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前立腺ガンの顕在ガンの治療方針

超音波エコー検査と触診で確認できるのが、顕在ガンです。
発見できた時点で、おおよその悪性度は判定できます。正確には、前立腺針生検しか方法はありませんが、針生検で何箇所も前立腺ガンを刺激する訳ですから、今後の治療や予後に強く影響するでしょう。

そこで、針生検を実施しないで、前立腺ガンを予想する方法を考えます。

❶まずは、触診で触れることのできる前立腺ガンの硬さです。前立腺の悪性度が高ければ、硬さは固くなります。まるで石のようです。これを石様硬と呼びます。逆に悪性度が低ければ、前立腺肥大症に近い硬さとして認識できます。

❷超音波エコー検査では、前立腺ガンと普通の前立腺組織との境界線が、ハッキリ明瞭であるほど良性に近いと判断します。悪性語が高い前立腺ガンは、我先にと成長するので境界線が乱れ、境界線が不鮮明になるからです。

❸治療による反応でも、鑑別は可能です。まずは前立腺肥大症の治療薬であるプロスタールを使用してみて、容易に小さくなったり、PSA値が極端に下がった場合は、良性に近い、つまり悪性度が低いと考えます。なぜなら、悪性度の低い前立腺ガンは、前立腺肥大症に近いので、よく反応するのです。

❹顕在ガンで悪性度の高い高リスク癌の場合は、プロスタール単独では不十分です。その場合、抗がん剤のエストラサイトを処方します。非常に少ない量で効果があり、しかも副作用が出ないので重宝しています。

❺今話題の「去勢抵抗性前立腺ガン」について説明しましょう。この前立腺ガンは、自らが、男性ホルモンを産生できるのです。したがって、従来の男性ホルモンを抑えて前立腺ガンを治療する方法で前立腺ガンを抑えることができないのです。そこで大量の化学療法、つまりは大量の抗ガン剤の登場になる訳ですが、これを使っても、泌尿器科学学会の発表を見る限りでは、予後が高々数ヶ月延命できるだけです。

❻この去勢抵抗性前立腺ガンの生い立ちを考えれば、その発生を抑えることができるかも知れません。前立腺組織は、男性ホルモンが更年期になって低下すると、前立腺肥大症に変化します。そして次第に前立腺ガンが芽生えて来て、それがやがて去勢抵抗性前立腺ガンに変身して、自らが男性ホルモンを産生できるようになるのです。すなわち、男性ホルモンの低下に危機感を覚えた前立腺組織が、その状況を打破すべく自らが男性ホルモンを産生のできる前立腺ガンに変身・変貌したと考えることができます。おそらく、前立腺組織の中に男性ホルモンを感知するセンサーが存在するのでしょう。したがって、このセンサーを刺激しないような治療法あるいは対処法を考えれば良いことになります。

❼アメリカでは多くの男性が若さを保つために男性ホルモン補充療法を実施しています。しかし、アメリカで特に前立腺ガンが異常に増加したという報告はありません。むしろ男性ホルモン補充療法で前立腺組織の前立腺ガン変身を抑えているのかも知れません。80歳でエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんは、2週間に1度男性ホルモンを注射して頑張ったと言います。ところが三浦氏のように80歳を超えた男性には50%以上場合によっては80%の確率で前立腺ガンが存在します。しかし、三浦氏が前立腺ガンで苦しんでいるという噂を耳にしたことがありません。逆に男性ホルモンの注射が前立腺ガンを抑制している証拠でもあります。

❽では、ひとたび前立腺ガンと診断された患者さんに、去勢抵抗性前立腺ガンにならないようにするためには、一体どうしたらよいでしょうか?それには、前立腺組織の男性ホルモンのセンサーを騙せばよいことになります。男性ホルモン補充療法実施すれば良いのです。男性ホルモンを抑える治療で前立腺ガンの治療を行っている患者さんに、男性ホルモンの注射をする勇気は、さすがに私にはありません。ただ前立腺組織の男性ホルモン知覚センサーを刺激してあげれば良い訳ですから、男性ホルモンの軟膏を皮膚に定期的に塗っていただいています。

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