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前立腺ガンとフリバス

Furivas

今回の泌尿器科学会で興味を引いたのが、東京大学の先生が発表した下記のPDFファイルの報告です。
「jua2018_1297_unit_prog_ext_ja.pdf」をダウンロード


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【背景】
我々は前回の研究で、ナフトピジルががん細胞にアポトー シスを誘導し増殖を抑制させること、後ろ向きではあるがタムス ロシン内服群(3.1%)に比べてナフトピジル内服群(1.8%)で 前立腺がんの発生率が有意に低いことを見出した。そこで今回、 前向きの無作為化比較研究でナフトピジルの前立腺がん発生予 防効果について検証研究を計画した。
【方法】
本研究は多施設共同非盲検無作為化比較試験である。初 回前立腺針生検で陰性だった前立腺肥大症症例のうち、すべての 選択基準を満足し、除外基準に抵触しない症例を対象に、ナフト ピジル投与群、非投与群に無作為に割付後、1 年毎に血清 PSA 値を測定する。血清PSA値が前回生検前直近値より上昇した場 合には前立腺針生検を行い前立腺がんの有無を確かめる。登録 割付日から前立腺がんの判定日までの期間を主要評価項目とし Kaplan-Meier法を用いて各群の前立腺がんイベント発症確率を 求め、log-rank検定により群間比較を行う。
【考察】
ドキサゾシンやテラゾシンなどのα1アドレナリン受容 体遮断薬がアポトーシスを起こしてがん細胞の増殖を抑制する ことは1994年から報告されている。その後、アポトーシスを誘 導する経路はα1アドレナリン受容体を介さない事、タムスロシ ンなど一部のα1アドレナリン受容体遮断薬ではアポトーシス を誘導する効果がないことなどが報告され、2007 年には後ろ向 きの研究であるがドキサゾシン、テラゾシンの内服者は非内服 者に比べ前立腺がんの発生率が低かった(1.65% vs 2.41%)と Harris らが報告した。ナフトピジルはα1アドレナリン受容体 サブタイプBへの親和性が低く血圧低下の作用が少ない薬剤で、 日本では前立腺肥大症の治療に使用されており、2008 年に神田 らから前立腺がん細胞株の増殖を抑制すると報告された。 本研 究はα1アドレナリン受容体遮断薬が前立腺がんの発生率に影 響するか検証する初めての前向き臨床研究である。  
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ナフトビジル(商品名:フリバス)が前立腺ガンを自滅(アポトーシスapoptosis)させる作用があることが分かりました。アルファ・ブロッカーであるフリバスにこのような作用があるとは‼️ビックリです。排尿障害の治療薬としては、ユリーフ>>ハルナール>>フリバスのイメージでした。
それが事実であるのならば、前立腺肥大症などの排尿障害の症状がなくても、フリバスを前立腺ガンの治療薬として併用した方が良いことが理解できます。今後はフリバスの出番が多くなるでしょう。
フリバスは平滑筋に影響するクスリです。それからすると、平滑筋に効果のあるイソフラボンや正露丸も効果があるかもしれません。

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前立腺ガンの居場所

触診とエコー検査で確認できた前立腺ガンは、この6年間で100人以上もいました。その中で、前立腺外腺の他にガン陰影を発見したのは1例だけです。99%が外腺に認めました。
その他に前立腺全体を悪性度の高い癌が拡がっていた患者さんが1人いまいたが、この患者さんは、エコー検査では、前立腺全体に拡散したために確認はできませんでした。この様な患者さんは、本当に稀です。

しかるに、今の泌尿器科医師は、前立腺の深部中央の前立腺組織採取を懸命に行っているように思えます。
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例えば、この写真の患者さんは、前立腺尖部の左に厚さ2ミリ程度のガン組織の塊りを確認できます。
前立腺の境界線ギリギリに接した外腺に認めます。

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この写真の患者さんは、前立腺の右側に厚さ4ミリ程度のガン組織の陰影を確認できます。
やはり、前立腺の境界線ギリギリに接した外腺に認めます。

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この写真の患者さんは、前立腺の右側奥の膀胱の裏側に厚さ4ミリ程度のガン組織の陰影を確認できます。
やはり、前立腺の境界線ギリギリに接した外腺に認めます。

これらの写真をご覧になって分かるように、前立腺ガンのほとんどが、前立腺の外腺に発生します。それにも、かかわらず触診もしないで、前立腺の内腺に向かって針を何本も刺すのです。前立腺ガンが見つからないばかりでなく、下手すると前立腺ガンを傷つけいためるだけです。そのせいで前立腺ガンは発見できませんでしたが、針生検が残った前立腺ガンを刺激して悪性度を増すのかもしれません。

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病気と症状と治療のタイミング

慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、間質性膀胱炎、過活動膀胱、前立腺肥大症、神経因性膀胱、PSA高値などの患者さんが全国からお越しになります。
その理由は、地元の病院やクリニックでは治らないからです。
治らない原因の第一は、まずは病気の本質を治療しないからです。例えば、慢性前立腺炎や慢性膀胱炎は、「炎」という取りあえずの病名に合わせた治療しかしないからです。また、間質性膀胱炎や過活動膀胱は原因不明の病気ですから、頻尿や痛みに対する治療しかしないからです。更に、前立腺肥大症は、頻尿の出現理由を考えないで治療するからです。
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病気の本質は、「排尿障害」です。
排尿障害→膀胱三角部の過敏→脊髄神経回路の構築→症状(頻尿・尿意切迫感・残尿感・痛み・シビレ・かゆみ)の発現です。それぞれの病気の仕組みは、下記の通りです。
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★慢性前立腺炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★慢性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★間質性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★過活動膀胱=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★前立腺肥大症=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕前立腺の肥大➕脊髄神経回路の完成
★神経因性膀胱=排尿障害➕膀胱出口の硬化→→→排尿障害の強化
★PSA高値=排尿障害±炎症±前立腺肥大症±先天性±前立腺ガン
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ご覧の通り、すべての病気に排尿障害が絡んでいます。その排尿障害の程度はピンからキリまであります。なかには、患者さん自身が自覚しない程度、あるいは医師が評価しない程度の排尿障害のため、まったく治療しないので中々治らないのです。

病気はイラストのように4つの時期に分けて判断します。
★1期は排尿障害があるにもかかわらず症状の出ない状態です。いわゆる「未病」の状態です。
★2期は、脊髄神経回路が完成して症状がで始めた状態です。
★3期は、排尿障害が治療されないために、脊髄神経回路がバージョンアップしてしまい、症状が強く出ている状態です。
★4期は、脊髄神経回路が排尿障害から独立・独り立ちして、神経回路がますます複雑になり、完成度が極めて高くなった状態です。排尿障害を治療しても治リません。信じられないほどの強い症状になります。頻尿が毎日80回以上、突然あるいは持続性のナイフで刺されたような痛み、血が出るくらい何遍掻いてもカユミが収まらない状態です。

治療する医師は、この状態を十分に把握して治療しなければなりません。
★排尿障害に対してはアルファブロッカー(ユリーフ、ハルナール、フリバス、エブランチル)です。
★膀胱三角部の過敏さに対しては、ベタニス、ベシケア、ウリトス、ステープラ、アボルブ、タガメット、サプリメント(イソフラボン、ノコギリヤシ、カボチャの種、正露丸)です。
★脊髄神経回路に対しては、トラムセット、リリカ、カロナール、仙骨神経ブロック、サプリメント(グリシン)です。

世間では、患者さんを十分に調べもせずに、病名だけで治療する輩の何と多いことか!親身になって、患者さんの言葉を真摯に受け止めて治療しようと努力する医師が、もっと増えて欲しいと思います。


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前立腺ガンの低用量治療法

前立腺ガンはモノではなく、生き物です。ところが、医師は患者さんの前立腺ガンをモノとして対応しているとしか思えません。もしも、モノであるのならば、治療法に抵抗するホルモン抵抗性・去勢抵抗性前立腺ガンCRPCにはならないでしょう。
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ガン細胞だって意思はないかもしれませんが、正常の細胞と同じに、それなりの感受性はあるはずです。そのガン細胞を針生検で10カ所以上も突いて突いて突いて、その後大量のホルモン剤や抗ガン剤を投与され正面から攻撃されたら、何とか自分を守ろうと努力工夫して強くなるのに決まっています。
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そのような考えで、
①まずは、針生検をしないで前立腺ガンを確定診断する。
②次に、ホルモン剤を通常の投与を続けると、ガン細胞もその攻撃に対して気がつき対抗手段を画策するので、極少量か、前立腺肥大症の治療薬を投与する。
③抗ガン剤も同様で、極少量を投与して、ガン細胞に気付かれないように毒を盛る。
④排尿障害のあるヒトは、排尿の際、前立腺に物理的刺激がかかるので、なるべく回避するために排尿障害の治療薬を処方する。

もともと穏やかな前立腺ガンです。ですから、穏やかな治療するべきです。もしも、本来、穏やかな前立腺ガンが対応能力に長けているガン細胞であれば、強い攻撃に対しては強く報復する性格があるのかもしれません。しかし、どうやったら巧妙に前立腺ガンをだまして毒であるホルモン剤や抗ガン剤を取り込ませるかです。
以前にエストラサイトを利用した低用量処方について記事を揚げています。エストラサイトに限らず、強いお薬は低用量処方を試みることにしています。

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前立腺ガンが生まれる理由

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前立腺ガンは、前立腺の外腺(辺縁領域)に多くできます。その理由は、いろいろと言われていますが、前立腺の構造学的観点から考えてみます。
このイラストは、胎児11週目の下部尿路を表現しています。
まず、尿道から前立腺の原基である芽が出てきます。それが、中心領域と辺縁領域です。

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中心領域と辺縁領域がある程度の成長後に、遅れて移行領域が発芽します。
中心領域と辺縁領域の成長がある程度で休んでいると、移行領域の発育がますます大きくなり、尿道の前側から後ろ側に、尿道を覆いかぶさるように発育します。その結果、移行領域と中心領域が1つに融合して内腺になるのです。

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内腺はドンドン発育し大きくなり、次第に辺縁領域を外側に圧迫することになります。
辺縁領域=外腺は、内腺による圧迫と、硬い繊維組織でできている前立腺被膜の間に、ギューギューと挟めれ常に圧迫刺激を受け続けます。
40歳過ぎてから、内腺はますます大きくなって前立腺肥大症になりますから、外腺は更に一層圧迫されます。また、前立腺肥大症で排尿障害が出現し、排尿の際に排尿圧力が前立腺に直接かかり、外腺はトコトン刺激を受けます。
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つまり、前立腺外腺は、前立腺が生まれた時は辺縁領域として、出産後は外腺として、40代以降は内腺にできた前立腺肥大症に強く圧迫される外腺として、何回も圧迫刺激を受け続けています。そして、男性ホルモンであるテストステロンの変動刺激を胎児の頃から6回も受けています。これほど物理的刺激・化学的刺激を受ける窮屈な分泌腺は生体内には存在しません。外腺にガン細胞が生まれても不思議ではないでしょう。

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代替医療に希望を託す前立腺ガンの患者さんのその後

前立腺ガンの治療を中止後、PSA値が78まで急上昇した患者さんです。

PSA値が一時78まで再上昇していたのですが、イクスタンジとエストラサイトの併用で、78→2.1まで下降しました。
イクスタンジは普通処方であれば、毎日1錠→毎週1回1錠に、エストラサイトは毎日4錠服用→毎週1回1錠に極端に減量して服用してもらいました。実にイクスタンジは1/7に、エストラサイトは1/28に減らして処方したのです。この処方であれば、強い副作用が少ないのです。

この患者さんは、初めの頃は、『本当に効くの?』と不安に思っていらしたそうです。ところが、……
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高橋先生
高橋先生にはご健勝のことと存じます。先日はご無理を申し上げSGLT2阻害薬を処方して頂きありがとうございました。時々、息抜きに少々の甘いものを食していますが、阻害薬の服用によってさらなる糖質制限が叶うのではと期待しております。
さて、本丸のPSAですが、2月1日の血液検査の結果、3・16まで下がり正常値の範囲に入る事ができました。初診時には通常の28分の1のホルモン剤の服用に正直不安を感じましたが、今では今回の結果の喜びと共に高橋先生の適切な治療に心より感謝しております。
本当にありがとうございました。まだまだ油断は出来ませんが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
とりあえずご報告まで。
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高橋先生
高橋先生に置かれましては相変わらずご健勝のことと存じあげます。明日から春の彼岸に入ります。寺を預かる拙僧と致しましては、今年の春の彼岸の檀家さん巡りが愚息と共に出来るのも高橋先生のお陰と感謝しております。
その感謝の気持ちと共に嬉しいご報告がございます。彼岸の前にと思い血液検査を受けました結果 P S A が 2 .1まで下がりました。でも、あくまでマーカーだけの数値ですので、次回お診察にお伺いした時に画像検査をしていただき今後のご指導を仰ぎたいと思いますので何卒よろしくお願い申し上げます。
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初診時の超音波エコー検査では、前立腺右葉に確認できた前立腺ガンの体積は1.28ccでした。前立腺の体積は23ccでした。
4ヵ月間の治療結果、PSA値は2.1まで下降しました。前立腺の体積は13㏄まで小さくなりました。
今回のエコー検査では、前立腺ガンの体積は0.29ccと1/5になりました。
触診でも前立腺の硬結が分かりにくくなりました。
この方法で効果が確認できましたから、副作用のことも考え、さらに少量にすることにしました。
イクスタンジとエストラサイトを2週間に1回1錠にしたのです。そして、交互に服用してもらうことにしました。イクスタンジが1/14、エストラサイトが1/56にしました。今後の効果が楽しみです。

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この患者さんの副作用が乳房が少し膨らみ、乳首が痛くなりました。
ある意味、モノセックス・中性になった状態です。
この患者さんは、あるお寺の住職さんです。モノセックスになったと言うことは観音さまになったとも言えます。前立腺ガンという難病に遭遇して、精神的に難行苦行の末、お坊さんとして高みを得たのかもしれません。

私は夜間血液透析しないがら、今この記事を書いています。私も人生修行の身です。私が高みを得るのはいつのことでしょう?

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ガンの5年生存率(週刊現代の記事から)

今日4月2日月曜日に発売された週刊現代で、治る「がん」治らない「がん」というテーマの記事がありました。記事の根拠になるデータは、全国がんセンター協議会の統計から得ているそうです。
各臓器のガンを年代別(50代・60代・70代)・ステージ別(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ)で記載されています。ガンの特徴を著しく表現できるのが、60代のステージⅢ(臓器の外側に浸潤)だと思います。そこで、ここに簡単にまとめてみました。
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肺がん: 35.1%
胃がん: 49.4%
直腸がん: 89.3%
結腸がん: 87.8%
肝臓がん: 8.4%★
膵臓がん: 6.0%★
腎臓がん: 58.2%
食道がん: 42.3%
胆嚢がん: 10.9%★
前立腺がん: 100.0%※
膀胱がん: 58.9%
甲状腺がん: 99.3%※
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このデータを見て、いかが思われましたか?
ガンとして恐怖しなければならないのは、生存率70%以下のガンだと思います。なぜなら3人に1人が5年持たないからです。そのようなガンが、肺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、食道がん、胆嚢がん、膀胱がんです。特に、★で印したガンは、5年間に10人に1人しか生き残れません。
それらのガンと比較すると、前立腺がんや甲状腺がんは、同じガンとは思えません。有名な先生が唱えた「ガンもどき」と考えることができます。
記事の中では、前立腺がんは治療法が進歩したので、生存率が良くなったと言うことでした。それにしても、前立腺がんと甲状腺がんの生存率は断トツで高過ぎませんか?そういう意味では、前立腺がんは、「ガンもどき」かもしれません。前立腺の中に眠っている時は、「ガンもどき」で針生検で発見されると「癌」になってしまうのかもしれません。もちろん、「ガンもどき」から「癌」になるものもあるでしょう。そのタイミングを見つけるのが、PSA検査+触診+エコー検査かもしれません。

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