« 小線源療法を受けた前立腺癌の患者さん | トップページ | 週刊文春の記事から »

膀胱腫瘍に見えた前立腺内腺の前立腺癌

前立腺癌は、通常、前立腺の外側に位置する外腺に発症するのが一般的です。稀に、前立腺深部の内腺に生じることもありますが、私が通常実施する超音波エコー検査や触診では発見が困難です。膀胱腫瘍に見えた前立腺ガンの患者さんを経験したので、ここに紹介します。

Pca33081
70歳前の男性患者さんが、PSA値が少し高いということで平成27年3月に来院しました。
超音波エコー検査と触診で、前立腺肥大症が認められるだけで、前立腺癌は確認できませんでした。
ハルナールを処方したところ、排尿状態は改善し、そのまま継続して治療を続けました。

Pca330812
初診から11か月経過した平成28年2月に、急に頻尿になり、排尿困難が続くと言って来院されました。
改めて超音波エコー検査を行うと、全く別人の前立腺所見です。前立腺結石が著名に増加し、前立腺の形状もいびつです。11か月前には確認できなかった腫瘤陰影が前立腺膀胱側に観えるのです。
こんなに速い成長の腫瘍は、膀胱腫瘍が一番考えられます。

Pca330813
その部分をカラードップラーで観察すると、腫瘤内に血流を確認できます。
左の写真は側面象、右の写真は正面像です。どちらの写真にも、血流のカラーが描出されています。
膀胱腫瘍の場合、腫瘍内に血流が確認できます。したがって、これは、間違いなく腫瘍です。

そこで患者さんに詳細をお話しすると、地元のがんセンターで診てもらいたいと希望があったので、紹介状をお渡ししました。
その患者さんは、すぐにがんセンターを受診しました。その結果は、何と前立腺肥大症でした。エコー検査の結果を見せても、そんな診断だったのです。患者さんから連絡を受け、他の基幹病院を受診するようにすすめました。

二つ目の中小規模の個人病院では、すぐに内視鏡検査を行い、結果は予想どおり腫瘍でしたが、病理組織の結果は、予想に反して前立腺ガンでした。進行が速いタイプの前立腺ガンですから、積極的な治療が早急に実施しなければなりません。患者さんは、さらに高度医療病院での治療を希望され、受診したそうです。

前立腺ガンで、このように発育が速く、しかも前立腺内腺側に出現した症例を初めて経験しました。

|

« 小線源療法を受けた前立腺癌の患者さん | トップページ | 週刊文春の記事から »

コメント

(登録にチェックを入れておりませんでしたので、念のため、再送いたします)

高橋先生にご相談させていただきたく、コメントさせていただきます。


主人はアメリカ人で、現在、アメリカに居住しております。

年齢:62歳
人種:アフリカ系アメリカ人
家族の病歴:母親違いで1歳年上の兄が昨年、前立腺癌と診断され、化学療法による治療を受け、現在、経過観察中
泌尿器関連の自覚症状:
・排尿が一旦終わってから、少しして、まだ残っていた少量の尿が出る。
・1日に摂取する水の量は1リットル程度、食事でスープ類は無し、夜間トイレの回数は2回程。
・半年くらい前に、一度、睾丸の右側に突然痛みあり。しかし、続くことはなかった。

診察歴:

2014年9月5日 健康診断 
PSA値 3.7

2016年3月11日 健康診断 
PSA値 6.78
泌尿器科受診を勧められる

2016年5月23日 泌尿器科受診
触診の結果は異常を認められない 
PSA値 6.4
前立腺のサイズは50g


2016年8月29日 Apifiny検査 
PSA値 8・1


2016年9月12日 泌尿器科受診
尿検査の結果、血液反応あり、エコー検査の結果、膀胱は空

2016年9月20日 泌尿器科受診、
Apifiny検査結果。数値0から100のところ、主人の場合は99。60以下はガンの疑い無し、99は最もハイリスクになるため、針生検を勧められる。前立腺肥大の可能性はあるが、PSAテストと違って、肥大による影響はないとのこと。PSA値が8ということは、前立腺が120gで説明がつく値、高すぎる。

MRIやエコー検査を先にできないかお尋ねしましたが、精度が低く、結局は針生検をすることになるとのことでした。針生検の懸念を伝えましたが、この先生は違うお考えをお持ちのようでした。


一度、貴クリニックをお伺いすることも可能でございますが、その場合、日本の健康保健はございませんので、全額自己負担でお願いすることとなります。診察の結果、治療が必要となった場合、どのようにさせていただけばよろしいでしょうか。先生にお薬を処方いただくことは可能でしょうか。日本には、遠方でございますが、私の家族がおります。初診後は、どのくらいの間隔でお伺いする必要がありますでしょうか。一度、主治医にも相談する必要があるかとは存じますが、併せてご教示いただけますと幸いです。

ご多忙のところ恐縮でございますが、どうぞよろしくお願いいたします
【回答】
遺尿(排尿後少し出る)や睾丸の痛みなどは、前立腺肥大症の症状と思われます。
前立腺の大きさばかりでなく、形の異常でも排尿障害は出ます。
Apifiny検査は、日本では普及していませんから、その評価に関して、私からは判断できません。
ただし、検査結果は常に正しいとは限りませんから、念のため。
前立腺の触診と超音波エコー検査である程度の前立腺癌は発見できる筈です。
主治医に言って、抗男性ホルモン剤(アボルブ・プロスタール)にて前立腺を小さくする治療を先行してはいかがでしょうか?

投稿: M | 2016/09/21 16:54

高橋先生お世話になっております。
 9月14日に診察を受けた者ですが、その際プロスタールとハルナールを一ヶ月分処方していただいたのですが、服用開始一週間ほどで排尿は以前のようにスムーズになったのですが10日ほどしたところで足の指先に痺れを感じるようになったので副作用かと思い本日は服用しませんでした。
 
 そこで先生にお伺いしたいのですが、服用を中止することによって顕在癌に影響はあるのでしょうか。
【回答】
もし癌があれば、減少傾向から増殖傾向になる可能性があります。
 
 
 
 

投稿: 診察番号34975 | 2016/09/28 16:30

先日、診察いただいた診察券番号35041、35042です。前立腺の結石と、筋肉の硬直による排尿障害・前立腺肥大とご診断いただきましたが、エコー画像を見ながら、先生から直にご説明いただく機会など、めったにあるものではございません。どうもありがとうございました。先生のクリニックには、おそらく先生が長年かけて集められたと思われる、とても興味深い本がたくさんあり、また漢方治療や処置室の最新機材など、一般的な西洋医学による治療だけでなく、予防医療や代替医療にも力を入れておられると拝察いたしました。酸素カプセルとエアマットのおかげで、疲れが取れ、あの後、ウォーターフロントに出かけました。ああ、先生のお近くに引っ越したい!と心より思った私どもです。先生、 どうぞご無理なさらないよう、また、診ていただきに参ります。

投稿: M | 2016/10/11 09:44

お世話になります。
昨日(10/28)午後、psa値が高いということで、超音波エコーと触診の診察をして頂き、癌の疑いはなく排尿障害が原因だとわかりとても安堵しております。
エコーにて私の体の構造を的確に分析し、画像を診ながら分かりやすく説明して頂き、本当に有難う御座いました。また何かありましたら御相談に上がりますので宜しくお願い致します。
先生、これからもどうかお体ご自愛下さい。先生にお会いできたことにとても感謝しております。

投稿: | 2016/10/29 09:27

初めてのご相談です。
宜しくお願い致します。
72歳男性、昨年6月の人間ドックでのPSAは1.73でしたが今年の6月は5.14と跳ね上がりその後3ヶ月検査でh4.81⇒5.09となっています。触診及び造影剤使用MRIでは癌を疑う所見無しとの事でした。kのまま定期的にPSA測定で様子見で宜しいでしょうか?
【回答】
はい。

投稿: tetsu | 2016/11/08 16:51

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 小線源療法を受けた前立腺癌の患者さん | トップページ | 週刊文春の記事から »