PSA11.7の前立腺癌
常識的に考えれば、まずは針生検ですが、私の考えに患者さんは賛同していただき、針生検なしに前立腺癌の治療を進めることにしました。
一般的な前立腺癌の治療はLH-RHアゴニスト(リュープリン・ゾラテックス)ですが、将来的にホルモン抵抗性前立腺癌になるのを危惧して、私は抗癌剤エスストラサイトを使用します。
この患者さんには週3回1錠ずつ服用していただきました。通常容量は毎日4錠ですから、週に28錠になります。それを週に3錠ですから、28分の3、つまり9分の1の低用量で治療を始めました。一般的にわずかな用量は効かないと思われますが、抗癌剤の副作用が極力抑えられるので、この方法を私は好んで行います。
治療始めて2ヵ月経過したPSA値は2.62に低下しました。副作用も乳腺が張るなどのホルモン性の副作用ですが、患者さんにとって苦しみのない許容範囲のものでした。触診でも喜ばしいことに前立腺癌の硬結は消えました。エストラサイトも週2回に減量して治療することになりました。
PSA値が11.7から2.62に低下した訳ですから、PSA値が22.4%に減少したことになります。もしも前立腺癌体積がPSA値と相関するのであれば、単純計算で前立腺癌体積も22.4%に減少したと考えられます。触診可能な前立腺癌には10億個を超える癌細胞が存在していると考えられますから、PSA値が低下したとしても未だ2億個の癌細胞が生きている可能性があります。できればPSA値が100分の1程度(この患者さんであればPSA値0.117)にまで下がるのを目標としたいですね。しかしPSA値が0.**(0コンマ以下)の場合、前立腺癌体積とPSA値が必ずしも一致しないので、あくまでも目標です。PSA値が100分の1程度であっても、前立腺癌体積は千分の1~万分の1になっているかも知れません。
【その後の経過】
治療始めて3ヵ月経過しました。10月のPSA値は0.373と最初の値から比較すると3.2%程に低下しました。PSA値2.62の時点で、患者さんの希望から現在エストラサイトは1回1錠週2回の定常量の7%(28錠分の2錠)しか服用していません。患者さんはさらに低用量を希望され、11月からは1回1錠週1回の定常量の3.6%(28錠分の1錠)にしました。
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コメント
現在79歳の義父です。75歳ぐらいで糖尿病で通ってる内科でPSA70くらいでした。総合病院を紹介されCT,MRI,生検でガンといわれました。注射と薬で半年ほど通いPSAは下がっていきましたが医者が75歳過ぎているので手術は出来ないが放射線治療するというのが病院のやり方といわれました。父はそれがいやで治療をやめてしまいました。それからしばらくは良かったのですが次第に一日中頻尿でトイレにいくのが間に合わなくてもらしたり、排尿時に痛みがあったりで一年半前から個人病院で月一回の注射と薬で治療してます。ここ半年は痛みはなくなったのですが夜間5~6回のトイレはあります。現在飲んでいる薬はビカルタミド80MGとタムスロシン塩酸塩OD錠0.2MGを一日夜1回のみですが頭がぼーっとして集中できないとずっといっています。PSAは現在4くらいです。夜間頻尿も続いてますし薬があっていないのでは?と思います。先生の見解を教えていただけたら助かります。
【回答】
タムスロシンOD錠は、ハルナールD錠のジェネリックです。
安価ですが、ハルナールに比較して作用効果が2分の1~4分の1しかありません。
ハルナールはα‐ブロッカーという部類の薬剤で、頻尿などの膀胱刺激症状を緩和してくれます。
夜間頻尿は、日中摂取している水分量の結果です。
恐らくお父様は大量の水分を摂取しています。
1日の水分(お茶・コーヒーを含む)を極力控えて1日1㍑以下にして下さい。
水分を摂取すればする程、症状は悪化します。
投稿: ユウ | 2012/09/15 18:49
早いお返事ありがとうございました。
ジェネリックだとはわかっていたのですが効果がそんなに違うものとは知りませんでした。水分は1Lものんでいないように思っていましたが気をつけてみます。医者は「でないより出るのはいい」と言うので仕方ないのかと思ってました。薬ですが血圧、糖尿ものんではいますが本人は泌尿器科の薬を飲むと頭がボーっとするといいます。この2種のお薬が原因と考えられますでしょうか?たびたび申し訳ありません。
【回答】
可能性はあります。
投稿: ユウ | 2012/09/17 19:00
折に触れメールやコメントをお送りしてきました。先生のブログでは何時も勇気付けられております。先にも記しておりますが、私の場合は生険を受け、内分泌治療前のデータはPSA12.4、GS8、Tb3でした。治療を始めた最初の一ヶ月、エストラサイト(1カプセル/日)のみで、PSA2.4に減少、その後はゾラデックスとエストラサイト(1カプセル/3日)で約半年経ちました。現在のPSA値は0.06。我が癌細胞のホルモン耐性への不安、ならびに登山を趣味としていることもあり、筋力低下を危惧し、9月に入り、主治医に「懇願」し、エストラサイト(1カプセル/3日)の継続とゾラデックス中断を承認して頂き、実行を始めた所です。これに対する不安もあるため、3ヶ月に一度のPSA検査を毎月行うことで様子を見ていこうと思っております。自己責任の下で我が身を試験体として、PSAを指標に「非標準癌治療」に挑戦するのも意義あるものと思っております。半年ほど経った時点で、また、結果をご報告したいと思います。
【回答】
標準治療を受けない勇気に感服します。
趣味を謳歌しながら、たんたんと生活しましょう。
投稿: moto | 2012/09/18 21:44
先生のブログを読ませていただき、77歳の父のことでご相談させていただきたく、ご連絡させていただきました。
先月、かかりつけの内科医に「尿の出方がゆっくりで、途中で途切れる」などと話したところ、血液検査を受けました。結果、PSAの数値が14でした。ハルナール1錠(1日に)が処方され、泌尿器科を紹介されました。
その後、泌尿器科を受診しました。
泌尿器科では、採血と触診を受けました。触診では、異常なしで、PSAは13.9でした。
ハルナールでは、変わりなかったことを伝えました。ユリーフ2錠(1日に)が処方されました。
次回はMRIを撮り、その後生体検査(2泊3日)を受けましょうとのことでした。生体検査については、できるだけ避けたいと伝えたところ、世界中で行なわれている一般的なことだと説明を受けました。そして、その検査を受けないと治療方針が立てられないと言われました。
MRI(造影剤なしで)の結果、左側に1センチ位(石灰化の可能性が見られる)と右側にミリ単位の影が見えるとのことでした。
一方で、尿の出方は、ユリーフを飲んで数日後に驚くほど改善されました。
医師は、生体検査を進めています。数日後、返事をすることになっていますが、もう少し様子を見てと返事するつもりでいます。
数日前より、漢方の薬局にて、免疫力が上がるのでと「黒酵母」を飲み始めました。
これまでの流れを書かせいただきました。高橋先生の父の前立腺のお見立てや治療方法を教えていただければ、幸いです。お忙しいところ恐縮ですが、なにとぞよろしくお願いいたします。
【回答】
前立腺肥大症と排尿障害と前立腺の炎症があるので、PSA値が高くなったのでしょう。
触診で前立腺癌が触れなければ、ラテント癌ですから、針生検の必要はありません。
ユリーフ以外に抗男性ホルモン剤(アボルブ・プロスタール)も処方してもらうと良いでしょう。
投稿: ike | 2012/11/12 15:52
はじめまして!
私は51歳の男性です。
2011年11月の人間ドッグでPSA4.55でした。
泌尿器科を受診するようにとのことで
クリニックで受診したところ総合病院で「針生検」をすすめられ2012年2月に検査入院しました。前立腺肥大で癌ではないとのことでした。その後、クリニックで「フリバスOD75mg」を服用し、3ヶ月おきに血液検査をしてきました。血液検査も良好でした。
2012年10月の人間ドッグでPSA5.29でした。
クリニックで相談して12月に再度、血液検査しました。
PSA7.62でした。検査入院をした総合病院へ行くように紹介状を渡されました。また「針生検」だと思います。「針生検」の場合は一旦、考えさせてもらい、こちらの病院へお世話になることにしようと思います。
総合病院の受診結果後、またご連絡いたします。
【回答】
前立腺肥大症を治さない限りPSA値は高くなるでしょう。
投稿: タニ | 2013/01/15 17:49