去勢抵抗性前立腺癌の治療 産経新聞9月9日コラムから
なぜ、抵抗性を前立腺癌が獲得したのか?という事実に関して、最近の知見では、次のように考えられています。
前立腺癌は男性ホルモンに強く依存をしていて細胞分裂、増殖を繰り返します。しかし、男性ホルモンがブロックされると、その活動は抑えられ、増殖はもちろんのことアポトーシス(細胞死)を起こします。
その結果、ほとんどの癌細胞は死ぬのですが、細胞分裂を繰り返すうちに癌細胞は様々な能力を獲得します。獲得した能力のうち癌細胞の生存にかかわる能力を獲得した癌細胞が生き残ることになります。
当初は、男性ホルモンに依存しに独立した前立腺癌が新たに生まれるのだろうと思われていました。ところが事実はもっと驚くべきことだったのです。男性ホルモンに依存していた前立腺癌が、自前で男性ホルモンを作れるようになるのです!これでは、いくら男性ホルモンを抑えても自前で男性ホルモンを作る前立腺癌には勝てなくなります。この一連の流れが、去勢抵抗性前立腺癌の出現するらしいのです。
この新聞のコラムに紹介されている新しいホルモン治療薬は、癌細胞の細胞膜上の男性ホルモン・レセプターをブロックするのではなく、細胞内に取り込まれた男性ホルモンの2次反応を抑制する働きがあります。ですから、男性ホルモンを前立腺癌が作ったとしても、それを細胞内で使えない状態にしているとも言えます。
しかし、癌細胞もバカではありません。新しい治療法が考案され実施されると、それを凌駕するほどの抵抗力を獲得するのです。安心はできません。また、この治療薬はとても高額です。
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コメント
現在ホルモン治療を継続中のため、去勢抵抗性癌への移行に大変関心を持っています。去勢抵抗性癌は自身でテストステロン生産能力を具備するようになるとのこと、恐るべし!!
ホルモン治療を始めてから去勢抵抗性に移行するまでの期間に個々人でとても大きな開きのあることに、関心を持っています。一般的には悪性度が高いほどその期間が短いと言われていますが、いろいろと調べてみると悪性度の高い場合でも10年以上に渡り安定に推移している場合もあれば、僅か半年余りで去勢抵抗性に変貌してしまう例もあるようです。
去勢抵抗性に至る期間が何により規定され、如何様にすれば、この期間を長くすることができるかについて、高橋先生の御経験やお考えをお聞かせ頂ければ感謝申し上げます。
【回答】
文献的に、病理学的な悪性度と臨床的な悪性度が必ずしもリンクしないとされています。
病理学的な悪性度(グリソン・スコア)は、あくまでも見た目(外見・形態学的所見)の良し悪しです。
しかし、前立腺癌細胞が男性ホルモン産生能力を獲得するのと外見が一致しないのは、何となく理解できるでしょう。
顔が悪ければ悪人で、顔が良ければ善人と限らないのと同じです。
能力の獲得差は、何が原因か不明です。
もしかすると、患者さんの治癒力が前立腺癌を攻撃し、その分、癌細胞の細胞分裂を促しているのかも知れません。
免疫を上げろ!という考えが、逆効果になっているかも知れません。
投稿: moto | 2014/09/09 21:04
「免疫を上げろ!という考えが、逆効果になっているかも知れません」との仮説に、興味をそそられました。LH-RHアゴニストを用いた標準的なテストステロン抑制治療とは異なり、貴クリニックでの治療に用いられているエストラサイトは女性ホルモンによるテストステロン抑制に加えN-マスタードによる細胞毒効果が存在すると理解しています。従って、後者に「がん細胞の免疫低減効果」を大いに期待しても良いのではないでしょうか。これが事実であるならば、LH-RH治療よりエストラサイト治療の方が癌の去勢抵抗性発現までの期間を優位に引き延ばすことのできる事が期待できますネ! 貴クリニックの治療実績から、この事がエビデンスとして確立できればとても素晴らしいことだと思います。
投稿: moto | 2014/09/11 14:53
64歳男性。糖尿病で服薬中です。
PSAが一昨年4.78→去年4.20→今年5.06となっております。一昨年始めて泌尿器科を受診し、触診とエコーをし硬くなってもいないし、肥大もないと言われました。
【回答】
この結果が当てになりません。
小さな前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症があれば、PSA値は高くなります。」
去年は4.20と下がったので受診していないそうです。今年はあがったが本人は受診したくないと言っています。
経過からみてどうでしょうか?
【回答】
まず問題ないでしょう。」
あと、本人からの希望で、もしガンだとして無治療ならあとどれくらい生きられるか教えて欲しいとのことでした。
【回答】
5年は大丈夫でしょう。
投稿: ももじろう | 2014/09/22 22:39
はじめまして。宜しくお願いします。
現在75才の男性で、PSAが6.020です。高橋先生のブログを読んだ前立腺病の人から、大豆イソフラボンが良いらしいと聞きました。
今は朝に豆乳200ccを飲んでいますが、Dr.Aglyax r -S を併せて飲んでみようと思っています。弊害がありますでしょうか?
【回答】
弊害はありません。
投稿: 田中〇〇〇〇 | 2014/11/07 11:01
ご返事有り難うございました。
早速、注文して飲んでみます。豆乳だけでも、夜の排尿回数が減っていますが、出にくいのは相変わらずです。
Dr.AglyMax R-S を飲んでみて、何か変化がありましたら、ご報告致します。
投稿: 田中〇〇〇〇 | 2014/11/08 19:30
診察券番号32029の患者です。本日は、定期検診で御世話になり、ありがとうございました。その際、女性ホルモンやエストラサイトの服用はLH-RH剤とは異なりAndrogen Blockage を行うもので無いため、血中テストステロン濃度の低下は無いとの説明を頂きました。その場では、私なりに理解した気になっていましたが、その後、色々と考え、頭の整理がつかなくなってしまいました。エストラサイトや女性ホルモンの服用にテストステロンを始めとするアンドロゲン抑制効果が無いとするならば、前立腺細胞増殖抑制へのエストラサイトの作用機序は一体何なのでしょうか(N-マスタードの細胞毒効果を別にして)?ネット検索で色々と調べてみると、多くのサイトで、エストラサイトや女性ホルモンはLH-RH剤とは機序を異にするものの、有意にテストステロン等のアンドロゲン抑制を行うとの記述があります。
【回答】
長期に間断なく継続して服用していれば、すなわち有効血中濃度を維持していればの話です。
1週間に1回1錠や2週間に1回1錠の服用の仕方では、有効血中濃度は維持できませんから、上位ホルモン中枢、視床下部・脳下垂体からの男性ホルモン刺激を抑制することはできません。
あくまでも、性ホルモン感受性のある前立腺癌細胞への女性ホルモンによるホルモン毒性として処方しています。
ある意味、N-マスタードと同様の趣旨です。」
そうであるならば、エストラサイトの服用回数を可能な限り減らし(例えば1カプセル/週を1カプセル/2周)、血中テストステロン濃度を必要以上に低下させないようにすることで、ホルモン産生能力を具備した癌細胞発生、すなわち、再燃に至る期間を有意に伸ばすことができると考えることができます。以上記述した私の理解の誤り等、忌憚なくお教え頂ければ感謝申し上げます。
【回答】
上記の理由でテストステロン濃度にはほとんど影響ないでしょう。」
「流体力学」に関する余談、「放尿時の乱流と層流の関係」とても楽しく拝聴! 層流から乱流への遷移敷居値を規定するReynolds数に着目すると、この値とPSAの数値の間には、極めて強い「正の相関」が存在することでしょう。この相関を定量化できれば、立派な学位論文となるのでは???
【回答】
流体力学的事象が起きているのは、あくまでも前立腺部尿道内の出来事です。
その物理現象が前立腺全体に影響するかどうかは不明です。
投稿: moto | 2015/07/06 22:04
早速の御教示、感謝申し上げます。日本新薬(株)のエストラサイトに関する医薬品インタビューフォームには、「投与96時間後までに60%が体外に排泄される」とのことですので、仰るように1~2週間毎の間欠服用では有効血中濃度を維持できませんね! 従って血中テストステロンの濃度が正常値近くまで回復していると考えるのが理にかなっていると思います。一方、1カプセル/週の間欠服用を継続している私の場合の体調についてですが、(1)胸部の女性化が依然続いている事実、
【回答】
乳腺の細胞が女性ホルモンの刺激によって女性化したということです。
テストステロンの低下だけでは乳腺は女性化しません。」
(2)精液の産生力が限りなくゼロに近い事実、【回答】
女性ホルモンの毒性で前立腺細胞や精嚢腺が委縮・退縮したということです。」
等を挙げることができます。このような事実を考えると、やはりテストステロン血中濃度がかなり低下しているのではないかとも疑ってしまいます。このような体調における変調は、やはり、先生の仰る「女性ホルモン毒性」で説明できるのでしょうか?
【回答】
上記のごとくです。」
間欠服用により、女性ホルモンの血中濃度もかなり低く抑えられていると推察してしまうのですが・・・。
公務ご多用の先生を煩わせてしまう質問ばかりで恐縮しています。お時間の許す折にでもご教示ください。再燃に至る期間を可能な限り延長する中で、侵襲的な治療を避け、平穏に天寿を迎えたく、先生の御指導のもと、私なりにも、工夫を重ねて参りたく思っております故、宜しくお願い致します。
投稿: moto | 2015/07/07 21:45
お忙しい所、失礼します。先生のブログ読み続けております。
さて私は、二年半程前に、相談に伺った斉藤と申します。その頃同時に昭和医大で検査を受けて、PSAが異常に高くその時は420でした。針生検を受けて、12本中12ケ所に癌が見つかりました、クリソンスコアは9でステージ3~4と診断されました。平成28年5月頃のことです。
平成30年2月に二度目の、骨シンチの検査を受けて、骨への転移は有りませんでした。癌は大きく、周りへの浸潤は有ります。
カソデックスが一年半くらいでPSA上昇が見られて、その後オダインに変えました、オダインでPSAは下がった(1.9)のですが、結果、肝臓の数値が上がってしまい、オダインを中止しました。
その後、平成30年2月より、ザイテガを開始しました。その後、セカンドオピニオンを求めました、診断されたのが去勢抵抗性前立腺癌、でした。今年の8月のことです。
その後ザイテガは昭和で継続して居ます。しかし、これも早晩効かなくなるでしょう。現在PSA値は、1.9です。
先生、もう去勢抵抗性となってしまったら、ご相談の対象にはならないのでしょうか、一度ご相談させていただければと思い、メールさせていただきました。
【回答】
ご相談はお受けいたします。
投稿: 野菜党 | 2018/10/11 18:00