去勢抵抗性前立腺ガンの予防対策
何故、ホルモン治療が効かなくなるのか?というと、男性ホルモンを抑えられて苦しんでいた前立腺ガンが、自ら男性ホルモンを作るように変身するからです。
これは、最近になってやっと分かった予想外の現象でした。しかし、前立腺ガンの発生過程を考えれば、成る程とうなずける現象です。前立腺ガンの発生時期は、40代後半からです。ちょうど男性にとっても、更年期の時期に当たります。つまり、男性ホルモンの低下が刺激となり、前立腺の正常細胞が癌細胞になったと考えることができます。その最終形態、あるいは完成型の前立腺ガンが、自らが男性ホルモンを作る去勢抵抗性前立腺ガンと考えれば、納得がいきます。
では、ホルモン治療を受けている前立腺ガンの患者さんは、去勢抵抗性前立腺ガンになるのをただ待つだけしかないのでしょうか?何か対策があっても良さそうなものです。では、ならないためには、どうすればよいでしょうか?
私の考えは、前立腺ガンをダマせばよいのです。ホルモン治療を続けながら、生き残った前立腺ガンに対して「男性ホルモンが充分にあるよ!」と思わせるのです。治療による男性ホルモンの低下に反応する前立腺ガンは死滅しますが、癌全体の中心部に存在する生き残った前立腺ガンは、男性ホルモンの低下で周囲の仲間の癌細胞が次々に死滅していくのをいやっと言うほど認識させられます。そのため何とかしようとは考えるのです。その結果、男性ホルモンを作って対抗するために変身して、去勢抵抗性前立腺ガンになるのです。もしもホルモン治療の傍らで、少量の男性ホルモンを投与すれば、生き残った前立腺ガンも男性ホルモンを作るガン細胞に変身しようとは考えなくなるでしょう。
だからと言って、患者さんに大量の男性ホルモンを注射する気にはなりません。泌尿器科医として、私も真逆の教育を受けているからです。そこで、間欠的なホルモン治療を行い、その合間に男性ホルモンの含まれた軟膏を皮膚を塗っていただくのです。皮膚から吸収された少量の男性ホルモンは、生き残った前立腺ガンの細胞のセンサーに、「男性ホルモンは充分にあるよ!」とだますのです。だまされた前立腺ガンは、センサーの反応を信じて、去勢抵抗性前立腺ガンに変身しようとは考えないでしょう。泌尿器科医としては、前立腺ガンに対して、ある意味「オレオレ詐欺」を働くのです。
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