考察 デュタステリド(アボルブ)REDUCE試験の光と影 #影の章
表をさらに詳細に読むと、悪性度の高いハイリスク(グリソンスコア8~10)の前立腺癌が、アボルブ群29人(0.9%)、プラセボ群で19人(0.6%)という結果が出ているのです。
実数的には差がありますが、統計学的には有意差はなしと判断されました。しかし、研究者の中には、このデータを見過ごしにできなかったのでしょう、新たな試練を与えてきました。
今までの悪性度の評価基準がグリソンスコアでしたが、病理組織の結果と臨床現場を一致させようと、最近になって改訂版グリソンスコア(モディファイGS、m-GS)が汎用されるようになりました。改訂版グリソンスコアは、従来の評価基準に比べて悪性度の高い組織をもっと反映させようという狙いがあるのです。
その改訂版グリソンスコアでアボルブのREDUCE試験を再評価すると、改訂版グリソンスコア8~10のハイリスク型の前立腺癌が、アボルブ群で32人(1%)、プラセボ群で16人(0.6%)という結果になったのです。つまり実数的には倍になり、統計的にも有意差が出る結果になったのです。
前回のテーマで解説したように、せっかく前立腺癌を抑制できたのに、悪性度の高い前立腺癌が増えたのでは薬剤としては大きなマイナス点です。
次回のテーマで、この矛盾した結果の原因・理由を解明したいと思います。
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