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PSA値:65.2がPSA値:1.84へ

Psa25703m65280歳代の男性です。
内科検診でPSA検査を行ったところ、PSA65.2ng/mL(正常値4.0以下)と極端に高い値でした。主治医は前立腺癌だろうということで、地元の大病院の泌尿器科を紹介しました。
患者さんは前立腺針生検をされるのが恐怖で、インターネットを調べている内に、このブログを見つけ、平成23年3月に高橋クリニックを受診されました。
触診上、前立腺は小さく、癌特有の硬結は触れません。
超音波エコー検査は、上の写真のようです。

Psa25703m652pp写真の中にコメントを付けました。
触診では大きく触れなかった前立腺ですが、超音波エコー検査では39cc(正常20cc以下)と膀胱内に突出する形で大きな前立腺です。この患者さんに特徴的なのが、嚢胞という袋が存在します。嚢胞内には恐らく前立腺液が貯留しています。そしてその前立腺液にはPSAがたっぷりと含まれているのです。この事実だけでもPSAが高くなる証拠になります。
この患者さんの前立腺肥大症は2種類の成分からなるもので、線維腺性過形成と線維筋性過形成の混合型の前立腺肥大症です。「線維腺性過形成」は、分泌腺が主な成分で軟らかな前立腺肥大症組織です。「線維筋性過形成」は、平滑筋組織が主な成分で硬い前立腺肥大症組織です。
側面像で分かるように、「線維腺性過形成」部分が、「線維筋性過形成」部分に挟まる形になっています。排尿の際に、「線維筋性過形成」に「線維腺性過形成」がつぶされます。すると、線維腺性に多く含まれる腺腔内の前立腺液(PSA)に圧力がかかり、PSAが腺腔外に漏出し、PSA検査で異常な高さになる訳です。

Psa25703m184この患者さんに排尿機能障害の薬であるユリーフ(α‐ブロッカー)と抗男性ホルモン剤であるプロスタールを服用していただきました。すると、7月(治療開始4ヵ月後)のPSA値が何と1.84ng/mLになったのです。患者さんも驚きましたが、私も驚きました。
超音波エコー検査では、前立腺の大きさは35ccに縮小していますし、形もゴツゴツした前回の形から、滑らかな形状に変化しています。

Psa25703m184pp写真を詳細に見ると、嚢胞は、ほとんど変化ありませんが、前立腺の「線維筋性過形成」の影が薄く、面積も縮小しています。つまり、硬い前立腺肥大症成分が軟らかくなり、「線維腺性過形成」部分の圧迫が解除されたのでしょう。
80歳過ぎの年齢の患者さんですから、前立腺癌の潜伏率は50%以上の確率です。前立腺癌を否定はしませんが、この治療で患者さんは天寿を全うできるでしょう。癌を必ずしも発見する必要がないという実例です。

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コメント

いつもブログ診療楽しみです!がこの記事は途中で切れてます!![PSA値:65.2がPSA値:1.84へ]先生「平成23年3月に高橋クリニックを受診しました。」この続きを早くお願いします!!
【回答】
書きかけの場合、予告編として理解して下さい。

投稿: 納豆 | 2011/07/23 11:51

予告編から待っておりました
先生のこの治療方法は学会にて当然発表お願いします、又50-60歳代の年齢ならこのような症状の場合どのような治療をされますでしょうか?
【回答】
ここに掲載した治療法は、20年以上前であれば、ごく一般的な治療法です。
ユリーフは、当時ありませんでしたが、ハルナールを代表とするα‐ブロッカーはすでにありましたし、抗男性ホルモン剤プロスタールも30年前からありました。
当時、どの医師もこのような治療をしていました。
そのため、PSA検査で確認されないまま前立腺肥大症も前立腺癌も自然消滅していたので、今ほど前立腺癌にかかる患者さんも少なかった訳です。
抗男性ホルモンやα‐ブロッカーでPSA検査の値がマスク(値が少なく出てしまう)されるという理由で、PSA検査結果が高い人は、上記のような治療されずに、何回もPSA検査を行い何回も針生検され、見つける必要のない前立腺癌を見つけるという愚行が、今の常識的な泌尿器科学会の考え方です。
その結果、前立腺癌患者さんは増加し、前立腺癌で癌死する人も増加の一途なのです。
PSA値が転移性・浸潤性前立腺癌の推移を示す腫瘍マーカーというのは正しい理論ですが、早期前立腺癌の発見には意味のない腫瘍マーカーです。
PSA高値=前立腺癌という早とちり的短絡的発想が、今のPSA検診禍の原点です。
いつ大衆が気づくのでしょう?

投稿: 納豆 | 2011/07/23 18:58

早速のブログ診療回答有難うございます
先生の回答ですと早期前立腺癌は様子を見てPSAの値の推移で前立腺癌が疑われる場合は「抗男性ホルモンやα‐ブロッカー」での治療が有効で、(PSA検査で確認されないまま前立腺肥大症も前立腺癌も自然消滅していたので・・・)摘出や放射線治療などすることは必要ないのでしょうか?
【回答】
排尿障害が確認できれば、α‐ブロッカーを使用します。
前立腺が大きければ、前立腺癌の潜在率も高くなるので、抗男性ホルモン剤を追加します。
また、高齢というだけでも、前立腺癌の潜在率が高くなるので、抗男性ホルモン剤を同じく追加します。
天皇陛下は、PSA検査結果が高かったので、針生検され、術前検査で前立腺に限局していると診断されて、手術をお受けになりました。
しかし、その数年後に転移がPSA検査で確認され、現在ホルモン治療されています。
私でしたら、PSA検査で高いという結果で、排尿障害を確認して、α‐ブロッカーと抗男性ホルモンの併用治療します。
さすれば、前立腺癌は顔を出さなかったでしょう。
私にしてみれば、今主流の馬鹿の一つ覚えの診断法や治療法を、陛下は国民のために代表でお受けになったと考えます。


テレビもアナログが本日で終了しました!泌尿器科のアナログ治療も先生のお力でデジタル情報化が必要と思います、★大衆はデジタル化したら、本質が見えやすくなると思います!!

投稿: 納豆 | 2011/07/24 12:58

お忙しい中の回答、有難うございます!

先生曰く「私でしたら、PSA検査で高いという結果で、排尿障害を確認して、α‐ブロッカーと抗男性ホルモンの併用治療します」

★上記の先生の解説からして、針生検・手術しない方が賢明のようですが、発症年齢に関係ない考えで良いのでしょうか?
【回答】
その通りです。


★手術されれば、転移する場(前立腺)が無くなりますが(先生のブログを引用)手術されて摘出されたにも関わらず、どのようなメカニズムでどこに転移されたのでしょうか?
【回答】
陛下も前立腺を手術で取り去ったにもかかわらず、転移しました。
転移する場がなくなったのですから・・・おかしいですね?
針生検をした直後に、針生検が原因で転移してしまったと私は考えます。
PSA値が高いからといって、無闇に針生検をすることに反対なのです。
また、針生検後の術前検査で転移していないという術前診断は、癌細胞1個1個程度の初期の転移なので、現在の診断機器の能力では診断不可能です。
陛下のケースが、その例です。

投稿: 納豆 | 2011/07/24 17:56

先生早速のブログ診療回答有難うございます
患者レベルで大変わかりやすい説明でイメージできます
★突き刺した針が細胞膜を壊し、壊された細胞膜の修復時に血液の中に壊されたかけらの癌細胞が運ばれる・この結果後に再燃したり転移になる・・運良く発生しない方が少ないと思いますが・・素人にもわかりますが・・専門の先生方は分かってながらやってるんでしょうか?もし分かってやられてるのなら、問題でしょう!
★ぜひ先生のこの理論を全国的に提唱して、前立腺癌患者を救出して下さい!
★針生検被害者の会ができる前に!!

投稿: 納豆 | 2011/07/25 10:21

昨日診察に伺った者です。私は4年間総合病院絵で前立腺肥大症の治療を受けていました。その間のPSAは高い時には12.11でした。生検も受けました。先生のことをインターネットで知り、先生の診察を受け投薬を9カ月間受けました。お陰でPAS値が0.66まで下がり癌ではないことが判りました。先生の明快なご診察に驚くとともに深く感謝しております。昨日、先生に薬の服用を止めたい旨お尋ねしました。先生にはさぞかし不愉快な思いをなさったことと思います。心からお詫びを申し上げます。
 只、小生は75歳ですので寿命があと何年有るかわかりません。軽い排尿障害が続く程度であれば年相応のことと考え病に付き合ってみたいと思った次第です。
 先生の適格にして明快なご診察と治療に深く深く感謝申し上げでおります。

投稿: 工〇〇二 | 2013/01/09 12:15

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