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学会報告 ホルモン治療が効かない前立腺癌のビタミンC治療

201004morioka岩手県盛岡市で開催された第98回日本泌尿器科学会総会に参加・発表しました。
内容は、右のスライドのごとくです。個人の小さな診療所では、前立腺癌の標準治療であるホルモン療法の効果がなくなった際にはお手上げです。
大学病院などの大規模な医療機関を紹介して、扱いの難しい(副作用の強い)抗癌剤治療を選択していただくしかありません。今回、たまたま患者さんがそのような治療を拒否され、代替医療で主流の高濃度ビタミンC点滴治療を実施したところ予想以上の効果が得られたので、報告しました。

201004morioka22photo夕刻5時半過ぎの暗い中での発表でしたが、写真のように興味をもたれた聴衆はいました。
写真の真ん中で熱弁を奮っている?額の広いおじさんが私です。

201004morioka2【目的】
個人で経営する小さな診療所であるが故に、あらゆる疾患に対して標準的な治療ができる訳ではありません。
常に模索している毎日です。今回たまたまこの治療が患者さんの前立腺癌に適合したのです。

201004morioka6hoho【方法】
ホルモン治療が効かない患者さんに高濃度ビタミンC点滴と低用量の抗癌剤(エストラサイト)の併用を試みた。

201004morioka3【症例】
患者さんは初診時79歳の男性です。坐骨の痛みで整形外科から前立腺癌の疑いで紹介されました。
ホルモン治療(LH-RHアゴニスト)が当初は効くかのように思えましたが、次第に効果がなくなりました。

201004morioka4抗癌剤の併用を試みました。エストラサイト(女性ホルモン+ナイトロジェンマスタードの合剤)を低用量(1日1カプセル、通常1日4カプセル)で治療行いましたが、効果は今ひとつです。大病院での積極的な抗癌剤治療を患者さんが拒否されたので、代替医療では主流の高濃度ビタミンC治療を毎週1回で始めました。すると、劇的にPSAは下がりました。

201004morioka5患者さんも治療を行う医師も安心して、毎週1回の点滴を2週間に1回、さらには1ヵ月に1回のペースで減らしていきましたが、PSAは順調に下がり続け、最低で4.6ng/mLまで下降しました。
ここで少し油断して、一時的に治療を休止したら、PSAが上昇しました。

201004morioka17patho【病理診断】
Gleason Score 5+5=10の悪性度が最も高い組織像です。

201004morioka13time【治療の行程】
今回の治療の全経過とPSAの推移を示しています。

201004morioka18graf【PSAの推移】
PSAの推移のみをグラフ化したものです。
治療によるPSAの乱高下が容易に理解できます。

201004morioka19graf【最近のPSA推移】
治療の休止がPSAに反映されています。
油断大敵です。

201004morioka14bonescy【骨シンチグラム】
初診時の骨シンチグラムでは全身骨転移が10ヵ所以上にも及びましたが、今回の報告の治療で、骨シンチグラムでも改善の証拠を認めることができました。

201004morioka15prepostp【前立腺の大きさ】
超音波エコー検査による前立腺の大きさの推移です。
初診時と比較しても明らかに前立腺は小さくなっています。

201004morioka16prepostkid【腎機能】
初診時では、前立腺癌による尿管閉塞性腎機能低下が著しかったのですが、水腎症も改善し、腎機能も回復しています。

201004morioka9yakuri【薬理作用】
ビタミンCは、体内で過酸化水素を作ります。過酸化水素は強い酸で癌細胞を殺します。
血液中でも過酸化水素は作られますが、特殊な酵素ですぐに中和され無害な物質に変換されます。
癌細胞の中では、この酵素が少ないのか全くないために過酸化水素は代謝されずに癌細胞は攻撃されるのです。

201004morioka10yakuri【薬理作用】
癌細胞の中で過酸化水素がいかにして癌細胞に傷害を与えるかを示しています。

201004morioka12history【歴史的考察】
ノーベル賞を受賞したPaulingがビタミンCの抗ガン作用を報告しましたが、一般的には『たかがビタミンCが』と軽んじられたのが現実でした。
その後も否定的な論文が相次いで出され、ビタミンC治療は歴史から消えようとしていました。

201004morioka11ratio【細胞培養実験】
各種の癌細胞の培養液に、ビタミンC濃度400mg/dLで培養するとほとんどの癌細胞が死滅するという実験データが発表されました。
このデータを根拠に、血液中のビタミンC濃度400mg/dLを治療の目標にビタミンC点滴を行うようになり、効果が上がるようになったのです。
ビタミンC濃度400mg/dLのためには、血液中のビタミンC濃度をその都度測定しなければなりません。臨床の現場では煩雑になるし、費用もかかります。そこで簡易的に体重1kg当たりビタミンC0.5g~1.0g点滴すれば、血中ビタミンC濃度400mg/dLに近似するのでこの方法を用いています。体重60kgの患者さんであれば、30g~60gのビタミンCを点滴することになります。

201004morioka7kosatsu【考察】






201004morioka8ketsuron【結論】






201004morioka20pt前立腺癌の末期状態で来院して2年経過していますが、写真のように元気でおられます。




201004morioka23photo本当に興味をもたれた医師も存在し、東京女子医大の医師から細かい所を質問されたので、一生懸命に解説している場面です。

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コメント

先生の記事からはいつも勇気を頂いております。本当に心から感謝致します。今回のビタミンCの記事は大変参考になりました。PSA高値から癌を疑われ、プロスタール25を日量2錠で2ヶ月、日量1錠で1ヶ月続け、何とかコンマ以下までPSAは下がったものの、ホルモン剤耐性が怖くて服用を止めました。しかしPSA再上昇の不安は拭いきれません。そこで代替療法として、リポスフェリックビタミンCを1包(1000㎎)に、更にアスコルビン酸3000㎎を数回に分け水に溶かして飲んでいます。当初は1000㎎で進めていたのですが、先生のブログからヒントを頂き、その後、量を4000㎎以上に増やしました。ビタミンCの威力でPSAを、いつまでも抑え込んで欲しいものです。7月にはPSA測定をする予定ですが、結果は先生のブログへのコメントの形でご報告したいと思います。更なる先端的な記事を楽しみにしております。ご活躍をお祈りします。

投稿: | 2010/05/11 16:00

ビタミンcとアスコルビン酸の治療はどこでしていますか?関西 大阪市に在住です。
【回答】
代替医療・高濃度ビタミンC療法で検索してください。

投稿: | 2012/09/15 17:36

当方58才男性 柏市在住 都内勤務会社員 TURP手術と生体針検査のことで以下読んでいただけると幸いです。

〇〇区〇〇医大〇〇病院にて2010年に生体針検査をして癌は一応見つからなかった者です、その後本年9月21日に尿閉状態になり同病院外来にて前立腺肥大症で、現状は普通の3倍近い大きさとのことで、TURP手術をした方がよいという診断です。その後現在まではユリーフ錠服用し、自己導尿を約1か月続けていました。特に10月18日~26日は50ml位でも日に一度自己導尿していました。11月16日に手術をする予定とし、この10月27日のPSA検査で30という値が出たため、「やはりTURP前にもう一度生体針検査をして癌の有無を確認した方がよいのでは」という医師のアドバイスです。医師は自己導尿のダメージでの数値上昇かもしれないので11月10日に再PSA検査して最終判断し、場合によっては生体針検査しましょうとのことです。わたしは自己の感想ですが、2010年に経験した生体針検査は体へのダメージが激しく、できるならばもうやりたくありません。

以下ここに至るまでの経過を述べます。

2004年50歳の8月中旬旅行中に旅館にて発熱と数mlしか尿が出なくなり、急ぎ帰宅し柏市内内科泌尿器科医院にて尿検査し、抗生物質投与にて2,3日で一度回復。医師によると尿検査にて前立腺炎と判断とのこと。

2005年以降毎年2月に企業検診時に葛飾区検診センターにてPSA検査

2006年52歳PSA値7.2にて〇〇区〇〇大〇〇病院にて再検査、値6.4で前立腺の肥大もあるとのことで投薬治療3か月をおこなった。

その後2007年値4.7、2008年4.2程度 その間前立腺が肥大という認識のもと時に頻尿、時に切迫尿意などがありながらも通常の生活を続けていた。

2009年8月末に宴会飲酒中に、発熱とほぼ尿閉のような状態になり、翌日柏市内内科泌尿器科医院にてカテーテル挿入し、導尿。服薬し、翌々日にはカテーテル脇よりの尿漏れが発生しカテーテルは外してもらった。以降前立腺の肥大症ということでフリバスとエピプロスタッドをこの9月24日まで毎日服用。

2010年の2月のPSAが11.2であったため、〇〇大〇〇病院医師と相談し3月末に生体針検査をして癌は一応見つからなかった。その後もフリバス、エピプロスタッドは常用。

本年9月22日に尿閉状態になり、24日に同じく柏市内内科泌尿器科医院の診察でより大きな〇〇大〇〇病院に行ったほうが良いとの判断。同病院にて即日診療(エコー、尿検査)をしてもらい、肥大の進行とのこと。手術を視野に入れて1か月ほど投薬(ユリーフ)しながら自己導尿で様子を見ましょうとのこと。その約一か月後の10月27日の改めてのPSA検査で30という数値で生体針検査の話しが出ました。11月10日に再PSA検査して最終判断をしましょうとのことですが、手術をしてしまうことと、その前の生体針検査の因果関係が医師の説明ではわかるのですが、逆に前立腺を「かきまわす」イメージがあり、私の素人考えで手術後のがん発生のリスクが確実に高くなるのではと思います。TURP手術については必要と思っています。

ご意見いただけると幸いです。

【回答】
前立腺が単に大きいためにPSA値が高いのでしょう。
私でしたら抗男性ホルモン剤(アボルブ・プロスタール)を処方して前立腺を小さくします。
貴方の場合、3倍ほど大きいというのですから60cc(正常は20cc)以上はある訳ですから、できれば30cc以下にしたいですね。
そして抗男性ホルモン剤で治療しても排尿障害が強いのであれば、その時点で初めてTUR-Pを実施します。

投稿: 松〇安〇 | 2012/10/29 10:17

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