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REDUCE試験に関連して

アボルブのREDUCE試験の結果で、前立腺癌の発生が抑えられたという期待の持てる結果と、悪性度の高い前立腺癌の検出率が上がったという相反するネガティブな結果が出ました。
その結果で私を含め臨床医は、困惑しています。
たまたまこの結果を議論する機会を得て、講師として解説しました。その後、インターネットで検索すると、プロペシアにもREDUCE試験結果と同じ結果が出ました。育毛剤で有名な「プロペシア」フィナステリドはアボルブと同じ5α-還元酵素阻害薬です。日本では毛生え薬ですが、海外では前立腺肥大症の薬剤です。私の解説した論点にかなり近いので驚いています。私の計算ではアボルブの服用で前立腺癌は45%発生率が抑えることができます。

下記の内容はそれに関した2010年5月の記事です。

5α-還元酵素阻害薬は前立腺癌の予防および検出においてどのような役割を果たすか
フィナステリドはII型5α-還元酵素(5-AR)を選択的に阻害し、血清PSAの測定値を約50%低下させる。このことは、前立腺癌の化学的予防について検証した最初の大規模住民ベース試験Prostate Cancer Prevention Trial(PCPT)において明らかにされている。このプロスペクティブな無作為盲検プラセボ対照試験では、フィナステリドが前立腺癌を予防するという仮説が検証された。試験開始時に55歳以上でDRE所見正常かつ血清PSA値3.0 ng/mL未満の男性18,882例が、フィナステリド5 mg/日群またはプラセボ群に無作為割り付けされ、7年間の治療が行われた。前立腺生検は、前立腺の異常所見またはPSA値>4.0 ng/mLの場合および7年間の治療期間終了時に実施された。その結果、フィナステリド群で主要エンドポイントである前立腺癌発生リスクが24.8%低減したことが明らかとなり、また感度分析において、生検をさらに実施してもアウトカムに変化はないことが示されたあとで、同試験は予定よりも15ヵ月早く終了した。前立腺癌の発生率はフィナステリド群で18.4%であったのに対し、プラセボ群では24.4%であった。一方、フィナステリド群において高リスクの前立腺癌の増加が認められ、Gleasonスコア7~10の前立腺癌はフィナステリド群で6.4%、プラセボ群で5.1%にみられた。しかし、Redmanらは最近、バイアス修正モデルを用いて、フィナステリドが高悪性度前立腺癌リスクを増大させないことを示した論文を発表した。彼らの研究結果は、フィナステリドによる高悪性度前立腺癌の未補正リスクの増大がみられたのは、主として同剤により生検感度が向上した結果、前立腺癌の診断が促進されたことによるものであると示唆している。

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AUA「PSA非推奨」に転換 【米国家庭医学会】 m3.comから

AAFPとUSPSTFの立場と同調
2013年5月23日 米国学会短信

 米国家庭医学会(AAFP)は5月15日、米国泌尿器学会(AUA)が前立腺特異抗原(PSA)に基づく前立腺癌のスクリーニングに対する立場を転換したと伝えた。(AUAアメリカ泌尿器科学会は日本泌尿器科学会よりもはるかに権威のある世界的に認められている学会)

 AUAはこれまで、PSAスクリーニングを推奨しないとするAAFPと米国予防医療特別委員会(USPSTF)とは逆の立場を表明。しかし今回、PSAに基づいた前立腺癌の全ての定期的スクリーニング、70歳以上、40歳以下、平均的リスクの40-54歳の男性での全てのスクリーニングを推奨しないとする臨床指針を発表。これにより、AUAはAAFP、USPSTFと足並みを揃えた形になった。

 双方の立場で依然として異なるのは、40-54歳でリスクが高い男性(前立腺癌の明らかな家族歴があるなど)と55-69歳の男性について。AUAはこれらの男性ではスクリーニングを行うことの利益と悪影響を医師と話し合い、患者が強く希望した場合のみスクリーニングを実施することを求めている。これに対し、AAFPとUSPSTFは、前立腺癌は治療しても死に至る場合があり、全てのスクリーニングを行うべきではないとしている。

 このような相違はあるものの、AAFPでUSPSTFとの連絡役を務めるCampos-Outcalt氏は、新たに発表されたAUAの臨床指針は患者と医師が前立腺癌スクリーニングについて話し合うきっかけになるとしている。

【備考】
アメリカの権威あるAUAが、PSA検診の不利益さを正しく認識・理解してくれた報道を嬉しく思います。
日本の権威がどのようになるかは今後次第です。

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遺伝子変異で前立腺摘出 英国男性、世界初 m3.comから

共同通信社 5月21日(火) 配信

【ロンドン共同】乳がん予防のため乳房の切除・再建手術を受けた米人気女優アンジェリーナ・ジョリーさん(37)と同様、がんのリスクを高めるとされる遺伝子変異が見つかった英国人男性(53)が、前立腺の摘出手術を受けていたことが分かった。英紙タイムズが21日までに報じた。

 同紙によると、男性が遺伝子変異の発見により前立腺を摘出したケースとしては、世界で初めてという。

 ジョリーさんは「BRCA1」という遺伝子に変異が見つかり、両乳房の切除・再建手術を受けたが、この男性は「BRCA2」遺伝子に変異が発見された。

 これらの遺伝子に変異があると、乳がんや卵巣がんのリスクが高まることが分かっているが、この男性が検査を受けたロンドンのがん研究機関の調査では、男性の前立腺がんのリスクも高まることが分かった。

 男性には乳がんや前立腺がんにかかった家族がいたが、通常の検査では異常が見つからず、担当医師団は当初、手術に消極的だったが、遺伝子変異が分かったことで踏み切った。手術後、前立腺からかなりのがんが見つかったという。

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PSA変化率の意義、強い逆風 m3.comから

臨床試験から「意味がない」「意味が乏しい」の結論相次ぐ

2013年5月7日

PSAの変化率を前立腺癌の予測マーカーにする考えがある。
臨床試験では、PSA変化率の意義は少ないとの結果が出ている。
前立腺癌の予測に用いる考え方は強い逆風にさらされている。

 PSA検査の前立腺癌診断における意義は賛否両論のテーマとなってきた。
とりわけPSAの変化率の意義は強い逆風にさらされているようだ。Nature Reviews Urology誌は2013年4月号でも、PSAの変化率が「なぜ難しい問題なのか」と題して課題を取り上げている。

 PSAの変化率については複数の臨床試験で「意味がない」、あるいは「意味が乏しい」といった結果が相次いでいる。
Nature Reviews Urology誌では臨床試験の結論を紹介している。欧州で行われたERSPC試験では「スクリーニングのアルゴリズムを改善しなかった」、米国のPCPT試験では「独立した予測因子にならなかった」、北欧のSPCG4試験では、「致死的な前立腺癌の予測因子としては非力」、米国のPLCO試験では「PSAの変化率を除いても影響はほとんどない」などとなっている。

 PSA変化率を参考とする場面は現在の臨床現場でもある。解釈が困難という問題は収束しそうにはなさそうだ。

【関連リンク】
Nature Reviews Urology 2013;10:189-190.

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