夜間頻尿と「いびき」
前立腺肥大症があり、α‐ブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)や抗男性ホルモン剤(アボルブ・プロスタール)、ベタニス、抗コリン剤(トビエース、ベシケア、ブラダロン、バップフォ、ポラキス)を服用しても、夜間頻尿が改善しなくて難渋する患者さんがいます。
水分摂取を控えても、抗うつ剤であるトフラニールやトリプタノール(私は処方しませんが)を処方しても治らない患者さんです。
最近、「いびき」や睡眠時無呼吸症候群SAS(sleep apnea syndrome)について興味があり勉強しています。この睡眠時無呼吸症候群の症状として、何と夜間頻尿があるのです!
その理由はこうです。
無呼吸による努力呼吸が胸腔内を過度に陰圧にします。すると、心臓に戻ってくる静脈環流量が増加します。心臓は血液中の水分量が多いと錯覚します。そのため血液中の水分体積を少しでも減らそうと腎臓の利尿作用を利用しようと企図します。その結果、心臓の心房から心房性ナトリウム利尿ペプチドという物質が分泌され尿量が増えるのです。
もう一つの理由として、血液中の低酸素が交感神経を異常興奮させ、心拍出量の増加と腎血流量の増加を促し尿量が増えるというものです。
私はさらにもう一つの理由も考えたいと思います。脳血流内の酸素低下により、脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンの分泌が低下します。抗利尿ホルモンは尿を作らないようにするホルモンです。抗利尿ホルモンの分泌量が減るので、利尿作用が起きるというものです。
これら三重奏で夜間頻尿が作られるとすれば、泌尿器科医だけでは太刀打ちできません。
簡単な検査で無呼吸症候群の状態を把握することが出来ます。地元の内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科で不眠外来・睡眠外来を標榜している医師にご相談ください。もしかすると、明確な原因が発見できるかも知れません。
治療としては、CPAP(持続陽圧呼吸療法)があり、無呼吸症候群に効果を上げています。
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コメント
高橋先生のアドバイスを頂き、前立腺肥大による頻尿治療を継続しています73歳の男性です。今年4月9日から大豆イソフラボンを、6月4日からアボルブを服用しています。
おかげ様で、最近の頻尿は大きく改善し、夜間も尿意により起きることはなくなりました。70ccにもなる大きな前立腺がどれだけ小さくなるか、この先5ヶ月先の前立腺体積とPSA測定が愉しみです。
しかし、最近、高橋先生の記事「夜間頻尿といびき」を拝見してから、心配と苦しみが増えました。イソフラボンとアボルブを服用しだしたころから、「寝汗」と「全身の倦怠感」の発症が激しく、特に、寝汗については、一夜に3回近く寝間着(上着のみ)を交換することも度々です。トイレではなく寝間着交換のために起きるのもまた辛いです。
今回の「いびきと頻尿」の記事を参考にしての、私の勝手な解釈では、現在の私の症状の機序は、以下のように考えていますが、高橋先生のお考えを教示していただけたら幸いです。
① イソフラボンやアボルブなどの薬剤には平滑筋の弛緩作用がある。
② 平滑筋は全身に多少にかかわらず存在することで、全身の倦怠感が増加した。
③ もともと、少年時代から、副鼻腔炎か後鼻漏か、または蓄膿症の傾向があったことで咽喉部の気道が上向きに就寝しているときに筋肉の弛緩と相まって舌の下降により ふさがってしまい、無呼吸症候群SAS傾向が増大した。
④ SAS傾向によって、視床下部が低酸素化して、自律神経が制御不良となり、異常発汗につながった。
というストーリーです。
私の顎骨格は小さくて、SASにはうってつけですので、念の為にSASの簡易検査仮予約をしました。しかし、仮にSASが確定したとしても、対策は、CPAPしかないとすると、生活の質の低下は避けられず、まづは高橋先生のご意見をお聞きしてその後に、長年のかかりつけの泌尿器科の主治医に相談したいと思っています。
主治医を最後にしたのは、しつこく勧められた針生検を断ってイソフラボンとアボルブ治療を優先した手前、寝汗のことなどは、ちょっと言い出しにくいということがあります。高橋先生は、耳鼻咽喉科とか神経科ではないので判断は無理と承知していますが、なにとぞ良きアドバイスをお願いします。
【回答】
アボルブによる更年期症状でしょう。
寝汗や倦怠感が辛いのであれば、アボルブは中止してください。
人によっては、慣れてくる人もいます。
投稿: 伝道師 | 2014/07/02 19:49
高橋先生へ
早速のアドバイス感謝しております。
『アボルブによる更年期症状でしょう。
寝汗や倦怠感が辛いのであれば、アボルブは中止してください。』
男性にも「更年期症状」というものがあるとは、この歳になるまで知りませんでした。
まことに簡潔にして的確なご見解は価万金の価値があります。オドロキの一言につきます。寝汗や倦怠感ごときに弱音を吐くくらいなら、最初からアボルブなど服用すべきではないと、俄然、「克服の勇気」がでてきました。頑張ります。
ありがとうございました。
心より御礼申し上げます。
いつか機会があれば、一度高橋先生のご尊顔を拝し直接御礼申し上げたいと心より思っています。
かしこ。(愛知県の一修道士より)
投稿: | 2014/07/03 15:44