前立腺癌検診と前立腺癌生存率 前立腺癌検診ガイドラインから 続き

前回、ロッテルダム発の文献を参考に、治療（手術・放射線・ホルモン）による生存率・死亡率について論議しました。しかし、各治療の具体的な人数が不明でしたので、内容が尻切れトンボの状態でした。
大学の図書館に行って、この文献を探してきました。
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文献からの表です。
この表から、検診群21210人中1339人（6.3％）、非検診群21166人中298人（1.4％）に前立腺癌が発見されました。問題の各治療に関しての内訳は次のようでした。

治療法・・・・・検診群・・・・・非検診群
手術・・・・・・・495人・・・・・・57人
放射線・・・・・608人・・・・・・131人
未治療・・・・・196人・・・・・・50人
ホルモン・・・・40人・・・・・・・60人

手術治療（RP)と放射線治療（RT）別の予後をこの表は示しています。
前回の要約では、5年生存率だと思っていましたが、文献を詳細に読むと、5年間前立腺癌の進行や悪化がないことを指すようです。

この文献の要約が右のと通りです。
その結果から、5年再発率を逆算すると、次のような表になります。

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・・・・・・・・　人数　　癌発見　　手術　　放射線　　ホルモン
・・・・・・・・　　　　　　　　　　　5年再発率　〃　　　　　〃
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検診群　　 21210人 　1339人　15.6％　29.0％　59.5％
非検診群　21166人　　298人　41.1％　42.0％　83.7％
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上の表に乗っ取って、具体的な数字を入れ計算すると、

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・・・・・・・・　人数　　癌発見　　手術　　放射線　　ホルモン
・・・・・・・・　　　　　　　　　　　5年再発数　〃　　　　　〃　　合計
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検診群　　 21210人 　1339人　77人　　176人　　　24人　277人
非検診群　21166人　　298人　23人　　　55人　　　50人　128人
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検診群で発見されてから5年経過して再発・進行あるいは死亡した人が277人で、非検診群での結果は128人でした。つまり、検診群の人は、非検診群の人に比較して、実数で2倍以上の再発率なのです。
残念なことに、未治療の前立腺癌の人たち（検診群196人、非検診群50人）の顛末が、この文献には記載されていません。もしも記載されていれば、悪化の人数差はもっと開いたでしょう。

このグラフは、手術治療を選んだグループの生存曲線です。
グラフでは明らかに検診群の方が良好です。
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このグラフは、放射線治療を選んだグループの生存曲線です。
グラフでは明らかに検診群の方が良好です。
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このグラフは、ホルモン治療を選んだグループの生存曲線です。
グラフでは明らかに検診群の方が良好です。
この３つのグラフで、検診群が実数で勝っているのは、ホルモン治療だけです。
その他の治療では率は勝っているかもしれませんが、実数では3倍も悪いのです。
仰々しい生存曲線の姿は、「机上の空論」、「砂上の城」でしかありませんでした。

文献を取り寄せて、詳細に読んでも、実数のマイナス面を隠すことはできません。このような文献を根拠に行っている前立腺癌PSA検診はいかがなものでしょう。