REDUCE試験に関連して
アボルブのREDUCE試験の結果で、前立腺癌の発生が抑えられたという期待の持てる結果と、悪性度の高い前立腺癌の検出率が上がったという相反するネガティブな結果が出ました。
その結果で私を含め臨床医は、困惑しています。
たまたまこの結果を議論する機会を得て、講師として解説しました。その後、インターネットで検索すると、プロペシアにもREDUCE試験結果と同じ結果が出ました。育毛剤で有名な「プロペシア」フィナステリドはアボルブと同じ5α-還元酵素阻害薬です。日本では毛生え薬ですが、海外では前立腺肥大症の薬剤です。私の解説した論点にかなり近いので驚いています。私の計算ではアボルブの服用で前立腺癌は45%発生率が抑えることができます。
5α-還元酵素阻害薬は前立腺癌の予防および検出においてどのような役割を果たすか
フィナステリドはII型5α-還元酵素(5-AR)を選択的に阻害し、血清PSAの測定値を約50%低下させる。このことは、前立腺癌の化学的予防について検証した最初の大規模住民ベース試験Prostate Cancer Prevention Trial(PCPT)において明らかにされている。このプロスペクティブな無作為盲検プラセボ対照試験では、フィナステリドが前立腺癌を予防するという仮説が検証された。試験開始時に55歳以上でDRE所見正常かつ血清PSA値3.0 ng/mL未満の男性18,882例が、フィナステリド5 mg/日群またはプラセボ群に無作為割り付けされ、7年間の治療が行われた。前立腺生検は、前立腺の異常所見またはPSA値>4.0 ng/mLの場合および7年間の治療期間終了時に実施された。その結果、フィナステリド群で主要エンドポイントである前立腺癌発生リスクが24.8%低減したことが明らかとなり、また感度分析において、生検をさらに実施してもアウトカムに変化はないことが示されたあとで、同試験は予定よりも15ヵ月早く終了した。前立腺癌の発生率はフィナステリド群で18.4%であったのに対し、プラセボ群では24.4%であった。一方、フィナステリド群において高リスクの前立腺癌の増加が認められ、Gleasonスコア7~10の前立腺癌はフィナステリド群で6.4%、プラセボ群で5.1%にみられた。しかし、Redmanらは最近、バイアス修正モデルを用いて、フィナステリドが高悪性度前立腺癌リスクを増大させないことを示した論文を発表した。彼らの研究結果は、フィナステリドによる高悪性度前立腺癌の未補正リスクの増大がみられたのは、主として同剤により生検感度が向上した結果、前立腺癌の診断が促進されたことによるものであると示唆している。
高リスクの組織型を変化させる可能性、あるいは投与後のGleasonスコアがまったく有用とならない可能性から、フィナステリドに対する多くの疑問が提起された。しかし幸いなことに、Yangらが実施した研究において、フィナステリドは前立腺の組織型を大きくは変化させないことが示された(33)。フィナステリド群で高リスクの前立腺癌が多く発生したのは、当初考えられていたような組織学的アーチファクトによるものではないことも明らかにされた。また、フィナステリド投与下の男性患者においても、Gleasonグレードは妥当な予後予測因子であることが証明された(34)。テストステロン低値の前立腺癌患者では、テストステロン値が正常な前立腺癌患者に比べてGleasonグレードが高く、アウトカムは不良である。同様に、フィナステリドが低悪性度腫瘍の発生を抑制することで、高悪性度腫瘍が選択的に発生している可能性がある。生検によって真のGleasonグレードを正確に評価できるか否かも問題である。残念なことに、生検によって予測されたGleasonスコアには、観察者間変動による誤差が多く存在する。
その後、Elliottらにより最終的に、フィナステリドによる前立腺体積の変化と高リスク前立腺癌の検出率増加との間の強い相関が見出だされた。彼らの研究チームは、DRE異常所見またはPSA値4~10 ng/mLにより初回生検を実施された男性1,304例(フィナステリドが投与されていないこと以外は、PCPTの参加者と同様の状態)のデータベースをレトロスペクティブに解析した。500例近くがその後前立腺癌と診断され、うち247例はaggressiveな高悪性度腫瘍を有していた。同研究チームは、前立腺が小さいほど、生検により高悪性度腫瘍と診断される可能性およびPSA高値により前立腺癌が予測される可能性が高いことを明らかにした。たとえば、前立腺体積20~29.9 cm3の男性では、一定レベルの高悪性度腫瘍の診断率は29.7%であったのに対し、>80 cm3の男性ではわずか6.5%であった。
以上のデータから、フィナステリド投与下の患者については、生検実施のPSAカットオフ値を50%に補正することを念頭に置かなければならないものの、それらの患者が正確な診断を得る可能性はより高いと結論できる。一部の研究者らは、5α-還元酵素阻害薬(5-ARI)が診断上のベネフィットとなりうると主張している。それは、フィナステリド投与によりPSA値が速やかに低下し、前立腺癌はおそらく低リスクの癌となり、「待機療法(watchful waiting)」による対応が可能であるが、PSA値が上昇すると、よりaggressiveな治療が必要となるためであろう。しかし、これらのPSA値の変化はおそらく男性集団によって異なり、同一の男性でも経時的に変動する可能性があることから、5-ARI投与下の男性では生検開始の指標となる特定のカットオフ値の使用は推奨されない。このような適応での5-ARIの使用については、プロスペクティブ無作為試験による解析が必要である。
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コメント
いつも拝読させて頂いており大変参考になり
ありがとうございます
今年3月TIAで緊急搬送されました
その後は発作はありません、検査も異常ありません、発作前はレビトラ20mlを服用して
いました、今後服用しても良いですか。
宜しくお願い致します。
【回答】
レビドラは血管拡張作用があります。
その作用が、ダメになった血管を拡張できないためにTIAを作ってしまっているのかも知れません。
逆に、血管拡張作用でTIAを防ぐかも知れません。
ですから、試しながら挑んでください。
投稿: 柳 | 2016/11/06 09:28