« 2017年10月 | トップページ | 2017年12月 »

針生検を受けて11年間の苦悩

Pca36040m66ps
平成18年にPSA値が4.0をチョッと越えたと言うことで、大分の病院で針生検を受けました。
結果は、悪性度の低いグリソンスコア6でした。そして、「何もしないで様子を見ましょう」と判断され、定期的にPSA検査を行ってきました。
その後、PSA検査を定期的に行いました。
平成18年~平成19年(大分)PSA値4.0~7.0
仕事の都合で各県を転々としていました。
平成20年~平成23年(熊本)PSA値6.0~8.0
平成24年~27年(大阪)PSA値8.0~10.0
平成28年~現在(広島)PSA値10.0~11.8
PSA値に一喜一憂しながら、上がると前立腺ガンが増えている?と悩みながら、この11年間悩み続けました。この状況で患者さんがご夫婦で広島から当院にお越しになりました。排尿に関してお聞きすると、排尿障害の症状が顕著に出ていました。排尿間隔が1.5時間に1回、1日10回以上、夜間頻尿2回~3回でした。
エコー検査の所見は、前立腺の大きさが44cc、前立腺が膀胱に突出していて、排尿障害を示唆しています。エコー検査の設定を前立腺ガン向けに変えて、前立腺を観察すると、矢印で示す部分に前立腺ガンを認めました。また、触診でも同じ部位に硬結が触れました。

総合的に考えて、大分でのPSA値の高さは、前立腺肥大症による排尿障害が原因でしょう。PSA値を理由に針生検したことで、ステージⅠのラテント癌が発見されてしまったのです。11年の間、大分→熊本→大阪→広島と四カ所で医師も4人が、ただひたすらPSA検査するだけです。前立腺触診もエコー検査もしていませんでした。その間、前立腺ガンが徐々に大きくなりエコー検査で確認できるようになったのでしょう。

続きを読む "針生検を受けて11年間の苦悩"

| | コメント (1)

前立腺ガンは何処まで増えるのか?

続きを読む "前立腺ガンは何処まで増えるのか?"

| | コメント (0)

前立腺ガンの発見数(罹患数)の推移

Img_0707
国立がん研究センターの1975年から2013年までの前立腺ガンの罹患数(発見数黒い線グラフ)と死亡数(赤い線グラフ)の推移をグラフにしました。
❶前回、前立腺ガンの死亡者数の増加について解説しました。増加の要因は、PSA検診・検査の普及と、前立腺肥大症の治療がプロスタールからハルナールに取って代わった事が原因だろうと思われます。
罹患数の増加の要因もPSA検診・検査が深く関わっている事が、グラフから予想できます。特に、泌尿器科学が先導して行った前立腺癌撲滅キャンペーンが、強力に働きかけたと思われます。
ここで、問題になるのが、罹患数と死亡者数の乖離現象です。定点で比較すると、下記の通りになります。

【年代】・【罹患数】・【死亡数】・比率(罹患数/死亡者)
1975年・・・ 2412・・・1267・・・1.9倍
2003年・・・40062・・・8418・・・4.8倍
2011年・・・78728・・10823・・・7.3倍

❷PSA検診・検査が普及すればする程、無駄な寿命に影響しない前立腺ガンの発見が増えているように見えます。前立腺ガンの治療法が飛躍的に進歩している訳ではありませんから、罹患数と死亡者数の開きは、単に発見しなくてもいい前立腺ガンを見つけてしまったという事になります。

❸この背景には、近年の前立腺肥大症の増加が原因です。私が研修医の頃には、80歳までに2割の男性が前立腺肥大症になっていました。ところが最近では、80歳の男性の8割が前立腺肥大症になるのです。前立腺肥大症では、前立腺の密度が高く、さらに排尿障害が生じるので、当然PSA値が高くなります。PSA値が高い→前立腺ガンの疑い→針生検というルーチンで、寿命に影響しないラテント癌(潜伏ガン)が発見されてしまうのです。これが罹患数と死亡者数のギャップの原因です。

❹PSA検査を導入した健診・人間ドック・地域検診が前立腺ガンの患者さんを増やしたことになります。健診によって『俺は前立腺ガンなんだ❗️❗️❗️』と精神的に追い詰めたことになります。健康を維持するために受けた健診によって精神的不健康に、生活のQOLを低めたことになります。医師のやることは、もしPSA値が高ければ、前立腺肥大症・排尿障害を認め、かつ触診とエコー検査でステージⅡ・Ⅲ・Ⅳが否定出来れば、針生検を実施してはなりません。その際、念のために半年〜1年毎に定期的にチェックすれば良いでしょう。

| | コメント (4)

前立腺ガンの死亡者数増加の理由

Pcagrafps
このグラフは何回も提示しています。前立腺ガン患者さんの発見数(罹患数)と死亡数の推移です。
発見数と死亡数の乖離現象が問題になっています。発見数の増加の伸びに比較して、死亡数の増加はわずかにしか見えません。実は、ここに問題が隠れているのです。

Grafpcadeath1_2
このグラフは、国立がん研究センターの情報データを元に私が作成したグラフです。前立腺ガンの死亡者数の推移だけをグラフにしてみました。
初めのグラフの印象と随分と違うでしょう?1990年位から急激に増加しているのが分かります。
1960年には480人だった前立腺ガン死亡者数が、2016年には11803人にもなっています。実に24.6倍にも増加したのです。
1960年から1980年までの増加率の角度と、1980年から1990年までの角度と、1990年以降の角度とだんだん急な角度になっています。これを理解するには、時代背景を調べると判明します。

Grafpcadeath2
まずは、1980年頃から、前立腺腫瘍マーカーのPAP検査が泌尿器科医の世界では一般的になりました。前立腺肥大症の患者さんについでに検査して、高ければ針生検を行ったのでしょう。
1990年頃から、アメリカで開発されてPSA検査が普及して、泌尿器科医のみならず一般内科医にも広まったのです。当然、針生検の件数は増えます。
1993年に排尿障害の治療薬として画期的な薬ハルナールが発売されました。それまでの前立腺肥大症の治療薬に比べ物にならない程速効性のある薬です。服用すれば数日で効果が出るので、それまで処方されて来たプロスタールの売上げがガクッと落ちました。プロスタールは、効果が出るまで長期間かかりました。当時、前立腺肥大症の大きさは触診のみでした。触診のみでは、前立腺の大きさがどのように変化したかは不明瞭でした。現在は、エコー検査で前立腺の大きさが、逐一確認できるようになりました。今現在、プロスタールの効果が実感できるようになりました。プロスタールを開始して、半年間で前立腺の大きさが、何と1/2〜1/3までになる患者さんがいるのです。そういう患者さんの前立腺を触診所見では大きさが変化していないこともあります。
2002年頃から、泌尿器科学会が前立腺ガン撲滅キャンペーンを始め、さらに呼応するかのように行政検診・人間ドック・会社健診でPSA検査が導入され、一気に針生検の件数が増えたのです。

まとめると、医師が良かれと思って企画・政策したPSA検診によって、針生検の急増をバックに前立腺ガンの死亡者の数が増えたように思えてなりません。
プロスタールの処方は、ある程度、前立腺ガンを抑えてくれていたのです。

| | コメント (0)

排尿のメカニズム

Ilastumecha
小さな前立腺肥大症でも、あるいは前立腺肥大症がなくてもオシッコの出が良くない、排尿障害の患者さんに遭遇することは多々ある事です。
一般的に泌尿器科医も含めて医師は、前立腺が大きくなければ排尿障害はないと思い込んでいます。前立腺のないご婦人は尚の事です。しかし、物事はそんな単純ではありません。解剖学を土台に機能を考える解剖機能学=構造機能学という観点から考えると、病気の原因が見えてきます。生命の機能を漠然と捉えて病気を考えるので、正確な診断と適確な治療が出来ないのです。そこで、排尿のメカニズムを構造機能学から考えてみましょう。

Ilastumecha2
❶膀胱内に尿が十分に溜まると、排尿の命令が脳中枢から発せられます。自分の意思で出来ることは、尿道括約筋を開いて、腹圧をかけることです。尿道括約筋は、実際には開くというより前立腺を尿道側(外側)に向かって引っ張る動きをします。その動きに連動して膀胱出口が引っ張られます。(赤い点線)その際に膀胱出口の付近に接続している膀胱括約筋が膀胱全体が収縮するのと連動して緊張・収縮します。出口の内腔は尿道括約筋に引張られ、膀胱出口は膀胱括約筋に引張られた結果、膀胱出口はロート状に開き、尿が流出するのです。

Ilastumecha3
❷ところが、何らかの原因で膀胱括約筋が十分に収縮しないと、膀胱出口はロート状に開いてくれません。つまり、膀胱出口がスボまった状態状態で排尿することになります。その状態で排尿すると、膀胱出口は小刻みに振動します。このスボまりと振動を抑えるのがαブロッカーのユリーフ・ハルナール・フリバス・エブランチルです。
❸膀胱は排尿のたび毎に圧力を掛けなければならず、膀胱はダンダン疲れ疲弊します。その状態が顕著であると肉柱形成が起き残尿が多くなり、いわゆる「神経因性膀胱」と診断されます。
❹膀胱からの物理的圧力は膀胱出口に直接かかり、出口の裏側に存在する前立腺に全てかかります。その結果、その負荷に抵抗して前立腺が大きくなり「前立腺肥大症」と診断されます。
Ilastumecha4
❺膀胱出口の振動は、膀胱出口近くの膀胱三角部も振動させます。その結果、膀胱三角部は過敏になり、「心因性頻尿」、「過活動膀胱」、「間質性膀胱炎」、「慢性前立腺炎」と診断されます。男女同じです。この過敏を抑えるのが、ベタニス・ベシケア・トビエース・ウリトスです。
❻膀胱の圧力により膀胱出口部分が、膀胱側に突出して来ます。突出部に前立腺肥大症が連携すると「前立腺肥大症の中葉肥大型」に、前立腺肥大症が伴わないと「膀胱頚部硬化症」、「神経因性膀胱」と診断されます。

以上のことが理解できれば、前立腺肥大症の内視鏡手術の応用に利用できます。
大きさを二の次にして、まずは膀胱出口をロート状に開くように切開・切除します。前立腺肥大症を全て削り取らなくても排尿はスムーズにできます。

| | コメント (0)

前立腺ガンと夫婦の絆

19ded1203b5243ad992cddc61ce04fe5大阪からご夫婦で患者さんが来院されました。

検診でPSA値17.2(正常:4.0以下)とても高く、触診でも前立腺に硬い部分が認められたので、主治医が針生検を勧められました。ご主人は、医師の方針を受け入れ針生検を受け入れる気持ちになっていました。
ところが、奥様から「待った!」が掛かりました。奥様は現代医療より代替医療に傾倒されていたのです。奥様は必死になって前立腺ガンについて調べました。調べた中に、現代医療でありながら、チョッと違う高橋クリニックに行き着き、ご主人を強制的に高橋クリニックに連れて来たのです。

Pca35982m62psa172ps
さて、エコー検査を実施すると、前立腺肥大症を認めました。さらに良〜く観察すると、前立腺の右葉に影が見えます。(赤い矢印)早速、触診をすると、同じ部位に硬結を触れます。間違いなく前立腺ガンのステージⅡでした。ステージⅡでは、手術してもしなくても、5年生存率は変わらず同じなのです。同じであれば、前立腺ガンを刺激しないで治療を始めても良いのではないのか?と思ってしまいます。

ご存じのように、私は針生検が前立腺ガンを刺激して悪化させると思い込んでいます。ですから、針生検なしに治療を行います。その事をご主人にお話ししましたが、悩まれていました。従来の方針でガン細胞確認して手術治療か放射線治療を選択しようかと悩んでおられました。しかし、奥様は『なんで〜?』という印象です。

治療方針を決めるのは、自宅に帰ってから、良〜く考えてからでも良いでしょう。決断によって、すぐに治療が始められるようにと、取り敢えずお薬を処方しました。
エストラサイト毎週1錠、ビタミンD3毎日1錠、タガメット毎日4錠を1ヶ月分処方しました。
さあ〜ご主人は、どれを選択するでしょうか?

| | コメント (3)

ステージⅣの前立腺ガン患者さん

Stage2
今回ご紹介するのは、平成26年3月に来院した60歳の患者さんです。(#31455)

平成25年8月に、地元でPSA検査を実施したところPSA値が何と702!でした。
早速、大病院で前立腺針生検を含め精密検査した結果、グリソンスコア4+4=8と低分化型の悪性度が高い前立腺癌が見つかり、しかも骨転移(両側鎖骨・背骨・左大腿骨)まで病気は進行していました。いわゆるステージⅣです。
平成25年9月には、治療を開始しました。ゴナックス注射、カソデックス内服を続けました。その甲斐あって、鎖骨と背骨の転移は消失しましたが、大腿骨は残ったので放射線治療を追加して、効果が出て消失しました。そして、セカンドオピニオンで平成26年3月に当院を受診したのです。
当時は、治療を開始して半年位で、状態も落ち着いていたので、このまま治療を続けるのが最良でしょうと回答しました。

あれから、4年8ヵ月経った本日に、再び64歳になった患者さんが来院されました。外見からは、とても元気そうで、4年以上経過した前立腺癌のステージⅣの患者さんとは思えません。
現在の患者さんの悩みは、平成27年11月からPSA値1.0以下であったのが、今年平成29年9月からPSA値が1.0を越え、1.66~1.347に上昇し、主治医から再度放射線治療をやりましょうと強要されているとのこと。そこで、今後の治療について相談されました。

Pca5yrsstage
まず驚くべきことは、前立腺癌ステージⅣの5年生存率は、この表で示すように43.6%です。56%以上の確率でお亡くなりになっているのです。それからすると、目の前の患者さんは、まだまだ元気で(私よりも元気!)、あと5年以上は生きれるでしょう。

Ikastextanj_2
この患者さんが一番心配しているのが、ホルモン抵抗性前立腺癌(去勢抵抗性前立腺癌CRPC)です。
前立腺癌は、男性ホルモンであるテストステロンによって活性化します。

Ilastextanj
この患者さんの治療法のように、ゴナックスはテストステロンが作れないようにし、カソデックスはテストステロンレセプターを完全ブロックします。そうすることで、テストステロンが癌細胞内に侵入し、核を刺激して活発になるのを防ぎます。
しかし、ホルモン治療を続けていると、隠れていた生き残った既存の前立腺癌が悪化し、男性ホルモンを遮断されても癌細胞内で自ら男性ホルモンを造れるようになるのです。

Ilastextanj3
ホルモン抵抗性前立腺ガンの予防として、癌細胞の中まで効果のあるイクスタンジを毎週1回〜2回少量服用することを提案しました。イクスタンジであれば、細胞膜のレセプターとレセプターから細胞への浸入経路と細胞内の男性ホルモンが核内に浸入もブロックしてくれるのです。その結果、細胞内で男性ホルモンが造られてもブロックされるので、変身途中の前立腺ガンを押さえ込んでくれます。

| | コメント (0)

前立腺針生検への疑問

【PSA検査→PSA値が高い→前立腺ガンの疑い→針生検→前立腺ガンを確認→ガンの組織像(悪性度)を調べる→治療方針を決定する】

Img_0672以上が、前立腺ガン検診とその後の治療の流れです。一見完璧でツッコミどころの無い理論展開です。
しかし、私から言わせると、ツッコミどころが満載です。
今まで入手した文献データを基に考えると、次のいろいろなツッコミが出来ます。
❶男性には、PSA値とは無関係に年齢に応じたラテント癌が存在する!
50歳代12%
60歳代22%
70歳代35%
80歳代50%
この%には、前立腺ガンの患者さんは含まれていない。
❷PSA値が高くなる原因は、前立腺ガン以外の方がはるかに多い!
❸F/T比は、排尿障害があると当てにならない!
❹針生検で前立腺ガンを刺激して、生き物である癌細胞が「ジッ」と黙っているとは思えない!
❺ステージが低ければ(Ⅰ〜Ⅱ)治療の対象にならない事が多い。しかし、発見された事が患者さんに精神的トラウマを残す!『俺は、がんだ!ガンだ!癌だ〜!』
❻ステージが中等度(Ⅱ〜Ⅲ)であれば、ホルモン治療・超音波治療・放射線治療・重粒子線治療・手術治療の選択を患者さんの責任で選ばなければならない。キッカケを作ったのは医師なのに!
❼ステージが高ければ(Ⅲ〜Ⅳ)、一般的にはホルモン治療だけである。
❽ステージ分類は針生検なしで、触診とエコー検査でほぼ90%予想可能である!
❾継続したホルモン治療により、去勢抵抗性前立腺ガンCRPCを育てる可能性がある。
➓その場合、針生検がCRPCを育てるキッカケを作った可能性がある。
Img_0673⓫ステージⅠ~Ⅲの前立腺癌は、文献から他の病気の生存率と変わりない。針生検で発見しなければ、もっと生存率が高かった可能性がある。
⓬悪性度の高い低分化型(グリソンスコア8・9・10)は、針生検直後から生存率が極端に低下する!
以上の事から、初めの【理論展開】が、如何に稚拙で短絡的な思考法かということが分かる。

初めの【理論展開】で利益が得られるのは、針生検を受けた患者さん40人に1人位です。
PSAが高く、様々な検査で明らかに前立腺ガンを認められ、積極的な治療、例えば放射線治療・手術治療を受けたい患者さんに限って、針生検を実施すれば良いでしょう。

| | コメント (0)

透析仲間 前立腺肥大症?

透析クリニックで、同じ時間に透析する患者さんが20人近くもいます。
ロッカーで同じ時間に着替える人も何人かいます。挨拶をしますが、無愛想に返事する人も、また無視する人もいます。病気が病気だけに皆んな暗〜いのです。その中で、会話を交えるご高齢の方がいます。何回か会話を交わしている際に、私が泌尿器科医師であることを告げました。

その方は、腎不全以外にも病気があって、慈恵医大の関連病院の東急病院で治療していたので、慈恵医大出身の私に親近感を覚えたらしいのです。先日、1年前から両鼠径部と肛門がとても痒くて治らないと訴えたのです。透析患者さんが皮膚が痒くなることはよくある事です。ステロイド軟膏やゲンタシン軟膏を塗ってはいるが、全然変わらないのです。そこで、「排尿に関係なく、前立腺の病気があっても痒みが出ますよ。」と告げると、診てもらいたいと言って別れました。以前にも慢性腎不全でオシッコが一滴も出ない患者さんで頻尿を訴える方がいました。この男性も同じでしょう。

Crf35967m75echo
その翌日、私の通っている透析クリニックの主治医が書いた紹介状を持って、その方が来院しました。ビックリです。お話しをお聞きし、まずはエコー検査を実施しました。「!!!」2度目のビックリです。何と膀胱に尿がパンパンに溜まっているのです。慢性腎不全で尿が出ないはずなのに尿が溜まっているのです。そう、まるで尿閉状態です。

Crf35967m75
早速カテーテルを挿入して膀胱内の尿を排出しました。全部で何と750ml以上で、採取した尿は写真のように、まるでカフェオーレのようです。濃縮した白血球がタップリ含まれた、いわゆる膿尿=腐った尿で向こう側が見えません。随分前(恐らく1年位前から?)から膀胱内に同じ尿が溜まっていたと考えられます。

Crf35967m75echo2
前立腺のエコー所見では、前立腺の中葉部分が突出しており、膀胱の敏感な膀胱三角部を常時圧迫しています。しかし、頻尿がないので、その代わり下半身の痒み症状になったのでしょう。
喜ばしい事が起きました。膀胱内の尿を全部排出したら、何と痒みが全て消失したのです。3度目のビックリです。
この現象は、原因は前立腺肥大症ですが、慢性前立腺炎症状です。

233dbc4036414084bab3959bdbc997ec
この患者さんから帰り際に言われた言葉が、……
「先生は、透析クリニックでお会いする時は、ショボくれて元気がないけれど、診療中は人が変わったみたいに活発で元気ですね?」「医師とはいえ私も病人ですから、趣味同然の診療中は水を得た魚の様に元気ですよ。」と答えました。
『……そうなんだ、……私は診療している時だけが元気で居られるんだ!』と心の中で思いました。

透析クリニックの私の主治医が、私の報告書をお読みになってビックリの感想でした。

| | コメント (0)

ガンの比較

Surv10yrs
【全国がんセンター協議会のデータより】
前立腺ガンを発見されて、私のブログを読まれてから大いに悩まれる患者さんが多くおられます。
そこで、見方を変えて、インターネットで容易に手に入るデータから下記の通り考えてみました。

✳︎✳︎各臓器の癌の10年生存率の比較(ステージⅢ)と、膵臓ガンとの生存率の比較
前立腺ガン 95.6% 30.8倍⬅️
肺ガン………16.1% 5.2倍
胃ガン………38.9% 12.5倍
大腸ガン……74.8% 24.1倍
直腸ガン……63.0% 20.3倍
食道ガン……66.1% 21.3倍
肝臓ガン………9.8% 3.2倍
膵臓ガン………3.1% 1.0倍⬅️
腎臓ガン……51.8% 16.7倍
膀胱ガン……32.3% 10.4倍

ガンは癌でも臓器別にして10年生存率を比較してみると、こんなにも違います。みんな同じではないのです。特に、前立腺ガンは膵臓ガンと比較すると、30倍以上も10年生存率が高いのです。膵臓ガンは、本当に正真正銘の悪い癌ですが、前立腺ガンは「本当に癌なの?」と思えてなりません。
ですから、針生検で前立腺ガンが発見されたとしても、心に余裕を持ってください。
また、良性に近い前立腺ガンが、他の臓器のガン発生を一時的にでも牽制してくれているのかも知れません。

| | コメント (0)

口実

Img_0656「PSA値が高いから針生検しましょう」と強要されるのは、見方を変えれば、前立腺ガンをエサに何が何でも見つけ出して、積極的な治療に持っていく「口実」に思えてなりません。1回の針生検で見つからなければ、その後も何回も針生検を行うのが通例です。泌尿器科医師にとっての営業活動の1つに見えます。ある意味、患者さんの肉体に負担をかける事で利益を上げているようにも思えます。

針生検によって前立腺は傷だらけになります。通常、6本〜12本以上刺すわけですから、生体は傷ついた場所を修復するために懸命に努力します。顆粒球、樹状細胞、マスト細胞、線維芽細胞などが総動員されます。その傷ついた組織の中に前立腺ガンが含まれる事があります。傷ついた前立腺ガン細胞は、マスト細胞で食べられ、周辺は顆粒球で攻撃されます。残っている癌細胞は、これらの攻撃に対抗できる武器を持ち合わせていません。唯一、細胞分裂を繰り返す事で、細胞の数を増やし続け対抗します。

Img_0653
ここで問題が出現するのです。
各臓器の細胞は、骨髄の幹細胞から供給されるモノサイトによって作られます。肝臓に到着したモノサイトは肝細胞になる肝母細胞に、腎臓に到着したモノサイトは腎細胞になる腎母細胞になります。
癌細胞は、骨髄からモノサイトが供給されませんから、増えるためには細胞分裂するしか方法がありません。正常で健常な細胞が分裂する時と違って、全く同じ細胞がコピーされることがありません。遺伝子情報を含んだ染色体もバラバラで数もマチマチです。染色体がバラバラだと、中には細胞をコントロールする染色体が消滅することがあります。つまり悪性度が増すのです。癌細胞の悪性度を増すキッカケを作ったのが針生検になるのです。
このグラフで分かるように、針生検をキッカケに生存率が急激に低下します。

「PSA値が高いから針生検をしましょう」という口実は、もしかすると悪魔や死神の囁きかも知れませんね。
【PSA値高い→前立腺ガンの疑い?→針生検で発見!→早期発見!→治療の選択→患者さんに有益だ!】という理論展開に一見、非の打ち所がないように思えます。
しかし、私の見えるこの理論のトラップは、次の項目です。
❶悪性度の低い癌細胞は、寿命に影響しない!
❷色々な理由でPSA値は高くなる!
❸針生検で癌細胞の悪性度が増す!
❹早期発見が重要なのは、ステージⅢ〜Ⅳだけ!
❺以前の針生検の後遺症でPSA値が高くなる!
これらの項目を全て否定する事が出来るのであれば、私は自分の考えを引込めましょう。

| | コメント (2)

« 2017年10月 | トップページ | 2017年12月 »