前立腺ガンとBRCA遺伝子
アンジェリーナ・ジョリーというアメリカの有名なハリウッド女優さんが、乳がん遺伝子のリスクがあるので、乳房摘出と卵巣摘出を時間を置いて行いました。その遺伝子がBRCA1と2と言う癌抑制遺伝子の変異だったのです。この2つの遺伝子の変異が、乳がんと卵巣ガンの発生リスクを高める上に、遺伝するのです。
血縁関係(祖母・母・叔母など)の中に乳ガンや卵巣ガンの体験者が存在した場合は、ご自分の遺伝子のBRCA1/2遺伝子に変異がある可能性が高くなります。
この2つのBRCA遺伝子の変異が、実は、男性の前立腺ガンにも深く関わっているのです。血縁関係に乳ガンと卵巣ガンの体験者が存在する場合、もしかするとBRCA1・2遺伝子の変異がある遺伝性ガン体質の可能性があると、男性であっても安心は出来ません。何故なら、その遺伝子変異は、イラストのように男女関係なく遺伝して男性にも伝わり、それが前立腺ガンの発症リスクになると言うのです。その遺伝子変異が原因で生じた前立腺ガンは、かなりの確率で転移性の前立腺ガン、すなわち、悪性度の高い前立腺ガンになるのです。
そんな能力を秘めたエリート前立腺ガンは、ホルモン治療や抗ガン剤にも抵抗力の強い去勢抵抗性前立腺ガンになるのです。そのような患者さんの場合、治療手段がない訳ではありません。
実は、BRCA遺伝子変異を修復させる治療薬リムパーザを投与すると、効果がかなり出てくるようです。
血筋の身内に卵巣ガンや乳ガンの女性がいる男性の場合、遺伝子チェックして、もしもBRCA1/2遺伝子の変異が認められたら、40歳過ぎたらPSAチェックを頻繁に行い、あるいは女優のアンジェリーナ・ジェリーと同じく事前に前立腺を摘出するという方法もあります。
前立腺ガンの治療法の選択に迷った時には、BRCA遺伝子の変異を調べると良いかも知れません。なぜなら、変異が認められたら、悪性度の高い前立腺ガンの可能性が高いので、サッサと手術して前立腺を除去した方が良いかも知れません。前立腺ガンの悪性度を高める理由は幾つかかあるかも知れませんが、このBRCA遺伝子変異がその1つです。
BRCA遺伝子のチェックは、下記の医療機関でできます。
自費で20万円~30万円位です。
HBOC(遺伝性乳がん・卵巣がん症候群)協会のホームページ
http://hboc.jp/facilities/index.html
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コメント
前立腺肥大と前立腺がんの疑いについて先生の助言をいただきたいと思います。追い込まれています。
厚生連の大きな病院にかかっています。
7月3日に初めて腹部からの超音波診断で前立腺肥大(80ml)もあると告げられ、68歳とまだ若いので前立腺を小さくするアボルブを処方されました。
【回答】
前立腺の大きさは20ccが正常です。
ですから貴方は正常の4倍です。
当然、PSA値が4倍の~16あっても不思議ではありません。
アボルブは作用が弱いので、プロスタールかプロスタットにすべきです。
そうすれば、大きさは約半分になります。」
10日ほどたって排尿の勢いが弱くなっているなと感じました。7月16日頃から早朝4時頃にトイレにいっても直には尿が出ず、10ほどたつと排尿できるようになり、それが20日の深夜2時に起きてトイレに行っても尿がでない、5時ころになっても出ないので、病院へ5時30分ころ行って導尿してもらい、一旦帰るように言われ帰宅しました。深夜に起きたので9時まで眠り、トイレに行きましたが排尿できませんでした。再度病院へ行き、カテーテルを挿入し尿袋にためる処置を受け、本日(7月22日)診察を受けるよう指示されたので、本日診察を受けました。担当医の見立ては、「前立腺の内部を削除する手術はあるが、それをやる前に癌がないことを確認しなければならないので1泊2日の入院で生検をする」「先に前立腺内部の削除をやって癌が発見されたら、あとの治療が大変になる」と言われ、カテーテルを除去せず生検をするかどうか返事を下さいと言われ帰されました。
【回答】
嘘です・
内視鏡手術でガンが発見されたのであれば、それは本来の外腺ではなく内腺に出来たガンだと思われます。
その場合、悪性度の高い前立腺癌の可能性が高い訳ですから、内視鏡手術をしなくても大変は大変なのです。」
そこで先生のご助言を伺いたいのは、カテーテルを挿入し排尿袋をぶら下げたままでは日常生活に支障があります。かといって生検は先生のお考えに賛同しているため受けたくはありません。これからどうしたらいいか先生から助言していただければ幸いです。
【回答】
カテーテルの先にキャップを付ければ、袋は無用です。」
さて、今までの経緯は以下のとおりです。
2009年の健康診断でPSA=6.7だったことから前立腺がんの疑いで度々生検をすすめられますが、10年間断ってきました。PSAは6.4〜8.9の間で上がったり下がったりを続けています。最初の頃触診でちょっと前立腺は大きいかなといわれたのですが、その他の検査はなく、『生検』を強く奨められ続けました。私が先ずMRIで確認して癌らしきものがあったら、そこを狙って針をさすのなら理解できるが闇雲に針をさしても癌に当たらないのではないかと主張し、MRIをとってもらいました。癌は見つかりませんでした。
薬はタムスロシンとセルニルトン錠をずっと処方されていました。
【回答】
ハルナールのジェネリックのタムスロシンでは弱すぎます。
ユリーフがおススメです。」
1日に12〜15回の排尿ですが、日常生活に支障はなく約10年間3ヶ月に1回の頻度で通院し、先の薬を処方されていました。そして今月の7月3日に初めて腹部からの超音波検査をしようと奨められ、『前立腺肥大』もあると告げられアボルブを処方されました。
【回答】
頻尿治療薬のベタニスがひつようです。」
以上が、経緯です。
投稿: Izuno | 2019/07/22 14:33
高橋先生、ご回答ありがとうございます。また、昨日はお電話で直接お話しすることができ、心が安まりました。早速担当医に先生のご回答を見せ相談しました。結果は、カテーテルにキャップを取り付け、ユリーフを処方していただき、1週間後の7月31日にカテーテルを取り外し、自立で排尿できるかを確認することになりました。
そこで、ひとつ先生からの助言を頂きたいのですが、もしその時尿閉塞が続いていた場合でも、先生が行われている前立腺高温度治療や前立腺レーザー光線治療によって尿閉塞を治療できるでしょうか?
【回答】
今の私は、温熱治療もレーザー治療もおこなっていません。」
姉は乳がんのあと、最後は骨肉肉腫が原因で66歳の若さで5年前に亡くなりましたが、BRCA遺伝子の影響はあるでしょうか? また私もBRCA遺伝子異常はあり得るでしょうか?
【回答】
可能性はあります。
地元でBRCA遺伝子の検査を行ったらいかがですか?」
お忙しいなかのご回答を感謝いたしますとともに、今回のコメントにもご助言いただけると幸いです。
投稿: Izuno | 2019/07/25 10:01