夜間頻尿の治し方のコツ
前立腺肥大症のお薬を飲んでも、夜間頻尿が治らない場合はどうしたら良いのか?という相談を他の病院で治療している患者さんや医師から相談を受けることがあります。
お聞きすると、それなりのお薬を処方され、あるいは処方しているのです。
ところが、病名で処方されていう事が多く、患者さんの病気に応じた細かい処方がなされていないのが原因です。
前立腺肥大症といっても前立腺が大きい患者さんもいれば小さい患者さんもいます。
前立腺の大きさは20ccが正常ですが、これを鵜呑みにすると誤診するのです。例えば、10代の頃の前立腺が10cc位の大きさの患者さんであれば、60歳を過ぎて前立腺が40ccになったとすると、前立腺の大きさは実に4倍になったとことになります。泌尿器科医からすると40ccは大した大きさではありませんから、前立腺肥大症を小さくしようという治療方針は選択されません。排尿障害の治療薬だけを処方されるので、今ひとつ効果が出ないという結果になるのです。思い込みが治療方針を誤らせた一例です。
例を挙げればキリがないので、治療を場合分けして解説しましょう。
1)水分制限
心血管系に問題のある病気、例えば脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、高血圧の患者さんが大量の水分を摂取します。このような動脈硬化のある人は、日中の腎血流量が低下し、日中飲んだ水分が尿として排泄されることなく、細胞外液に溜まります。細胞外液に溜まった水分は夜間に血液中へ移動し尿として排泄されます。そのため夜間多尿になり夜間頻尿になるのです。対策として日中水分摂取は1㍑以下に制限することです。決して血液はドロドロにはなりません。
2)内科の薬を再考
心臓疾患の患者さんに内科から利尿剤が処方されることがあります。利尿剤ですから当然尿がたくさん作られ、その結果、夜間多尿、頻尿になります。内科の医師と相談し、利尿剤を減らすか止めていただきましょう。
3)前立腺の大きさ
正常の大きさが20㏄を基本として、大きい小さいを判断しています。前立腺40㏄なら普通の2倍と考えますが、泌尿器科医にとって40㏄はそれほど大きいとは考えません。しかし、序文で解説したように人によて前立腺の大きさはスタートラインが異なり、若い時に10㏄の人であれば40㏄は4倍ですし、若い時に20㏄であれば40㏄は2倍程度にしかなりません。治療しても頻尿が改善しなければ、それほど大きくない前立腺肥大症と思わないで積極的に前立腺を小さくする治療も考えなければなりません。
4)前立腺の形
前立腺は大きさばかりでなく、形も注目しなければなりません。正常の前立腺は膀胱のラインを超えることはありませんが、夜間頻尿が強く出る人は、前立腺が膀胱側に突出する形態をとります。このタイプの前立腺の患者さんの場合は、治療に難渋します。薬をいろいろ変更し、その患者さんにぴったりと合う薬剤を見つける必要があります。
5)膀胱の過敏
原因はともかくとして、過敏になった膀胱を鎮めなければ、夜間頻尿は改善しません。
恐らくは、膀胱出口に近接する膀胱三角部が肥厚し過敏になったと考えます。
膀胱三角部は平滑筋で出来ていますから、平滑筋の緊張を鎮める薬剤を選択します。
候補として、アルファブロッカー(ハルナール、ユリーフ)、β3刺激剤(ベタニス)、抗コリン剤(トビエース)、抗不安剤(デパス、レキソタン)などがあります。
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コメント
初めまして、現在、前立腺肥大で、今まで、ユリーフとプレストロンを服用していましたが、夜間頻尿の回数が増え、ハルナールのゾロとプレストロンに換えました。薬代も嵩みますので、ハルナールは、朝食後1日1回服用することになっています。それを夕食後でも構いませんでしょうか。また、ハルナールを1日2回、服用可能でしょうか。年末のお忙しいところすいません。台湾からです。
【回答】
日本では1日1回と保険で制限されていますが、OKです。
ただし、ハルナールのジェネリックは効力が半分程度ですから仕方がありませんね。
投稿: 加藤 | 2015/12/30 12:44
若いころから尿の回数は多かったと思います。長じて79歳。秋から冬にかけては一晩4回は当たり前、5回もしばしばで6回の時もあり寒中にはつらいです。夏はやや減って3回前後、時たま2回。尿意切迫や陰嚢の掻痒にも悩まされています。泌尿器科に通ってハルナール,アボルブ、バップフォーを数年間服用してきましたが顕著な結果は得られておりません。最近近い病院に移りましたらハルナールはタムスロン塩酸塩ODへバップフォーはベシケアに変えられました。画家で3つの美術団体に所属し結構忙しい立場にあります。なお一昨年春の神経症を患い心療内科に通い、その後再発して抗うつ剤のレメロンと言う薬も服用しております。
【回答】
排尿障害治療薬に、他にもαブロッカーにはユリーフがあり、PDE5阻害薬であるザルティアがあります。
β3刺激剤としてベタニスがあります。
投稿: dantuku | 2016/02/27 19:01