年齢にかかわらず前立腺癌のPSAスクリーニングを推奨せず
USPSTF recommendationのアップデート
「年齢にかかわらず前立腺癌のPSAスクリーニングを推奨せず」
2012年6月11日 カテゴリー:泌尿器癌
(TTMed-Urology アステラス製薬情報から)
U.S. Preventive Services Task Force(USPSTF)は、前立腺癌に対する前立腺特異抗原(PSA)に基づくスクリーニングの利点および害について新たなエビデンスをレビューし、2008年のrecommendationをアップデートした。
最近の試験結果から、PSAスクリーニング後10~14年間における前立腺癌死亡率の低下は、最大のものでも小さな値であり、全死亡率にも明白な低下はみられないことが示されている。
さらに、PSAスクリーニングの害として、偽陽性が高率にみられること、診断のための生検に伴う合併症発生率が高いこと、過剰診断および過剰治療のリスクがあることが報告されている。
これらのことから、USPSTFでは前立腺癌に対するPSAスクリーニングは推奨されず、このrecommendationは年齢にかかわらず米国のすべての一般男性に適用されるとしている
(Moyer, V.A. et al. Ann Intern Med 2012, 157(2): 1)。
【考察】
最新の欧米の知識・知見やテクニックをただコピーしているような日本の医学会なのに、ことPSA検査に関することとなると、何故か意固地になってPSA検診のネガティブ情報に耳を貸そうとしません。
以前のニュースも「日本とアメリカとでは事情が違う」との見解です。科学を信奉する医師たちの言葉とは思えません。おそらく、このニュースも鼻先で笑われてお仕舞いでしょう。
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コメント
2009年1月、PSA値が8.7で生険を受けた際は陰性でしたが、3年後に13.44となったため、再度生険を受け、GS8且つT2cと判定されました。前立腺癌の進行は極めて遅いと聞いていたので、この3年間における顕著な悪性化が腑に落ちませんでした。先生が仰るように、生険により癌が凶暴化したのでしょう。PSAスクリーニングの弊害を実感しております。しかしながら局所癌が判明した後における定期的なPSA検査はホルモン療法・化学療法等において、癌の進行を抑制し、長期に渡って「癌とお付き合い」していく上では重要な指標になると思っております。
【回答】
おっしゃる通り前立腺癌の進捗を観るには、PSA検査はとても重要です。
発見されてしまったのですから、癌に振り回されることなく、「良いお付き合い」で人生を謳歌して下さい。
投稿: moto | 2012/07/02 21:58
超御多忙の毎日をお過ごしにも関わらず、早速にご回答を頂き感激しております。去勢抵抗性癌の増殖により、やがては再燃しエストラサイトを始めとする化学療法(抗がん剤治療)へと移行せざるを得ないMABが主流となっている現状を見るに付け、先生がお奨めの低容量エストラサイトの投薬とPSA監視による、換言すれば、「抗がん剤による休眠療法により前立腺癌と共生する」発想に基づき治療を行う医院・医師のあまりの少なさに首をかしげております。何故なのでしょうか? 「良いお付き合いで人生を謳歌」するようにとのご助言、とても勇気付けられております。感謝感謝デス!!
【回答】
私の言葉で元気になられて光栄です。
私の使用しないようなテクニカル・タームを自然に使われていますが、motoさんは医師か理系の研究者ですか?
投稿: moto | 2012/07/03 21:47
ご明察の通り50年以上、骨の髄まで研究生活(自然科学・工学)に染待ってしまった人間です(医学は全くの素人)。現在のMABに代表される内分泌治療は長年に渡り「型」にはまりきっており、何ら革新的な進歩が見られていない一方で、去勢抵抗性癌による再燃に対して、常道的な抗がん剤治療以外に「打つ手なし」といった状況を見るに付け、一人の癌患者とし、失望しておりました。しかし、先生のブログに邂逅し、良い意味で「常道的(標準的)」治療に新風を吹き込もうとしておられる試みに接し、意を強くしているところです。常道を歩む限り、そこには次世代を切り開く知見も発見も期待できないことを長きに渡った我が自然科学研究の人生からも痛感しております。貴クリニックにおける診療・研究活動の益々のご発展を祈念しております。
【回答】
ご声援、ありがとうございます。
投稿: | 2012/07/06 22:23