神は細部に宿る、悪魔も細部に宿る
「神は細部に宿る God is in the details.」という言葉を先日カンブリア宮殿という番組の中、世界的有名な建築家との対談で村上龍が最後の感想を述べた時に見聞きした言葉です。
調べてみると「神は細部に宿る」という言葉は、建築学の中で頻繁に使用されるフレーズです。この言葉から派生した「悪魔は細部に宿る The Devil is in the details.」という言葉があるくらいです。
細部へのこだわりが全体のイメージを作るということでしょう。ある建築家は建物全体をイメージするのではなく、初めに窓の設計から取り掛かり、そのイメージに合う建物全体を設計するそうです。
私たち人間は、60兆個の細胞から成り立っています。その細胞一個一個に核があり、核の中にはその人特有で同一の遺伝子情報、DNAが含まれています。このDNAには、その人間の姿かたちなどの外観ばかりだけではなく、性格、行動様式、運動神経、遺伝的病気などあらゆる情報が包含されています。「神は細部に宿る」というのにピッタリの事象です。
PSA値が高くなる理由の多くが排尿障害か前立腺肥大症です。患者さん本人が自覚していなくても、PSA値の上昇で排尿障害か前立腺肥大症が疑われる訳です。
排尿障害や前立腺肥大症があり、体内の水代謝バランスが乱れると、うつ症状、自律神経失調症やアレルギー症状が出現します。現代の医療水準では、それら病気の対症療法に終始するしか能がないのが現状です。
PSA値の上昇で排尿障害や前立腺肥大症が発見され、適確な治療が実施されれば、一見排尿障害とは無関係な病気も改善します。そういう意味で、前立腺組織の部分的構造破壊が原因のPSA値の上昇は、「神が細部に宿る」典型的な例です。
それに反して、同じ理由でPSA値が上昇しても、それを「前立腺癌が原因」と早合点してしまい、急きょ針生検を行い、高い確率で隠れている「潜伏癌」を無理やり発見し、「前立腺癌」としてドンドン治療を行い、最後には浸潤・骨転移を治療行為で作り、患者さんの寿命を縮めているとすれば、同じ事象であっても、「悪魔は細部に宿る」事になると考えらえます。
【映画 天使と悪魔から】
結局、「神=白い神」とするか「悪魔=黒い神」とするかは診断する医師の能力にかかっているのです。
「白い神」の僕(しもべ)が天使であり、「黒い神」の手先が堕天使です。
医師は意志を持って天使であり続けなければなりません。
エビデンスと称して安易に得られる知識は「悪魔」の誘惑であり、あらゆる根拠の整合性を加味して、想像力をフル回転しやっとこさっとこ苦労して得られる知識こそが「神」への誘いなのだと考えます。
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