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神は細部に宿る、悪魔も細部に宿る

「神は細部に宿る God is in the details.」という言葉を先日カンブリア宮殿という番組の中、世界的有名な建築家との対談で村上龍が最後の感想を述べた時に見聞きした言葉です。
調べてみると「神は細部に宿る」という言葉は、建築学の中で頻繁に使用されるフレーズです。この言葉から派生した「悪魔は細部に宿る The Devil is in the details.」という言葉があるくらいです。
細部へのこだわりが全体のイメージを作るということでしょう。ある建築家は建物全体をイメージするのではなく、初めに窓の設計から取り掛かり、そのイメージに合う建物全体を設計するそうです。

私たち人間は、60兆個の細胞から成り立っています。その細胞一個一個に核があり、核の中にはその人特有で同一の遺伝子情報、DNAが含まれています。このDNAには、その人間の姿かたちなどの外観ばかりだけではなく、性格、行動様式、運動神経、遺伝的病気などあらゆる情報が包含されています。「神は細部に宿る」というのにピッタリの事象です。

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前立腺癌の悪性度とPSA

S07985091f002PSA値が高い=前立腺癌という短絡的な発想が広まっています。物事は、それほど単純ではありません。そこで、前立腺癌の悪性度とPSAについて解説したいと思います。
以前にも説明しましたが、前立腺癌の悪性度をグレソン分類で観ると、1~5まで分けることができます。
悪性度が増加するに従い、つまり1から5に近づくに従い、前立腺としての腺腔構造が次第に崩れます。グレソン分類の4と5には腺腔構造がほとんど観察することができません。(右の組織図参照)
前立腺の腺組織で作られたPSAという酵素は、腺腔構造から次第に集合して大きな導管に貯留します。悪性度が増して腺腔構造がなくなるということは、腺組織で作られたPSAの逃げ道がなくなることになります。逃げ道のなくなったPSAは腺組織の外に漏れ出ることになります。漏れ出たPSAは細胞外液に拡散しリンパ液・リンパ管・静脈と流れ血液中にPSAが採取されます。これが、PSA検査の原理です。
しかし、この考え方で理論を進めて行くと、悪性度の低い=グレソン分類の1・2・3では腺腔構造が保たれていますから、PSAが逃げ場を失うことはありません。すると、前立腺癌でグレソン・スコアが6(3+3)以下の48.4%(アメリカの統計)の患者さんは何故PSA値が上がり、前立腺癌が発見され、結果として前立腺全摘出術を受ける破目になったのでしょうか?
極論すれば、腺腔構造のほとんど消失したグレソン分類の4と5だけがPSA値が上昇する筈です。グレソン・スコア8(4+4)・9(5+4)・10(5+5)のたった6.9%(アメリカの統計)の患者さんだけがPSA値が上がる筈です。

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PSA値27.3の前立腺癌

Psa25126平成22年10月の健診でPSA値27.3と高く、11月に来院された65歳の患者さんです。
前立腺の触診で、前立腺右葉に前立腺癌と思われる小指大の硬結を前立腺内に触知しました。超音波エコー検査で前立腺の大きさは39cc(正常20cc以下)で前立腺結石も多数認められます。
排尿障害もあったのでユリーフとアボルブを処方しました。
その後の処方とPSA値の推移です。

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