針生検で発見できなかった前立腺ガンの患者さん
患者さんは50代の男性です。
平成29年11月にPSA値が26(正常値4.0)と高く、地元のがんセンターで前立腺針生検(10本)を実施したのですが、ガン細胞が発見されませんでした。その後の主治医対応に納得がいかないので、高橋クリニックに訪問されました。
触診では、前立腺が大きく前立腺全体が前立腺肥大症の雰囲気です。
しかし、前立腺の右上部(膀胱より、精嚢腺側)に硬結が触れます。私の人差し指がギリギリ届く範囲の距離です。自分の指の長さが短いのが診断能力の限界を感じる瞬間です。
そこで、エコー検査で観察すると、前立腺は114cc(正常値20cc)と5倍以上の大きな前立腺肥大症でした。さらに丁寧に観察すると、前立腺の膀胱よりの精嚢腺手前にガンと思われる陰影が確認できました。この写真の赤い矢印の部分がガン組織です。
恐らく、前の主治医が事前に十分に下調べもせずに、PSAの値だけで大雑把に針生検した結果だったのでしょう。前立腺肥大症であれば、前立腺針生検の本数を増やさなければ、発見の確率は低くなります。前立腺20㏄で10本ならば針1本当たりの単位体積は2.0㏄ですが、前立腺114㏄だと1本当たり11.4㏄になってしまいます。同じ単位体積にするには、57本もの針生検をしなければ一致しません。しかし、現実的には無理です。なぜなら、本数を重ねる毎に前立腺がグチャグチャになってしまうからです。
この患者さんのガン発見のためには、エコー所見を参考に、イラストのように針を5センチ程先に刺入させ、その場所からパンチ刺入すればガン組織を採取できるでしょう。
エコー所見では、陰影が丸味のある形状をしていますから、悪性度は低いものと思われます。先ずはプロスタールを処方しました。前立腺肥大症が小さくなると同時にガン組織も小さくなるでしょう。
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