PSA値27.3の前立腺癌
22年10月1日 27.3
22年12月9日 26.3 アボルブ
23年3月3日 30.56 アボルブ
23年4月1日 32.09 アボルブ
この時点で、前立腺に前立腺癌の硬結が触れます。
アボルブによる前立腺癌の治療効果は薄いと考えプロスタールに変更しました。
23年4月15日 24.496 プロスタール
23年4月28日 13.93 プロスタール
PSA値の推移からプロスタールの効果が期待できたのですが、プロスタールで血糖上昇・微熱のため止む無くアボルブに変更しました。
23年5月26日 21.09 アボルブ
23年6月23日 25.63 アボルブ
23年7月20日 28.83 アボルブ
23年8月18日 31.06 アボルブ
23年9月21日 38.77 アボルブ
23年10月7日 57.523 アボルブ
排尿障害によるPSA値の上昇ではなく、明らかな前立腺癌によるPSA値の上昇です。
マイルドな抗男性ホルモン剤は無効であることから、その前立腺癌もグレソン分類1~3程度の良いものではなく、悪性度の高いグレソン分類4か5でしょう。
患者さんは針生検・前立腺手術を希望されずに、当院での保存的な治療することを強く望んだので、抗癌剤治療を開始しなければならないことを納得していただきました。
抗癌剤であるエストラサイト(女性ホルモンと毒ガスで有名なナイトロジェンマスタードの合剤)を開始しました。
23年12月15日 17.74 エストラサイト(毎日1カプセル)
エストラサイト治療20日後のPSA値です。
通常容量は毎日4カプセルですが、副作用を極限まで抑えるために4分の1の毎日1カプセルで効果が出てきました。
24年1月5日 0.89 エストラサイト(毎日1カプセル)
エストラサイトの効果は決定的で、前立腺の触診でも前立腺癌の硬結は触知しません。
24年2月2日 0.30 エストラサイト(1日おき1カプセル)
前回の効果からさらにエストラサイトの容量を減らし、1日おきに1カプセル、つまり通常容量の8分の1にしましたが、効果は持続しています。
24年3月1日 0.13
さらに、PSA値は下がりました。
【考察】
前立腺の触診で触れることのl出来る前立腺癌はおそらく直径10mm以上からでしょう。直径10mmの癌には、約10億個の癌細胞がひしめき合っていているといわれています。その考えから、下の表を作成しました。
----------------------------------------------------
癌の直径 癌細胞の数 比率 PSA値(例として)
=====================================
10mm 10億個 1 30
5mm 2.5億個 1/4 8
1mm 1000万個 1/100 0.3
0.31mm 100万個 1/1000 0.03
0.1mm 10万個 1/10000 0.003
----------------------------------------------------
この患者さんのように、触知できる前立腺癌があり、PSA値が30前後の高い値だとすると、治療によりPSA値が0.3まで少なくなったとしても、直径1mm約1000万個の癌細胞が存在する可能性が未だある訳ですから、安心できません。
1000万個の前立腺癌細胞は、倍加時間(癌体積が2倍になるまでの時間)10年として毎日3000個近い新しい癌細胞を作っている可能性があります。人間の1日の癌細胞処理能力は、1日5000個程といわれていますから、前立腺だけで毎日3000個の癌細胞では生体の処理能力を超えてしまいます。
全ての臓器の癌細胞を処理しなければならないことから、前立腺癌細胞に割り当てられる処理数は、せいぜい10分の1の300個以下の癌細胞でしょう。1日300個以下の癌細胞が作られる元の癌細胞総数は約100万個、PSA値にすると0.03になります。
癌細胞の数量とPSA値が完全に相関していると仮定すれば、この患者さんの場合、PSA値を0.03まで下げなければならないことになります。これはマイルドな抗男性ホルモン治療ではなく、抗癌剤を使用した場合に限っての仮定です。
この患者さんの場合、この治療を続ける限り、前立腺癌細胞の1000万個は維持するでしょうから、薬を継続しなければならないことになります。もしも、PSA値が0.03になれば、生体の本来持っている癌細胞処理能力で抑え込むことができるので、抗癌剤治療は休止しても良いことになります。
【追記】
3月になり、さらにPSA値は下がりました。その値は0.13です。
エストラサイトを週1回に減量します。
【その後】
エストラサイトの減量(週1回1錠)してからの結果です。
平成24年3月29日 PSA 0.14
平成24年4月26日 PSA 0.15
平成24年5月24日 PSA 0.13
平成24年6月21日 PSA 0.11
エストラサイトの更なる減量(2週に1回1錠)してからの結果です。
平成24年7月19日 PSA 0.14
平成24年8月16日 PSA 0.37
平成24年9月13日 PSA 0.61
さて今後、どのように変化するでしょうか?
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コメント
エストラサイトでの治療について、4月26日を最後に記述されていません。その後、どのような経緯になっていますでしょうか?
【回答】
その後も安定しています。
投稿: うっちゃん | 2012/09/25 15:13
先生にお尋ねいたします。
◎0.13くらいに下がった時点で、もう少し粘って週一回一錠を継続して、PSAを限りなく目標値0,03に近づけて、抗がん剤治療を断つという方向へは考えられないのでしょうか?
【回答】
抗癌剤を続けても、前立腺組織の全部を摘出している訳ではありませんから、机上の理想的な値にはなりません。
健常な前立腺細胞でさえもしぶとく生き残りますから、まして前立腺癌細胞に対して、全く治療をしないということは出来ません。』
>平成24年9月13日 PSA 0.61
さて今後、どのように変化するでしょうか?
◎この後の経過は如何なのでしょうか?
【回答】
平成25年8月16日現在で、PSA値2.64です。
エストラサイトは月に2回(2週間に1回)の割合で1錠ずつ服用していただいています。
前立腺癌が暴れているとは思えないので、このまま治療を続け経過をみています。
投稿: K.F | 2013/09/06 09:55
先生、ご回答ありがとうございます
この方のケースが一番自分に近いケースなので、相当な興味を持って読ませていただいています。
◎エストラサイト、月に2錠に抑えていらっしゃるんですね!(私は週2錠ですが全然苦にはならないので、月2錠というのは極限まで抑えた治療といえますね?)イソフラボン、ビタミンCは、毎日服用続けていらっしゃるのでしょうか?
【回答】
究極、月1回~年4回です。
ビタミンC、イソフラボンを服用しています。』
◎やがて(どのくらいの期間?)エストラサイトの使用量だけでは、コントロールできないくらいの暴走が起きることも考えられますか?それとも、そんな暴走は起こす前に制御できますでしょうか?
【回答】
可能性はあります。
PSA値が急に上昇始めたら、抗癌剤を追加する事になります。』
◎エストラサイトで、治療した後小線源療法などの治療への変更はできますでしょうか?
【回答】
可能でしょう。』
◎万々が一、先生が体調不良等等で、医療活動が出来なくなった場合の対処法は如何でしょうか?
【回答】
地元の医師を説得して、私の方法を継続していただくしかないでしょう。』
大変失礼でありますが、よろしくお願い申し上げます。
【回答】
本当に・・・。
投稿: K.F | 2013/09/06 13:42
76歳、前立腺肥大 大きさ 60cc,PSA 4.7 過去5年以上ハルナールを服用、排尿困難化し、5週間前よりアボルブとユリーフ服用開始、背中に痒み発生し、ユリーフをハルナールに戻し、痒み消失するも、5-6日前より
背中にカイロを入れた様な温もりを感じ始め
次第に強くなっています。ハルナールはは長年異常感なく、アボルブに起因かと服用を中止、ハルナールのみとするも、異常感は消えません。ハルナールへの体質変化でしょうか。異常感のあるままユリーフやハルナール
を続けても問題ないでしょうか。かかっている先生からは分らないと言われています。
よろしくお願いします。
【回答】
問題ないものと思います。
治療で症状に変化が出ます。
その内、落ち着くでしょう。
投稿: 〇〇〇〇秀一 | 2013/11/30 19:42
初めまして、56歳の男性です。既に30代くらいから排尿困難を自覚していましたが、50歳を越えてますます増悪してきていたので昨年11月初めてPSAを測ってみたところ14.27でした。驚いて、しかし針生検は避けたいと先生のサイトを見つけプロスタール50㎎とハルナール0.2㎎を始め、1ヶ月後に1.96まで低下。それでプロスタール25㎎に減らしましたが1ヶ月後は1.94と安定していました。ただ、HbA1cが微妙に上昇傾向でしたので1ヶ月プロスタールを中止したら5.22まで戻ってしまい、慌てて50㎎で再開して1ヶ月後に1.63でした。ただ、そのまま50㎎で継続していますが、今月も1.62と横這いです。とりあえず今のままで経過をみるしかないかと思っていますが、あるいは100㎎まで増量していったん1を切るレベルまで落とした方がいいでしょうか? 先生のご見解をうかがえれば幸いです。
【回答】
25mgを続けて服用すれば良いでしょう。
出来れば、前立腺の大きさを測定し、大きければ前立腺が30cc以下になるように薬を続ければ良いと考えます。
投稿: プシコの町医者 | 2014/05/14 13:07
早速のご回答、ありがとうございます。前立腺の大きさを目安にすればいいのですね。なるほどです。ありがとうございました。
投稿: プシコの町医者 | 2014/05/16 09:27
先生のブログで:
「エストラサイトの更なる減量(2週に1回1錠)してからの結果です。
平成24年7月19日 PSA 0.14
平成24年8月16日 PSA 0.37
平成24年9月13日 PSA 0.61
さて今後、どのように変化するでしょうか?」
とありますが、その後のPSA経緯にとても興味があります。お差しさわりなければ、お教えください。また、低用量エストラサイト長期服用後に、再燃に至った例があればお教えください。その際には、いかなる治療を選択するのがよいのか、御考えをお聞かせいただければありがたく思います。
【回答】
平成24年10月11日 0.61
平成24年11月8日 0.72
平成24年12月6日 0.95
平成25年1月8日 0.96
平成25年1月31日 1.10
平成25年2月28日 1.46
平成25年3月28日 1.59
平成25年4月27日 1.93
平成25年5月23日 1.95
平成25年6月20日 2.54
平成25年7月18日 2.28
平成25年8月16日 2.64
平成25年9月14日 3.34
平成25年10月10日 3.52
平成25年11月13日 4.75
ここで、エストラサイトを週1回1錠の増量しました。
平成25年12月5日 2.90
平成26年1月9日 1.91
平成26年2月6日 1.59
平成26年3月9日 1.31
平成26年4月3日 1.51
平成26年5月1日 1.30
平成26年5月29日 1.18
平成26年6月28日 1.25
ここで、多少の貧血が認められたので、2週に1回1錠に減量しました。
平成26年7月15日 1.58
平成26年8月21日 2.48
現在、低め安定で一進一退です。
もしも再燃するのであれば、薬剤の増量か、別の抗癌剤を追加します。
投稿: | 2014/08/31 10:17
御回答感謝! 貴重なデータをご開示頂きありがとうございました。23年10月7日にPSA57.523且つ触診でも癌を確認できるハイリスクと思える状態にもかかわらず、低用量エストラサイト治療により、3年経過後も1.3から2.5と低め安定!
すごいですね。薬理試験結果では、エストラサイトは服用後96時間で約60%が体外に排出されるとのこと。従って、半減期を72時間(3日)と仮定するならば、約1週間で100%体外に排出されてしまう計算になります。それにもかかわらず、2週間に1錠服用でも効果が持続しているようですね。この患者の方は、エストラサイト服用以外にも特筆すべき治療を併用しておられるのでしょうか?お差しさわりなければお教えください。
【回答】
前立腺癌の1回の細胞分裂は1ヵ月以上かかるとされています。
すると、1ヵ月以内に1回エストラサイトで攻撃しても、癌細胞の増殖は抑えられる計算になります。
ところが、全ての癌細胞が同時にシンクロして細胞分裂している訳ではないので、1週間か2週間に1回の時間差攻撃を掛けるだけでも、前立腺癌全体は縮小してくれる計算になります。
そのように考えると、有効血中濃度を常時高くしている必要はない訳です。
実際にその考え方で治療して、前立腺癌に対する効果は出ていますし、正常の細胞には副作用があまり出ていませんから、体に負担の少ない継続した治療が可能な訳です。
しかし、前立腺癌細胞もバカではありませんから、分裂速度の早い癌細胞が行き残り、この治療では対抗しきれなくなる可能性もあります。
それ以外の治療としては、代替医療の考えを加え、ビタミンCやタガメット、ビタミンD3の服用をしてもらっています。」
何時も貴重なお考えを御開帳いただき勇気づけられています。感謝感謝!!!
投稿: | 2014/09/02 14:10
先生いろいろお世話になりまして有難うございます。その後の経過を報告させて頂きます。H医大にて1月28日に前立腺生検と骨シンチを、29日にCTの検査をおこないました。2月9日に検査結果の説明があり、生検の結果やはり前立腺癌がありました。他への転移はなく、前立腺にとどまっているのでステージⅡとの事でしたが、グリーソンスコアは、5+5=10と悪性度の非常に高いものでした。今後の治療方法を相談致しましたが、ホルモン治療と放射線治療の併用と云うことになり、早速、本日(2/10)より服用するようにとカソデックス錠を処方されました。また3月1日にゴナックスの注射をすることになりました。その後はホルモン治療の様子を見ながら放射線治療の準備をしていくとのことでした。以上とりあえず御報告まで!
投稿: ○田 | 2016/02/10 11:12
№25126の○田です。その後の経過を報告致します。H医大にて6/8よりIMRTの放射線治療(38回、総線量76グレイ)を行い、8/2に終了致しました。PSA値は5/24に6.8で8/16に1.66となっております。
【回答】
経過が順調で良かったですね。
このまま癌が抑え込まれることをお祈りいたします。
当院で前立腺癌が指摘されたのが、平成22年11月でしたから、足掛け6年の闘病になります。
平均寿命は余裕で超えられるでしょう。
私の方が、先に逝きそうです。
投稿: | 2016/08/22 12:09
高橋先生
初めてご相談いたします。
当方、元外科医
最近の検診でPSA55
すぐに地元の市民病院を受診し、エコーと触診
を受けたが、癌を示す所見なし、来週MRI予定です。
12年前にPSA8で生検 マイナス、そのままPSA測定せず。心配でたまりません。
PSAが12年間で数倍とは、癌でもこんなもんでしょうか。
☪️回答
一般的にPSA値が55では、90%以上の確率で癌です。
ただし、炎症でPSA値が100以上の方もおられます。
エコー検査と触診で分からない前立腺ガンもあります。
前立腺ガンが前立腺組織全体に拡散している場合です。
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/.shared/image.html?/photos/uncategorized/2017/08/18/psagrayzone.jpg
投稿: okazaki | 2017/09/25 19:39