選択の科学
今私が読んでいる本で「選択の科学」が面白く興味が持てます。コロンビア大学教授で盲目のインド人女性です。【写真:アマゾンHPより】
動物園の動物は、自然界の動物に比較して短命だそうです。例として、野生のアフリカ象の平均寿命は56歳ですが、動物園のアフリカ象は17歳だそうです。環境からいえば動物園の方が恵まれていますが、野生環境での様々な選択肢がないので、それが逆に寿命に影響しているのです。
老人ホームの実験で、一つのグループは「選択権のない」グループです。鉢植えを渡しますが看護師が世話をし、映画は木曜日か金曜日にあると告げただけのグループです。二つ目のグループは「選択権のある」グループです。鉢植えは自分で世話をすることを条件とし、映画は木曜日か金曜日のいずれかを選択できると告げただけのグループです。
わずかな選択権の違いですが、その他の条件は全く同じにして3週間経過して観察します。驚くことに、「選択権のない」グループの人たちは、70%以上の人の健康が悪化しました。しかし、「選択権のある」グループの人たちは、90%以上の人の健康状態が改善したのです。
人間でも動物でも選択権がはく奪されると、寿命や健康にまで影響を及ぼすのです。
さて、現在の前立腺癌の医療環境を考えると、この「選択権のなさ」が浮き彫りにできます。
健康診断や人間ドックで50歳以上ではルーチン検査でPSA検査が組み込まれています。検査でPSA値が高ければ、精密検査=前立腺針生検になります。前立腺針生検でたまたま前立腺癌が発見されたなら、前立腺癌の治療になります。患者さんは自覚していませんから、限局性の前立腺癌がほとんどです。根治的な治療が可能ですから、まずは手術、次に放射線治療、最後にホルモン治療の順番で治療を選択しなければなりません。
この現代の前立腺癌の診察・検査・治療の流れの中で、患者さんに選択権はほとんどありません。
会社で強制的に実施される(選択権なく)健康診断や人間ドックで、PSA検査は実施されるのです。PSA値が高ければ当然のように(選択権なく)前立腺針生検をすすめられます。40歳以上の男性で20%以上の危険率で前立腺癌は存在しますから、たまたま発見されれば、医師ばかりでなく家族や周囲の人のすすめで(選択の余地なく)、治療に推し進められてしまいます。この「選択権のなさ」が患者さんの寿命にまったく影響はないのしょうか?
【参考】
「選択の科学」は厚くて読むには骨が折れるので、この写真の「選択日記」の方が読みやすいと思います。【写真:アマゾンHPより】
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コメント
自分は野球が好きなのですが、プロ野球で名を残すほど活躍する選手は必ず基本を元に自分の形をもちます。落合選手、王選手、イチローのフォームも、古田選手のキャッチングも、基本を元により確率をあげる為に、他の人の批判を受けながらも、貫き通し、その理論の正しさを定着させました。
医師が人を救うプロだとすれば、今まで学んできたもので、もっとオリジナリティのある治療ができる人がもっと出てきて良いものです。特にまだまだ未知の病気、しっかりとした結果の出てない病気に関しては。(自己免疫疾患等呼ばれる病気) 教科書通りの処方、治療なら素人でもできますよね。そして、その選択肢の無さが苦しんでる患者をより苦しめてるように思います。
先生の理論が正しいのかどうか素人の私には分かりません。が、仮に正しくなかったとしても、先生のような姿勢を持てる人じゃなければ、新しい治療の扉は開けないと思います。影ながら応援してます。
【回答】
ありがとうございます。
投稿: | 2012/11/15 19:12