて11年間の苦悩

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平成18年にPSA値が4.0をチョッと越えたと言うことで、大分の病院で針生検を受けました。
結果は、悪性度の低いグリソンスコア6でした。そして、「何もしないで様子を見ましょう」と判断され、定期的にPSA検査を行ってきました。
その後、PSA検査を定期的に行いました。
平成18年~平成19年(大分)PSA値4.0~7.0
仕事の都合で各県を転々としていました。
平成20年~平成23年(熊本)PSA値6.0~8.0
平成24年~27年(大阪)PSA値8.0~10.0
平成28年~現在(広島)PSA値10.0~11.8
PSA値に一喜一憂しながら、上がると前立腺ガンが増えている?と悩みながら、この11年間悩み続けました。この状況で患者さんがご夫婦で広島から当院にお越しになりました。排尿に関してお聞きすると、排尿障害の症状が顕著に出ていました。排尿間隔が1.5時間に1回、1日10回以上、夜間頻尿2回~3回でした。
エコー検査の所見は、前立腺の大きさが44cc、前立腺が膀胱に突出していて、排尿障害を示唆しています。エコー検査の設定を前立腺ガン向けに変えて、前立腺を観察すると、矢印で示す部分に前立腺ガンを認めました。また、触診でも同じ部位に硬結が触れました。

総合的に考えて、大分でのPSA値の高さは、前立腺肥大症による排尿障害が原因でしょう。PSA値を理由に針生検したことで、ステージⅠのラテント癌が発見されてしまったのです。11年の間、大分→熊本→大阪→広島と四カ所で医師も4人が、ただひたすらPSA検査するだけです。前立腺触診もエコー検査もしていませんでした。その間、前立腺ガンが徐々に大きくなりエコー検査で確認できるようになったのでしょう。

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前立腺ガンの発見数(罹患数)の推移

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国立がん研究センターの1975年から2013年までの前立腺ガンの罹患数(発見数黒い線グラフ)と死亡数(赤い線グラフ)の推移をグラフにしました。
❶前回、前立腺ガンの死亡者数の増加について解説しました。増加の要因は、PSA検診・検査の普及と、前立腺肥大症の治療がプロスタールからハルナールに取って代わった事が原因だろうと思われます。
罹患数の増加の要因もPSA検診・検査が深く関わっている事が、グラフから予想できます。特に、泌尿器科学が先導して行った前立腺癌撲滅キャンペーンが、強力に働きかけたと思われます。
ここで、問題になるのが、罹患数と死亡者数の乖離現象です。定点で比較すると、下記の通りになります。

【年代】・【罹患数】・【死亡数】・比率(罹患数/死亡者)
1975年・・・ 2412・・・1267・・・1.9倍
2003年・・・40062・・・8418・・・4.8倍
2011年・・・78728・・10823・・・7.3倍

❷PSA検診・検査が普及すればする程、無駄な寿命に影響しない前立腺ガンの発見が増えているように見えます。前立腺ガンの治療法が飛躍的に進歩している訳ではありませんから、罹患数と死亡者数の開きは、単に発見しなくてもいい前立腺ガンを見つけてしまったという事になります。

❸この背景には、近年の前立腺肥大症の増加が原因です。私が研修医の頃には、80歳までに2割の男性が前立腺肥大症になっていました。ところが最近では、80歳の男性の8割が前立腺肥大症になるのです。前立腺肥大症では、前立腺の密度が高く、さらに排尿障害が生じるので、当然PSA値が高くなります。PSA値が高い→前立腺ガンの疑い→針生検というルーチンで、寿命に影響しないラテント癌(潜伏ガン)が発見されてしまうのです。これが罹患数と死亡者数のギャップの原因です。

❹PSA検査を導入した健診・人間ドック・地域検診が前立腺ガンの患者さんを増やしたことになります。健診によって『俺は前立腺ガンなんだ❗️❗️❗️』と精神的に追い詰めたことになります。健康を維持するために受けた健診によって精神的不健康に、生活のQOLを低めたことになります。医師のやることは、もしPSA値が高ければ、前立腺肥大症・排尿障害を認め、かつ触診とエコー検査でステージⅡ・Ⅲ・Ⅳが否定出来れば、針生検を実施してはなりません。その際、念のために半年〜1年毎に定期的にチェックすれば良いでしょう。

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前立腺ガンと夫婦の絆

19ded1203b5243ad992cddc61ce04fe5大阪からご夫婦で患者さんが来院されました。

検診でPSA値17.2(正常:4.0以下)とても高く、触診でも前立腺に硬い部分が認められたので、主治医が針生検を勧められました。ご主人は、医師の方針を受け入れ針生検を受け入れる気持ちになっていました。
ところが、奥様から「待った!」が掛かりました。奥様は現代医療より代替医療に傾倒されていたのです。奥様は必死になって前立腺ガンについて調べました。調べた中に、現代医療でありながら、チョッと違う高橋クリニックに行き着き、ご主人を強制的に高橋クリニックに連れて来たのです。

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さて、エコー検査を実施すると、前立腺肥大症を認めました。さらに良〜く観察すると、前立腺の右葉に影が見えます。(赤い矢印)早速、触診をすると、同じ部位に硬結を触れます。間違いなく前立腺ガンのステージⅡでした。ステージⅡでは、手術してもしなくても、5年生存率は変わらず同じなのです。同じであれば、前立腺ガンを刺激しないで治療を始めても良いのではないのか?と思ってしまいます。

ご存じのように、私は針生検が前立腺ガンを刺激して悪化させると思い込んでいます。ですから、針生検なしに治療を行います。その事をご主人にお話ししましたが、悩まれていました。従来の方針でガン細胞確認して手術治療か放射線治療を選択しようかと悩んでおられました。しかし、奥様は『なんで〜?』という印象です。

治療方針を決めるのは、自宅に帰ってから、良〜く考えてからでも良いでしょう。決断によって、すぐに治療が始められるようにと、取り敢えずお薬を処方しました。
エストラサイト毎週1錠、ビタミンD3毎日1錠、タガメット毎日4錠を1ヶ月分処方しました。
さあ〜ご主人は、どれを選択するでしょうか?

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ステージⅣの前立腺ガン患者さん

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今回ご紹介するのは、平成26年3月に来院した60歳の患者さんです。(#31455)

平成25年8月に、地元でPSA検査を実施したところPSA値が何と702!でした。
早速、大病院で前立腺針生検を含め精密検査した結果、グリソンスコア4+4=8と低分化型の悪性度が高い前立腺癌が見つかり、しかも骨転移(両側鎖骨・背骨・左大腿骨)まで病気は進行していました。いわゆるステージⅣです。
平成25年9月には、治療を開始しました。ゴナックス注射、カソデックス内服を続けました。その甲斐あって、鎖骨と背骨の転移は消失しましたが、大腿骨は残ったので放射線治療を追加して、効果が出て消失しました。そして、セカンドオピニオンで平成26年3月に当院を受診したのです。
当時は、治療を開始して半年位で、状態も落ち着いていたので、このまま治療を続けるのが最良でしょうと回答しました。

あれから、4年8ヵ月経った本日に、再び64歳になった患者さんが来院されました。外見からは、とても元気そうで、4年以上経過した前立腺癌のステージⅣの患者さんとは思えません。
現在の患者さんの悩みは、平成27年11月からPSA値1.0以下であったのが、今年平成29年9月からPSA値が1.0を越え、1.66~1.347に上昇し、主治医から再度放射線治療をやりましょうと強要されているとのこと。そこで、今後の治療について相談されました。

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まず驚くべきことは、前立腺癌ステージⅣの5年生存率は、この表で示すように43.6%です。56%以上の確率でお亡くなりになっているのです。それからすると、目の前の患者さんは、まだまだ元気で(私よりも元気!)、あと5年以上は生きれるでしょう。

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この患者さんが一番心配しているのが、ホルモン抵抗性前立腺癌(去勢抵抗性前立腺癌CRPC)です。
前立腺癌は、男性ホルモンであるテストステロンによって活性化します。

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この患者さんの治療法のように、ゴナックスはテストステロンが作れないようにし、カソデックスはテストステロンレセプターを完全ブロックします。そうすることで、テストステロンが癌細胞内に侵入し、核を刺激して活発になるのを防ぎます。
しかし、ホルモン治療を続けていると、隠れていた生き残った既存の前立腺癌が悪化し、男性ホルモンを遮断されても癌細胞内で自ら男性ホルモンを造れるようになるのです。

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ホルモン抵抗性前立腺ガンの予防として、癌細胞の中まで効果のあるイクスタンジを毎週1回〜2回少量服用することを提案しました。イクスタンジであれば、細胞膜のレセプターとレセプターから細胞への浸入経路と細胞内の男性ホルモンが核内に浸入もブロックしてくれるのです。その結果、細胞内で男性ホルモンが造られてもブロックされるので、変身途中の前立腺ガンを押さえ込んでくれます。

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ガンの比較

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【全国がんセンター協議会のデータより】
前立腺ガンを発見されて、私のブログを読まれてから大いに悩まれる患者さんが多くおられます。
そこで、見方を変えて、インターネットで容易に手に入るデータから下記の通り考えてみました。

✳︎✳︎各臓器の癌の10年生存率の比較(ステージⅢ)と、膵臓ガンとの生存率の比較
前立腺ガン 95.6% 30.8倍⬅️
肺ガン………16.1% 5.2倍
胃ガン………38.9% 12.5倍
大腸ガン……74.8% 24.1倍
直腸ガン……63.0% 20.3倍
食道ガン……66.1% 21.3倍
肝臓ガン………9.8% 3.2倍
膵臓ガン………3.1% 1.0倍⬅️
腎臓ガン……51.8% 16.7倍
膀胱ガン……32.3% 10.4倍

ガンは癌でも臓器別にして10年生存率を比較してみると、こんなにも違います。みんな同じではないのです。特に、前立腺ガンは膵臓ガンと比較すると、30倍以上も10年生存率が高いのです。膵臓ガンは、本当に正真正銘の悪い癌ですが、前立腺ガンは「本当に癌なの?」と思えてなりません。
ですから、針生検で前立腺ガンが発見されたとしても、心に余裕を持ってください。
また、良性に近い前立腺ガンが、他の臓器のガン発生を一時的にでも牽制してくれているのかも知れません。

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医師をも悩ませる前立腺ガン

有名大学出身の外科の先生が来院されました。
実はPSA値が高く、針生検を先日実施し、病理結果は来週分かるという事でした。
針生検後に私のブログをお読みになり、意見をお聴きに来院されました。患者さんとして同業者の医師が何人も訪れます。本質を見ることの出来る医師からは、現在の泌尿器科学の前立腺ガンの常識に疑問を持たれたのでしょう。

MRI検査では前立腺右葉に疑う所見があり、事前の触診なしに即針生検されてしまいました。持参された針生検の際のエコー画像では、前立腺ガンの所見は不明瞭でした。
お話しをお聞きし、早速診察・検査を行いました。

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超音波エコー検査では、明らかな前立腺肥大症です。大きさは50ccと正常の2倍以上です。さらに
❶膀胱粘膜が凸凹で排尿障害による肉柱形成所見
❷膀胱括約筋の先端分裂
❸前立腺結石
❹前立腺の膀胱内突出
以上は、全て排尿障害による変形です。
これだけでもPSA値は高くなりますが・・・。

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さらに詳細に超音波エコー所見を見てみます。
前立腺の正面像が僅かながら左右非対称です。膨らみの場所(赤い矢印)が前立腺外腺の右側にあり、前立腺ガンと思われます。
陰影の膨らみの形状が全体的に丸みを帯びています。
悪性度の低いグリソンスコア6以下とグリソンスコア7では、細胞分裂が比較的遅くて発育がユックリなので、細胞同士が調整しながら発育するために形が丸みを帯びます。

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疑わしい陰影を縦に観察した前立腺の側面像にも陰影(赤い矢印)が確認出来ます。
やはり全体的に丸みを帯びています。
この所見から、おそらくこの前立腺ガンはグリソンスコア6〜7と思われます。

今度は触診させていただきました。
触診でも前立腺右葉に硬結が触れます。これで前立腺ガンに間違いないでしょう。あとは、針生検の結果待ちです。その後の治療は、この先生自身に委ねました。

なぜかと言えば、同業の医師としては医療に関して各々ポリシーがあります。
病気の原因をトコトン追求して、現時点で最良の治療手段を選択したい医師もおられます。また、私のように、原因追及をある程度までに押さえておき、寝ている子を起こさないで自然体に治療する医師もおられます。患者さんと同じで、考え方はマチマチです。しかし、どのような決断をなさろうと、医師であるこの患者さんの判断が常にベストで正しいとお伝えしました。
胃ガンの場合でしたら、即手術になりますが、前立腺ガンの場合は、治療と結果が確立されていないから、医師であっても悩ませるのです。これは、泌尿器科医師の責任です。

ただ、次の治療を選択するまで間がありますから、刺激してしまった癌細胞を興奮させないようにプロスタールを処方しました。また、排尿障害がある前立腺の形状でしたので、ユリーフを処方して、排尿時の前立腺の物理的負荷で傷ついた前立腺ガンを興奮させないようにしました。

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プロスタールの実力

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PSA値が8~10と高く、前立腺癌を疑われ、前立腺針生検すすめられた80歳の患者さんです。
前立腺針生検を拒否して、インターネットで当院を見つけ来院しました。
超音波エコー検査で前立腺の大きさが68ccと通常の3倍以上の大きさです。普通は、20ccですから、これではPSA値が高くても不思議ではありません。ところが、よ~く見ると、前立腺の右葉端に小さな陰影(赤い矢印➡)が認められます。触診をすると、前立腺右端に硬結が触れました。間違いなく前立腺癌です。
そこで、前立腺を小さくするためと、前立腺癌の治療のためにプロスタール2錠毎日で処方しました。

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前立腺が大きくPSA値が高い人に対しては、まずは前立腺を小さくすることがやらなければならないことです。一般の泌尿器科医は、PSA値が低くマスクされるという理由で、実行しません。この治療でPSA値が低くなるのであれば、その程度の前立腺ガンと考えても良いのではないでしょうか?
しかも80歳過ぎの患者さんに、前立腺針生検を強要する医師は、患者さんの人生のことを何にも考えていません。自分の父親だったら、そこまで強要するでしょうか?
私が研修医の頃からあったプロスタールは、毎日2錠で前立腺肥大症に、毎日4錠で前立腺癌に保険適応が承認されている都合の良い薬剤です。良性に近い高分化型や中分化型であれば、前立腺肥大症として治療しても効果が出ます。

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3カ月後、患者さんがお見えになり、前立腺の状態を再検査して欲しいと希望があったので検査を行いました。すると、3カ月しか経っていないのに前立腺の大きさが何と35ccでした。約2分の1でした。
しかも、前立腺癌の陰影が認められません。触診でも硬結は触れませんでした。高分化型の前立腺癌を前立腺針生検をしないで治療したことになります。
プロスタールが、前立腺肥大症の治療薬としてファースト・チョイスとして処方されていた時代は、これほど多くの前立腺ガン患者さんはいませんでした。なぜなら、プロスタールが高分化型や中分化型の前立腺ガンを死滅させていたからなのです。ところが、前立腺肥大症の排尿障害を効果的に治すハルナールの出現でプロスタールが使われなくなりました。さらに、プロスタールなどの抗男性ホルモン剤がPSA値を下げてしまい、前立腺ガンの発見が遅れてしまうからという文献が過大評価されたからです。
プロスタールの売上げの減少に反比例して前立腺ガンが増加する印象でした。研究者たちのバカな思い込みが作った、これが前立腺ガン患者さん増加現象の本質かも知れません。

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