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臨床的に「意義のない癌」と「意義のある癌」

Pcaclinicallyunimportant前立腺癌の予後の目安として、次のように分類できます。
前立腺全摘手術を実施した前立腺組織検査結果から見た分類です。
1.臨床的に意義のない癌
悪性度が中等度以下(グレソン分類6以下)で、前立腺被膜(境界線)を越えていなくて、癌細胞容積が0.5cc以下の前立腺癌を指します。
右のグラフで分かるように100%の非再発率です。
2.臨床的に意義のある癌で治癒可能な癌
悪性度に関係なく、前立腺被膜(境界線)を超えていなくて、癌細胞容積の制限なしを指します。
臨床的に一番多いケースでしょう。5年非再発率は89%です。
3.臨床的に意義のある癌で治癒困難な癌
悪性度が高く(グレソン分類7以上)、前立腺被膜(境界線)を越えている癌を指します。
臨床的に一番残念なケースです。5年非再発率は32%です。

ここで一番問題になるのが、【3】の治癒困難な癌の場合です。
手術前の検査で問題なしと判断され、前立腺全摘出術なるものを実施されたにもかかわらず、5年非再発率がたったの32%です。つまり68%の方は5年以内に再発したことになります。
おそらく、再発と判定された時点でホルモン治療の開始になります。再発とは手術前から転移していたということです。つまり、手術前の検査で転移なしと判断された根拠は嘘だったということになります。「手術してみなければわからない」と執刀医は言い訳するかも知れませんが、そのような言い訳が通用するのは、5年非再発率が60%を超えている場合に限りです。
では、同じような手術テクニックで、その結果がなぜこうのような差として出てくるのでしょう?

【1】の臨床的に意義のない癌(126人)の多くは、膀胱癌の手術で膀胱と前立腺を除去した患者さん(70人)です。この】患者さんたちは、膀胱癌の検査は行っていますが、事前の前立腺針生検を行っていません。針生検を行わないことが、どれだけ有益なことであるか想像できます。


【参考文献】
早期前立腺癌モノグラム (ベクトル・コア2003年3月)

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コメント

現在52歳の男性で、前立腺肥大でおととしから〇〇〇〇厚生総合病院に通院しています。ハルナーレD錠0.2mgを毎日一錠を飲み年一回PSA検査を行っています。今回の検査は2.7で問題なしとのことでした。偶然先生のサイトを見つけ読ませていただきPSA検査の数値が悪くても心配ないと理解しました。先生のクリニックに私が伺った場合、どのような治療になるのでしょうか?現在のPSA値では変わらないのでしょうか?ご多忙のところ恐縮ですがお教え願えれば幸いです。
【回答】
前立腺が大きければ、前立腺を小さくするための治療も併用します。

投稿: 木○○ | 2011/05/10 14:50

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