前立腺癌の手術グループと経過観察(非手術)グループの予後の違い
日経メディカル2010年8月号に興味ある記事が載っていたのでご紹介しましょう。
このグラフから、65歳以上の年齢の前立腺癌患者さんにおいて、『手術をしないで経過観察とした』グループと『積極的に手術を行った』グループとでは、その予後(生存率)に変わりがないことが分かります。この事実から、グレソン・スコアが低い(6以下)前立腺癌患者さんは、積極的に経過観察を行おうとする考え方、アクティブ・サーベイランス=PSA監視療法:手術せずにPSA検査などで積極的に経過観察を行う考え方の医師が増えつつあるようです。
経過観察というと、今まで消極的な印象でしたが、考え方を変え、あえて積極的に経過観察を行おうとする画期的な方法です。私は、考え方をさらに押し進めて、前立腺針生検を積極的に行わないで、軽い治療を行いながら経過観察を行うべきだと考えています。
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コメント
高橋先生の記事は何時も興味深く拝見させて頂いております。またユニークな視点は画期的で大変に参考になります。
さて、日経メディカルの記事は、プロットの期間が12年と長いのですが、年齢は測定開始時のものでしょうか。もしそうだとすれば、65歳の方が測定を終了する時は77歳になっています。死因は前立腺癌によるものだけなのでしょうか。健康な人の死亡率はどうなのでしょうか。非常に気になります。もし健康な人にも同様傾向があれば、65歳過ぎて前立腺癌と言われても、無視できると言うことになってしまいます。
【回答】
このデータはアメリカ人のものでしょう。アメリカ人の平均寿命は日本人(79歳)よりも短命ですから、77歳というと、アメリカ人の平均寿命に達している年齢です。
またこのデータは前立腺癌についての経過観察ですから、前立腺癌死のみがデータ収集が目標で、明らかに前立腺癌以外の原因で亡くなられた方は、統計処理で修正されているのが通例です。
一方、65歳以下で見ますと、手術群と観察群では死亡率に明らかな優位差が見られます。この場合、観察群の死因の増加分は前立腺癌によるものと考えるのが自然なような気がします。
【回答】
そうですね。
ここからは素人考えになりますが、65歳以上と65歳以下の大きな違いと言えば、老化度合いと言うことになります。老化の過程で徐々に衰えるホルモン分泌が65歳まではアンバランスになるのでは無いかと想像されます。
そうすると、高橋先生のブログにありましたように、むやみに身体を傷つける生検を避けた上で、65歳まではホルモン治療、65歳過ぎたら免疫力強化に切り替えると言う治療が理にかなっているように感じました。
【回答】
65歳前後のホルモンバランスについては、ほとんど差がありません。
60歳でホルモン低下は下げ止まりになります。
ですから、理由は分かりません。
生検査も手術も放射線も全部リスクの塊と信じている者としての希望的な意見になってしまいましたが、プロの先生の記事に素人の意見を述べさせて頂き、本当に恐縮です。先生の見解をお聞かせ頂ければ幸いです。
次の記事を楽しみにお待ちしております。
投稿: | 2010/08/27 18:06
現在、前立腺肥大における排尿障害にて総合病院の泌尿器科にかかっています。初診の時に前立腺の触診を行いその後PSAの為の血液の採血をしました。1週間ごPSAの数値が19.1,F-PSA5.05でMRIでの造影剤検査を明日する事になっております。MRIにて検査の後次のステップは針生検をするとの事です。9年前に職場検診で前立腺の肥大(PSA8.3)でMRI検査、針生検を行い結果がんは発見されず現在に至っておりましたが、年初めからストレスパニックになり排尿障害を起こし総合病院の泌尿器科にかかっている次第です。前回針生検にて急性前立腺炎になり1週間苦しんだ経緯がある為針生検は拒否しようと思います。MRIの検査結果がどうあろうとです。セカンドオピニオンにての理由にて拒否します。その節は宜しくお願いします。現在の年齢は満70歳です。先生のお考えに私も大いに同感しておりますし、今回の診察で正確なPSA数値を求めるなら前立腺触診後PSAの数値は高くなるとの事なのにあえてその数値から針生検までもって行こうとしているように見えるので。
【回答】
過去に針生検を行われていると、前立腺に穴が開いてPSAが漏れ易くなります。
前立腺肥大症でもPSAは高くなります。
また、排尿障害があれば、F/T比の値は無意味です
私は現在入院中のため、3月下旬でしたら診察できるでしょう。
投稿: A.F | 2017/03/06 16:03