前立腺肥大症の症状病理

排尿機能障害の具体的理由

Sphinc1膀胱出口が開くためには、尿道括約筋が開きながら引っ張ると、収縮している膀胱出口が開くのです。膀胱出口は、常に膀胱括約筋で閉じられているのです。一般の医師は、排尿時に膀胱括約筋が自らの力で開いていると思っているのです。

そして排尿障害のある人は、膀胱括約筋が緩まないからだと思い込んでいるのです。初めのイラストは正常の排尿の表示です。

左が蓄尿時を表現しています。膀胱括約筋と尿道括約筋のつながりの位置に注目してください。❶排尿時には、骨格筋である尿道括約筋が下に向きに開きながら引っ張ります。❷膀胱括約筋が閉じていても、尿道括約筋に負けて膀胱括約筋が引っ張られ、膀胱出口は開きます。❸さらに腹圧でオシッコが出るのです。

Sphinc2_20200810104301 次のイラストは、排尿障害の人の解説です。蓄尿時の膀胱括約筋と尿道括約筋の連結線(点線)をご覧ください。膀胱括約筋の外側につながっていて、尿道括約筋の外側に付着しています。

❶この状態で尿道括約筋が下に向きながら開くと、❷どう考えても膀胱出口は閉じるでしょう。❸その状態で腹圧をかけてオシッコをすると、出口が狭くなっていますから、ジェット流になって、オシッコは散るのです。そして膀胱内圧は上昇するので、膀胱粘膜や膀胱壁の筋肉(縦走筋・輪状筋)に負担がかかり、点状出血・ハンナー型潰瘍→間質性膀胱炎、肉柱形成→神経因性膀胱、膀胱憩室→先天性と誤診されるのです。そして膀胱括約筋に物理的負担がかかるので、生体反応が起きて、膀胱括約筋が次第に肥大してしまい、膀胱出口がますます狭くなり、さらに排尿障害が強くなってしまうのです。

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 3枚目のイラストは、膀胱括約筋と尿道括約筋を機械に見立てたものです。正常の場合は、膀胱括約筋(緑)と尿道括約筋(赤)が連結しています。尿道括約筋が外側に移動すると、膀胱括約筋は下向きに移動します。すると出口は開きます。

 排尿障害になりやすい人は、連結線が膀胱括約筋の外側に付着して、尿道括約筋にも外側に付着すれば、尿道括約筋が外側に移動すれば、膀胱括約筋は上向きになります。すると出口も上向きになりますが、膀胱内圧で負担がかかり出口は閉じてしまうのです。

 この膀胱括約筋と尿道括約筋の連結具合が人によって様々なので、排尿機能も様々なのです。手術で、この連結を修正することはできません。治療としては、膀胱括約筋の緊張をゆるめて、上向きにならないようにするのです。それがα1ブロッカーのユリーフ・ハルナールです。手術としては、出口の部分を切除すれば、膀胱括約筋が上向きになっても出口が閉じないのですから、出が良くなるのです。

Sphinc5 実際に1本の連結線が存在する訳ではありません。膀胱括約筋と尿道括約筋は何十本もの平滑筋線維と連結しているのです。しかし、その平滑筋線維の緊張度が均一でなければ、この連結線のお話しのような現象が起こるのです。そしてα1ブロッカーは全ての平滑筋の緊張を緩めるので、膀胱括約筋の平滑筋も連結線の平滑筋も緩めるので、私が解説した現象が低下して、排尿障害が改善するのです。

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 ご覧いただいて想像出来るように、この現象は前立腺とは無関係です。排尿障害が原因で膀胱括約筋が肥大して、それが原因で腹圧をかけると前立腺に負担がかかり、前立腺が大きくなるのです。この現象は男女問わないことになります。神経因性膀胱も排尿機能障害も具体的な概念のないウソの診断名になります。ですから、全ての排尿障害には、α1ブロッカーが必須です。

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長寿と平行して悩むオシッコの病気

Cef5cd9711f94492bdc54b5af2340476 私が研修医の頃、80歳過ぎの前立腺肥大症の患者さんの割合は、おおよそ20%ほどでした。時代が過ぎて現在では、高齢者男性の80%の人が前立腺肥大症になるとされています。その理由は何故でしょうか?泌尿器科学会でも明確な理由が分かっていません。さらにご婦人の過活動膀胱の患者さんも増えています。500万人以上もいるとされています。どう考えても、平均寿命の増加が原因でしょう。グラフは、前立腺肥大症の増加する罹患率を示しています。その増加率の比例して前立腺ガンの患者さんも増加しています。その理由は、前立腺肥大症になるとPSA値が高くなり、隠れていた見つける必要のないラテント癌を発見するからです。

Sohaisetu それでは平均寿命が伸びると何故オシッコの病気が増えるのでしょうか?まずは発生学的な視点から考えてみましょう。膀胱と直腸は元々は同じ臓器だったのです。それが総排泄腔といいます。その総排泄腔が胎児の6週目から、真ん中にクビレが入り始め、7週目で二つに分離するのです。分離した前側が膀胱で、後ろ側が直腸になります。膀胱からは尿管と腎臓ができ始め、直腸には大腸が結合します。その結果、膀胱には尿が溜まり、直腸には大便が通過するのです。

Anal発生学的には同じ臓器なのですが、通過する尿と大便によって出口が変わったのです。直腸の出口、つまり肛門はイラストのようになっています。出口は内肛門括約筋と外肛門括約筋で構成されています。内肛門括約筋は、外肛門括約筋の内側に隣接しています。内肛門括約筋は不随神経で支配されており、外肛門括約筋は随意神経で支配されています。排便の際に内肛門括約筋は、固形の大便が出やすいように漏斗状にするために収縮をします。しかし外肛門括約筋が開くと、真後ろに位置する内肛門括約筋は強制的に開かされてしまいます。きれいな漏斗状になるので、大便がスムーズに出るのです。

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膀胱の出口の構造は、直腸の出口=肛門と少し異なります。なぜならば、肛門と違って液体である尿を溜めておかなければいけないからです。肛門と同じ構造では、液体である尿が漏れ出てしまうからです。それを防ぐために、内尿道括約筋と外尿道括約筋の位置が上下に離れて分かれています。ですから、排尿する際には、外尿道括約筋が
開いても内尿道括約筋を直接開くことは出来ないのです。あくまでも間接的に開いているのです。肛門と違い、内尿道括約筋は外尿道括約筋ほどは開きません。

Bladderaging

排尿の際に、膀胱の圧力が膀胱出口にかかります。膀胱括約筋(内尿道括約筋)に物理的な圧力が若干掛かります。この圧力が毎日繰り返し繰り返し長期間続けば、かなりの負担が掛かるのです。オシッコの回数が毎日5回だとすると、365回✖️5回=年間1,825回になり、50年で9万1,250回になります。膀胱出口を9万1,250回も叩けば、膀胱括約筋が次第に肥厚・肥大するのは当然です。それが、60年70年80年も継続すれば膀胱括約筋はさらに肥厚・肥大して排尿障害が強くなります。男性の場合は、膀胱括約筋の下に前立腺にも負担が掛かり、前立腺は次第に大きくなり、前立腺肥大症になるのです。ご婦人は前立腺かないので、見た目では肥大症のような変化がないので、過活動膀胱、間質性膀胱炎と診断されるのです。

以上のように、もともと膀胱の出口は、構造的に欠陥があったから、平均寿命が伸びるほど、排尿障害の患者さんが増えるのです。要するに、排尿障害が原因のいろいろな病気(前立腺肥大症、慢性前立腺炎、過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症など)は、加齢とともに増えるのは当然なのが人間なのです。病気になったとしても、ガッカリしないでくださいね。

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夜間多尿の理由

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夜間頻尿の理由のひとつに「夜間多尿」という現象があります。夜間多尿は寝てからのオシッコの量が多い場合を意味します。定義として、1日の尿量の33%が夜間の尿量とします。例えば、毎日のオシッコが1.8リットルとすると、夜間だけで600㎖以上の尿量がある場合です。高齢者や高血圧の患者さんが、疫学的調査で夜間多尿が多く認められています。その理由について学会の有名な医師の説明によると、❶水分の摂り過ぎ、❷高齢者、❸抗利尿ホルモンの低下、❹塩分の摂り過ぎ、❺高血圧、❻腎臓に障害がある、等などの様々な理由をあげています。

 

多くの医師は、生化学的な観点からしか物事を考えないのです。そのため、理由が明確に追求できないのです。しかし、解剖学的構造学的な観点から考えると見えて来るものがあります。

Aortakidney 解剖学的腎臓の位置は寝ている時の姿です。起き上がっている時とでは、状態が異なります。起き上がると、腎臓の重さで下に移動します。おおよそ5cm以上です。10cm以上落下して症状がでると、「腎下垂・遊走腎」と云います。その症状が、腰痛、脇腹痛、吐き気などです。その理由は、腎下垂で腎動脈が引き伸ばされたために、腎血流量が低下して、ある意味で腎臓が阻血・虚血状態になるので、腎臓が痛くなり、腰痛・脇腹痛・吐き気になるのです。ちょうど、狭心症や心筋梗塞の胸の痛みと同じです。

Aortakidney2 高齢者になると、筋力が低下して、腹腔内の脂肪も減り、腎下垂の確率が高くなります。さらに動脈硬化のため、引き伸ばされた腎動脈の内腔が狭くなるのです。高血圧の人は、さらに動脈硬化が強いので、さらに狭くなります。

Yakantanyo_20200129112301 高齢者が日中に起き上がる、座る、立つと、腎臓は下垂して腎血流量が低下します。腎臓に注がれる水分が少なければ、日中の尿量は減少します。そのため排出できなかった水分が体内の細胞外液として残されてしまいます。寝て横になると、腎臓が元の位置に戻ります。血流が回復すると、体は「今がチャンスでだ!」と腎臓にたくさんの水分が流れて、たくさんの尿量が作られます。その結果、「夜間多尿」になるのです。排尿障害で膀胱容量が小さくなっている人は、当然、夜間頻尿になるのです。

昼間の水分が体内に残っている訳ですから、それを改善するために、夜間の抗利尿ホルモン分泌を抑えて多尿にするのです。

対策として、❶水分を控える❷昼間に1時間ほど昼寝したり横になることです。また、❸治療薬としては、合成抗利尿ホルモンのミニリンメルトOD錠があります。

 

夜間多尿はいろいろな原因説明がありましたが、本当の原因は動脈硬化と高齢者による腎下垂が原因です。その理由でいろいろな原因が一筋にまとまりました。

 

夜間多尿は、体を正常にするために、体に大量に溜まった水分を少しでも少なくする目的で、夜にオシッコをたくさん出しているのです。抗利尿ホルモン単独で夜間多尿を抑えると、さらに水分が体に溜まり、血液が水っぽくなる=低ナトリウム血症になり、頭痛、吐き気、食欲不振、錯乱、ケイレンなどの症状が発症して、本当の病気になってしまうのです。ですから、水分は控え目にすることと、日中に昼寝でもして、日中の尿量を増やしましょう。

 

 

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排尿障害が原因のいろいろな病気

医師になって約40年(正確には39年)、それまで蓄積した臨床体験から、一見、排尿障害と無関係に思える病気の原因が、排尿障害と密接に関係している事が分かりました。
原因を分かりにくくしているのが、膀胱や前立腺を神経支配している、脊髄神経回路だったのです。
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脊髄神経回路は、人によってさまさまな症状を作ります。医師は、その神経回路の様子を想像出来ませんから、たくさんの原因不明の病気を創るのです。その発想の貧弱さが、結局は患者さんたちを苦しめて来たのです。

①排尿「機能障害」→膀胱括約筋の肥大・膀胱三角部の過敏

②膀胱括約筋の肥大→排尿障害の悪化→前立腺に負担→前立腺肥大症→排尿障害がさらに悪化

③前立腺に負担→PSA値の上昇→前立腺癌を疑われる→前立腺針生検

④膀胱に負担→膀胱の疲弊→膀胱の弛緩→神経因性膀胱→治らない病気と誤解

⑤膀胱の疲弊→膀胱の萎縮→間質性膀胱炎→水圧拡張術→さらに萎縮が進む

⑥膀胱三角部の過敏→神経回路の興奮→❶慢性前立腺炎❷慢性膀胱炎❸過活動膀胱❹膀胱疼痛症❺慢性骨盤疼痛症候群❻線維筋痛症❼舌痛症❽慢性胃痛症❾幻臭症➓坐骨神経痛→気のせいと誤解

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尿意の秘密

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膀胱や前立腺の数々の病気を調べ研究して治療するに当たって、基本的な概念を明らかにする必要があります。その対象が「尿意」です。
泌尿器科学会で名だたる先生たちが唱える、尿意のメカニズムは次のようです。
まずは、膀胱の基本的構造をイラストで示しました。膀胱粘膜があり、その下に粘膜下組織、平滑筋層、神経組織のC線維があります。
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①オシッコがたまり膀胱が膨らむと、当然、膀胱粘膜が引き伸ばされます。
②すると、膀胱粘膜からATPやアセチルコリンなどのさまざまな「生物活性物質」が放出されます。
③それら生物活性物質が膀胱粘膜のすぐ下に存在するC線維を刺激して、それが脊髄神経回路に伝達されて尿意になるのです。
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もしも、この通りだとすると、説明できない現象があります。
頻尿や尿意切迫感を抑えるβ3作動薬のベタニスや抗コリン剤のベシケア・ステーブラ・トビエースなどは、膀胱の平滑筋を緩める働きがあります。そのお陰で、頻尿や尿意切迫感の患者さんが、オシッコを我慢できるようになるのです。しかし、もしそうだとしたら、平滑筋が緩み、膀胱がさらに膨らみ、膀胱の粘膜はなお一層伸びて、生物活性物質が大量に放出される筈です、すると、頻尿の尿意切迫感が強くならなければなりません。したがって、この理論は、間違いです。
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では、どのように考えればいいのでしようか?
ヒントは、β3作動薬や抗コリン剤が平滑筋にしか効かないことにあります。そして、平滑筋を緩める=尿意が低下する点にあります。平滑筋細胞は、細胞間が電気結合=ギャップ結合で繋がっていて、1個の細胞の情報がすべての細胞に伝わります。つまり、1個の細胞の意識が、すべての細胞の共通の意識になるのです。膀胱が膨らむと、平滑筋は引き伸ばされて緊張(赤いギザギザ線)し、平滑筋全体に伝達されます。その緊張情報=膀胱内圧=尿意情報が神経に伝達されて尿意になるのです。この仕組みは、ほぼ神経細胞と一緒です。神経は線状なので1次元ですが、平滑筋は立体的なので3次元です。膀胱平滑筋は、収縮と弛緩する物理的な動力装置としての働きと、機能的な感覚センサーとしての働きがあるのです。

実は平滑筋には他にも違う働きがいろいろあります。動脈壁の中膜にある平滑筋は、動脈壁の内膜に溜まった悪玉コレステロールを食べて泡沫細胞になります。これはマクロファージ=貪食細胞と同じです。また、動脈壁の内膜に集まった泡沫細胞を固めるために平滑筋がコラーゲンを作ります。これは線維芽細胞と同じです。

以上のように平滑筋には、多彩な能力があるのです。その平滑筋には、私たちが知らない能力があるかもしれません。その不明の能力が原因不明の病気に関与しているかもしれません。そういう意味では、平滑筋の興奮を抑える大豆イソフラボンが、さまざまな病気の予防に役立つ可能性があります。

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誤解

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今まで解説してきた下部尿路症は、基本的考え方は恐らくこうでしょう。

①前立腺肥大症は、前立腺肥大症が膀胱を刺激して、頻尿・残尿感・尿意切迫感が出現する。前立腺の手術をしても治らない人がいる。
②急性膀胱炎は、バイ菌が刺激して、膀胱粘膜が過敏に反応して、頻尿・残尿感が出る。若いご婦人のこの病気はセックスの後に起こる。しかし、高齢者の場合は原因不明である。
③慢性前立腺炎は、前立腺の炎症が膀胱を刺激して、頻尿・排尿痛・陰部の痛みが出る。抗菌剤を長期間投与しても治らない。
④間質性膀胱炎は、膀胱の粘膜に原因不明の炎症が起きで、頻尿・膀胱の強い痛みになる。萎縮した膀胱を水圧拡張しても治らない。
⑤過活動膀胱は、原因不明で頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁になる。
⑥膀胱疼痛症候群は、原因不明で軽い頻尿程度がある程度、主症状は排尿に関係なく膀胱の痛み。麻薬の痛み止めを服用しても治らない。

結局は、すべての病気の原因を膀胱が受け止めて、下部尿路症状を作っているのだろうという考え方です。その割には、原因と思われる病態を治療してもなかなか治りません。さらに原因が別としても、膀胱は同じですから、同じ症状でもいいと考えられませんか?何故いろいろと違う症状なのでしょう。明らかな膀胱粘膜の炎症である細菌性急性膀胱炎と同じ頻尿・残尿感・排尿痛にならないのでしょう?……どうしてでしょうか?
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これには、理由があるのです。
前回解説したように、疫学的調査で症状を比較すると、尿勢低下のみが「機能障害」です。一般的に、病気の症状は、機能障害が原因で、その他の症状を作っていると考えられます。機能障害で排尿時に膀胱括約筋と膀胱三角部が弛緩しないため、膀胱出口が開かないために排尿障害になります。弛緩しない膀胱括約筋と膀胱三角部は、縦走筋と力比べするために、膀胱括約筋・膀胱三角部が肥大化・肥厚化し、ますます排尿障害を悪化します。
①排尿障害が悪化すると、
ⅰ.膀胱内圧のエネルギーが、長期間前立腺を刺激したため、前立腺が対応反応して肥大化→「前立腺肥大症」になる。
ⅱ.膀胱内圧が長期間に渡って上昇するので、膀胱自身が疲弊する。疲弊の結果、
a)膀胱が弛緩する→「神経因性膀胱」
b)膀胱が萎縮する→「間質性膀胱炎」

さらに膀胱三角部は尿意を知覚するセンサーですから、肥厚化によって尿意エネルギーは大量に産生されるために、脊髄神経回路を介して、頻尿・残尿感・尿意切迫感・切迫性尿失禁・膀胱の痛み・陰部の痛み・シビレ・痒みになるのです。
①男性で不定愁訴があって、前立腺が大きくないと、→「慢性前立腺炎」
②尿検査で白血球/細菌が見つかると、→「慢性膀胱炎」
③検査結果がほぼ正常で精神的に落ち込むと、→「心因性頻尿」
④検査結果が多少異常があっても、痛みがとても強いと、→「膀胱疼痛症」
⑤痛みの領域が広いと、→「慢性骨盤疼痛症候群」
⑥検査結果がほぼ正常だと、→「過活動膀胱」

ご覧のように、下部尿路症で付けられた診断名の根拠が、如何にいい加減か分かります。診断名から治療しても、病気が治るとは思えません。診断名を考案した医師たちの短絡的な発想が情け無い。表向きの症状だけで病名を作るのは、素人でも作れることです。
イラストで示すように、病気の根本的原因は、排尿障害と膀胱括約筋・膀胱三角部の肥大化と異常興奮が原因です。そのために、排尿障害の治療薬であるα1ブロッカーと、膀胱三角部の興奮を抑えるβ3作動薬と抗コリン剤が必要になるのです。

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見えてきた排尿障害の仕組み

過去にたくさんの排尿障害の仕組みを考察してきました。
検査所見の存在に対して、疑問点が常にありました。排尿障害の患者さんには、男女問わず、膀胱出口が硬く盛り上がっていました。その理由については、排尿障害のために膀胱出口が排尿時に振動するので、次第に膀胱出口が盛り上がると考えていました。でも実際に、内視鏡手術の際に膀胱出口を切開・切除すると、そこは必ず平滑筋組織です。もしも振動エネルギーで盛り上がっているのであれば、線維組織のはずです。つまり、盛り上がった膀胱出口の組織は、膀胱括約筋の二次的な姿なのです。排尿障害の患者さんの膀胱括約筋は、必ずマッチョなのです。

マッチョになるためには、振動エネルギーではなく、筋トレによるものだと考えられます。筋トレ?……膀胱括約筋の筋トレ相手は、排尿時に収縮する膀胱出口周囲の縦走筋です。つまり何らかの理由で、排尿時に膀胱括約筋が柔らかく弛緩しないので、縦走筋に引っ張られる際に鍛えられたのでしょう。

そう考えると、α1-ブロッカーであるユリーフやハルナールなどの即効性の理由が理解できます。α1-ブロッカーは、前立腺や尿道の緊張を緩めるのではなく、膀胱括約筋=内尿道括約筋の緊張を緩めるので、膀胱出口が開きやすくなるのです。
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膀胱の構造は、大きく分けて膀胱体部、膀胱三角部、膀胱出口(膀胱頸部)に分けられます。筋肉の観点から見ると、膀胱体部は二層構造で、内側が輪状筋、外側が縦走筋です。輪状筋は、膀胱の横方向の直径を小さくするように収縮させます。縦走筋は膀胱の外側に存在し、膀胱の天辺の部分が膀胱出口に向かうように収縮させます。この2つの筋肉の働きで、膀胱は膨らんだり縮んだりするのです。膀胱出口は複雑で、膀胱出口ギリギリまで輪状筋と縦走筋が到達し、その内側に膀胱括約筋=内尿道括約筋が位置します。先ほど説明したように、排尿障害のある人は、膀胱出口周囲の膀胱括約筋が発達・肥厚しています。これは、縦走筋と膀胱括約筋の排尿時の動きがシンクロせずに、逆にバランスが悪く、縦走筋が収縮する時に膀胱括約筋が緩まないで対抗している証拠です。

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この画像は、3Dエコー検査で観察した膀胱出口の所見です。
見て分かるように、膀胱出口を中心とした同心円状ではありません。
これを分かりやすく説明したのが、次のイラストです。

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イラストで見えるように、輪状筋は、膀胱三角部を挟んでブーメランの様な形をしています。
何故この様な形状をしているかは、それなりの理由があります。
発生段階で、尿管の原基を囲むように輪状筋が発達したからです。そして、尿管の原基から膀胱三角部が形成したのです。

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3Dエコー画像を元に、下部尿路の基本的構造を左のイラスト側面像で示しました。
膀胱出口周囲に存在する赤い部分が、どちらも膀胱括約筋です。膀胱内側の肌色の部分が輪状筋で、外側の空色の部分が縦走筋です。

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健常であれば、右のイラストで示すように排尿時に、両方の膀胱括約筋が緩んで、縦方向に収縮した縦走筋の意のままに膀胱出口は開き、オシッコがスムーズに出るのです。

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排尿障害の患者さんは、どう言う訳か膀胱三角部も含め、排尿時に弛緩しないでギューっと収縮します。縦走筋が収縮して膀胱出口を開こうとしても十分に開かないのです。
この経過が長期間に渡ると、膀胱括約筋が縦走筋と筋トレしていることになり、イラストのように次第にマッチョになります。排尿障害の患者さんをエコー検査で観察すると、膀胱出口前部の膀胱括約筋と膀胱三角部の膀胱括約筋が厚くなり、膀胱側に突出しています。

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この膀胱括約筋の肥厚は、イラストで表現したように、まるで膀胱出口を鍵でロックした状態になるのです。
この状態が何十年も続けば、縦走筋や輪状筋は疲れ果てて、男女関係なく神経因性膀胱と診断されます。排尿時の圧力が前立腺を刺激して、前立腺肥大症になります。膀胱三角部が突出すると、中葉肥大型と判断される形状です。
排尿障害の患者さんの内視鏡手術の際には、この固くなった膀胱括約筋の切開・切除が重要になります。ところが、前立腺肥大症だと、「肥大症」とい言葉に翻弄されて前立腺しか手術しないので、手術後も排尿障害が続くのです。

以上のように排尿障害し続くと、何故に頻尿・残尿感・尿意切迫感などの症状が発現するのでしようか?実は、膀胱三角部の括約筋は、圧力センサーでもあるのです。通常は蓄尿で膀胱内圧が高まると、その圧力が膀胱三角部の圧力センサーを刺激して尿意を感じるのです。ところが、膀胱三角部が肥厚したために膀胱三角部の組織密度が高まり、膀胱内圧の反応閾値に関係なく、圧力センサーが過剰に反応してしまうのです。

治療としては、膀胱括約筋の緊張を緩めて上げれば良いのです。そのために、ユリーフ・ハルナール・フリバスなどのα1-ブロッカーの処方です。ご婦人の場合は、エブランチルしか処方できません。
次に膀胱三角部に特異的に作用するベタニスなどのβ3刺激剤が有効になります。
また、膀胱内圧を下げることで、膀胱三角部の圧力センサーを二次的に刺激しないように、輪状筋の過敏性収縮を抑えることです。そのために、ベシケア・ステーブラ・トビエースなどの抗コリン剤が必要になります。


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膀胱出口閉塞症・症候群と言う考え方

アメリカには膀胱出口閉塞症と言う考え方がありますが、具体的に明確な定義がありません。日本では、膀胱に関する病気がたくさんあります。膀胱の病気には、アレルギー性膀胱炎・細菌性急性膀胱炎・慢性膀胱炎・心因性頻尿・過活動膀胱・膀胱疼痛症・間質性膀胱炎・うっ血性骨盤疼痛症候群・慢性骨盤内疼痛症候群・神経因性膀胱などです。ところが、すべての病気が原因不明です。
この中で、ハッキリした原因があるのはアレルギー性膀胱炎と細菌性急性膀胱炎の2つだけです。この2つ以外の病気の原因は、とてもいい加減です。

①慢性膀胱炎:
陰部を不潔にしている、お尻を拭く時に後ろから前に拭くので不潔になる、などの理由で膀胱炎になるとされる。患者さんが一生懸命に陰部を清潔にしても治らない。
②心因性頻尿:
ストレスなどで神経が過敏なった結果、頻尿になる。
③過活動膀胱:
原因不明で頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁の総合的病名。
④膀胱疼痛症:
原因不明の膀胱を中心とする痛みの病気。他の膀胱の病気に併発することがある。
⑤間質性膀胱炎:
極端な頻尿と痛みを伴う病気である。アレルギーと思われている。膀胱粘膜の所見で確定診断をする。
⑥うっ血性骨盤疼痛症候群:
ご婦人の原因不明の下半身疼痛を示す病名。うっ血所見(静脈血の低下・静脈瘤)があります。
⑦慢性骨盤内疼痛症候群:
慢性前立腺炎の別名。
⑧神経因性膀胱:
膀胱に力がなくなったからオシッコが出ない・・・その理由は不明。

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これらの患者さんを調べると、多かれ少なかれ、排尿障害が隠れています。ところが、極端な排尿障害ではないので、診察している医師が重要視せずに無視するので、結果、原因不明になるのです。その根源は、排尿の仕組みを正確に理解していないからです。尿道括約筋が開くから、連動して(白い破線矢印⇕)膀胱出口が自動的に開いて排尿すると思っているのです。生身の生体の扉が、そんな単純な仕組みで出来ていると思う方がおかしいでしょう。

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尿道括約筋は開くのではなく、引っ張っている(けん引)のです。特に膀胱三角部が尿道括約筋のギリギリ手前まで伸びていますから、前後方向に開きます。同時、に膀胱括約筋が収縮することで、膀胱出口がロート状に開くので尿がスムーズに出るのです。

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膀胱括約筋は内臓の筋肉=平滑筋です。尿道括約筋は体を動かすための骨格筋=横紋筋です。
力強さは、横紋筋>>>平滑筋ですから、年齢を重ねる毎に平滑筋=膀胱括約筋は疲労困憊して十分に収縮できなくなります。すると、力強い横紋筋=尿道括約筋だけが頑張るので、イラストの如く、膀胱出口が逆に狭くなり(ガチン)、オシッコが出にくくなるのです。

その状態が、繰り返し繰返し、長期間に渡って繰り返されると、膀胱出口は硬くなります。また、膀胱三角部もその振動で硬くなります。組織が硬くなると言う事は異常現象ですから、情報収集のためにセンサーが生まれ、脊髄神経回路と密接の繋がります。これがすべての病気の症状出現と結びつくのです。
膀胱三角部が過敏になれば、頻尿・残尿感・尿意切迫感・尿失禁になります。それぞれの症状の程度と組合せにより、慢性膀胱炎・過活動膀胱・間質性膀胱炎と診断されるのです。
膀胱三角部と連結している脊髄神経回路がバージョン・アップすると痛み症状が強くなり、膀胱疼痛症・間質性膀胱炎・慢性前立腺炎,慢性骨盤疼痛症候群と診断されるのです。
膀胱出口の硬さが増して、膀胱全体が疲弊すると、神経因性膀胱と診断されるのです。神経因性膀胱の専門医は、ダメになった膀胱をいろいろな検査で分類分けするのです。ダメになった理由を追求しないで、……「神経がダメになったのだから、治せませんね。」と、安易な診断をするのです。本当に無能です。
このように考えれば、極端なオシッコの出の悪さを自覚しなくても、病気が作られるのは理解できるでしよう。


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病気と症状と治療のタイミング

慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、間質性膀胱炎、過活動膀胱、前立腺肥大症、神経因性膀胱、PSA高値などの患者さんが全国からお越しになります。
その理由は、地元の病院やクリニックでは治らないからです。
治らない原因の第一は、まずは病気の本質を治療しないからです。例えば、慢性前立腺炎や慢性膀胱炎は、「炎」という取りあえずの病名に合わせた治療しかしないからです。また、間質性膀胱炎や過活動膀胱は原因不明の病気ですから、頻尿や痛みに対する治療しかしないからです。更に、前立腺肥大症は、頻尿の出現理由を考えないで治療するからです。
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病気の本質は、「排尿障害」です。
排尿障害→膀胱三角部の過敏→脊髄神経回路の構築→症状(頻尿・尿意切迫感・残尿感・痛み・シビレ・かゆみ)の発現です。それぞれの病気の仕組みは、下記の通りです。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
★慢性前立腺炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★慢性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★間質性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★過活動膀胱=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★前立腺肥大症=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕前立腺の肥大➕脊髄神経回路の完成
★神経因性膀胱=排尿障害➕膀胱出口の硬化→→→排尿障害の強化
★PSA高値=排尿障害±炎症±前立腺肥大症±先天性±前立腺ガン
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ご覧の通り、すべての病気に排尿障害が絡んでいます。その排尿障害の程度はピンからキリまであります。なかには、患者さん自身が自覚しない程度、あるいは医師が評価しない程度の排尿障害のため、まったく治療しないので中々治らないのです。

病気はイラストのように4つの時期に分けて判断します。
★1期は排尿障害があるにもかかわらず症状の出ない状態です。いわゆる「未病」の状態です。
★2期は、脊髄神経回路が完成して症状がで始めた状態です。
★3期は、排尿障害が治療されないために、脊髄神経回路がバージョンアップしてしまい、症状が強く出ている状態です。
★4期は、脊髄神経回路が排尿障害から独立・独り立ちして、神経回路がますます複雑になり、完成度が極めて高くなった状態です。排尿障害を治療しても治リません。信じられないほどの強い症状になります。頻尿が毎日80回以上、突然あるいは持続性のナイフで刺されたような痛み、血が出るくらい何遍掻いてもカユミが収まらない状態です。

治療する医師は、この状態を十分に把握して治療しなければなりません。
★排尿障害に対してはアルファブロッカー(ユリーフ、ハルナール、フリバス、エブランチル)です。
★膀胱三角部の過敏さに対しては、ベタニス、ベシケア、ウリトス、ステープラ、アボルブ、タガメット、サプリメント(イソフラボン、ノコギリヤシ、カボチャの種、正露丸)です。
★脊髄神経回路に対しては、トラムセット、リリカ、カロナール、仙骨神経ブロック、サプリメント(グリシン)です。

世間では、患者さんを十分に調べもせずに、病名だけで治療する輩の何と多いことか!親身になって、患者さんの言葉を真摯に受け止めて治療しようと努力する医師が、もっと増えて欲しいと思います。


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寒いとオシッコが近くなる理由

Naihaigaihai泌尿器科の外来は、寒くなると混雑します。
なぜなら、寒くなると頻尿になる方が多くなるからです。「寒くなるとオシッコが近くなる」という現象は、一般の人でも経験することです。では、なぜ寒くなるとオシッコが近くなる(頻尿)のでしょう?

では、発生学や生理学を元に医学的にその原因を考察してみましょう。

Naihaigaihai私たち体は、妊娠した細胞、つまり受精細胞が出発点です。
初期の受精卵(胚)の外側の部分が外胚葉、内側を内胚葉といいます。外胚葉は早い時点で細胞の中に陥入し脳・中枢神経の元になります。また、外側の部分ですから、皮膚や口・目・肛門の粘膜にもなります。
内胚葉は、もともと内側に存在しますから、内臓の主たる部分を構成します。(図)

外胚葉系の組織は、外の環境の刺激に対して強く反応します。その原始的な反応(外見上の生命現象)の主たる役目を担う部分が、皮膚・目・耳・口の感覚器やその中枢である脳・脊髄神経です。
生命は、一定の温度以上で活発に活動します。ですから、温度が高くなる、つまり暑くなると外胚葉系のシステムが活発に反応します。そのための自律神経が交感神経になります。交感神経が興奮すると、脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンが分泌され、腎臓での尿産生が抑えられ尿量が減少し、皮膚の汗腺が刺激され発汗が多くなります。

内胚葉は外胚葉に比較し、後から出来た組織です。生命が独立して自由に動き回るために必要なエネルギーを産生したり蓄積する組織です。生命が活発に活動している時には、生命の主役は外胚葉系の組織になりますが、生命が休止・安静の時には、主役は内胚葉系の組織、つまり内臓系、肝臓・腎臓・膵臓・消化管になります。外胚葉が活発に活動する暑い時の逆、つまり寒い時に活発に働くのが内胚葉系です。
内胚葉系が活発に働くと、副交感神経が興奮します。副交感神経も交感神経の後から出来上がった神経らしく、交感神経ほど緻密で丁寧なシステムになっていません。かなり大雑把の造りです。副交感神経が興奮すると脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンの分泌が抑えられ、腎臓の抑制が解除され尿がたくさん作られます。そのため尿量が増えるのです。逆に発汗が抑えられ汗をかかなくなります。副交感神経の興奮は内臓を興奮させ、膀胱が過敏になり、尿量の増加と膀胱の過敏で、オシッコが近く(頻尿)になるのです。

話が長くなりましたが、これが「寒くなるとオシッコガ近くなる」理由です。

人間の体は、さまざまなシステムによって調節・維持されています。今回お話しした内胚葉系と外胚葉系のバランスが、体の反応を生き物らしく見せてくれます。まだまだ他にもたくさんのシステムが何重にも織りなしている筈です。これらを一つ一つ解き明かせば、原因不明の病気治療の解明に結びつくことでしょう。

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