PSA検査で前立腺癌死大幅低減 m3.comから
PSA検査で前立腺癌死大幅低減
文献:Schroder FH,et al.Screening and prostate cancer mortality: results of the European Randomised Study of Screening for Prostate Cancer (ERSPC) at 13 years of follow-up.Lancet. 2014 Aug 6. pii: S0140-6736(14)60525-0. doi: 10.1016/S0140-6736(14)60525-0. [Epub ahead of print]
欧州の前立腺癌検診無作為化試験(ERSPC)の13年間の追跡データから、前立腺特異抗原(PSA)検査による前立腺癌死の低減効果を検証。9、11、13年経過時点のデータによるPSA検査群と検査なし群との死亡率の率比は、それぞれ0.85、0.78、0.79だった。13年経過後にもPSA検査による前立腺癌低減が確認された。
【参考】
この結果から、PSA検査を実施した方が良いと思われます。
しかし、そこには盲点があります。PSA検査によって前立腺癌ではなく、排尿障害や前立腺肥大症などが原因でPSA値がたまたま高く、そのために前立腺針生検を実施され、発見されなくても良いラテント癌が発見される可能性が高くなります。この研究の母集団にラテント癌の患者さんが多くなればなるほど、前立腺癌の実数は増加し、予後が良くなるのは当然です。
ラテント癌と顕在癌の病理組織像は同じですから、全て同じ前立腺癌として処理されます。
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コメント
こんにちは.
先生のブログを拝見していて,針生検は危険だと思っていたのですが,このデータからではそれでもPSA検査+針生検で死亡率は低下したということでしょうか?
【回答】
放置していても良いラテント癌が増えるので、死亡率が低下すると考えます。
しかし、そのラテント癌の中には、致死性の癌に変貌するものもいるので、触らぬ神にたたりなしです。」
それと,先生のところでもPSA検査はして頂けますか?して頂くとすれば,当日の朝は朝食を抜いたほうがよいでしょうか?
【回答】
このブログで、これほどPSA検査の価値がないことを訴えているのに、私が嬉々としてPSA検査を実施するのは、矛盾します。
PSA検査は行いません。」
お返事頂けましたらありがたいです.
投稿: M.T | 2014/08/31 20:07
お返事ありがとうございました.
死亡率の分母は検査群の人数ではないということですね.
【回答】
分母は検査を行った集団で発見された前立腺癌の死亡率と、検査を行わずに顕在癌として発見された前立腺癌の死亡率の比較です。
検査を実施した集団にはラテント癌が多く含まれますから、死亡率が低いのは当然です。
それに比較して、検査をせずに発見された顕在癌は、ラテント癌ではない、進行速度の速い前立腺癌が多く含まれますから、死亡率が高いのは当然でしょう。
この両者の死亡率を比較して、PSA検査を定期的に実施した集団の前立腺癌の死亡率が低いのは不思議ではありません。
統計とは注意して観察しないと騙されることがあります。
臨床的に悪性度の低いラテント癌と臨床的に悪性度の高い顕在癌を前立腺癌は同じものとしてPSA検査のみで比較しているのですから、とてもいい加減なデータになります。
一度認知されたデータは独り歩きして常識に化けるので、正しい概念が偏向してしまうのです。
医療従事者は注意が必要です。」
【参考】のところで,「この結果から、PSA検査を実施した方が良いと思われます。」とありましたので,それなりの価値はあるのかと勘違いしてしまいました.
【回答】
その下に続く「・・・しかし・・・」という文言は、その「・・・良いと思われます・・・」をやんわりと否定しています。」
失礼いたしました.
投稿: M.T | 2014/09/01 20:00
ラテント癌の「寝た子を覚ます」危険性からPSA検査を行わないとする先生のお考えには共感致します。
一方、例えばホルモン療法で前立せん癌治療治療中の場合、「治療の有効性」をトレースする上でPSA値を指標にすることは極めて効果があると思っています。
【回答】
PSA検査は、前立腺癌と診断された患者さんの治療推移を観察するための指標です。
そういう意味で重要です。
ですから前立腺癌と限った患者さんにとって重要なのです。
当院を訪れる患者さんの多くは遠方にお住まいなので、前立腺癌の方は、地元の医師にPSA検査を行ってもらっています。」
PSA検査を一切行わない場合、去勢抵抗癌の増殖を検知するために先生のクリニックでは如何なる方法を採用されているのでしょうか?
【回答】
上記の解説の如くです。」
PSA検査の弊害に警報を発信しておられますが、ケースバイケースでPSA検査の是非を判断されても、先生の主張に矛盾することはないと感じていますが・・・
【回答】
PSA値の異常=前立腺癌ではないと言うのが私の主張です。
寿命に影響しないラテント癌を発見してはいけないというのが私の主張です。
発見された前立腺癌の推移を追跡するためにはPSA値は重要です。
私は矛盾を感じませんが・・・。
投稿: | 2014/09/01 20:53
ご多用の中、早速に御回答いただき感謝申し上げます。前立せん癌患者へのPSA検査の重要性に関する先生のお考え、良く理解できました。先に「矛盾」と記したのは、癌患者に対してのみ「貴クリニックでPSA検査を実施しても先生の主義主張に矛盾しないのでは」と感じたものですから・・・。今後も当該医療分野で先生の先導的な主義主張を発信し続けて頂きたく、大いに期待しています。ご多用の中ご自愛ください。
投稿: | 2014/09/02 13:38
最初にPSA検査について質問したものです.
そうしますと定期的な検査は触診して頂くのがよいと考えるべきでしょうか?定期的に受けている人間ドックでは触診がなくなって久しいのです.高橋先生のところで検査目的で触診をしていただくことは可能でしょうか?
【回答】
超音波エコー検査と触診を実施します。」
たびたびのお尋ねでもうしわけございません.
投稿: M.T | 2014/09/03 10:32