前立腺癌におけるActive Surveillanceは安全か?
前立腺癌におけるActive Surveillance(積極的な未治療・監視法=待機療法)は安全か?
Monique J. Roobol
Erasmus University Medical Center, Department of Urology, Rotterdam, The Netherlands
掲載日: 2012年8月1日(TTMed-Urology アステラス製薬情報から)
To cite this content: Timely Top Med Uro Jap. 2012 Aug 01; Vol. 11; 5-91443
【要約】
PSA前立腺特異抗原に基づいたスクリーニング活動により、現在では多くの男性に低リスクの可能性のある前立腺癌が検出されている。癌が検出されたのに治療を行わないということは矛盾するように思われるが、前立腺癌においては積極的な治療は必ずしも自明の選択ではなく、active surveillance戦略が適切となるような場合もある。
しかし、前立腺癌には多様な特質があるため、このようなアプローチが適する患者群の選択はきわめて重要である。現在、active surveillanceプログラムへの組み入れ基準は、国により、あるいは施設によっても異なり、主として個人的な好みおよび科学的エビデンスのない臨床的な専門知識に基づいている。
積極的治療へと切り替えるきっかけとなる要因の基準については、それぞれのactive surveillanceプログラムによってさまざまである。このように患者選択およびモニタリングに不明確な部分があることは、active surveillanceが現実的でないという印象を与えるかもしれない。しかし、現在得られている8年後までの追跡データから、疾患特異的生存率は97~100%であることが示されている。
剖検研究に基づいた発生率のデータおよび早期検出による発生率上昇をみると、active surveillance戦略に適した、生検で検出可能な前立腺癌のサブセットが存在するはずである。もし前立腺癌患者のリスク分類を適切に行うことができれば、active surveillance戦略による5~10年間の進行データは、現在得られているものよりもさらに良好になる可能性が高い。
【考察】
今の日本では、この待機療法は一般的ではないでしょう。
針生検で前立腺癌が発見されたら、何かしないではいられなくなるのが、今の日本の泌尿器科医師です。この私でも『何かしたい!』と思いますから・・・。
上記の文献に記載されているように、前立腺癌が発見されても、あえて積極的に何もしないで積極的に監視する方法は、日本人に馴染みのない日本人の感性からすると考えられない方法です。
日本人でしたら、少なくてもホルモン療法は実施するでしょう。ところが、欧米人の場合、ホルモン療法で容易に血管炎や血栓症などの副作用で死ぬ確率が高くなるのです。また、前立腺全摘出手術を実施してインポテンス・EDになって夫婦生活が出来なくなれば、それはそれで確実な離婚原因になってしまいます。
臨床的に意義のない、グリソン分類の低い前立腺癌であれば、欧米人であれば積極的な治療をしないで様子をみたくなる気持ちになるでしょう。
ところが日本人の場合、ホルモン療法を行っても人種的に血管炎や血栓症にはなりにくい、手術を行ってインポテンス・EDになっても奥さんから責められなければ、治療の選択肢は増え、待機療法を選択する可能性が低くなります。
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コメント
こんにちは。
最新レポートとコメント掲載ありがとうございます、
8年も延命出来ればオンの字です。
心強い限りです。
こちらもその後一応順調で、痛いのがなくなったのが何よりでありがたいです。
9月の再診結果を楽しみにしています。
本当にありがとうございます。
投稿: 深海魚 | 2012/08/02 08:06