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メール相談から

高橋クリニック 院長 高橋知宏 様

お忙しい中を恐縮ですが、ご相談に乗っていただければ幸いと存じます。
始めまして私は、〇〇県〇〇市に住んでおります〇〇〇〇と申します。
生年月日 昭和3・年 ・月・日生まれ 5・歳です。

45歳を過ぎてから定期的に人間ドックを受けております。
ここ数年は、癌の発病を心配し、所沢にあるPET-CTを1年から1.5年間隔で、また大腸と胃の
内視鏡を概ね1年~2年間隔で近所の医院にて検査をしております。
(大腸はポリープが大量に見つかり3年間掛けて段階的に切除しました。)
今のところ特に異常はありませんし、尿の出も気になっていません。前立腺肥大予防にとノコゴリヤシを飲んでいます。

データーとしては、下記の通りPSAの値が漸増傾向です。
2008年3月・・日 PSA 3.2(PET診断にて前立腺内腺がやや大きい)
2009年5月・・日 PSA 4.3(PET診断にて前立腺の大きさに変化なし。前立腺肥大)
2010年6月・・日 PSA 4.7(PET診断にて前立腺肥大やや大きい→造影剤を入れてMRI検査の指示あり。)
2010年11月・・日 PSA 4.0(造影剤を入れてのMRI検査をしたが、異常なしとの診断)
2011年11月・・日 PSA 5.22(胃の内視鏡の為の感染症検査時にPSA検査も行った。)
今年は、まだPET診断を受けておりません。

本日、11月・・日の結果を受け前立腺がんも考えられるので念のため一度専門医を診ていただくことも考えては?と言われ心配になり、パソコンで色々と検索した結果、先生のホームページやお考えを記された文章を読み信頼感と安心感を得られ、是非アドバイス頂ければと思いメールした次第です。
また、受診の必要があれば、時間をつくり早めにお伺い致します。
会社からのパソコンにて送信しておりますが、問題はありませんのでこちらに返信を頂戴できれば幸いと存じます。
よろしくお願い致します。

【【回答】

お答えします。

PSAの上昇の本質は、「前立腺組織の部分的破壊」に他なりません
「部分的破壊」の原因として、排尿障害・前立腺炎・前立腺肥大症・前立腺癌があります。
つまり、前立腺癌はPSA上昇の原因の一部でしかないのです。
PSA検診で前立腺癌が見つかるのは(日本の平成17年度統計)、全年齢で0.75%です。

しかし、日本人の前立腺癌潜在率は、PSAの値に無関係に全年齢で20%以上の確率です。
つまり、PSA検診で発見される前立腺癌は、前立腺癌を持っている人の20分の1以下にしか過ぎません。
その癌を発見されたわずかな人たちだけが、「前立腺癌」と診断され、その中から5年以内に20%近くの人が前立腺癌で癌死するのです。
PSA検診は前立腺癌で死ぬ人を「増産」しているように思えてなりません。
PSAが気になるのであれば、前立腺肥大症や排尿障害の治療を優先するべきです。

お大事に。

高橋クリニック 高橋 知宏

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コメント

診察カード番号29534です。
処方していただいた薬を飲んできました。また並行して近隣の内科医でPSA検査を受けてきました。先日、この医院に有るPSA検査記録を頂いてきました。
09.6.6→0.50(健康診断)
10.11.20→0.43 同上
13.4.1→21.76(貴院受診時)
13.5.8→3.54(治療開始後)
13.8.1→1.99 同上
とりあえず数値変化をお伝えし、今のままの処方でさらに治療を続けていくべきかをお伺いしたいと思います。
必要ならば受診に伺いたいと思っていますが、どうすべきか、近日中に電話にてお伺いしたいと思っています。
何卒よろしくお願いいたします。
【回答】
貴方が当院を受診したきっかけは、急性前立腺炎後のPSA値200以上が原因でしたね。
急性前立腺炎は、排尿障害が根本的原因です。
治療によりPSA値は下がりましたが、排尿障害は薬剤中止にすると、また戻ります。
ですから、薬剤は継続するべきと思います。


投稿: 診察カード29534 | 2013/08/21 01:02

若年者のPSA値について相談をお願いします。
私は現在53歳です。昨年の健康診断でPSAが4.45でした。6月に再検診をしたところ4.53に上がっており、PSA4.0以上は前立腺癌かどうかを確定するために針生検が必要だと言われました。
先生のブログを読んでおり、多少排尿障害もあったことから、針生検はせずに、セルニルトンを処方してもらい、10月に再度検査をすることにしました。
検査をする前に、人間ドックにかかる機会があり、その時にPSAの検査も合わせておこなったところ、3.83で、腹部超音波の診断で前立腺の石灰化がありました。
その結果をもって再度受信したところ、PSA4.0以上で検査が必要なのは65歳以上で、64歳以下はPSA2.5以上であれば針生検を行ったほうがいいと勧められました。
先生のお考えをお聞かせください。また、主治医は前立腺の石灰化は問題ないと言いましたが、これはPSAの値とは関係ないものなのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
【回答】
PSA値の上昇は、前立腺癌ばかりだけではなく、排尿機能障害や前立腺肥大症や慢性前立腺炎などでも上昇します。
つまり、前立腺組織の部分的破壊がPSA値上昇に関係するのです。
50歳代では12%くらいの確率で前立腺癌が存在しますが、それはPSA値の値に無関係に存在します。
そのほとんどが潜伏癌で寿命には無関係な癌です。
針生検をすれば、貴方の年齢であれば10人に1人以上の確率で前立腺癌が発見され、次の治療、すなわちホルモン療法・放射線治療・外科手術へと突き進むのです。
貴方には、恐らく排尿障害があり、そのためにPSA値が上昇したのでしょう。
またヨーロッパで実施されたPSA検査の大規模研究では、55歳未満のPSA検査と前立腺癌の死亡率の関係は、PSA検査をしなかったグループの方が良かったのです。
しかし、母集団が少なかったということで、研究結果には反映されなかったのでした。
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/bph/2010/11/psaerspc-22a6.html
おそらく、主治医は論文の要旨しか読んでないと思われます。

投稿: 清水 | 2013/10/26 23:53

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